霊使と別れた後、颯人は一人で考え込んでいた。
何故、創星神の復活にウィンダの力が必要なのか。
そもそも何故、創星神は封印されたのか。
あの神話には色々と粗が多すぎる。
「…どういう事だ…。」
それに、なによりも。
颯人は創星神について記述されている書物の少なさに違和感を覚えた。
端河原松市の中央図書館に行って調べてみても残っている伝承は「創星伝説」ただ一つのみ。
普通こういう伝承は何かしら別の視点から語られてもいいものなのに、だ。
「…何か超常的な力が働いているとか…か?」
どうにもこうにも考えがまとまらない。
それでも明らかにそれが
「また明日…。」
調べてみるか。その言葉がつぶやかれることは無かった。
背後から急に羽交い絞めにされたからである。
反撃のためにウィンダがその姿を現すが、すでに一手遅かった。
薬品をしみこませたであろう布を口にあてがわれ、ふっと、意識が無くなってしまう。
最後の最後でなんとかウィンダの実体化を解除できたが。
(くそ…。悪い…みん、な…。)
何も残せずに消えてしまうのは嫌で。必死にもがくように暴れる。
それでも、少しずつ意識が遠のいてくる。
この襲撃の元でもある何か大きい脅威に霊使達が屈しないことを祈るしかない。
(後は…た、の…―――。)
力なく倒れる自分を誰かが優しく抱えた気がして―――そこで彼の意識は消し飛んだ。
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「消えた…ってどういうこと?ウィンダは!?」
「落ち着けってエリアル…!…僕もわけわかんないけど…。」
昨日、疑いを持ったところにこれだ。
恐らくは―――そこまで言いかけて、あわてたように奈楽が部室に駆け込んでくる。
「―――颯人君とウィンダちゃんが消えたって―――」
「…家に居ても誰も居なかったみたいだ。」
奈楽でさえも状況を飲み込めていない。
それだけの異常事態が今、発生していた。
人が一人、それこそ
「何があったんだ…。」
「…分からない。でも、助けに行かないと。」
少なくとも、颯人が決闘で負けて連れ去られたとは思えない。
何故なら、全員が彼の決闘の腕は、この中の誰よりも高いという事を知っているからだ。
そんな簡単に負けはしないし、むしろ、そのまま相手を下してしまう程度の実力はある。
だからこそ、彼の失踪が腑に落ちない。
それに―――
「ウィンダがウィンや皆に何も告げずに消えると思う?僕はそうは思わないよ…。アイツが皆に何も告げないでいなくなるのは絶対におかしい。」
「エリアル…。」
「だから、僕はウィンダを―――トモダチを助けたい。」
エリアルの目には絶対的な確信があった。
ウィンダが、颯人が何も残さずに消えるのはおかしい、と。
だから、何かに巻き込まれた。
それがエリアルが下した結論。
「…場所も分からないのに、助けに行くのか?」
「それは…。」
だからエリアルは友人を助けに行こうとする。
だが、彼女たちの居場所は分からないし、探しに行く方法もない。
だが、エリアルの言う通り、助けに行かなくては。
そうしなくては颯人とウィンダは絶対に碌な目には合わない。人間としての生を全うできるかさえ怪しいだろう。
「ウィン…。危険を承知でお願いしてもいいか?」
「うん。…お姉ちゃんの居場所を探るだけ探してみる。」
だから、助けないといけない。その気どんな危険が待っていようと。
「…待ってて。」
エリアルの声は、確かに霊使の耳に届いた。
それは心の底からの彼女の本心―――いうなれば友であるウィンダに対するある種の決意じみたものだった。
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ウィンにウィンダの居場所を探ってもらう事早数日。
なんと先に奈楽が情報を掴んできた。
と、いうのも颯人が攫われた当日―――全てが終わった後に父親から事の顛末を告げられたらしい。
曰く、
『準備にもう少しかかる』
らしい。敵の言葉をどこまで信用していいかは曖昧なとこだが、当面はウィンダ達の安全は確保されたも同然である。
だからと言ってこの状況を楽観するようでは頭の中がお花畑としか言いようがない。
例えばその言葉が罠である可能性だってあるのだ。
全員で乗り込んだらそれこそ捕まえられて終わりだ。
だから、助けに行くにしても人数を絞らなければならない。
そもそもの話、何処にウィンダ達が居るのか、なんてさっぱり分からないのだ。
こんな状況でエリアルが逸るのも分かるが、その手綱は水樹にきっちりと握っていて欲しい。
それに、だ。
奈楽の話から黒幕の正体も露呈した。
