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「せーの……」
『海だー!』
太陽の光に反射し煌めく海に向かって、大声で叫ぶ少女達がいた。海はそんな少女達を誘う様に静かに波を立て、潮の香りを撒き散らす。
「香澄!早くこっち来て手伝えよ!」
「はーい!」
少女達は海を背にして走り出す。
今日、彼女達……ガールズバンドのメンバーは2日間の合宿で海に来ていた。
元の発端は、1週間前CiRCLEでまりなから出された案だった……
─────1週間前
「海、ですか?」
いつもの様に受付の場所に座り仕事をしていると、まりなから何の前触れもなく「海に行きたい!」と言ってきた。
「行けばいいじゃないですか?」
「分かってないな〜士郎くんは!」
呆れ顔で返され、士郎は怪訝そうな顔を浮かべる。
「私一人で行っても楽しくないでしょ!!」
「それなら諦めるしか……」
「でも海に行きたい!」
「えぇ……」
どうしたらいいか解らず、若干相手するのが面倒くさくなっていた時、まりなは何か思い付いた。そう、それは─────
「合宿っていう名目で一緒に来てもらえばいいんだ!」
「なんてはた迷惑な……」
まりなに呆れた目を送るが、当の本人は一切気付いておらず、彼女の中で徐々にスケジュールが組み上げられていた。
「まず彼女達がいいか聞いてから決めないと迷惑ですよ?」
「それなら心配いらないわ!今丁度彼女達練習中だから聞いてくるわ!」
そう言ってまりなは彼女達が練習している部屋に向かって行った。
士郎はこの強引さをどっかの誰かを連想したが、あれは制御出来ない虎と解釈し、連想するのをやめる。その時何故か「誰が虎じゃー!」と聞こえた気がしたが、幻聴だろうと無視する事にした。
しばらくすると、ウッキウキで帰って来たまりなに捕まる。
「来週、予定空けといてね」
「え?……まさか」
まさかまりなの我がままが通る訳がないと思っていた士郎だったが、その期待は裏切られた。まりなはニッコニコで親指を立てる。
「全員……OKだって!」
「嘘だろ……」
「あとついでに上の人からも許可下りてるから」
「なんでさ……」
こういう時だけ手が早いまりなに完敗して、降参する。
「じゃあ来週からはまりなも彼女達もいないんですね」
「え?何言ってるの?」
「え?」
まりなは当たり前のように応える。
「士郎くんも行くんだよ?あ、これは先輩命令でもあり上司命令でもあるから拒否権はないよ?」
「な……な……」
「なんでさー!」
その日、CiRCLEから男性の悲鳴声が聞こえたと言う。
─────そして現在
「さ、海の家に着いたら荷物置いて、そこから自由にしていいからね!」
『やったー!』
「あ!勿論、バンドの練習も出来るからしたい人は私に言ってね〜」
まりなの指揮の下、目の前に見える海の家に向かって岸辺を歩き続け、最後尾の士郎は重い荷物を肩に担いでいるところを声を掛ける者がいた。
「シロウ、持ちましょうか?」
「いや、大丈夫だセイバー。そっちも重いのにこっちの物まで持たされないよ」
士郎の言うようにセイバーは肩にクーラーボックスを担いでおり、中には大量の飲み物と氷が入っている。
「ご心配なく。サーヴァントですから人よりも軽く重い物は持てますよ」
「それはそうだけど……じゃあ見栄を張らせてくれ」
「……なるほど、でしたら私も引き下がるしかありませんね」
「ありがとな」
「いえ、感謝するのは私の方です。私も海に連れて来て下さりありがとうございます」
そう本来であれば、部外者であるセイバーは家でお留守番のはずですが、蘭や香澄達のお願いでまりなに言ったところ数秒でOKが出たらしく、こうしてセイバーも一緒に海に来れているのだ。
「それなら蘭達に礼を言ってくれ。俺じゃなくて蘭達がお願いしたからな」
「はい、後で改めてお礼を言います」
そう話していると、海の家に到着した。
「はーい!じゃあ今から部屋決めするよー!まぁもう決めってるんだけどね!」
そう言ってまりなはグループ事に1枚の紙を渡す。海の家は二階建てで、彼女達は二階の部屋でまりなと士郎は1階の部屋の様だった。
「で、セイバーさんなんだけど……」
まりなは少し困った顔をしながら言う。
「セイバーさんは私と同じ部屋で寝てもらいたいんだけど、初対面で同じ部屋で寝るっていうのは、ちょっとね……」
「ご心配には及びません。その場合、シロウの部屋で寝ますので」
「うーん、それが1番だと思うけど、流石に男女2人っきりで同じ部屋はちょっと……」
まりなが悩んでいると、蘭が挙手する。
