そしてネタが尽きた(遠い目)
⤵
「本当に実現しちゃうなんてね……」
蘭達は放送を聞きながら、目の前に広がる光景に驚きを隠せなかった。
CiRCLEで士郎が提案した学校対抗の体育祭……
結果は両校の許可が下り、そして両校の実行委員同士で話し合って今日という体育祭が実現したのだ。
蘭曰く、提案した士郎は
「まさか本当に実現させるなんてな……」
と苦笑いで言っていた模様
「おーい!」
聞き覚えのある声が聞こえ、その方向に振り返ると香澄とその後ろに有咲達がいた。
「今日はよろしくお願いします!」
「あぁ、よろしくな!」
香澄達と挨拶を交わしていると、いつの間にか他のメンバーも集まってきていた。
「負けないよ?紗夜、燐子!」
「手を抜いたりはしません。全力で相手をします」
「えぇ、勿論よ」
「が、頑張ります!」
「日菜ちゃん!麻弥ちゃん!負けないからね!」
「あたしも本気で行くよ!」
「ジ、ジブンも頑張るっス!」
「ブシドーの力を見せるときです!」
「儚いね……まさか君と戦う事になるとは……」
「そうね、でも手は抜かないわよ?」
「こちらも同じさ、いい劇にしよう!」
「劇じゃなくて体育祭ね」
「楽しみね!」
「こころちゃん!負けないよ!」
「いや、そっちは味方」
「はぅぅ、緊張してきた……!」
そんなこんなで、放送から開会式の合図が流れたので、この場の離れ指定された列へと並びに行く。
その道中で
「そういえばあこちゃんは?」
「あこなら士郎さんと一緒にいると思うぜ」
「そっか、なら安心だね!」
「あぁ、士郎さんには感謝してもしきれないくらいだぜ。アタシとあこの分の昼も作ってくれるからな」
「ん?と、巴?もう一度言ってくれる?」
「え?士郎さんには感謝しきれない?」
「その後!」
「アタシとあこの分の昼も作ってくれる?」
「何それ!?初耳だよ!あとズルいよ!」
ひまりは巴に詰め寄りながら、激怒する。
ひまり同様に巴に詰め寄る者もいた。
「流石のモカちゃんも許せないですな〜」
「てかこの事蘭は知ってたの!?」
「士郎さんが教えてくれた」
「うがー!」
「ひまり、うるさい」
喚き散らすひまりを宥めながら、列の方へと進む。
『只今より、第1種目めの開会式を行います。花咲川女子学園、羽丘女子学園の生徒の皆さんは朝礼台に注目してください』
放送の指示通りに朝礼台に体を向けると、花咲川学園と羽丘学園の理事長が台の上に上がってきた。
そこから2人の理事長の長い話を聞き終え、そしてここからが本当の─────
『続いて第二種目めの競技に移ります。出場する両校の生徒の皆さんは、準備してください』
─────乙女達による熱い激戦の開幕だった
士郎達はテントの貼られた観覧席で蘭達の体育祭を見ていた。
「シロウ、ランがやる競技はいつ頃でしょうか?」
「ん〜、まだ先だな。でも今から始まる競技には彩とひまりがやるみたいだぞ」
「なんと……!それは是非とも応援しなければ」
「セイバーはどっちを応援するんだ?」
「確かに、アヤの事も応援したいですがヒマリも応援したい……どうすれば……」
セイバーは真剣に悩み始め、士郎は微笑を浮かべながら自分の考えを伝える。
「じゃあ両方応援したいいいんじゃないか?」
「それはズルくなってしまうのでは?」
「確かにな、でも今回は贔屓するよりいいと思うんだ」
「!……確かに、一理あります。では私はアヤの事もヒマリの事も応援しましょう!」
そう言ってセイバーは前を向く。すると今度は隣から質問が飛んできた。
「ねぇシロにぃ、今から始まる競技って何だっけ?」
士郎は行われる競技の書いたしおりを確認する。
「えっと、障害物競走だって」
「障害物競走?それは何ですか?」
「まぁ簡単に言うと目の前にある邪魔な物を乗り越えつつ、1位を目指すリレーって感じだな。あ、ほらあんな感じの物」
士郎が指さした先では、先生がネットやハードルなどを設置していた。
「なるほど、これは中々に難しそうですね……」
「あぁ、ひまり達がどう乗り越えるか楽しみだな」
そして準備が完了し、第二種目障害物競走が始まった。
「位置について…………よーい……ドン!」
