機動戦士ガンダムサンダーボルト、という作品がある。
大胆なアレンジやデザインの機体が登場し、雰囲気も含めて色々な意味で独特な事もあって、多少好みこそ分かれるだろうとは思うけれど、アニメ化やキット化するくらいには好評な作品のサンダーボルトは、勿論と言うか、GBNでもモチーフにしたエリアが存在していた。
その名も、『フリーバトルエリア:サンダーボルト宙域』。
サンダーボルトの最初の舞台として描かれた、コロニーのデブリという障害物の多い宙域であり──何を隠そう、宇宙のヴァルガとすら呼ばれる魔窟だったりもする。
見通しの悪いデブリ、時折発生する雷で行動が制限される上、サンダーボルトのジオン側の主人公、ダリル・ローレンツのように超長距離から狙撃をする変態スナイパーのダイバーも居る始末。噂では、雷でビームが曲がる事まで計算して狙撃するようなのまで居るとか居ないとか。
そんなサンダーボルト宙域にも、ヴァルガに出没する某名物上位ダイバーのような、このエリアと言ったら、と言われるダイバーが存在している。
《あ、あー、テステース》
そのダイバーを一目見てみようとフルドレスでこのサンダーボルト宙域にやって来ていた私は、そんなオープンチャンネルでの声が聞こえた瞬間に音量を一気に絞る。そして、
《Check it out!ルール無用で誰彼構わずぶっ飛ばしたくてたまらないMF共!!サンダーボルト放送局GBN支部の放送の時間よ!!
今日の放送もいつも通りこのあたし、DJ・CLがお届けするわ!!》
「うるっっっっさ!?音量これだけ絞っても普通に聞こえてくるって何!?」
思わず顔を顰めながらボリュームを更に下げていると、アナトの横をデブリまみれのエリアとは思えない速度で一瞬で駆け抜けていくサイコ・ザクベースの機影がチラリと視界に入り、遠ざかって行くごとに音声が小さくなっていくのを確認して少しだけ音量を戻す。
このクソデカオープンチャンネル音声の発生源でもあるその機体こそが、このサンダーボルト宙域の名物ダイバーの愛機。
自分が好きな曲とリクエストがあった曲を爆音で流し、マップの全てを理解しているとしか思えないギリギリを攻めた高速の変態機動でスナイパーに接近しては一撃で仕留めてそのまま離脱、或いはカウンタースナイプで消し飛ばす。そんな実力者の割に他のエリアで確認されない為、此処でしか実力を発揮出来ない変態なのではないかとすら噂される、通称「ライバルと乗る機体を間違えたイオ・フレミング」、「爆音テロリスト」、「1人赤ザク全部載せ女」、「雷よりも災害」────
『紅蓮の雷鳴』DJ・CL-ディージェイ・コル-。
ちなみに、キマってる二つ名に見えて、意味としては「サンダーボルト宙域の赤くて速くて五月蝿い奴」というだけとかなんとか。
《先ずはやっぱりこの曲──
サンダーボルトのメイン・テーマからいきましょう!!
No war no life!聞き惚れてぼんやりしてると、あたしのポイントになるわよ!!》
「さぁーて、お手並み拝見といこっかな?」
やや後方から追いかける形で飛んでいると、宣言通り流れ始めるサンダーボルトのメインテーマ。ドラムが鳴り始め、ベースとピアノが重なって行き、サックスとトランペットが鳴り響き始めた瞬間、突然回避行動のような動きを見せた。それに合わせて私も動かしてみると、
「うっそぉ・・・・・・反応なんて、どこにも・・・・・・」
さっきまでいた位置を、このエリアに因んだと思われる武装、ビッグガンと思われる狙撃が駆け抜けていった。
彼女の機体、情報によれば『サイコ・ザクウォーリアCL(コメットライトニング)』と言う名前の機体に視線を戻すと、急制動しながらバックパックにマウントしているガナーザクウォーリアの武装、オルトロスの改造品を手に取って構え、一瞬の機体が安定した瞬間に発射。その狙撃と言うには余りにも雑な射撃は、撃たれた射線をなぞるように突き進んで行き、そして
《Bull's Eye!!》
着弾したと思われる遠い位置に小さな爆発を確認した彼女はオルトロスをマウントし直して、サブアームを利用しバズーカに持ち替えて再度急発進。
《そこの見かけないバエルの改造機のリスナー!!
