「…どうやら霊使君曰く、巨大な機械がこの警備ロボットの親玉みたいだね…フレシア。」
「じゃあ、目の前に居るコレがボスってことですよね…?そうですよね?奈楽。」
霊使からの連絡を受けたとき、奈楽とフレシアは丁度目の前の敵―――警備ロボットと対峙していた。大体はフレシア達蟲惑魔が作った穴に落っこちていてまともにたどり着けるものさえ皆無だ。警備ロボットたちは蟲惑魔と共生する昆虫たちに貪られ、その大半が機能を停止していた。
そんな折にとうとう本体が出張って来たのだ。
「ちょうどいいじゃないか!」
奈楽はそう叫びたくなった。
丁度フレシアに
「―――むぅ。鉄はあんまり美味しくないんですよね…。」
故に余りこういった無機物を彼女たちは好まないのだ。確かに人間もこんな鉄の塊を食うかと聞かれたら否と答えるだろうが。でも、
なんというか目の前のロボットはフレシアにとっては餌でしかないらしい。
「美味しい美味しくないの問題じゃないよ…?」
だから奈楽はそう言わずにはいられない。奈楽にしてみれば、これを倒さなければ父に会う事は出来ないし友人も救う事が出来ないから。
「分かってますよ。でも、お腹がすくんです…。」
流石のフレシアもそれは分かっているようで。それでもお腹がすくとこぼしてしまう。お腹がすくのは生理現象だから仕方が無いところもある。
それは奈楽もよく知っている事だ。
「そうだね…。確かに無機物の鉄はフレシアの口には合わないかもだけど―――」
だから、フレシアにとある提案をしようとして―――
『シンニュウシャ、ハイジョ。』
それは巨大な何かが地面をける音でかき消されてしまった。音の発生源を見れば二人が話しているのを見てしびれを切らしたのか警備ロボがまっすぐに突っ込んできた。「決闘をしないなら去れ」と言わんばかりの勢いで二人に向かって突進してくる。そんなロボットの様子を見て奈楽は呆れたかのように首を振るう。
「やれやれ…。フレシア!行くよ!」
どうやら、ご飯の話をするにもまずは目の前のロボットを倒すのが最優先らしい。奈楽は頭を抱えて、そのあとすぐに意識を決闘へと切り替えた。
「お望み通りの…決闘をしようか!」
奈楽はそう宣言するとデュエルディスクを構える。それをデュエルの意志ありと踏んだのか警備ロボットは自身の動きを制御して丁度奈楽の前でその動きを止めた。
「…じゃあ、始めようか。」
『ワタシノターン…。ワタシハカードヲ1マイフセテ"テラ・フォーミング"ヲハツドウ。デッキカラフィールド魔法デアル"
「デュアルモンスターデッキ…!」
"デュアルモンスター"。それは墓地やデッキにある時は通常モンスターであり、フィールドに居る時にもう一度召喚することで効果モンスターとなるモンスター達の総称である。故に通常モンスターサポートと効果モンスターサポートのどちらも受けることができるのがおいしいところだ。
「厄介…ってほどじゃないか。」
「確かに…。複数体並ぶ…なんてことはほとんどないんじゃないでしょうか?」
「だよね。」
だが、デュアルモンスターにも弱点はある。それは横に並べるのが非常に大変であるという事だ。例えば特殊召喚を使わずに最上級のデュアルモンスターを出そうと思えばまずは生贄用のモンスターをそろえるのに2ターン、通常召喚権を使って、再度召喚するのにさらに2ターン。合計して計4ターンもかかってしまうのだ。"
『ワタシハ"
「…あ。なんか嫌な予感がする…。」
「奇遇ですね。私もです。」
"妖精伝姫―カグヤ"は至ってシンプルで強力な効果を持つ。第一の効果は―――
『"
「そういや元々"カグヤ"は【妖精伝姫】のカードだったね!霊使君のせいでですっかり忘れてたよ!」
攻撃力が1850である魔法使い族のモンスター一体をデッキから手札に加える効果。霊使が使う"憑依装着"モンスターは全員が攻撃力1850であるために霊使も使用しているカードだ。というか、霊使が使用している印象が強すぎてどうにも【憑依装着】のサポート感は否めない。
『ワタシハコレデターンエンド。』
警備ロボット・本体 LP8000 手札1枚