合図と共に一斉に走り出す。レーンは4レーンあり、各学園で2組で走る事になっている。
第1走者の人達は数多くの障害物に手こずりながらも、次の走者へとバトンを渡していく。そして先に第3走者だった彩に順位が1位でバトンが回ってくる。
彩が走る道にはハードル、ネット、麻袋といった順番に配置されていた。アイドルでもある彩はハードルは難なくクリアしたが、ネットで思った以上に進めず2位との差が縮まってしまった。そしてネットを抜けた先では麻袋が待っており、その中に入って一定の距離をジャンプして行く。彩のターンは終わり次の走者にバトンを渡す。
そしてその隣でもバトンが渡され、第4走者のひまりに回ってくる。
ひまりの走る道はハードル、フラフープ、パン食いといった順番だった。ひまりは1個だけハードルに失敗するも1位の人とほぼ同率で走り、片足だけで置かれたフラフープの中を踏んで行く所で1位を出し抜いた。そして最後の障害物、吊るされたパンを口でゲットして通過して行く所でひまりはジャンプを何回も繰り返しながらパンに食らいつこうと必死に頑張っていた。そうしている間に他の走者達も同じ難関に来たが、ひまりは誰よりも早くパンをゲットし、アンカーにバトンを回したのだった。
結果は1位羽丘①、2位が花咲川②、3位が花咲川①、4位が羽丘②といった順位となった。
「負けちゃったー!」
「でも彩さん早かったですよ!」
「う〜、でも!まだ始まったばかりだからね!負けないよ!ひまりちゃん!」
「私も負けません!」
そして障害物競走は終了し、次の競技の準備が始まった。
「中々の接戦でしたね」
「あぁ、彩もひまりも中々にいい勝負してたしな」
「次は誰か出るのですか?」
「次は綱引きで……花咲川では香澄達と美咲とイヴと紗夜、羽丘はつぐみと日菜と麻弥が出るみたいだな」
「ほぉ、一気に知り合いが出てきましたね」
「そうだな、どっちが勝つか楽しみだな」
「えぇ、応援しがいがあります!」
縄の準備ができ、出場する生徒達は縄を軽く持ち座る。
縄は2本あるが、1本目の所には美咲とイヴ、紗綾にたえがおり、そして2本目に香澄とりみ、有咲に紗夜そして対立につぐみと日菜に麻弥といった組み分けとなった。
「負けないよ!」
「わ、私だって!」
先生がスターターピストルを空に掲げ、打ち鳴らす。
それと同時に、両者一斉に縄を引き激しい攻防戦を繰り広げる。観覧席からは声援が挙げられ、より盛り上がりを増す。
先に決着が着いたのは1本目の方で、花咲川学園が勝利を収めた。2本目はまだ決着が着かず、声援は続く。縄を引く生徒達は険しい顔を浮かべながら、足に力を込め相手の引きに耐えたり、引き上げたり努力している。しかし、そんな攻防戦も長く続く訳もなく体力の限界を超えた者の数で決着が着いた。
『只今の勝負、花咲川女子学園1本、羽丘女子学園1本。よって最終結果、両校同点になります』
綱引きで同点という結果に収まった。
「負けちゃったね」
「ごめんね、最後の方で力抜けちゃって……」
「別にりみが悪い訳じゃないから」
「えぇ、お互い全力を出し合って負けたのなら、悔いることはないですよ」
「そうだよ〜、あたしも結構ピンチだったし!」
「ジブンも途中から力入らなかったッス!」
「ナイスファイトー」
「はい!とても良かったと思います!」
第三種目綱引きは無事終わり、次の種目へと移った。
「次の種目で午前の部は終わりみたいだな」
「次っておねーちゃんが出てくるんじゃなかったっけ!?」
「あぁ、巴とはぐみがやるみたいだな」
「ちなみに競技は?」
「徒競走だな」
「なるほど……実にトモエとハグミらしいですね」
今回の走者で巴とはぐみは両方ともアンカーとして走る事になっている。
今回はレーンは2つだけとなっている。つまりどちらが勝てばそれだけ点差を広げられるのだ。
第1走者がスタートライン上に立ち、そして先生がスターターピストルを空に掲げる。
「位置について…………よーい……!」