着いて来たいなら遅れないようにしないと、そのまま置いてくわよ!!》
「おっと、流石にバレてた。
でも・・・・・・そう言う事、言っちゃう?アナトに向かって?私とフルドレスのアナトの速さを舐めないで欲しいなぁー?
着いてくどころか、スコアまで追い抜いてあげようか?」
《んん〜〜っ!!ノリの良いリスナーね!!
他のリスナー!!あたしたちのポイントになりたくなければ逃げるか隠れるか、それとも逆に戦いを挑むか、好きな方を選びなさい!!
────音楽が聴こえたら、あたしが来た合図よ!!》
「どこにいても聴こえんだよ!!」と言うガラの悪そうな、でもノリの良いヴァルガ民ベースイメージのダイバー達の合唱が脳内で響いたたものの、それは無視。
「阿頼耶識発動、リミッター解除!フルドレスユニット、ヴォワチュール・リュミエール展開っ!
飛ばすよ、アナト!!」
《Let's party!!》
機動力に関わるものをフル稼働、スラスターも全開にして、少し前を飛んでいく紅蓮のザクを追いかける。けれど、速度は兎も角歴然なのはこのエリアへの理解度の差。
「追い、つけない・・・・・・っ!」
移動速度をほぼ落とさないままに最低限の動きでデブリを回避、移動しながら他の機体を撃破するサイコ・ザクウォーリアCLに対して、少しでも気を抜くとぶつかる気しかしなくて、着いていくだけでやっとの私。正直、5分もする前には抜かせる気がしなくなって来ていた。
《な、ァ!?》
「ラッキー、目の前っ!!」
《クソがぁ!そこの爆音イオ女といい、クソみたいな変態機動で飛びやがって!動くと当たらないだろ!!》
「汚い!それにソロの芋砂が文句言ってんじゃなーい!!」
偶然見つけた、迷彩色でデブリに紛れている135mm対艦ライフルを構えたゲム・カモフの狙撃用に改造した機体をすれ違い様に撃ち抜いてスコア1────
「なっ、わっ、ちょ、あぶな!?」
になった瞬間、目の前にデブリが迫ってることに気付いて慌てて緊急回避。
《甘い甘い!!そんなんじゃあたしに追い付くなんて300年早いわよ、バエルのリスナー!!》
「なんの、まだまだぁ!」
とは言ったものの、今の回避運動のせいで距離は余計に離されてしまっているのが現実。
これは撃墜数を気にしてたら離される一方だなぁ、と思考を切り替え、追う事だけに集中する事にして、軽めに深呼吸。
「────よし」
アクセルはもうベタ踏み、速度だけ見れば十分。理解度の差は、回避行動を出来るだけギリギリに攻めることで埋めるしかない。
一瞬擦る程度なら無視、デブリに引っかかるとタイムロスになるからそれだけは気を付けて、バエルソードとビームライフルはデッドウェイトになるから投げ捨てるようにして放棄。
《ワォ、初めてにしてはクレイジーなコース取りじゃない!!でも、いいのかしら!!?スコアを稼げないとあたしには勝てないわよ!!》
「いーの!!」
このエリアにおいては少なくとも、勝つ勝てないの土俵には立ててないのは分かった。でも、それならせめて食らいつき続けるくらいはしたい。
昔の、ブロッサムの頃のインプット中以来なんじゃないかってくらいに目の前を先行する赤いザクに集中しながら、攻撃以外の挙動に近い動きに少しずつ真似をしていく。
追い付けないけど、追い付いてないからこそ出来る一種の見取り稽古。
コスプレの為の画面を見つめてのインプットとは違ってほぼリアルタイムで、しかも形の違う機体で挙動を寄せるのはもうめちゃくちゃに頭が疲れるけど、そこはもう気合いと意地で続ける。
《へぇ、よくついて来るじゃない!!》
なんて言葉にこっちは軽口を返す余裕も無いのに、目の前の機体は碌に見もせずにサブアームだけで狙いを付けてシュツルム・ファウストを発射、芋砂をまた一機撃墜。
控えめに言って意味が分からないレベルだし普段なら拍手ものだけど、今はそっちに思考を割くだけノイズになるから構ってられない。
そして、少しずつ距離が詰まり、擦る回数も減って行く頃には、アナトは擦り傷塗れなのにサイコザク・ウォーリアCLは無傷で撃墜スコアが二桁に乗る、なんて差が付いた頃。
