「相棒」   作:ダンちゃん1号

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精霊が持つ恋心は成就しうるものなのか

精霊という存在は人にない力を持っている事が多い。

しかし、人ならざる力を持っていても精霊の心は人間のそれと何ら変わりない。

だから人と同じように考えるし人と同じように行動する。

それはつまり、長く行動すれば行動するほど親愛の情がマスターに湧くという事。

故に。

精霊がマスターに恋心を抱くのは当然である。

 

「でもふつうは寿命もないし記憶もなくす私達が恋していいわけないじゃないですか?」

「それはどうだろうね…。現に私は霊使の事が大好きだし、霊使も私の事大好きだし。」

「その関係性…、少し羨ましい。」

 

マスターとの恋愛はいけない事なのだろうか。

その質問に対し、どう答えるべきか。

ウィンは今、とてつもなく悩んでいた。

 

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霊使とロイたちが交流を深めている一方、ウィン達はロイという青年が連れていた精霊―――レイとロゼと親交を深めていた。

彼女たちは精霊界のずっと"未来"にいるようでウィン達の事はその世界に住んでいた「先輩」としての敬意を持っているようだった。

"伝説"と称される程度にはウィン達の行動が伝わっているようだった。

 

「…で。無事にロゼちゃんも救って腐った上層部も叩っ斬って今こうしてここに居るというわけですね。」

「なんでお上はそんなに腐っているかな…。」

「…戦争でも、利益は出る。私達は大人の金儲けのために戦わされてた。」

 

それはそれとして、彼女たちの半生を聞いたとき、何処でもお上は腐っているのかと頭を抱えそうになったのはまた別の話である。

とりあえず、ウィンは彼女たちが諸事情で各国を放浪し始めたという事。

そしてその中でロイに恋心を抱いてしまったという事。

そしてその恋心は果たして伝えていい物なのか悩んでいるという事。

そのすべてを聞いた。

そして―――

 

「私達はロイにこの思いを告白するべきでしょうか…?」

「なんで私に聞くのさ」

 

決闘大会本戦開始前の時間でウィンはレイとロゼに恋の相談をされた。

何を言っているが分からないと思うがされた物はされたのだ。

余りにも場違いでありながら「コイバナ」という浮いた話で弄れる側に回れるのは少し楽しみな物ではあるが。

もっとも、霊使とウィンの恋心の成就の仕方はなんというか、物凄く特殊な物だったのでアドバイスと言っても何をいえば良いのかさっぱりなウィンであるのだが。

とりあえず、相談内容は至って簡単な物だった。

 

『精霊は人間を好きになってもいいのか。』

 

それが、この二人の質問だった。

それに関してウィンは答えをまだ持っていない。

正確に言えばその質問に関しては「イエス」とも「ノー」とも答えることはできない。

確かに愛した人との別離は心に大きな傷を残す。

もしかしたらそれは大きなトラウマとなってずっと心を抉り続ける凶器になるかもしれない。

だが、その思いを隠し続けるのもまた不可能。

思いは言葉にすることで初めて相手に伝わるものだ。

それを伝える事が出来なければ思いはくすぶり続け、いずれは別の物に変わってしまうかもしれない。

だから。

だから、ウィンが彼女たちに伝えるのはその問いに対する「答え」ではない。

 

「それは、私にも分からないよ。恋愛なんて何が正しくて何が間違っているのかが分からない。」

「…じゃあどうしろ、と。」

「簡単だよ。二人が後悔しない選択をすればいい。」

「後悔、ですか。」

「うん。」

 

後悔しない選択とは一体全体何なのか。

それは彼女たち自身に探してもらうしかない。

何故ならこれは教えられるものでもないし、他人から得たところで何ら糧になるわけでも無い。

 

「私もまともな形で恋愛したわけじゃないからね。」

「どういうことですか、それ…。」

「本当にどういう事なんだろうね…。」

「…それを私達に聞かれましても…。」

「じゃあ、話そうか?私達の間に何があったのか。」

「…気になる。」

 

