マジでちまちま書いてたら時間かかったンゴね……
これキャラ崩壊してない????ってなりながらひとまず一区切りわよー
大学に合格した私は、アダムの林檎の近く……というか、現在も住んでいる部屋へと引っ越し、一人暮らしをするようになった。
合格や引っ越した事をマギーちゃんの所に報告に行った時は、一度しか会ったことのない私の事を覚えているか不安ではあったけれど、マギーちゃんは覚えてくれていて。それどころか我が事のように喜んでくれて、本当に良い人なんだなぁ、と当時改めて思ったのをよく覚えている。
大学に入学してからは、マギーちゃんのところにちょくちょく軽くお昼ご飯を食べに行ったり、夜はお酒を飲みに行ったりもするようになった。……まぁ、最初の頃は貰った仕送りで生活してたからそこまで頻繁には行けなかったけど。
個人経営なのもあって広過ぎない適度な広さの店内と落ち着いた雰囲気、マギーちゃんの人柄もあって、とても居心地がよくてつい長居してしまったりもして、ウチで働いてみる?なんて声をかけられるまでそこまでかからなかった。
で、まぁ、週末だとか、授業が無い時間だとか、そんなタイミングで始めは主にお手伝いがメインの仕事、という形でアルバイトを始めるようになって、人と話すのも少しずつ慣れたり、お金の余裕が少し出来たりして来た頃。
今とは違い、制作環境が整ってなかった時期。ふと思いたって、住んでるところから近いシーサイドベースではなくお台場のガンダムベースに行こうかと思いつき、制作スペースがあると聞いて、ついでに試してみようかな、と向かってみたある日。ナナセ君と、あの悪人面……ツカサと、出会った。
「あった、エールストライク」
取り敢えずは、と選んだ機体はストライク。前にマギーさんに教えてもらった場所は覚えていたから、ガンプラが置いてある場所自体はすぐに分かった。
「えぇ、と……?」
お会計を済ませて周りを改めて見回し、制作コーナーを探してふらふらと歩いて回る。回数も来ていた訳でもなく、使うつもりがなかった施設だから意識して見ていた訳でも無かったから、うろ覚えだなぁ、と呟いていると、声がかけられた。
「もしかして、迷っていたりするかい?」
「──っ!?」
「あ、いや、急にごめん。困っているように見えたから」
思いがけずかけられた声に肩を跳ね上げるように驚いてしまいながらそちらを向くと、その声の主であろう、優しげ、というよりはどこか気が弱そうにも見える、私と同年代程の男性が居た。
「お節介だったかな、迷惑だったら」
「ようコーイチ──誰だそいつ、見ない顔だな」
「ひ……っ!?」
「…………」
「……ぷふっ」
「……覚えてろよコーイチ」
「ごめん、ごめんってツカサ!
君も、怖がらないでやって欲しい。こいつ、こんなだけど悪い奴じゃないんだ」
コーイチ、と言うらしい声をかけてくれた人と、彼と親しい様子の、後からやって来た……なんというか、若干目つきが悪い、ツカサと言うらしい男性の2人。
知らない人な上、ツカサさん、と言うらしい人の顔に驚いてしまって良くない反応になってしまった事を謝ろうとして、
「あ、えっと、すみませんでした、ツカサ……さん?」
「……シバ・ツカサだ、好きに呼べ。
お前は?」
「サクラノ・レア、です」
「僕はナナセ・コーイチ。よろしく、サクラノさん」
「よろしくなガキンチョ」
カッチーン。
「えぇ、よろしくお願いします、ナナセさん、悪人面」
「あぁ?」
「何か?」
自分の身長が小学生から中学生がいいとこなのは自覚してるし、年齢を疑われるのも慣れてはいるけれどそれはそれ。自分で言うなら兎も角、面と向かって小馬鹿にされて平気な顔をしていられるほど、私は人が出来てもいないのだ。
「ガキはガキだろ、ちび助」
「これでも大学一年なもので。
ガキと言うほどの歳ではないかと思いますが?」
「ほぼ同い年だ?このちんちくりんが?」
「折角謝ろうと思ってみれば、本当に顔通りの性格なんですね?」
