気が付いたら最後のあたり少しシリアス入ってたよ
書いてるうちに新しい設定が浮かんだりらじばんだりしたので軌道修正とかしたりしなかったりしながら書いてる
クオンちゃん様が名前と話題出てるけど御本人は登場しないよ
『ーーそれでは良き終末を!』
「んー……んー……?」
「あらチェリーちゃん、動画?お酒も飲まずに、珍しいわね」
「ん、ちょっとねー」
私も仮にもG-tuberデビューした身。
人気のある先達のG-tuber達のアーカイブを見てちょっと参考にしたり勉強しようと思い立って、最近ちょいちょい見ている私は、今日も今日とてトップ画面で表示されていた動画を開いていた。
そのアーカイブの配信者は、ダイバーネーム『クオン』。フォース『エターナル・ダークネス』のリーダーを務めており、GBNにおいて個人ランク二桁後半という、マギーちゃんやタイちゃん、シャッフィーのような私の友人達よりは下ではあるものの、所謂トップランカーと呼ばれるような類のダイバーだ。……いやまぁ、比較対象のメンツが悪いんだけど。
『La Rencontre』の常連のようで、一緒に座った事は無いものの、偶にすれ違いで見たことがあったのをサムネイルを見た時に思い出し、試しに、と選んでみた訳である。
配信の内容としては主にお散歩配信をしているようで、ハロカメラを足元で追従させる事で視聴者にも足元とはいえ一緒に歩いているような感覚を味わえるようなその配信の方法は、こんな感じだよね、と普通に使っていた私には目から鱗。とても参考になった。
あとスレンダーで綺麗なスタイルに黒のドレス着てるのエッチだし、偶に完全には振り返らずにこっち見るときの赤と黄色の舐めたいくらい綺麗なオッドアイの流し目もエッチ。とても素晴らしい。最&高。びゅーてぃふぉー。
まあそれはともかくとして。
「マギーちゃんマギーちゃん、この子なんだけどさ」
「何かしら?あら、クオンちゃんの動画見てたのね。クオンちゃんがどうかした?」
「知ってたらでいいんだけどさー
ーー私、この子に会ったこと無い?」
マギーちゃんはきょとん、とした表情になって、
「そうねぇ、覚えてる限りでは一緒のタイミングでここにいた事は無いと思うけれど……可能性があるとしたら、開店祝いでみんなが来てくれた日かしら?」
一緒のタイミングで『ここに』いたことは。……ふむ?
「ふんふん、なるほどなるほど。じゃあ……」
カウンターを飛び越えて軽く脚を組むようにしてカウンターに腰掛け、マギーちゃんの頬に手を添えて、顔を背けて誤魔化せないようにしながら、もう一度訊ねる。
「リアルのお店で、会ったことはあるって事?」
「やだ、チェリーちゃん格好いい……」
「何なら男装してやってあげようか?
マギーちゃんの為なら、GBNでたーくさんコスプレしてきた経験活かして、身長から何から変更してコスプレして来てあ・げ・る♡
ミゲルの緑服とかどーぉ……?」
「凄く見てみたい……け・ど、カウンターに腰掛けるのはお行儀悪いからダメよ?」
「にゃぁっ!?ちょ、ちょちょちょマギーちゃん!?!?」
押せ押せでマギーちゃんを揺さぶりつつ聞き出そうとしたものの、お姫様抱っこで掬い上げるように持ち上げられてしまい、逆に私の方が顔は赤くなるわ動揺するわで一瞬で完全敗北。流石の『マギーお姉さん』だった。
「マギーちゃんほんとすき……包容力ヤバすぎだよぉ……結婚しよ……」
「はいはい、椅子に降ろすわよー?」
「やぁー、このままがいぃー……」
「クオンちゃんの事少し教えてあげるから、私の首に回してる腕離してとりあえず降りましょ?ね?」
「う〜……聞きたい、けど殆ど確認みたいなものだし……」
周り、というか店内に他の人が居ないことを確認して、念のためにマギーちゃんの耳元で囁くような声で訊ねる。
「……多分ヨノモリさん、でしょ?」
「あら、本当に気付いてたの?」
「なんて言うか、配信見てたら何となく。
背が高かったり、角とか翼とか尻尾とか付いてるけど、なんて言うのかな、匂い?雰囲気?そんな感じで。
話し方も偶に素が漏れてるから、多分そうだなーって」
「よく見てるのねぇ……」
「クオンちゃん美少女だからね!
それに、リアルでも何度も見てるし。流石に確信まではいかないにしても、察するくらいなら割とーー
ん、ごめん、降りるね」
そんな事を言っていると、入り口のドアの向こうにちらりと人影が見えた。
お客さんが誰も居ないから少しわがままを言って甘えさせてもらっていただけで、流石に人が居る状態でここまでのことをするつもりは無い。邪魔しやがって、とは思うけれど、それはそれなのだ。
元座っていた椅子に戻り、何もありませんでしたよと言わんばかりにしれっとした表情を繕って、まだ飲み切っていなかったグラスに残っている烏龍茶を一口飲む。
「やあ、マギー。調子はどうだい?」
「あら、ロンちゃん!いらっしゃぁーい!」
「ロンちゃんだぁーーーーっ!!!!