ピストルが打ち鳴り、両者同時に走り出す。観覧席からの声援は勿論の事、待機中の走者達も大きな声を上げながら応援する。若干羽丘学園の方が有利な状況で第2、第3走者へとバトンが渡っていく。そして第4走者で花咲川学園とかなりの差を広げ羽丘学園はアンカーである巴にバトン渡され、全力で走り更に差を開けていく。このまま独走かと誰もが思いったが、後ろから徐々に差を縮めて来るアンカーのはぐみがいた。
巴との差は徐々に詰められ、ゴールまでもう半周の時にはすぐ後ろにいた。巴も抜かされまいとスピードを上げるが、はぐみも更にスピードを上げていく。あと数メートルの地点では抜いたり抜かされたりと激戦を繰り広げ、そして同着ゴールを果たした。
しかし、それは遠くから見ていた観覧席からの視点、ゴールテープを持っていた2人は審判にどちらが先に着いたかを伝える。
『只今の勝負…………羽丘女子学園の勝利です』
それを聞いた途端、羽丘学園の生徒そして先生が大声で叫び歓喜した。
息を整えながら巴は、はぐみに近寄り手を差し伸べる。
「いい勝負だったぜ!ありがとな! 」
「はぐみも楽しかった!!またやろうね!」
「あぁ!」
はぐみは差し伸べられた手を握り返し、大はしゃぎで笑う。
『これにて午前の部は終了と致します。午後の部の始まりは開始する10分前に放送でお伝えします。皆様、お疲れ様でした。この後は各先生の指示に従って─────』
こうして午前の部は羽丘学園が1歩リードした状態で終了した。
先生の話を終え、蘭はモカ達と合流し士郎達を探し始めそして、すぐ見つける事ができた。
「士郎さん!」
「お、いたいた。お疲れ様」
「ふっふっふー、モカちゃんの活躍を見てくれたかな〜」
「ってモカはまだ何もやってないでしょ!?」
「そうだっけー?」
「まだまだ元気そうだな。じゃあ早いとこ昼食べるか」
「もうお腹ペコペコだよ〜!」
士郎は笑いながら、「こっちだ」と案内して行く。着いた先には日陰にレジャーシートが引かれ、そしてそこにセイバーとあこが座っていた。
「おねーちゃん!!カッコよかったよ!」
「ありがとな!」
「お疲れ様です。とても良い勝負を見させてもらいました」
「いや〜、照れちゃうなー!」
そう談話していると
「お待たせしました」
声のした方へ振り返ると千聖が立っており、その後ろには彩達もいた。
「いや丁度いいタイミングで来てくれたよ。さ、好きな場所に座ってくれ」
「お邪魔しまーす!」
彩達はレジャーシートに荷物を置き座っていく。
千聖は士郎の方へ向き直り、頭を下げる。
「この度は呼んで下さりありがとうございます」
「そう畏まらなくてもいいさ、食事は皆楽しく食べた方がいいしな」
「えぇ、ならそうさせてもらうわ」
千聖は彩達の方へ向かっていった。その隙をついて蘭が士郎に質問する。
「何で呼んだの?」
「まぁ彼女の協力のお陰でこの企画成り立ったからそのお礼かな?あとはセイバーが皆と仲良く昼が食べたいって言ったから」
「皆?」
疑問が生まれたが次の光景で一瞬で理解できた。
「待たせたわね」
「お待たせしました!」
「待たせちゃったわね!」
ガールズバンドがここに全員集合を果たした。
大きなレジャーシートは人と荷物でいっぱいになった。
「あれ?皆ご飯は?」
「あら?聞いてないの?」
ひまりがえ?と疑問そうにしていた時、士郎が鞄から沢山の容器を取り出す。
「えー、今日の昼はセイバーとあこと協力して作りました」
その容器の蓋を開けると、
「唐揚げだー!」
「美味しそう!!」
容器には唐揚げや卵焼きやらおにぎりやら色々と入っていた。
「流石にこの量だからな、1人でやるのはキツかったから2人にも協力してもらったんだ」
まず初めに鶏肉を1口大のぶつ切りにし、にんにく、生姜をすりおろし、下味用の醤油、塩、胡椒、酒を合わせ、切った鶏肉をよく揉み5分ほど置く
漬け込んだ鶏肉は調味料をきり、溶き卵に漬け馴染ませるように混ぜたら同量の小麦粉、片栗粉を混ぜたものを肉にまぶす
(これはあこにお願いしよう)
「あこ、お願いできるか?」
「任せて!」
160~180℃程度の油で1~1分半揚げ、油切れの良いバット等に上げて1分弱余熱で肉に火を通す
お玉等で叩き、軽く亀裂を入れて再び揚げる。これを2回、3回繰り返す
中心まで火が通ったら最後に200℃程度の高温で30~40秒揚げ、取り出して完成!
