「・・・・・・来ないねえ」
「まぁ、時期が時期だものねぇ。さくらちゃんも、そんな仕事の準備なんて持って来ずに普通に休みでよかったのよ?」
今晩のアダムの林檎は開店休業状態。
何せ今は年が明けてから少し、客層の一部である学生が通う大学は冬休みから明けてもそろそろテスト期間、大人なお客さんは年末年始の出費や冷え込みもあってあまり出歩かずで、例年の傾向的にも客足は遠のくのはある意味予想通り・・・・・・と言うには予想よりも更に来てないけれど。何なら、店を休みにしても特に問題は無いくらいに。
「まぁ、一人で過ごしてても寂しいしねー
もし忙しくなっても入れるし、暇ならこうしてマギーちゃんとも過ごせるし、一石二鳥じゃん?」
それに────
「あら、『ヨノモリさんが来るかもしれないから』じゃないのかしら?」
「ぶふぉっ、げほ、げっほ!?」
内心、少しだけ思ってた事を不意打ちで言い当てられてしまって思わず咽せる。
「やだ大丈夫?はい、おしぼり。」
「ごほ、けほっ、すうー・・・・・・ふぅー・・・・・・ごめん、ありがと」
「・・・・・・で、図星かしら?」
貰ったばかりのあったかいおしぼりで顔を隠すようにぼふん、と覆い、呼吸じゃなくて今度は気持ちを落ち着ける為に深呼吸。
「・・・・・・私、そんなに分かりやすかった?」
「そうねぇ・・・・・・お店に来たら嬉しそうになる所とか、ちらちら視線を向けてたりする所とか、居なかったら居なかったでいつも零ちゃんが座ってる席をそわそわしながら見たりしてる所とか、他の人がそこに座ると──」
「待って待って!!そんなに分かりやすく出てたの私!?」
「あら、本当にそこまで気になってたの?」
「・・・・・・もしかして、カマかけられた?」
「さぁ、どうかしら♪」
はぁぁぁぁぁ、と思わずため息を吐きながらぐにゃりとテーブルに突っ伏して、畳んで置いておいたちょうど良い場所にあったおしぼりの上に頭をどすんと下ろす。ちょっと痛い。
「もう少し、自分の心に素直になってみてもいいんじゃないかしら?」
「素直に、かぁ・・・・・・」
「例えば、零ちゃんのどんな所が好きなの?」
「そうだなぁ・・・・・・存在?」
あら熱烈、と呟くマギーちゃんに視線を向けながらむくりと体を起こして、何本かボトルを取り出して計量したものをシェイカーに入れたマギーちゃんに視線を向けていると、マギーちゃんは流石の手慣れた手つきでシェイクを済ませた中身をカクテルグラスに注いで私の前に置く。
「はい、どうぞ。これはアタシの奢りね?
で、例えば零ちゃんのどんな所が好きなのかしら?」
「・・・・・・マギーちゃん、なんか妙にぐいぐい来てない?」
「いいじゃない、偶には♪
お客さんも居ないし、そんな話をしたい気分の日があってもいいでしょう?零ちゃんに直接言うわけじゃ無いんだし」
「んー・・・・・・?なんか引っかかるけど・・・・・・
そーだなぁ・・・・・・顔も声も名前もいいじゃん?髪も綺麗だし、身長もおっぱいもちっちゃいの可愛いし、それを気にしてダイバールックで盛ってるのも可愛いし、配信中とか格好良くしようとしてポロッとポンな感じになるのも可愛いし、あの足も不便はあるんだろうけど格好いいなぁって思うし、ガンプラ作るのも上手だから凄いと思うし、美人でスタイルいいからダイバールックで多少盛ってるのを差し引いても格好良くて綺麗だし、なんかこう小動物感あって甘やかしたくなるし甘えたりもしたいしいちゃいちゃしたいしえっちなこともしたいしそもそも一目惚れだったし・・・・・・」
「あらあら、本当にお熱ねぇ・・・・・・
そこまで大好きなら、告白してみようとか思わなかったの?」
「・・・・・・まぁ、何度も思いはしたけどさ。それで関係が壊れるかもしれないよりは、このままの方がいいなって」
マギーちゃんが奢り、と言って出してくれたカクテルグラスを手に取り、軽く揺らしてガラスの中で波打った鮮やかな緑色を眺め、これなんだっけかな、と思いながら口に運んで少しだけ飲む。
「・・・・・・モッキンバード?」
「ええ、ぴったりでしょう?貴女たちに♪」
「ぴったり・・・・・・?貴女たちって・・・・・・待って、もしかして」
「さ、出てらっしゃい?零ちゃん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの、ええと・・・・・・」
「はぁ"っ・・・・・・!!」
マギーちゃんに声をかけられてカウンターの向こうからゆっくり、ゆっくりと出て来たのは、顔を真っ赤にしている、今まさに話題に上がって、それでいて私が・・・・・・私が・・・・・・!!
「謀ったなマギーちゃん・・・・・・!!!!」
「だって、貴女達2人ともお互いの事が好きなのにお互いに怖がってるんだもの。そんなの何年も目の前で見せられ続けたら、お節介したくなると思わない?」
「う・・・・・・ん?お互い?」
「言ったでしょう?ぴったり、って♪
さて、そういうことだけど・・・・・・どうするかしら、零ちゃん?」
「・・・・・・マギーさんすみません、これ、少し頂きます」
ついさっき、マギーちゃんがモッキンバードを作るために使ったボトルを手に取って、ぐいっと呷る夜ノ森さ・・・・・・ん?
「ちょっと待って零ちゃん、それは・・・・・・!」
「ま、待った!そこまでお酒強い訳でもないのにテキーラをそのままボトルからなんて────!」
「んっ、んっ、んっ・・・・・・ぷは・・・・・・あ、これ、思ったよりキツ・・・・・・」
「んもう・・・・・・ダメよ、零ちゃん。お酒の力を借りられるのは大人の特権だけど、それでも無理な飲み方は良くないわよ?」
ふらり、と力が抜けたように倒れそうになった夜ノ森さんを受け止めたマギーちゃんが、そのまま私の隣まで連れて来て私の方を向くように椅子に夜ノ森さんを座らせてあげる。
「夜ノ森さん、大丈夫?マギーちゃん、早く水──」
「・・・・・・さくら、さん」
うつらうつら、ふらりふらりと椅子に座っていても頭が揺れている夜ノ森さんに呼ばれて、マギーちゃんに少しだけ向けていた視線を戻すと、彼女が私に向かって倒れ込んできた。
「あぶな・・・・・・」
「あなたのことが、すきです・・・・・・わたしと、つきあ・・・・・・て・・・・・・」
慌てて受け止めた時に途切れ途切れに聞こえたその言葉は、胸で抱き留めて無事に済んだ安心感も、経験が余りない抱き締めている感触も、全部吹っ飛ぶくらいの衝撃で。
「・・・・・・・・・・・・どうしよ、マギーちゃん」
嬉しさを感じるのと同時に、頭の中が真っ白になってしまったのだった。
確認はしてもらってる大丈夫朔紗奈が書いたものだよ!な感じで
もっとそれまでにやれる話あっただろとも思いつつ知ったことか書きたいのを書くぞお前の精神で行きますわよ