逝くぜ!
⤵
★羽沢珈琲店
「……いよいよだね」
とある店の一角で、5人の少女達がいた。
「……皆んな、準備はできてる?」
テーブルには5人分のカップとスイーツが並んでおり、その真ん中に1枚の紙が置いてある。
「アタシは準備バッチリだぜ」
「わ、私は少し心配なところがあるかも……」
「モカちゃんはバッチリだよ〜」
「私もバッチリだよ!……多分」
その紙のタイトルはデカデカとこう書かれていた。
「今日実行するのは、前々から計画していた案─────
“士郎さんにあたし達のライブを楽しんでもらう会”を実行します」
ゴールデンウィーク2日目 天候:晴れ
「なぁ……前々から思ってたけどタイトル変えないか?」
「えぇー!いいじゃん!」
巴の発言にひまりが席を立ち、抗議する。
「こうゆうシンプルなタイトルって何かイイ感じじゃない!?」
「あたしは長いと思いま〜す」
「つ、つぐなら分かってくれるよね!?」
「え!?わ、私はー、えっと……」
つぐみはそのまま顔を逸らし、黙り込んだ。
「ら、蘭なら分かってくれるよね!?」
「タイトルはこの際どっちでもいいけど」
「ひど!?」
蘭に話を振るが、冷たくあしらわれひまりはショックを受け、そのまま隣の巴に泣き付いた。
「それで話を戻すんだけど……」
蘭がそう言うと4人は真剣な面持ちで話を聞き入る。
「本来は昨日行う予定だったけど、士郎さんに予定があって出来なかったけど今日は暇って聞いたから」
「で、その肝心の士郎さんは?」
「あたし達よりも遅い時間に来てもらうように伝えた」
「あと何分位で来そう?」
蘭はスマホの時間を確認する。
「多分もう家を出てこっちに向かってると思う」
「もうそんな時間でしたか〜」
「じゃあアタシとつぐで先にCiRCLEに行って準備してくる」
「任せたよ!」
「お母さん、行ってくるねー!」
巴とつぐみは店を出て行き、CiRCLE方面へ向かって行った。その数分後に入れ違いで士郎が店に入店してくる。
「ごめん、待たせたか?」
「そんな事ないですよ」
士郎はいつものジャージ姿で店に訪れていた。何となく士郎がいつものジャージ服で来ることが予想出来てた3人は顔見合せて笑みをこぼしていた。それを不思議そうに見てる士郎を置いて
「今日呼ばれた理由って何だ?」
「実は士郎さんに折り入ってお願いがありまして」
「お願い?」
「シローさんにあたし達のバンドを見て欲しいんだよ〜」
「バンドを?」
「そう!私達のバンドを見て感想とかくれたら万々歳!」
「別にいいけど、俺あんまり音楽聞かないから対した感想は言えないぞ?」
「大丈夫です、ただ今日はあたし達のバンドを見て欲しいだけです」
「俺何かで良ければ」
士郎は笑みを浮かべながら、応える。
「じゃあ早速CiRCLEへレッツゴー!」
ひまりの掛け声と共に士郎達は店を出て、CiRCLEへと向かった。
★CiRCLE
「お、やっとお出ましか」
「おぉ、巴か。もうこっちにいたんだな」
「あぁ、話は蘭達から聞いただろ?だから楽器とか下準備等を先にしていたんだ」
「なるほど、つぐみも巴と一緒に準備か?」
「はい!士郎さんを迎える人はそんなに多くなくてもいいかなって思って」
士郎が納得していると、受付の方から見知った顔をした人が姿を現した。
「やっほー、士郎君」
「まりなさん、こんにちは」
まりなはニヤニヤしながら、士郎に近付き話し掛ける。
「聞いたよ?今日はAfterglowのメンバーのバンドを見るそうじゃない」
「え?ええ、そうですね」
「君、これがどれだけ凄い事かわかってる?」
まりなに言われてる事がまだ理解出来ず、頭を傾げる士郎。更に近くにいる蘭達も何の話か分からず頭に?を浮かべていた。
