「相棒」   作:ダンちゃん1号

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四章:終末へのカウントダウン
動き出す者たち


 

霊使は夏休みからしばらくたったある日、颯人と帰っていた。

颯人とウィンダの関係に気をもみながらも、その事は口に出さない。

すっかり気の置けない友人同士になった彼らだが、同時に絶対に口に出せない悩み事も抱えていた。

だが、颯人は意を決して口を開く。

それは、敵の狙いである「創星神」の復活に際しての物だった。

 

「…霊使。ウィンダールから聞いたんだが…。確か、創星神の復活にはガスタの巫女かそれと同等の力が必要だったよな。」

「ああ。」

「…そしてあの時、安雁だったか。あいつは、策を考えるといった。…恐らくは次の奴らの狙いは俺だ。」

「そうとは限らないだろ?」

「…だといいな。」

 

少年たちは知らず知らずのうちに世界の命運を背負い込んでしまった。

その事がほんの少しだけ二人の足取りを重くする。

それでも、少年たちは今日を、明日を生きていくのだ。

だから、霊使は颯人と向き合って、笑った。

 

「俺達は今を生きていくしかないよ。」

「…そうだな。」

 

颯人も霊使も迷ってなんかいられない。

だから、前を向いた。

そして、俯いていたせいだろうか。前方不注意で、颯人は人にぶつかった。

 

「いてっ…。」

「すみませ…貴方は。」

「すまない。こちらも電話に気を取られてしまっていてね。」

「市長…。」

 

颯人がぶつかった人は颯人自身が知っている。

もちろん霊使もその人の事を知っている。

その男の名は、星神創。―――現端河原松市の市長であった。

 

「君たちは…そうか。君たちが奈楽の友達か!」

「…何故それを?」

「…君達、精霊を連れているんだろう?それに、息子の入学試験は私も覗かせてもらった。どの子がどんなデッキを使っていたかくらいは覚えているさ。奈楽からも話を聞いているしね!」

「はぁ…。」

 

何というか、気さくな人だ。

普段感じさせている威厳だとかそういったものは何も感じない。

それ故か―――霊使はこの男が何か腹に一物を隠してそうな気がした。

そしてもう一つ、霊使は何とも言えない違和感に襲われていた。

なんというか、この道から彼が現れるのはなんというか―――。

 

「あれ…父さん?それに霊使君に颯人君まで。」

 

だが、思考の渦に嵌りそうになった時、よく知っている声で意識は現実に引き戻される。

その声の主は、奈楽であった。

取り敢えず疑問は後回しにして、奈楽に向き合う。

 

「奈楽。…彼らとはたまたまここで出会ってね。」

「なるほど…。」

 

奈楽は納得したように頷く。だが、それと同時に一つに疑問もわいた。

でも、どうして彼らが自分の友人と分かったのか、そこだけが腑に落ちない奈楽。

だが、二人の事を見る機会なら何度かあったはず。

 

「…父さんは二人の事をどこで?」

「二人には話したけど、入学試験の時にさ。あそこの決闘の試験は試験前に名前を呼ぶだろう?」

「そういえば…そうか。」

 

思い返してみれば、あそこの決闘の試験は確かに名前を呼ばれていた。

正直な所、試験官のデッキは【グッドスタッフ】と呼ぶのもはばかられるようなお粗末なデッキだった。

だから特に先攻2ターン目でオーバーキルをかました霊使はその試験の事をすっかり忘れてしまっていたのだ。

本来ならば決闘者としては戦った相手を忘れるなどあるまじきことだが、それ以降の決闘が濃すぎてすっかり忘れてしまっていたのだ。ちなみにウィンや颯人もすっかり忘れていたらしいので正直、あの決闘が余りにも大味過ぎたのだろう。

 

「…ちなみに二人はどうしてここに?」

「俺の家がこっちだからだ。」

「…ああ、そうか。そういえばそうだったね。霊使くんちには何回か行ったことあるけど、颯人君ちもこっちだったんだ。」

「ああ。」

 

そう言うと彼らはゆっくりと歩きだす。

その後ろ姿を見て創はぼそりと呟いた。

 

「…私は本当に正しいのだろうか。」

 

その声が霊使達に届くことは無かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「じゃ、僕はここで。」

 

奈楽はそう言って十字路を右に曲がる。

一方の霊使達は十字路を左に曲がった。

颯人と霊使は奈楽と創の姿が見えなくなるまで、手を振り―――

見えなくなった途端、二人で顔を突き合わせた。

 

「気づいたか、霊使。」

「…ああ。」

 

あの方向から星神創が出てくるのはおかしい。

だって、あの方向には彼が務めるべき場所など何一つないのだから。

学校も、なにかしらの施設も―――もちろん市庁舎も。

 

