仮面ライダートライズ   作:ちくわぶみん

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第3話「我は制裁代理人」

 もうすぐ昼になろうとする頃、翔琉は店先を掃除していた。外は雲一つのない青空だ。

 

「うーん…。どうにもこの看板外してぇが、もう覚悟は決まってるしなぁ…」

 

翔琉はふと目に入った何でも屋の看板を見て若干意気消沈しかけるが、すでに覚悟を決めて掃除を再開する。

すると、眼前に紺のインサイトの覆面パトカーが停車する。そこから降りてきたのは、この前の現場にいた刑事の樹だった。

 

「こんにちは~って、アレ?あの時の何でも屋さん!?」

「あ、あの時の刑事さん!なんでこんなところに?」

「昨晩、この付近で奇妙な事件がありまして、聞き込み調査のためにこちらに…」

「奇妙な事件…?」

 

 

 

第3話「我は制裁代理人」 

 

 

 

 奇妙な事件。その樹の言葉が気にかかった翔琉は、店の中で樹の話を聞くことにした。店の主である正樹もそれに加わった

 

「それで、その奇妙な事件って一体なんです?」

「早い話が、傷害事件なんです」

「「傷害事件…?」」

「えぇ。日曜日の深夜に芝倉地区の国道を走っていた暴走族が何者かの襲撃を受けて。現場近くの工場の監視カメラから、バイクを粉々にした後に人影がものすごいスピードでこっちの方面に逃げていくのが目撃されたんです。」

「バイクを粉々…少なくとも人間がなせる業ではないな…」

「うーん…。その頃俺たちの寝ていてよくわからなくて…。力になれなくてすいません…」

 

翔琉は申し訳なさそうに樹に謝った。

 

「いえいえ…。そうだ、せっかくだから、これとこれ買っていっていいですか?」

「おう、合わせて52円」

「はい。あ、レシート大丈夫です。ご協力ありがとうございました」

 

樹は駄菓子を2つほど買った。

 

「絶対に捕える…。絶対に」

 

そう呟きながら店を出ていき、インサイトに乗り込み。駄菓子屋を後にした。

「オヤジさん…」

「あぁ、あの刑事さんの話。ドーグの仕業で間違いねぇな…。」

 

樹が去った店内。2人はドーグの仕業であるとにらんでいた。

 

「それに、あの刑事さん。とんでもないもの抱えてそうな気がするしなぁ…」

 

 

 

「やっほー」

 

それから2時間ほど経過した頃、まるで顔なじみかのように涼葉が駄菓子屋の中にあるガレージに入ってくる。

だが、それを気にせずに翔琉はボチョークでボードに何かを書き。マヒロはタブレット端末を操作して何かを調べている。

 

「どう?何か依頼があった?何でも屋さ~ん?」

 

涼葉はチョークで単語を並べている翔琉に再び声をかけた。

 

「あるわけねぇだろ。ったく、こちとらドーグがまた暴れてるってのに…」

「またドーグが?…って、何単語羅列しているの?この前も思ったけど…」

 

涼葉がボードを見ると、「芝倉地区」「国道」「暴走族→オヤジさんの話だとあの周辺はエンドリーマーの縄張り」「族同士の抗争?」などの単語が並べられていた。

 

「あ、これか?なんだろう。文字を羅列していたらマヒロがそれを整理して情報を導きだしてくれるんだ。そのためにやってるんだ」

「へえ~…って、文字から察すると昨晩、芝倉地区の国道で起きた暴走族襲撃の事件でしょ?記事はおろか警察の発表もないのになんで2人知ってるの!?」

「あー。それは…」

 

翔琉は先ほど、樹が来た事と、事件の内容について涼葉に話した。

 

「なるほどね。この方面にドーグが逃げていったと。そのメカで何とかならないの?それって」

 

涼葉はふとした疑問を翔琉にぶつけた。そのメカというのはカメンデバイザーの事である。

 

「そのカメンデバイザーはあくまで変身用と解析用のデバイス。ドーグの発見器なんかじゃないから」

 

と、マヒロはタブレットを操作しながら涼葉の疑問に答えた。

 

「なるほど、ちょっと不便すぎるね…」

「まぁな。ところであの現場でも樹って刑事と顔なじみだったんだけど、知り合いなのか?」

「深津警部?私の高校の同級生。しかも3年連続生徒会に在籍して3年生では生徒会長やっていた人。普段も素行が悪い生徒とかも容赦なく指導していたからね…。それでついたあだ名が『鬼の樹』」

「ハハハハ。なんか分かる。すごい生真面目な刑事って感じしていたしな」

「おねーさんの友達の刑事さんの話で絶賛盛り上がってる中悪いけど、なんか結びつきそうなサイト見つけたよ」

 