しかし、彼女の次の発言でAfterglowのメンバーの心に火を付ける事になる
「今有名なバンドグループの演奏を独占で見れるのよ?昨日はPoppin’Partyで今日はAfterglowでしょ?ファンが聞いたら、羨ましがられて大変な目に合うわよ?」
『!?』
「そこまでですか……?」
「彼女達の人気を舐めてるの?」
「舐めてるつもりはないんですが……」
かぁ〜、と声を上げながら士郎の背中をバシバシ叩き始める。
「恐れ入ったよ!君の人望には!この前だってRoseliaのメンバーと楽しそうに会話してたしね!」
「確かに彼女達と話はしてましたけど、あれは料理の感想を聞いてただけですし」
と、他愛のない会話をしていると後ろから何やら鋭い視線が刺さっているのを感じ、振り返りそして後悔した。
「……士郎さん、昨日の用事って」
「あ、あぁ、えっとポピパ?の子達が聴いて欲しいって言われてそれで」
「シローさんが取られちゃった〜、シクシク」
「お、おい!泣き真似はやめろって」
「私達がいながらポピパの方へ行っちゃうなんて!」
「ちょ、言い方!」
「アハハハ!士郎さんが困ってる所悪いけど、この光景結構面白い」
「なんでさ!?」
「士郎さん……」
「やめてくれ!つぐみのは精神的にもダメージが入るから!」
誰からも助けの手をくれず、1人重い足取りでスタジオに入って行く士郎だった。
「まさかポピパのメンバーに先越されていたなんてね」
「音楽をあまり聞かない士郎さんだからこそ、聞いてもらったのかまたは、もっと別の感情で聞いてもらったのか」
「べ、別の感情って?」
「つぐとひーちゃんにはまだ早いお話ですね〜」
「ちょモカ!?私を子供扱いしてない!?」
「待って!?何で私も含まれてるの!?」
「気の所為だよ〜」
「「それ絶対気の所為じゃなーい!!」」
逃げるモカに追いかけるつぐみとひまりを見ていた蘭に巴が語り掛ける。
「じゃあアタシ達はどうしますか?」
「そんなの決まってる」
蘭が喋り出すと追いかけっこしていた3人が動きを止め、蘭の方へ見やる。
「“いつも通り”やっていこう」
その言葉を聞き、4人は笑いながらそれぞれの楽器を持ち、スタジオに入って行く。
士郎は椅子に座り、楽しみに待っていた。
「Afterglowです。今日は士郎さんにあたし達のバンドを楽しんで貰えるようにいつも通り頑張ります。よろしくお願いします」
蘭がそう言うと、一瞬スタジオが静寂に包まれる。そこに巴のバチが静寂を切り、演奏の合図を鳴らす。
Afterglowとは、彼女達が変わりゆく環境の中、5人でいつも一緒にいられる場所として結成されたバンドグループで、いつも集まって練習する時間が放課後───つまり夕方なのでバンド名に夕焼けという言葉を入れたら何時でも思い出せるといった意味で『Afterglow』と名が付いたのだ。
そんな彼女達をいつも近くで見ていたつもりだった士郎だが、今日初めて自分が知らない彼女達の顔を見た。彼女達がバンドをやっていた事は知っていた。それでも尚、日常とバンドとの差は著しく違っていた。そんな彼女達の事を最初は驚きはしたが、徐々に歌や曲に聞き入るようになる。そして士郎は思い知った。
自分が知っていたのはただ日常を楽しむ彼女達だけで、それ以外の所での活動をしている彼女達の事は全く知らなかった事を……
(これは蘭のお父さんも気づいていないかもしれないな……)
士郎は心からそう思った。
だって今の彼女達を見て、バンドをやめろ、何て言葉出せる方がおかしい……
だって─────
こんなにも彼女達は楽しそうで、そして何より俺から見た彼女達は……
─────輝いて見えるのだから
ゴールデンウィーク2日目 Afterglowの“いつも通り”
次はパスパレだったな……
よっしゃ〜!頑張るぞー!