「なんだと?」
「なんですか?」
むむむむむむむむむむ、と睨み合っていると、横から声。
「お客様、通路を塞ぐのはお控え頂いてもよろしいですか?」
「ひゃぃ……」
「……すいませんした」
とっても良い笑顔の店員さんの鶴の一声に、反抗する余地はなかった。
取り敢えず落ち着ける場所に、とテーブルと椅子がある場所に移動した私たちは、向かい合って──と言うには、シバ……さん、は腕組み足組みそっぽ向き、という座り方だけれど──椅子に座っていた。
「まったく……熱くなりすぎだよ、ツカサ。あと、あれはツカサが馬鹿にしたのが悪い。
サクラノさん、ツカサがごめんね」
「……悪かった」
「……まぁ、歳の割に小さいのは事実なので……私も、すみませんでした」
曲がりなりにも謝罪されたから、と私も謝罪を返すと、苦笑を浮かべるナナセさん。
「お詫び、と言うか、元々そのつもりだったんだけど……行きたいところがあるようなら、僕らが案内するよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて……ビルダーズゾーン、と言うところ、に……?」
「ここだな」
「ここ、だね」
「ここ、ですか」
既に目的地に着いていたという事実から絶妙になんとも言えない空気になり、揃って一瞬黙り込む。
「うーん……アドバイスとか、何か手伝えれば、とは思うんだけど……これ以上はしつこいかな」
「お前はGPD用の機体作りに来たんだろうが。
……俺が残る。どちらにせよ、機体が出来るまで暇する訳だしな」
「え」
「あーっと……サクラノさん、勝手に話進めてなんだけど、必要無い時は正直に言ってもらっていいからね?」
「あ、いえ、そんな事は無いです。
自分でも作ったりはしますけど、素組みばかりなので作るのが上手な人にアドバイスを貰えるのはありがたいですし……」
「だとよ、さっさと行け」
「うん、じゃあ任せたよ、ツカサ」
それじゃ、また後で。そう言い残して別の場所に移動するナナセさんを見送ると、シバさんは腕を組んだままこちらに視線を向ける。
「端的に聞く。ガンプラ作りはどの程度を目指してる?」
「どの程度、というと……?」
「素組みなら、別に誰かがどうこう言うような難しい事じゃねぇ。今時のガンプラなら、それこそ爪切りでだってそれなりの出来で作れるだろうよ」
「爪切り……」
「だが、ミキシングして飾りたい、GPDで戦える強い機体を作りたい、となると話は変わる。ヤスリがけ、合わせ目処理、スミ入れ、塗装……丁寧な作業が出来上がりの質を左右する以上、手間は倍以上に膨れ上がると思っていい。
お前はどうしたい、サクラノ」
正直、意外だった。
ここに来ている以上はガンダムやガンプラが好きだとしても、ガンプラ製作の知識や実力が高い人だとは思ってもいなかったから。
「……正直、GPDは壊れるのが怖いので多分やる事はないと、思います。
でも、GPDでも戦えるくらいに立派なミキシング機を作れるようになりたいと……そう、思ってます」
「……分かった」
どこか複雑そうな表情で、けれど、そう答えたシバさんは、組んでいた腕と足を解き、私が買ったエールストライクの箱を指差す。
「取り敢えず、本体……ストライクだけ、自分なりに作ってみろ。気になるところがあれば、後で言う。
まぁ、今すぐここでやって、見る事と言ってもゲート処理とヤスリがけくらいのもんだろうが」
「はい、シバさん」
「『さん』も敬語もいらねぇ。さっきぐらいで、呼び捨てでいい」
「わかりました、『シバ先生』?」
「喧嘩売ってんのか?」
「冗談です。よろしく、ツカサ」
「……あぁ」
ニッパーで切り取る音、パーツを置く音、説明書が擦れる音。
お互いに特に言葉を発するでもなく、小さな音だけが響く中、聞こえた声の主はツカサだった。
「GPDは、怖いか」
「はい?」
「さっきの話だ」
不意を突かれて聞き返し、あぁ、とようやく理解する。