マヒロはあるサイトを表示したタブレット端末を翔琉に見せる。

 

「『制裁代理人・Dr.レンチの正義執行室』…?」

「うわぁ……。いかにもなアングラのサイト。時代錯誤も甚だしくない?」

 

翔琉はタブレット端末を操作して、『依頼掲示板』と呼ばれるページを開いた。

いくらかスクロールしていくうちに、翔琉のスクロールの指が止まった。

 

「もしかするとこれか?『出来るのなら、芝倉地区にいるエンドリーマーをやっつけてほしい。何が旧車会だ。所詮近所迷惑だ。』…。書き込みは今日から2日前か」

「ってなると、昨晩襲撃が起こせるのも合点がいくね。恐らくここの書き込みと一致する事件があるかも。新聞社に戻ってアーカイブ調べてくるね」

「おう、頼んだ。こっちからも色々当たってみるわ」

 

翔琉たちは、事件捜査の行動を始めた。

 

 

 

 ほぼ時を同じくして、岩積地区の築半世紀のアパート。その部屋の一室で20代後半の男が机にあるパソコンの画面を見ていた。

 

「エンドリーマーの制裁完了…と。次の依頼は…これか」

 

男は書き込みを見る。そこには『七浦工業の木宮Mgめ。部下に終業後の対応押し付けて自分だけ帰りやがって…。レンチさん、ソイツをぶちのめしてくれ』とあった。

 

「依頼受託…と。さーて、覚悟してもらおうかぁ?」

 

男はそう言うと、場所を特定しだした。パソコンのある机には『WRENCH』と刻まれたドーグチャージャーが置いてあった…。

 

 

「そっちは進展あったか?」

 

 夕方、芝倉地区の商店街にて聞き込みを終えた翔琉は、通話で新聞社に戻った涼葉と連絡をとった。

 

『デスクにも聞いてみたんだけど、似たような事件が最近多発していたみたい。マヒロくんから貰った以来の中にあった人達の殆ども書き込みの数時間から数日後の間に何者かの襲撃に遭ってるとみて間違いないかも。そっちは?』

「酒屋さんのご主人の息子が、残業から帰るときに人影が南に向かって走っているのを見かけたとか。それしか情報は見いだせなかった。もうちっと情報集まったら連絡する。またな」

 

そう言うと翔琉は通話を切り、商店街を抜けると、樹とばったり再開した。

 

「あれ?さっきの何でも屋さん。どうしてここに?」

「あ…。いや、ちょうど買い出しに出かけようかなぁと思っていたんですが、お店が定休日なこと忘れてて…」

 

翔琉は刑事である樹に詮索させないように何とか誤魔化した。

 

「そうなんですか。それは大変でしたね…」

「刑事さんは、昼間からずっと聞き込みに?」

「えぇ、事件発生とされる時間帯が深夜というのと、そんなに車どおりが少なかったのもあって、あんまり証言と言える証言は集められずに1日が終わりそうな気がしますね…」

「お疲れさんです…」

 

翔琉は自動販売機で缶コーヒーを2つ買い、そのうちの1つを樹に渡した。

 

「あ、すみません貰っちゃって」

「警察官の仕事って大変なの、俺も知ってるんで」

「あれ?ってことは一回……」

「警察官になろうと思ってて、だけど警察学校落ちて…」

「そうだったんですか。それであの何でも屋を?」

「あながち間違いでもないんすよね。警察官じゃなくてもいいから誰かのためになりたいって思ってこの稼業始めたようなものなんで。そういや、刑事さんはなんで警察官なんかに?」

「僕ですか?それは……」

 

話を遮るかのように、樹の覆面パトカーから通信受信音が聞こえる。樹はすかさず無線機を取った。

 

「はい。こちら302」

『本部から301、新見地区の工業団地内の七浦工業の倉庫にて襲撃事件の通報あり。マル被は覆面に全身プロテクターのようなものを装備し、武装し立て籠もっている模様。至急向かってください』

「302、了解」

「何か事件が…?」

「えぇ、コーヒーごちそうさまでした。また会ったらお代の方払うので、それではまた!」

 

樹は覆面パトカーに乗り込み、去っていった。

 

「七浦工業に覆面に全身プロテクター…まさか!」

 

通信の内容を少し聞いていた翔琉は、カメンデバイザーを取り出し、ベルトを起動し、ベルト横のカメンチャージャーをセット。

 

[トライズドライバー・スタートアップ!]

[1号!・クウガ!・ゼロワン!カメントライズ!]

「ヘンな予感が当たりませんように!」

 

停車してあったCRF250に乗り込み、発進。

ある程度速度が回ってきたタイミングで、デバイザーをベルトにセット。

 

「変身!」

[うなれ正義の必殺キック!ライジングジェネレーション!!]

