ほっぺが、ゆるむ。
「そっかー・・・・・・そっかぁ・・・・・・♪」
『・・・・・・それ、あなたがそれを言うのかしら?』
今日の、仕事中に話していた時の夜ノ森さんとのやりとりが頭から離れない。
こう言うとなんだけど、この歳まで生きていれば客観的に見て自分の顔が整ってる事は理解しているし、かわいい、とか、そんな褒め言葉は何度か言われたこともある。でも、誰に言われるか、って言うのはやっぱり感じ方は変わるわけで。
「可愛い、って思ってもらえてるんだ・・・・・・」
配信の視聴者、ラバーズのみんなも可愛いって言ってくれるし、何かアクションをすればノリ良く限界化してくれたりもしてて、凄く嬉しく思ってはいる。それも事実。
「んふふ・・・・・・♪」
でも、やっぱり。
夜ノ森さんに言って貰えた事は、トクベツに感じてしまっていて。
「はー・・・・・・だめだ、嬉しすぎ・・・・・・」
ぺちぺち、とほっぺたを軽く叩いて、嬉しい気持ちをなんとか誤魔化そうとする。
────この気持ちは、普通ではないから。
女の子同士・・・・・・男性同士でもいいけど、同性愛と言うのは、社会的に受け入れられつつはあったとしても、普通とは程遠い。それは、マギーちゃんの店に居ると良くも悪くもそう言う場面を見る事があるからこそ、ある意味働き始める前以上によく分かっている。
だからこそ、嫌われたくない。本心からのこの想いを知られてしまう事で。
ただの女の子と可愛い子が好きで、スキンシップが激しめで、えっちな女の子。ネタ枠の知り合い、そのくらいで思ってもらえていれば、もうそれで十分。いやまぁ、出来れば友達と思ってもらえると嬉しいけど。
初めて会ったときに咄嗟に名乗ってしまって、今でも当時と同じように関わっている、仕事中の『さくら』としての私と、今のGBNでの、私の素に近い・・・・・・というか、したい事を割と思考停止でさらけ出せる、『チェリー・ラヴ』としての私。
それを受け入れて貰えていれば、それでいい。
────気持ちを打ち明けて引かれるくらいなら、『桜野恋愛』は隠し続ける方がよっぽどいい。
「・・・・・・名前、かぁ」
もし私の名前を夜ノ森さんに教えたら、彼女はなんて呼んでくれるんだろう、と、ふと考える。
今まで通り『さくらさん』?苗字で『桜野さん』?下の名前で『恋愛さん』?それとも・・・・・・呼び捨てで、『恋愛』・・・・・・とか?
『おはよう、恋愛』
「────っ!!」
あの顔で、あの声で私の名前を呼ばれるイメージに、かぁっとまた顔が熱くなる。
「やっっっっっば・・・・・・・・・・・・」
このままこの事を考え続けてると抜け出せなさそうな気がして、思わず転がっていたベッドから飛び起き、ダイバーギアを置いてある机に向かい、
「配信しよ・・・・・・このままじゃ、眠れなそうだし」
いつもの手癖で出来るくらいに慣れた流れでログイン、ネストの落ち着けそうな部屋に移動する。
コスチュームをふわふわのルームウェアに変え、ハロカメラを横にするように膝の上に置いて少し大きめに深呼吸。効果があるかはともかく、気持ちの問題として少しはマシになるかなと思いながら。
「グッチェリー、みんな」
コメント
:ゲリラだ!
:なんかカメラ横になっとらんか?
:声も普段に比べて大分静かだな
:これは・・・・・・膝枕!!
「せーかーい。
少し、眠れなくてさ・・・・・・偶にはいいでしょ?」
よしよし、って感じで、ハロカメラの頭を撫でてあげながら声をかける。あんまり撫でる力が強いと音を拾い過ぎてうるさいだろうから、軽く。
コメント
:これはお姉ちゃん
:もはやママでは・・・・・・?
:チェリーは私の姉になってくれたかもしれなかった女性だ
:お前ら何歳だよ
:娘より年下のお姉ちゃんだっているんだぞ
:シッ
:なんだ戦争か?
「めっ。
喧嘩してると強めに音立てるよ?」
コメント
:めっ助かる
:これはお姉ちゃんちからがつよい
:チェリーお姉ちゃん・・・・・・
「ん、なーに?弟クン」
コメント
:チェリ姉・・・・・・
:これはお姉ちゃん
:女の子とショタ好きの酒飲み合法ロリ巨乳お姉ちゃんママ
:長い長い
:通常攻撃がMAP攻撃で波状攻撃のお母さんは好きですか?
:全体攻撃で2回攻撃の比じゃないんよ
:いったい何処に向かってるんだ・・・・・・
「どこにも向かってないよ、私は。したいなって思った事をしてるだけ。
────GBNでくらい、自分に正直に居たいでしょ?」
そう、GBNでくらいは。
少なくとも体感では現実と大差なくて、でも現実では無い、このもう一つの世界でくらいは。
「今日は、どうだった?」
コメント
:ヴァルガでチンパンしてたゾ
:同じく
:ダイバーポイントを稼いだり溶かしたり
:金作してたかなぁ
:今日も今日とて金作(リアル)やぞ
:かなしいなぁ・・・・・・
「そっか・・・・・・今日もおつかれさま。リアルでもGBNでも、無理はしちゃダメだよ?」
コメント
:ハイになってただけだから無理はしてないし大丈夫
:無理は・・・・・・してへんな、虚無だっただけで
:あかんなんかなみだが
:あなた疲れてるのよ・・・・・・いやガチで少しでも休め
「毎日がんばっててえらい、えらい・・・・・・ほら、目、閉じて?しばらくこうしててあげるから」
膝枕で置いていたハロカメラを持ち上げて胸元で抱きしめ、落ち着くように、ゆっくりと間隔をあけてとん、とん、とあやすように軽く触ってあげる。
コメント
:ママ・・・・・・
:ママじゃん・・・・・・
:ドアップオパーイ・・・・・・
:なんでこのカメラがワイの頭じゃないんや
:ないてる
「うんうん・・・・・・ゆっくり休んで、元気になれたらまた頑張ろ、ね?」
赤ちゃんになってるラバーズと割とガチ目に限界そうな人のコメントを見ながら、こんな感じかな、と甘やかす感じで続ける。なんかこう、甘えるような反応を見ていると母性のようなものが芽生える気がするというか、かわいい──
『・・・・・・それ、あなたがそれを言うのかしら?』
「────っ」
忘れかけてた所に自爆して思い出して変な声が出そうになったのを何とか堪えて、また赤くなってそうな顔を見られないように、ギュッと胸に押しつけるようにしてハロカメラを抱き締める。
コメント
:めのまえが まっくらになった!
:こんな風に目の前が暗くなる事なら毎日なりたいんだよなぁ
:なんか変な声出さなかった?
「なん、でも・・・・・・ない、よ?ほ、ほら、私のことは気にしなくていいからさ。なんなら歌も歌ってあげよっか?『静かな夜に』とかどう?」
コメント
:よしよし&お歌・・・・・・!
:いい夢見れそう
:疲れてる社畜ニキも寝たっぽいな
そんなコメントが流れる顔も声も何とか誤魔化せたっぽい事に内心ホッとしながら、とんとんを再開して出来るだけゆったりと歌い始める。
今夜は、すぐには眠れなそうだった。
いやマジではっやいのだわね時間が過ぎるのが
こないだ初詣行ったのにもう12月下旬なるし雪も積もり出すしではー年末(ガチ)って感じですわね