《気を付けなさい、バエルのリスナー!!》
ノイズになるから、とBGMくらいに聞き流していた声が言った内容が理解出来なかったタイミングで、今までに無かった急角度での方向転換をされて視界から居なくなった。
「──っ、な!?」
集中していた意識が引き戻されて周りを見回すと、そこは妙に開けた位置。
「まず・・・・・・っ!」
それに気付いてグッとザクが消えた方向に急いで向けようとした瞬間、四方八方から飛んで来るビームと実弾の狙撃に晒されて────
「ちょ、まっ!?」
その狙撃の嵐に、意識を引かれたのがとどめだった。
「・・・・・・あ」
目の前に壁が現れたのに気づいた時にはもう手遅れで、勢いのままに激突。
ガツン、と強い衝撃で強制的に動きが止まったアナトを、このディメンションで芋砂をし続けている歴戦のスナイパーが見落とす訳もなくて。
《──Good game!》
「──で、狙撃の嵐にそのまま呑まれて、どかーん!てねー・・・・・・
いやー、ほんと凄かった。コルちゃんもマップもスナイパー達も」
コメント
:あそこの連中、ヴァルガに似てるようでヤバさの方向性が違うからなぁ・・・・・・
:知ってるか?サンダーボルト宙域のヤバい連中は三つに分けられる。各地に散らばる変態精度芋砂、デブリの間を飛び回る変態高速機動機体、高速機動変態精度狙撃騒音女、この3つだ
:1人だけ別カテゴリに分けられてるの草
:行ってみれば分かる、マジでアイツだけ群を抜いてヤバいしヤバすぎて名物ダイバーになるレベルの奴だから
:ヤバい・・・・・・名物ダイバー・・・・・・ウッ
「あれはあれで結構楽しかったけどねー
みんなも行ってみない?芋砂掘りとか」
コメント
:悠長に探してる間にコックピットぶち抜かれるんよ
:宇宙だし上下がないから余計になぁ
:控えめに言って一年戦争のモブジム乗りの気持ちを味わえるゾ
:狙撃される、じゃなくてコックピットぶち抜かれるって言うのがもう段階をいくつか飛ばしてるんだよなぁ・・・・・・
:ン狙撃ッ
:狙撃・・・・・・ウッ
:さっきからトラウマ抱えてる奴おるな??
「だーいじょうぶだって、多分案外何とかなるから」
割と適当に言ったけど、何とかなるかぁ!!ってコメントが大量に流れてるのを見てそりゃそうだ、と思い直す。
でも、案外最高速でただただ機体を振り回すのも久し振りで結構楽しかったのも事実な訳で。
「まぁでも、デブリ帯でのマニューバの練習には良いんじゃない?大分荒療治だけど。
偶にはああいうのも楽しーよ?」
なんて言って、あのディメンションでの話題は締める事にした。
ちなみに後日、コルちゃんのキルスコアが以前に比べて増えたとかなんとか。
DJ・CL
ダリル、ジョニー、シャア、ルナマリアの頭文字が名前の由来。
キャラクリエイトで義肢を装着しないといけない事や、恩恵がMFと近しい事、ハイパー化が出来ない事からイマイチ人気が無いPRD使いである事、スピード狂の気がある事、オープンチャンネルでクソデカ音量で音楽を流しながら宇宙をカッ飛ばして行く事から良くも悪くも有名となり、誰が呼んだか『紅蓮の雷鳴』と呼ばれている。速くてうるさい。本人は気に入っている。
赤いザクとその活躍が好き、というのが高じて、HGサイコ・ザクをベースにka版を参考にして大型ブースターの増設等の改造、その上で更に機動性、火力を求めて作り上げた機体。
突貫から超高火力を瞬間的に叩き込み離脱する、という戦術を得意とする。
基本はサイコ・ザクとザクウォーリアのミキシングで、スパイク部分を黄色に染めたザクウォーリアのシールドを両肩に装着して防御性能を高め、ビーム・バズーカも装備している。
ドッズ効果を発揮できるよう改造を施したオルトロスをバックパックにマウントしている。
また、このバックパックはCLウィザードと名付けており、ウィザードシステムのコネクタを採用しているので、他のウィザードを用意すれば付け替えが可能。