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羽丘女子学園の校門に立て掛けられた《学園祭》と書かれた看板……
校内では生徒達の声だけではなく、他校の学生や子連れの家族など大勢の人達で賑わっていた。
それは昨日の男子校同様にプラカードを持ちながら宣伝する生徒や、出店で客を構える生徒達もいた。
「いらっしゃいませー!」
「ぜひ遊びに来てくださーい!」
その宣伝の間を通り抜ける2組の男女がいた。
「こっちも結構盛り上がってるな」
「えぇ、楽しみです」
士郎達は校門前で受け取ったパンフレットを見ながら目的地の方まで進んでいく。
「校舎に入って2階が蘭達の屋台で、その1個上が湊とリサの屋台……で、西校舎で麻弥と日菜の屋台で、14時から体育館で演劇部の公演、か……セイバーはどこから行く?」
と士郎は隣にいるセイバーに振り返る話し掛けると─────。
「……そうですね、1番近いラン達の屋台へ行きましょう!」
口をモゴモゴしながらいつの間にか買っていたのかたこ焼きやりんご飴、焼きそばを持っていたセイバーがいた。
「いつの間に……」
「とても美味しいですよ、シロウ」
「いや、それは良かったけど……」
セイバーはまた別の屋台を見つけると、目を輝かせながら買いに行ってしまった。
「ハハハ……まぁ、セイバーが楽しそうならそれでいいんだけどな」
苦笑いしながら、注文しているセイバーの元へ駆け寄って行った。
「予定よりちょっと遅くなったけど、この時間帯なら空いてるかもな」
「すみません、シロウ……行く先々で美味しそうな物が目に入ってしまい、食べずにはいられませんでした……」
「別に責めてないさ、それに今日は楽しむ為に来てるんだからセイバーは間違ってないさ」
「……!えぇ、そうですね!では早くラン達の元へ向いましょう!」
校舎に入り階段を2階分上り、パンフレットと照らし合わせながら蘭達の屋台へと辿り着いた。
「お、ここみたいだな」
「“バンド体験”ですか……なんだがラン達らしいですね」
「そうだな、ていうかよく許可取れたな……」
「シロウ、中に入りましょう」
「お、そうだな」
教室の扉を空け、中に入ると─────。
「いらっしゃいませ〜」
「え、モカ?」
「お〜、シローさん来てくれたんだね〜」
少しだらしなく座っているモカが受付の所にいた。そして士郎は中に入り気付いた事があった。
「ここ音楽室だったんだな……教室の名前が隠されてて分からなかったけど」
「音楽室なら防音だからいくら弾いても迷惑にならないからね〜」
「へぇー……蘭達は?」
「ひーちゃんとトモちんとつぐは教える側でモカちゃんと蘭は受付スタッフにまわってるよ〜」
「そうなのか?でも……」
受付にモカ1人しか居らず、なんなら受付の座席はモカが座っている席1つしかなかった。
「あぁ〜、蘭はあたし達とは別のクラスだからね〜。もう1つ隣の教室で受付してると思うよ〜」
「ランのクラスではバンドが出来る人がラン以外にいるんですか?」
「バンドじゃないけど吹奏楽の人達が教えてるよ〜。あたしのクラスと蘭のクラスは合同でやってるけど、教えるのはちょっと違うんだよね〜」
自分のクラスも巴達以外に吹奏楽の子達が教えてる、とモカは付け足し、チケットを渡してくる。
「こちら入場チケットになりまーす、頑張ってね〜」
「お、おう」
モカからチケットを受け取り、中に入るとモカの言う通り何人か知らない子達がトランペットやらフルートなどを熱心に教えていた。
と、そこに士郎達の存在に気付き、近付いて来る生徒がいた。
「来てくれたんだな、士郎さん、セイバーさん」
「あぁ、巴は何を教える役なんだ?」
「アタシか?アタシはこれだ」