「セイバー、出来た物を容器に入れていってくれ」
「任せてください」
「といった感じで効率的に作っていったんだ」
「なるほど」
「じゃあ皆手を合わせて……」
『いただきます』
全員が唐揚げを口に入れ、美味しそうに頬を緩ませる。
「美味しい〜!」
「疲れが一気に取れちゃうくらいだよ!」
「卵焼きも美味しいわね」
と各方面から喜びの声が上がる。
「てか士郎さんが用意してくるならなんで教えてくれなかったの?」
「教えたじゃん」
蘭はひまりの疑問に当たり前のように言い放つ。
「いつ?」
「LINEで」
「なんて?」
「昼は購買で食べよって」
「それだけで分かるわけないでしょ!?」
見事な漫才に笑いながら、士郎は午後の競技に出る彼女達に応援の声を上げる。
「頑張れよ!どっちも応援してるから!」
「えぇ、私も応援してます」
「ファイトー!」
「任せて!みんなを笑顔にしてみせるわ!」
「こころ、それ趣旨変わってるよね?」
「そうかしら?」
笑い合いながら、昼を取りそして午後の部の開始の放送が鳴った。
次の種目は、玉入れ
参加するのは、こころと花音、燐子に千聖そして対立にモカにリサ、湊に薫が出場する。
「燐子が相手でも手を抜かないよ!」
「お、お手柔らかに……」
「楽しい勝負になりそうね!」
「そうだね、儚い勝負をしようじゃないか!」
白線が引かれた所で横1列に並び、スタートの合図を待つ。
「位置について…………よーい……ドン!」
一斉に飛び出し、地面に落ちたボールを拾い上げ、ネットに投げ入れる。
流石の身体能力を持ったこころは何故かステップを踏みながらボールを投げ入れそれは全てネットの中に入ってゆく。花音や燐子は投げ入れるはするが、中々入らず四苦八苦していた。千聖はそんな2人に綺麗に投げ入れる方法を教えていた。
リサは何故かモカから渡されるボールを受け取っては投げ、を繰り返していた。そんなモカは近くに来たボールを拾ってはリサに渡していく。湊は前半では順調だったが、たまたま取ったボールがまさかの猫ちゃんの顔が描いており、投げれず固まっていた。そして薫は何故かボールが回ってくる事がなかった。それもそのはず、薫が取る前に周りの女子生徒が回収して投げて入れているからだ。本人曰く、「私を守る為に頑張ってくれていのだよ……あぁ、なんて儚いんだ……!」らしい。
結果は見事、花咲川女子学園の勝利
「薫、あなた投げてた?」
「子猫ちゃん達が私の所へ来るボールを全て回収していってね、この儚い勝負を見届けていたよ」
「ごめんなさい、まさか猫ちゃんのボールがあるなんて知らなくて……」
「あれはたまたま混ざっちゃったみたいだから友希那のせいじゃないよ!ね?」
「モカ、あんたサボってたでしょ」
「えー、心外ですな〜。ちゃんとやってたよー?ボール拾いー」
「うぅぅ、全然役に立てなかったよ……」
「そんな事ないですよ、花音さんは頑張っていましたよ」
午前と比べ平和的に終わった玉入れに和みながらも、次の種目へと集中する。
「シロウ、次はついに」
「あぁ、蘭が出場する競技だ」
「ちなみにランは何の競技に?」
「えーっと、借り物競走らしい」
「借り物競走とは?」
「えっと、まぁ簡潔に言うと紙があってその紙に指定された物等をゴールまで持ってそれが合っていたら勝ちっていうやつだな」
説明が終わると競技の準備も完了したらしく、放送が入る。
『只今より、借り物競走を行います。そこでご来場の保護者の皆様にお願いがございます。借り物競走に出場されてる生徒達の指定された物をお持ちである又は、指定された人物であるのでしたら快くご協力お願い申し上げます』
放送からのお願い事に耳を通しながら、出場する生徒達が並び出す。出場する生徒は蘭含め6人。
『それでは只今より最終種目、借り物競走を行います』
「位置について…………よーい……ドン!」
両者一斉に走り出し、机の上にある紙を1枚選び中を見る。─────そして。
「誰か万年筆持っていませんかー!」
「誰か今犬を連れている人はいませんかー!」
それぞれ指定された物を探し求め始める。
しかし、蘭だけがその場から動かずただ辺りをキョロキョロと見渡すだけだった。
「ランは何を引いたのでしょうか?」
「さぁ?」
すると蘭の目が合い、こちらへとまっすぐ向かってくる。
そして士郎の目の前まで来て
「……来て」
と士郎の手を引っ張りゴールまで向かう。
ゴール前でマイクを持った実行委員に紙を提示する。
「では、紙に書いてる事を口に出してお答えください!」
「……お世話になってる人」
「蘭……」
蘭は頬を少し赤らめながらそう答える。
「ちなみにどんな所でお世話に?」
「いつも美味しいご飯を作ってくれたり、困った事があったらいつも助けてくれる……」
「なるほど……合格!1着ゴールです!」
そして1着は羽丘学園となりそれに続いて続々とゴールしていった。
最終結果で僅か2点差で羽丘女子学園が勝利を収めた。
帰り道、いつものメンバーと士郎達を含めて帰っていた時、士郎は蘭に感謝の言葉を伝えた。
「ありがとな、蘭」
「え?」
「そう思っていてくれて嬉しい」
「……あたしの方こそありがとう、ございます」
お互い顔を見合いそして笑いあった。
その様子をモカ達に見られ、弄られながら帰路辿った。
彼女達を照らすように夕日は静かに沈んでいった……
次回の更新はもしかしたら伸びるかもしれません
気長にお待ち頂けると幸いです!