「怖い、のもありま……ある、けど、なんで、ガンプラが壊れてしまう事を楽しめるのかなぁとは、思う」
「少し、違うな」
「違う?」
「壊れるのは、確かにスリルがある。リアルな戦場に自分が立っているようなスリル。それを楽しんでいるのは、勿論事実だ。
だが、GPDを楽しむ根本的な理由は、もう一つある」
「もう、一つ?」
「自分が作ったガンプラを、自分自身で動かせる。ガンダムのキャラクターのように、自分の愛機を実際に操ることが出来る──その喜びが、俺達を駆り立てる。
ガンプラを破壊され、相手に負ければ反省点とどう改良すればいいかを洗い出し、自分なりの改造を繰り返して、より自分の戦闘スタイルに合う、自分専用の機体へと洗練させていく。
そして、その機体を持ってまたGPDの筐体へと向かう。
『俺のガンプラが最強だ』『俺が1番ガンプラを上手く動かせる』と、証明する為に」
「……ツカサも、やっぱりそんな機体を持ってるの?」
「こいつ──『アストレイノーネイム』、だ」
そう言ってツカサが取り出したのは、小さなガンプラ用のポーチから取り出したのは、全体的に赤褐色の塗装が施された、右肩に装着したユニットが印象的なガンプラ。その見た事がない雰囲気のデザインは、試行錯誤の繰り返しが見て取れるようだった。
「すごい……」
「100回以上、戦って改良して、を繰り返して完成した機体──俺に最適化させた、俺の経験と知識の集大成。俺だけのオリジナルだ。
飾るための芸術的なオリジナルガンプラ、ミキシングが悪いとは言うつもりはない。それがGPDが出るまでの元々の楽しみ方だからな。
それでも、壊して壊されて、そうして出来上がっていく、自分だけの愛機。それが生まれるのもまた、GPD──ガンプラバトルって訳だ」
『愛』
一言で言うなら、それに尽きると思った。
このHGサイズのちっぽけなガンプラにこんなにも熱意を込めている人が、世の中には居る……いや、ファイターの数だけ、いくらでも居るんだ、と。
「私は……やっぱり、壊されるのが怖くてガンプラバトルは出来ないかな、と思う。
──でも、ガンプラバトルの良さは、分かった気がする。ありがとう、ツカサ」
「何なら、完成したらGPDで動かして軽く体験してみりゃいい。
GPDはガンプラバトルの為の機械だが、ガンプラバトルをしなけりゃならねえ訳じゃねえんだ」
「……え?」
「当たり前だろうが。
時間に余裕が無い訳でも無いのに、新しいMSが出来たからって試運転無しで実戦に出撃なんてするか?んな訳がねえ。
不具合は無いか?重量バランスは?思った通りのマニューバが出来るか?そんな確認もせずに戦うなんて、一歩間違えばただの自殺行為だ」
「確かに……」
盲点、というか何というか。
GPDはガンプラバトルをする機械で、攻撃を受けるとガンプラ自体がダメージを受ける。それは事実だけど、GPDはあくまで『ガンプラを動かす』機械でしか無い事が、頭から抜けていた。
「見たとこ、気になる部分は無くはねえが……かけた時間と初心者な事を考慮すりゃまあまあ良く出来てる。これなら、GPDでもそれなりに動くだろう。
やってみるってんなら連れてく位はしてやる」
「じゃあ、少しだけ……待ってて、急いで組み立てるから」
「途中から無駄に急ぐな、パーツごとの出来上がりの質がブレる。どうせまだ時間はあるんだ、丁寧な作業を心掛けろ」
「分かった」
本当、ナナセさんの言った通りだった。
目つきはまあ悪いし、態度や言葉遣いはあまり良いとは言えないけれど、ツカサ自身は悪い人じゃない。
なんというか、第一印象で損するタイプだろうなぁ……と考えながら口には出さず、言われた通り丁寧に作業を進める事を意識して黙々と進めた私は、然程しない内にストライクを完成させ、ついさっきまではまさか私がやる気になるとは思っても見なかった、初のGPD、初のガンプラの操作を体験する事となったのだった。
シバ君、GBNショック前で好きな事に関してならこのくらい饒舌になってもおかしくないやろって思うの。