うまい事恋愛相談から視点をずらせたことに安堵しながらウィンは語り始めた。

その話は、少女たちの心にどう映ったのであろうか。

 

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「というわけで今に至るんだ。結局の所あそこで思いを伝えなかったら私はここに居なかったと思う。」

「ほえー…。」

 

ウィンは今まで起こった出来事をかいつまんで説明した。

流石に四道の事だとかは伏せて当たり障りのないカバーストーリーを語ったのだが。

 

「あれ?でも話だけ聞いてると大分まともな気が…。」

「そうなのかなぁ。母さんは父さんと普通にお見合いしたって聞いてるけど…。」

「それだけを普通と呼ぶのならこの世界は普通じゃない恋愛であふれてますよ…。」

 

まぁその分。どうしても「自分のせいで霊使を不幸にしたと思い込んで勝手に消えようとした」ことがきっかけで互いの本心を知ったなどと言えないわけだが。

というかそんな事を言ったらなし崩し的に全部を語ることになってしまう。

彼女達との間柄は確かに友人と呼んでいい物ではあるが、だからといってレイとロゼを四道との戦いに巻き込むのは、何かが違う気がした。

 

「それにしても…、なんというかこっちの世界はこっちの世界で割と地獄のような世界ですね…。」

 

それにしても、と前置きしてレイはこの世界の歪みについて触れてきた。

レイはなんとなくで言った事だろうがこの世界が「地獄」というのはある意味では正しいのではないか。

それに関してはウィンもそう思う。

数多くの敗北を重ねて、そしてその敗北の分だけ貶められた霊使を見たから。

自分が居なくなったせいで一時は彼を地獄の底へ落としてしまったから。

それでもこの地獄のような世界で生き足掻く霊使を隣で見てきた。

それを見ているとこう思うのだ。

どんな世界でも必死に生きているから人は輝くのだ、と。

そして―――その輝きに魅せられて、精霊(自分達)は現れるのではないか、と。

 

「結局最初の相談からはずれちゃったね。…でも私は霊使に対して後悔しない選択をした。伝えない道を選んでもきっとたくさん楽しい事はあっただろうけど、それでもきっとこんな温かい気持ちになることは無かったんじゃないかなって。」

「…そう、ですか。」

「だからさ、同じことの繰り返しになっちゃうけど、レイちゃんも、ロゼちゃんも、二人とも後悔しない選択をするように。」

 

ウィンは二人にビシッと指を突きつけるとそう言い放った。

彼女たちがどんな選択をしようとウィンはそれを応援するつもりだ。

 

「あ、そろそろ始まるみたいだね。―――いい決闘になると良いね。」

「―――決闘で負ける気はさらさらない。」

「ロゼちゃんに同じく、です。」

 

談笑していたらいつの間にか本戦が始まる時間になっていた。

これからは、新たな友人ではなく新たな「ライバル」として戦う時間がやってくる。

もっとも人に近しい存在である精霊がもっとも人と違う部分であるとすれば、彼女らが持つ「闘争心」に他ならない。

 

「さて、と。行こうか、霊使。」

「ああ。ウィンの新しい友達に見せてやろうか!俺達の力を!」

「もちろん。」

 

納涼決闘大会第一回戦。

最終試合―――四遊霊使VSレーゼス・ロイ

 

決闘開始の時間は刻々と迫っていた。




登場人物紹介

・ウィン
可愛い後輩に恋愛相談を持ち掛けられた。
でも霊使と付き合うようになったのって割ととんでもない状況だったので…。

・レイ
ロイに恋心を抱いている。
割と初心なのでボロが出ることもしばしば

・ロゼ
ロイに恋心を抱いている。
無口だけど思った事はズバッというタイプ。


というわけで今回はウィンと閃刀姫のコミュ回でした。

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