フィールド フェニックス・ギア・フリード
魔法・罠ゾーン
伏せ×1
フィールド魔法
各"妖精伝姫"はそれぞれサポート・妨害に徹した効果を持っているレベル4、魔法使い族モンスターの集まりだ。例えば"カグヤ"は自身と相手のカード一枚を手札に戻すという厄介極まりないない効果を持っている。自身が対象のカード一枚を墓地に送ればその効果を無効にできるが十分に厄介極まりない。
「僕のターン。ドロー。僕は"ランカの蟲惑魔"を通常召喚。」
『"ランカの蟲惑魔"ノ召喚成功時ニ罠ハツドウ。"センサー万別"!』
「おっと…。中指立てていいかい?」
"ランカの蟲惑魔"の召喚成功時に警備ロボットが発動したカードはまさかまさかの"センサー万別"。"センサー万別"はお互いにフィールド上に同じ種族のモンスターは一体しか存在できないという制約を掛ける罠カード。そして、蟲惑魔は昆虫族と植物族の二種の属性で構成されている。そして、センサー万別がある限りは自分フィールドに存在する種族と同じカードは特殊召喚することが出来ない。
「…"ランカの蟲惑魔"の効果でデッキから"ジーナの蟲惑魔"を手札に。そして、カードを一枚伏せてそのカードを墓地に送ることで手札から"ジーナの蟲惑魔"を特殊召喚するよ。」
"ランカの蟲惑魔"は昆虫族で"ジーナの蟲惑魔"は植物族。故に"センサー万別"の制約は効かないのだ。この二体で何とかするしかないと思って―――そういえば、と思い出した。
「僕は"ランカの蟲惑魔"と"ジーナの蟲惑魔"の二体でオーバーレイ!」
『"蟲惑魔"エクシーズモンスターハ召喚デキナイハズ…?』
純粋な蟲惑魔だけで組んでしまうとその最高打点は"アロメルスの蟲惑魔"の攻撃力2200である。流石にそれはまずいと踏んで何枚か高い攻撃力を持つエクシーズモンスターを採用したのだ。そして、それらは全て植物族でも、昆虫族でもない。―――本来なら蟲惑魔達でアドバンテージを取ったうえでフィニッシャーとして採用したのだが、それはまぁ、嬉しい誤算というやつだ。
「レベル4モンスター2体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!"
蟲惑魔達は皆レベル4のモンスター。採用するエクシーズモンスターももちろんランク4のモンスターだ。例えば蟲惑魔達を攻撃から守れて、かつ攻撃力も2500とそれなりにある"No.39 希望皇ホープ"はまさにうってつけのエクシーズモンスターだろう。しかもエクシーズ素材も二体でいいため"センサー万別"が存在する場合でもなんとか出せるエクシーズモンスターでもある。逆に言えば除去を喰らったらおしまいなのだが。
『"
「EXデッキから"No.39 希望皇ホープ"を墓地へ送って効果を無効!」
警備ロボットは迷わず"No.39 希望皇ホープ"の処理を狙ってきたが流石にそれは対処を行う。そうでなければフィールドにモンスターが居なくなっておしまいだ。
だからこそ、きっちり、堅実に―――そして確実に。相手の手を一つ一つ潰していく。負けたくないから。勝たなくてはいけないから。
「―――バトルだ!"No.39 希望皇ホープ"で"
『ギギギ…!』
警備ロボ・本体 LP8000→7350
少女のような姿をした狐を希望の剣は容赦なく切り裂いた。その衝撃は容赦なく警備ロボにも襲い掛かる。
そしてこれで奈楽のもう一枚の切り札の召喚条件は整った。奈楽はその切り札を召喚するための行動を行う。
「メイン2!自分のエクシーズモンスターが戦闘を行ったターンに一度、このカードは自分のエクシーズモンスターに重ねてエクシーズ召喚することができる!」
『マサカ!?』
「流石にあれだけ暴れまわったら知ってるよね!"No.39 希望皇ホープ"一体でオーバーレイ!」
希望の皇は天に上り、天からは奈楽のもう一体の切り札がやってくる。それはメテオニスとはまた違った―――どちらかと言えば特撮やロボット物のアニメにありそうな横道な人型の巨大ロボットであった。
「天の彼方より雷霆纏いてこの地に降り立ち、あまねく物を殲滅せよ!エクシーズ召喚!"