「こんな時間に、あのわき道から出てくるのがおかしい。…そう言いたいんだろう?」

「ああ。今日は平日。―――今は勤務時間のはずだ。早く仕事が終わって―――と言ってもわざわざあの道の先に進む理由がない。」

「何か隠してる…。余り信じたくはないけどな。」

 

それでもあの方向に何か氏らの用事があったことには違いない。

流石にこの町を守るはずの人物がこの町を破壊する事を良しとするはずがない。

そう思って。

それでも星神創という男には警戒しておこう。

二人はそういう感じで話をまとめて、その場で別れた。

 

『奈楽にはどうする―――?』

 

たった一つ、決まってない事柄を除いて二人は別れることになった。

それでも、何故か真実へと近づいている―――そんな感触が霊使達にはあったのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

星神奈楽は、あの時「何故父親がそこに居るのか」という事に関して疑問を持っていなかった。

だが、思い返してみれば父親があそこに居るのはおかしい。

――――というよりもあり得ない。

恐らくはあの二人も分かっている。

それでも、奈楽は父親の事を信じたかった。

人の上に立つものが人を害することはしないと信じたい。

だから、奈楽は最も手っ取り早い解決法を取ることにした。

 

「…あの方向には父さんの行くべき場所は何処にもない。―――なにがあったの?―――いや。()()()()()()?」

 

それは父親に聞くこと。

何もやましいことが無ければそのまま答えてくれるはずだし、もし、何か怪しいアクションを起こせば即座にフレシアが拘束、制圧を行う手筈となっている。

だから、確信はないが―――それでもこれは自分がやらなければならない事だと。

そう、奈楽は思っていた。

親の不始末を片付けるのは自分だと。

そうすることが息子の役目だとも。

 

「気づかれた、か。…本当に聡い子に育った。まさかあれだけの違和感で気付かれるなんてね。」

「…どういう…?」

 

そう呟くと、創はやれやれと頭を振るうと奈楽の前に立つ。

そして、そのまま真剣な眼差しでこう言い放った。

 

「私だよ。―――私がこの一連の騒動―――キスキル君達から始まる騒動を引き起こしたんだ。」

「何、だって…。」

 

それは、あっさりと。さも当然であるかのように、創の口から飛び出した。

余りにもあっさり告げられた真実に固まってしまうのは奈楽だ。

 

「そもそも私は、この計画がばれても良し、ばれなければ尚良し。―――くらいの感覚で動いていたからね。」

「なんで…。」

「奈楽はきっと創星神様の事を知っているんだろう?」

「うん…―――友人から聞いたよ。」

 

聞かれたことに普通に言葉でしか答える事の出来ない奈楽。

そもそもそんな計画がばれても良かったのか。

たくさんの疑問は潰えることは無く、奈楽の頭の中を駆け巡る。

 

「奈楽。―――ここからが本題だ。」

「何だって?」

「私に手を貸してくれないか?」

「……は?」

 

しかし、その疑問は創の言葉によって消し去られた。

手を貸してほしいという願い。

それは暗に奈楽に「仲間たちを裏切れ」と宣告しているのと同義だ。

 

「…メリットは。」

「私が命に代えてでも奈楽の友人を守る。」

「…それは、創星神が齎す何かから?」

「…ああ。」

 

だが自分の裏切りで友人たちの命を守れるなら。

そんな甘いことがあるのなら。

それに乗って、霊使達には平和を享受させたい。

何故なら、彼らは十分に戦ったから。

奈楽は握った拳から血が出るくらいに握り締めて―――ある、一つの決断をした。

 

「…どうする?」

「僕は――――」

 

奈楽の続けた言葉に満足そうに頷いた創。

そして、二人は向かい合った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

四道安雁は一人思考にふけっていた。

どうやら、向こうは勝手に動き出したらしい。

それならばそれなりの「礼儀」というモノがある。

 

「ふむ…。」

 

どうやら、あの市長との協力期間は終わりのようだ。

これから先は排除すべき「敵」。

 

「さて、と。動くとするか。…行くぞ、お前達。」

 

「駒」の仕上がりは上々。

後は、結果を掠め取るだけ。

 

これから始まるのは終わりの始まり。

そして、少年たちにとっては大きな喪失へのカウントダウンへの幕開けでもあった―――。




登場人物紹介

・四遊霊使
・風見颯人

町の構造に詳しいからこそ彼が妖しいと分かった。

・星神奈楽

父から明かされた衝撃の真実。彼は一体何を選ぶのか。

・星神創

騒動の黒幕。何が彼を突き動かすのか。


名前だけ言及されてたキャラがいきなり黒幕宣言した小説があるみたいですよ?

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