 

翔琉はトライズに変身。変身信号を受けたCRF250も、サイクライズチェイサーに変形し、一目散に現場へと向かった。

 

 

 

 それから数分経過して、樹は現場に到着した。

 

「宮内さん、状況は?」

「まだ建物内部に作業員が数名残っている。1分後に突入予定だ。行けるか?深津」

「はい、人を守り、悪人を裁くのが俺たち警察の役目ですからね」

「裁くんじゃなくて、捉えるだけなんだがなぁ…」

 

樹の先輩刑事の宮内淳はそう呟きながらも、突入口である裏口に身を潜めた。

 

「16時28分、突入開始!」

 

淳のその言葉を合図に淳や樹をはじめとした刑事や警官たちが突入を開始する。

 

「なんだ!?あれは…」

 

そこで樹たちが目にした光景は、レンチドーグが右手のモンキーレンチのようなアームで男性の首を持ち上げている光景だった。

周囲の機械類はレンチドーグが破壊したのか、ぼこぼこに凹んでいた。

樹は目の前の光景を疑ったが、すかさずホルスターから拳銃を取り出し発砲した。

しかし、それはレンチドーグにとっては痛くも痒くもない攻撃だった。

 

「ケーサツもオレの正義の執行を邪魔するつもりかぁ!!」

 

レンチドーグは、締め上げていた男を投げ飛ばし、標的を樹に変えた。

樹も再び拳銃を発砲するが、レンチドーグには全く効かない。

この時、樹の脳内には死が過った。

 

「父さん、母さん。ゴメン……」

 

その時だった。

サイクライズチェイサーに跨ったトライズが壁を突き破り現れたのだ。

トライズはそのままレンチドーグをはね飛ばす。

 

「勇敢過ぎても殉職が待ってるだけだぞ?刑事さん」

「あんたは…?」

 

トライズはサイクライズチェイサーを降りて、レンチドーグを向く。

 

「その腕見るに、レンチのドーグチャージャーか。それで正義の味方面していろんなヤツの生活をバラバラにしたってわけか」

「貴様っ…ディーラーが言っていた仮面ライダーか!」

「あぁ、その通りだ!」

 

トライズは跳躍パンチで一気にレンチドーグに接近、ストレートをレンチドーグのどてっ腹に叩き込む。

怯んだ隙に追い打ちの回し蹴りをレンチドーグの頭部側面に当てる。

 

「このっ…!」

 

レンチドーグは右腕のモンキーレンチでトライズをひっ叩く。あまりの威力にトライズはよろめく。

 

「やるじゃねぇか!だったらこっちも!!」

 

デバイザーを引き抜き、1号・クウガ・ゼロワンのカメンチャージャーを取り外し、BLACK・J・アギトのカメンチャージャーに入れ替え、デバイザーにセットした。

 

[BLACK!・J!・アギト!カメントライズ!]

[叩け大地の鉄腕ナックル!!グランディックパワード!]

 

トライズはグランディックパワードへと姿を変え、レンチドーグに強力な蹴りとパンチの連撃を打ち込んだ。

 

「こうなれば…!」

 

レンチドーグは右腕のモンキーレンチの顎を開き、キャノン砲を展開。そのエネルギー弾をなんと、先ほどの男性を介抱している樹たち警官に向かって発射した。

 

「あんなのありかよ!」

[チャージングバースト!]

トライズは駆け出し、必殺状態に移行。樹たち前に立つ。

 

「パワードジャッジメント!」

頭部のクロスホーンが展開し、両拳にエネルギーが集中。エネルギー弾を拳で弾き返し、トライズの眼前で爆発した。

爆炎が晴れると、そこにはレンチドーグの姿は消えていた。

 

「逃がしたか…。だが、悲惨な結果を回避できただけで上出来か…」

 

トライズは男性が救急車に運ばれていく光景を見てそう呟いた。

 

 

「全く、危ないところでしたねぇ。金光さま」

「申し訳ねぇ……」

 

 そう離れていない倉庫内、逃げたと思われたレンチドーグは、全身に盾のような装甲を纏ったドーグに平謝りをしていた。どうやらこのドーグの援助がありレンチドーグは命からがら助かったようだ。

 

「あくまでサービスの一環です。契約した顧客を守るのがディーラーの務めですから」

 

盾の装甲のドーグは変身を解き。黒いスーツを身に纏った男に戻った。

レンチドーグも金光という男の姿に戻る。

 

「それでは私はこの辺で。良き未来を…」

 

男はそう言うと金光の許から離れた。

 

「トライズ…。やはりアレは私の盾の餌食に相応しい……!!」

 

男の手には「SHIELD」と刻印された端子が金のドーグチャージャーが納まっていた。

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