「相棒」   作:ダンちゃん1号

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終わるもの、終わらないもの

気づけば夏休み最終日。

結局あの後、大したことは何も起こらずにひと夏は過ぎていった。

でも、そんな夏の中でも変わったものがあった。

それはエリアと霊使の距離感だ。

 

「ね、霊使。隣、いい?」

「あ…ああ。」

 

なんというか、少し近くなった気がする。

ウィンはあの夜に何があったのか知らない。

けれど、二人の関係がより良い物になるというのならそれを拒む理由は無かった。

それはそれとして嫉妬の一つや二つはするのだが。

だが、それを別人が見たらどうなるだろう。

 

「ダルク…。これは…。」

「見損なったぞ霊使。まさかお前が先輩方を両側に侍らせている性欲に正直なバカだったなんて。」

「悪いの俺なの…?」

「悪いが俺はそれを答えられない。」

「…あんまりだ。」

 

きっとこうなるはずだ。

エリアとの間に何があったのか分からないダルクは冷めた目で霊使を見つめていた。

そもそもの話、エリアとウィンでは霊使に抱いている感情が違う。

ウィンは霊使に恋慕の情を込めて抱き着き、逆にエリアは家族―――例えば妹が兄に甘えるような感覚で霊使に抱き着いている。

だからダルクの言う事は何一つ当てはまっていないのだが。

それでも傍から見るとそうとしか見えないのが性質が悪いところだ。

あの夜あったことを何となくで察しているヒータやアウスは苦笑いしながらその光景を眺めていた。

 

「…なんか活発な妹が出来た感じがする。」

「…エリアちゃんは霊使よりも年下だからある意味で合ってるかもね。」

「…これからお兄ちゃん、お姉ちゃんって呼ぼうか?」

 

エリアのボケに思わず吹き出しそうになる二人。

だが、そこで面白がったクルヌギアスはエリアにこう囁いた。

 

「呼べばいいではないか。」

「ふぇっ…!?」

 

そう囁いたクルヌギアスの頭に―――

 

「何を言ってんの?」

 

マスカレーナのチョップが入った。

言っていることは正しいので何も言うことは無いが。

ただ、一応は元神であるクルヌギアスにチョップできる気概を持った彼女が素晴らしい。

 

「そういえば―――元気にしているかな、ハスキーさんは。」

「さてね。」

 

そして約一名―――ハスキーはつい昨日、自分のいるべき場所へと帰っていった。

彼女との別れ一日たった今日でもはっきりと思い返すことができる。

その別れはなんというか彼女らしい別れ方だった。

 

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昨日の早朝。

霊使はハスキーが何やら支度している音で目が覚めた。

ハスキーの部屋をのぞき込むと、ハスキーは何処からか持ち込んだか分からない鞄に着替えを詰め込んでいた。

 

「…そっか。今日帰るんだな。」

「…はい。」

「皆を起こしてこようか?」

「大丈夫ですよ、霊使様。」

 

ハスキーはそう言うとすっかり見慣れたメイド姿へと着替える。

そして霊使に対してカーテシーを行うとハスキーは玄関まで移動した。

そこにはすでに霊使い達が、マスカレーナが、クルヌギアスがスタンバイしている。

見送りはいらないといったが、それでも見送るというのが霊使たちなりの礼儀だった。

 

「…ほんとにお世話になりましたね。」

「こちらでの生活は楽しかったですよ。…また会いましょうか。」

 

その言葉を合図にハスキーの姿が竜へと転じていく。

気づけば彼女が「シュトラール」と呼ぶ竜の姿へと転じていた。

 

「…あ、言い忘れていましたが…。雷に打たれて記憶を失っていたところを助けていただいて本当にありがとうございました。」

「…雷?」

「ええ。…あの時は確かに晴れていたのに雷が降って来たのですよ。…こんな話をしても貴方は困るだけでしょうが…。」

 

その後、彼女はこの姿で雷に気を付けなければ、とぼやいた。

雷という単語に彼女を堕としたのは誰なのかなんとなく予想がついた霊使。

 

「…これからは雷に降られないと良いですね。」

「ええ。」

 

それから二言三言言葉を交わして、そして彼女は空の果てに向けて飛んでいった。

彼女はあるべき場所に帰った。

これからは彼女がいない―――いつも通りの日常が始まる。

 

「また遊びに来てくださいねー!」

 

この言葉が届いていたか定かではないが、空の果てで彼女はその言葉に呼応するように嘶いた。

そして、朝日に消えていった。

 

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そして今日。

夏休み最終日にして、霊使達はそろいもそろって寝坊をかました。

これが平日じゃなくて本当に良かったと思っている。

どうやらハスキーの存在はいつの間にか自分達の中で相当大きい存在になっていたようだ。

これからしばらくは寝坊をかましてしまいそうだな、と霊使は苦笑しながら朝食を取って今に至る。

ダルクからの冷ややかな目線は続くものの暫くはこのスタイルがいつもの光景になりそうだ。

 

「それにしてもどうやってエリアまで手籠めにしたのだ?そんな甲斐性もないだろうに。」

「クルヌギアスまで!まともなのは俺だけか!?」

「いやーぶっちゃけマスターのSANが元から0なだけじゃない。」

「アイデアロール降るぞ?」

 

それにしても暑さで思考が回らない。

何だが会話が会話としての体を為していない気がする。

霊使は今、自分で何を言ったか全く持って理解していないし、マスカレーナもなんでそんな事を言ったのかさっぱり分からない。

外では子供たちが元気に遊ぶ声が聞こえている。

 

「思考が溶けてまともに物を考えられない…。」

「本当にソレ。ボクも溶けそう…。」

「それでいいのか、火霊使い…。」

 

暑さで思考が回らないとか言い出した火霊使い。

思わずそれでいいのかと突っ込んでしまう。

突っ込んだら負けだとかそういうのは無しだ。

 

「…明日の準備をしなきゃ…。」

 

弱弱しい声を上げながら霊使は学校の準備を行う。

宿題も全てきっちりと終わらせてあるし、ファイルにまとめてある。

そのファイルを入れれば準備は完了だ。

 

「…あっつい…。」

 

夏休み最終日。

彼らは口を開けば常に熱いと口に出していた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

夏の日々は終わり、新たな戦いが始まる。

それは何かの終わりの兆しか、新たな時代の福音か。

知らず知らずに世界の命運をかけた戦いに挑む少年少女たちはまだ知らない。

この世界の歪みをまだ、知らない。

 




登場人物紹介

・霊使御一行
暑さでダウン。

ちょっと短いですが。
これで夏休み編は終了。そろそろ一部も終わりに向かって行きます。
お楽しみに

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