「セイバーさんはあたし達の部屋で寝ればいいんじゃない?」
「おぉ〜、名案だね〜」
「確かに1部屋6人が最大だから、丁度いいな!」
蘭の意見にアフグロのメンバーは賛同するが、それを否定する意見も現れた。
「えぇー!セイバーさんは私達の部屋で寝てほしい!」
「その話なら私達も黙ってはいられないわね」
「私達もセイバーさんとお話したい!」
「あら!とても素敵な考えね!私達も参加するわ!」
そして話し合いは更に発展し、最終的には代表者のじゃんけんによって決着が着いた。
「えー、じゃあセイバーさんはAfterglowのメンバーの部屋で寝る、という事に決まりました!」
この結果に納得いかない顔をしている者もいたが、夜寝る前に女子会する、という事で納得した。
「えー、先程も言った通り、部屋に荷物置いたら自由行動してOK!練習する時は私に言いに来てねー!じゃあ、解散!」
そう言うと彼女達は二階に登っていき、士郎も自分の荷物を置こうと部屋に向かった。
「あ、士郎くん!」
すると、まりなに呼び止められる。
「今から買い物行く?」
「まだ足りない食材を買いに行こうとは思ってますけど……」
「じゃあさ─────」
士郎が買い物から帰って来ると、遠くから皆のはしゃぐ声が聞こえた。チラッと窓を覗くと、楽しそうに遊んでる彼女達がいた。士郎はその光景を微笑みながら見守り、そしてキッチンへと向かった。
「さて、今日も始めますか……!」
まず初めに作るのは、麺つゆ
鍋にみりん、砂糖をいれ、沸騰させてアルコールを飛ばし、醤油を加えてひと煮立ちしたら、火を止めてアクを取る
そして前に作り置きしていた出汁を使う
出汁を合わせれば麺つゆの完成!冷蔵庫などで冷やしておく
具材をそれぞれ食べやすい大きさに切る
万能ねぎとみょうがは小口切り、きゅうりにザーサイは千切りに、裂けるチーズは細かく裂く
水を沸騰させたら強火でうどんを茹でる
麺100gにつきお湯1Lが目安
冷凍麺は高温で手短に茹でるのがポイント
冷水にとり、手早く麺を冷やして締めたらザルに上げてしっかりと水気をきる
急激に冷やす事で加熱の進行が止まり、麺の表面も締まりコシのある麺になる
「よし、あとはこうして……できた!」
出来上がった品を机に並べてゆく。
並べ終わり、皆を呼ぼうとした時
「わぁー!美味しそう!!」
「これは……うどん、でしょうか?」
既に帰って来ており、皆頭や首ら辺にタオルを巻きながら、集まってくる。
「そう、んで、具を適当に用意したんで皆好きなようにのっけてくれ」
「えぇ〜、悩んじゃうな〜」
「あの時の冷やし茶漬けと似てるね!」
「シロウ、オススメはどれですか?」
「ん?俺はみょうがと……」
「おねーちゃん!玉子とって!」
「はいよ」
皿に麺を盛り、その上に好みの具をのせて麺つゆをかければ……完成!
『いただきます!』
麺を啜り、出汁を飲み、味わう。
「んん〜、美味しいー!」
「出汁も美味しいわね」
「えぇ!最高よ!」
「色んなトッピングで味わい方も変わるんだね……パンにも使えないかな……」
「お〜?新作の予感ー」
そして、全員が食事を終え士郎が皿を洗っていると
「えー、では今からメインイベントを実施したいと思いまーす!」
「メインイベント?」
「全員!浜辺に集合!」
そう言って先に浜辺へと向かったまりなに続いて訳も分からず、彼女達も続々と浜辺に向かう。
「まりなさん、今から何するんですか?」
「それはね……これだ!」
まりなが指指した方角には士郎がいた。そしてその手にはバケツと袋が握られていた。
士郎はバケツをその場に置き、袋の中身を取り出す。
「あ!花火だ!」
「夏といえば花火でしょ!という事で士郎くんに買ってきてもらいました!」
彼女達は各々花火を取り、士郎が火を点火しその火に花火を近付ける。
すると─────
「おぉ!」
「綺麗!」
綺麗な火花を散らし、真っ暗な浜辺に輝きが現れる。
それから色々な花火を点火させ、最後の花火……線香花火だけとなった。
「ここで1つ!勝負といきましょう!最後まで残ってた人の勝ちね!」
「勝負となれば負ける訳にはいきませんね!」
「セイバーさん、やる気ですね……!」
「負けませんよ!」
夜空に輝く満天の星空と、地を舞う綺麗な火花……
この夏、最高の思い出になったのは言うまでもなく、いつまでも笑い続けるのだった……
8月後半ちょっと雨風多過ぎやしませんか?
これじゃ何処に行けないよ……
※来週の日曜日は投稿休みの予定ですが、気が向けばこの話のセイバー視点を出したいと思います。ほんと気が向けばなので、期待しないでください