しかも何故かその黒幕―――星神創は奈楽に情報を漏らす。
もしかしたら奈楽が何かしらの取引を持ち掛けられ、裏切っている―――だからその見返りとして情報を得ているのかもしれない。
でも、そんな事を考え始めたらきりがないし、霊使は友人である奈楽を疑う理由などこれっぽっちもないのだ。
「奈楽。場所は聞いたの?」
「そこまでは…。」
エリアルに詰め寄られて場所までは把握してないことを自白する奈楽。
余りの情報の無さにエリアルから奈楽へ鋭い視線が飛んでくる。
それを横目に見ながら霊使は情報の到着―――ウィンの帰還を待っている。
「一応アウスにも行かせてはいるけど…。」
アウスの属性は土。しかもウィンダとは面識がある位でそこまで親しい仲ではない。
本人もあまり期待せずに待っていて欲しいと言っていたし、出発前にはぼやいていたので、多分見つけられはしないだろう。
案の定、アウスはしょんぼりした顔で帰って来た。
その顔を見て、颯人、ウィンダ両名の捜索が無駄であったことを悟る。
それでも霊使は形式上の報告を受けることにした。
「あ、アウス。どうだった?」
「…やっぱり、ダメです。どこにいるのかさっぱりです、ね。」
「そっか。ありがとう。…今はゆっくり休んでくれ。」
「分かりました…。」
そう言ってしょんぼりした顔のまま実体化を解くアウス。
今日も情報を得られそうにないか。霊使は小さく嘆息してウィンから進捗を聞こうとする。
そんな時、視界の端に小さな点が見えた。
(霊使、聞こえる!?)
(ウィンかッ!?)
その点はこちらに近づいてきている。
その距離が短くなればなるほどその姿を鮮明に捉えることができた。
「ウィン!?」
「ダイナミックエントリーをするんじゃないぞ!?」
それはラセンリュウに騎乗しているウィンだ。
ウィンとラセンリュウは速度を緩めることなくむしろ加速して突っ込んでくる。
このままでは窓を割ってしまう―――そう思うよりも先に、ウィンが自分の意志で実体化を解いた。
それに伴いラセンリュウも実体を保てなくなり消滅。
そして一瞬で霊使の隣にその姿を現す。
余りの早業に頭のネジが月までぶっ飛ぶような衝撃を受けたが、それ以上の事が否応なしに全員の思考を冷めさせた。
「
「でかした、ウィン!」
ウィンから発せられた言葉、それはここに居る全ての者が待ちわびていた言葉だ。
これでようやく颯人とウィンダの救出へ向かう事が出来る。
「…じゃあ、皆を集めて。」
「…作戦会議だな。…普通高校生がやる事じゃないだろこれぇ…。」
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ウィンが持ち帰った情報をもとに颯人たちがいるであろう場所に乗り込む人員を決める。
まず、最悪、風霊術でウィンダを持ち帰ることができ、ウィンダの居場所を探知できるウィン、そしてウィンのマスターである霊使は確定。
そしてエリアル、水樹の志願により、両名が救出メンバー入り。
そして最後に、奈楽とフレシアが連絡係として同行することに。
(奈楽の裏切りも視野に入れとかないと、か…。)
(僕は、僕の選択は―――)
それぞれの思惑が絡まる中、友人たちの救出作戦が始まる。
既に高校生の枠を飛び出して、ここに居る少年たちは世界の歪みを知ることになる。
その時、彼らの選択は――――
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「ここは…大丈夫か、ウィンダ。」
「うん…。」
二人は目を覚ます。
何か上等なベッドに寝かされてるようで体に痛みとかはなかった。
「やあ、こんな手荒い形での再会は…私も予想外だったね。」
「やっぱり貴方か。―――市長。」
「あそこで君たちに出会ったのは完全に予想外だったよ。」
二人が状況を確認しようとする中、創がその姿を現す。
目的は何となく理解しているため、颯人はウィンダを庇うようにして二人の間に立った。
「…ウィンダには手を出させない…ッ!」
「勇ましいのは良い事だ。でも―――実の所私はキミに提案をしに来た。」
「何…?」
創はゆっくりと手を差し出して―――颯人に話しかける。
「私と一緒に―――新しい世界を作らないか?」
・登場人物紹介
・四遊霊使/ウィン/エリアル/二重原水樹
救出へ。
・星神奈楽
選択を迫られている模様
・星神創
「お前も新世界の神にならないか?」
・颯人
彼の選択は―――
というわけで、そろそろ無理矢理物語を動かします。
彼らの選択をお楽しみに。
水樹君のデッキ強化
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