モフっていいよねモフる答えは聞いてない!!!!」
「おっとと、直接会うのは久しぶりだね、あー……と、チェリーくん。元気そうで何よりだ」
「うんうん久しぶり久しぶり!!
相変わらずモフモフで気持ちいいなぁロンちゃんお持ち帰りしていい?」
「はっはっは、撫でるのは構わないがそれは困ってしまうなぁ」
やって来たのは、一言で表すなら軍服を来て二本足で歩く、ええ声のフェレット。しかしその実力は、『あの』チャンピオンと張り合うほどで、ことフォース戦での戦術の緻密さと言ったら『智将』とすら言われるほどの人物。
個人ランクワールド2位、フォースランキング2位『第七機甲師団』隊長、ロンメル。
そして私とマギーちゃんからの呼び名はロンちゃんである。
「はぁぁぁぁぁぁぁロンちゃんモフモフかわいいかよぉぉぉぉぉぉぉ……
ロンちゃんハイここ、抱っこするから膝の上ね!私しばらくロンちゃん吸いするから!」
「お手柔らかに頼むよ」
ロンちゃんを抱きかかえて椅子に座り直し、スゥゥゥゥゥゥゥゥゥと吸ってもロンちゃんはどこ吹く風(諦めているとも言う)とマギーちゃんにウィスキーをロックで注文。
「そういえばチェリー君、君の『高嶺の花嫁』に挑戦してみたが……いや参った。エクストラでは一度失敗してしまったよ。2度目は何とか上手くいったが、あの必殺技がやはり凄まじいな。
しかし、あのイージーからハードは実に良い調整がされている。ウチの下部フォースでのカリキュラムにも入れるか検討しているところでね」
「スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
「うん、聞いていないね?」
「ぷへぁ……合法電子ドラッグだよこんなの……
だいじょぶ、聞いてる聞いてる。ミッション説明にも書いてる通り、練習用に作ったやつだしね、思いっきり使って良いよ!」
「ああ、そうさせてもらうとしよ「スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」……そうさせてもらうとしよう」
ぷへぁ、ともう一度吐き出したところで、からん、と氷を鳴らしながらウィスキーを一口飲んだロンちゃんに声をかける。
「あ、そうだ。ねえねえキャプテン・ジオン」
「なん……の、事かなチェリー君」
普通に返事をしそうになって軽くつっかえるロンちゃん。分かりやすいなぁ、と思いながら、モフる手は止めずに続けていく。
「駄目だよー?隠すならちゃんと隠さなきゃ。さっき見てみたけど、声もあんま変えてないじゃん?」
「……まぁ、確信されてるならこれ以上隠す必要もないか。
そうか、分かりやすいのか……」
「あんまり気にしなくていいと思うわよ?
本人を知ってるからって、一回見ただけでロンちゃんだって分かるのなんてチェリーちゃんくらいだと思うもの。それに、気付いたとしても特撮ヒーローみたいに、中の人を知ってるけど見てる、みたいな層もいるんじゃないかしら。
そう考えると、悪いものでもないんじゃない?」
尻尾が若干しゅんとしている様子のロンちゃんを見てフォローを入れてくれたマギーちゃんに内心感謝しつつ、やらかした本人の私も続ける。
「あー、確かにそうかも。
私はまあほら、ロンちゃん達は知っての通りそういうのやるならガッツリ変えるからその辺の感覚の違いもあった。
ごめんねロンちゃん」
「いや、貴重な意見だった。感謝するよチェリー君。
どうにも、このくらいの立場まで来るとこういった意見を直接貰うことは少なくてね」
「大人だなぁロンちゃん……こんなモフ可愛いのに……かっこかわいい……」
「まぁ、あの格好は君に触発された部分もあるからね。先達からの意見は参考にするものだろう?」
「……ぇ?」
思わず、思考が止まった。
「あら、そうだったの?」
「そうとも。
GBNだからこそ出来る、あの自由自在にガンダム作品のキャラクター達へと姿を変え続け、その為に全力で努力し続ける在り方。それもまた、GBNを愛している者として尊敬に値するーー」
「そんな事無いよ
尊敬に値するなんて、そんな事、無い」
思った以上に冷えた声が出て、
「……チェリー君?」
「……っ、ごめんロンちゃん、今日は落ちるね。少し頭落ち着かせて来る。
マギーちゃんも、ごめん。明日までには元に戻るから」
「……ええ、待ってるわね」
ロンちゃんを抱いたまま立ち上がり、座っていた椅子に座らせた後はメニューを操作、ボタンを押してその場から逃げるようにログアウトした。
情緒不安定かな?って書いてて思ったよね(
次はまた元のテンションに戻ると思いたいね