その名は"
「僕はこれでターンエンド。」
奈楽 LP8000 手札四枚
フィールド
奈楽のフィールドには"
『ワタシノターン…。ドロー…。ワタシハ"ダークストーム・ドラゴン"ヲ"化合電界"ノ効果デリリースナシデ召喚。サラニ"化合電界"ノ効果ハツドウ。"ダークストーム・ドラゴン"ヲ再度召喚。サラニ"妖精伝姫―カグヤ"ノ効果ハツドウ。』
だが、相手はフレシアをそんな感情に飲み込むことさえ許してはくれない。相手は着々と奈楽の息の根を止めに来ているのだ。状況を見逃したら勝てる相手にも勝てなくなってしまう。
「"妖精伝姫―カグヤ"の効果は"天霆號アーゼウス"を墓地に送って無効に―――なんてできないからなぁ。制限だからね。だから僕は"カグヤ"の効果にチェーンして"天霆號アーゼウス"の効果発動!」
カグヤの効果が発動する前に、先に奈楽の"アーゼウス"の効果が発動する。"アーゼウス"の周囲を漂う光の玉が"アーゼウス"に吸収され―――そして、目もくらむような轟雷が幾度もフィールドに降り注いだ。それは、敵も味方も関係ない殲滅。その姿は、まさに正しく"
「"天霆號アーゼウス"の効果。
その身に余るエネルギーを全開放し、焦土と化したフィールドに立つのはただ一機。効果を発動した"天霆號アーゼウス"のみ。その凄惨な有様に思わずフレシアも目を逸らしてしまう。
『ギギギ…ターン、エンド…!』
警備ロボット LP8000 手札一枚
フィールド なし
魔法・罠ゾーン なし
結果として、警備ロボットは何も行う事が出来ずにターンエンド。改めて"天霆號アーゼウス"がどれほどぶっ壊れているのかを実感し、―――相手に使われたらいやだなぁ、なんてことを考えながら、奈楽はとどめを刺しにかかった。
「僕のターン…ドロー。僕は手札から"ティオの蟲惑魔"を通常召喚。"ティオの蟲惑魔"の効果で墓地から"ランカの蟲惑魔"を特殊召喚。…僕は"ティオの蟲惑魔"と"ランカの蟲惑魔"の二体でオーバーレイ。二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
蟲惑魔たちは光の玉となり、空へと消える。いつも通りの光景だ。―――それがひどく懐かしく感じるのはどうしてなのだろうか。やっぱりこんな形で蟲惑魔エクシーズモンスターを召喚すること自体が久しぶりだろうからか。
「エクシーズ召喚!おいで、"アロメルスの蟲惑魔"!」
呟く言葉に呼応するように"アロメルスの蟲惑魔"がフィールドに現れる。どうやら彼女はやる気に満ちているようで少し安心した。ちなみにだが、アロメルスはタマシイを変質させる力があるが、それは味方に関しても適応可能だったりする。蟲惑魔限定且つ、より多くの
「"アロメルス"の効果発動!
「えっ?」
その効果を使えば、あれよあれよという間にモンスターが増えて、いつの間にかモンスターが四体になっていた。アーゼウスの攻撃力は3000、アロメルスの攻撃力は2200、ランカの攻撃力は1500、そして、ジーナの攻撃力は1400。しかしながらフレシアの攻撃力は300。おまけに"団結の力"はいま、手札にはない。
つまるところ、今、このタイミングに置いて言えばフレシアの召喚は事態の悪化を招きかねない、というのが実情だ。
「…この低攻撃力今だけは憎いですっ…!」
「適材適所とは言うけれど…ね。バトル!」
襲い掛かるモンスター達の背後。二人は何やら話しているようだが、その会話は警備ロボットには聞き取れない。それでも当人たちが楽しそうにしているのは分かった。
結局最後まで
警備ロボット・本体 LP7350→0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「分かってます。分かってますとも。ええ。あそこで私を出していてもこんなに簡単には勝負がつかないという事位理解していましたとも。」
奈楽は頬を膨らませてそっぽを向いているフレシアの機嫌取りに必死だった。今回のデュエルで出番が一切なかったフレシアは―――完全に拗ねてしまっていた。相手が"センサー万別"を使わなければ出番もあったのだが。
「…それでもちょっとくらい頼ってほしかったんですよ?」
「ごめん。」
「ダメです。許しません。」
「えぇ…?」
流石にフレシアも決闘の結果にギャーギャー言っているわけでは無い。だが、それでも。何故フェイバリットカードである自分を使わなかったのか。できればもう少し頼ってほしかった。これはフレシア自身のエゴである。
「取り敢えず話は二人を助けた後でたっぷりしましょうか。」
「…はい。」
今日の
奈楽は通路の終わりの扉を―――大きく息を吸い込んで、開け放った。
登場人物紹介
・星神奈楽
ぶっちゃけ颯人助けなきゃいけねぇ!ってなってて手段を選ばずに勝ちに行った人。
正直"天霆號アーゼウス"は奥の手中の奥の手でそこまで召喚する機会はないと思われる。
・フレシア
出番なし。
・警備ロボット
被害者
というわけで奈楽君の決闘だったわけですが…いかがだったでしょうか?なんというか今回蟲惑魔の出番そこまでなかったような気がする…。
水樹君のデッキ強化
-
ネクロス
-
リチュア