巴の後に続き向かうと、そこにはドラムが置かれていた。
「トモエ、こちらの楽器は何ですか?」
「これはドラムって言う楽器ですね」
「ドラム……どうやって音を出すのですか?」
「こうやって……」
巴は軽くドラムを叩き、音を聴かせる。
「なるほど、こちらの楽器は叩けば音が出るのですね」
「やってみますか?」
「えぇ、お願いします」
セイバーは巴と立ち位置を入れ替わり、巴のようにドラムを叩いてみせる。
「おぉ……」
セイバーは多少驚きながらも、初心者とは思えないほど上手くドラムを叩き出した。
「セイバーさん上手いですね!」
「凄いなセイバー、俺なんて前叩かせもらってけど全然駄目だったのに……」
「いや、前の士郎さんの方が一般的に普通なんですよ?」
セイバーのまさかの才能に巴と士郎は賞賛の声を上げる。セイバーは目を輝かせながら、士郎の方を見る。
「シロウ!とても楽しいです!」
「良かったな、セイバー」
すると、士郎の隣からひまりがひょこっと顔を出して来る。
「セイバーさん!ベースもやってみますか?」
「ベース、ですか?……えぇ!お願いします」
セイバーは巴に撥を返し、ひまりの方へ向かって行った。
「じゃあ次は士郎さんの番だな!」
「え!?お、俺?」
「せっかく来たんだから何かやっていかないと楽しくないでしょ?」
「た、確かに……」
「さぁ撥持って……一緒に叩こうぜ!」
「お、おう!」
30分近く巴の指導を受け続け、あっという間に退場の時間となった。
「あ、もう退場の時間だ」
「もうそんな時間なのか?あっという間だったな……」
「あぁ、今日はありがとう」
「こっちこそ、来てくれてありがとな!」
士郎は鞄を拾い上げ、思い出したかのように巴に向き直る。
「またドラム、教えてくれるか?」
「……!勿論、アタシに任せな!」
セイバーに声を掛け、つぐみとひまりに別れを告げて受付のモカの元まで戻る。
「おつかれさま〜、どうだった?」
「あぁ、貴重な時間だったよ」
「えぇ、それにとても楽しかったです」
「それは何より〜、あーそれと午後からあたし達も屋台巡りするからもし行けたら一緒に巡ろ〜」
「あぁ、それじゃあまたな」
「バイバ〜イ」
教室から出て、士郎達は次の目的の場所へ目指す。
「それにしてもセイバー、ベースも出来たらしいな」
「えぇ、キーボードは少し難しかったですが、ツグミのお陰で覚える事が出来ました」
セイバーは指でエアキーボードを見せてくる。
「俺はやっとドラムのコツを掴めてきたのに……流石だなセイバーは」
「いえ、私が出来るようになったのはラン達のバンドをいつも近くで見ていたからです」
「え?蘭のは分かるけど、巴やつぐみのも見たことあるのか?」
「えぇ、シロウが居ない時にラン達の練習を見学させてもらってます」
「知らなかった……」
そんな話をしていると、目的の場所に着いた。が─────。
「あれ?閉まってる?」
「シロウ、この紙を見てください」
士郎は言われた通りにその紙に目を向けようとした時、
「あれー?士郎さんとセイバーさんじゃん!やっほー!」
手を振りながら、こちらに向かって来る4人の姿があった。
「日菜?それに麻弥にリサ、湊まで」
「そこでたまたま会ってね、ところで士郎さん達はここで何してるの?」
「え?今から湊達の屋台行こうかって話して来たんだが……」
「……残念だけど、私達の店は午前の部が終わって今30分休憩中よ」
「ちなみにジブンの所もそうッスね」
そう言われ、教室に貼られた紙を改めて見ると
午前の部が終了しました
次の午後の部が始まるのは14時を予定しております
と書かれていた。
「もうちょい早かったらまだやってたけどね?ゴメンね!」
「いや、謝る事じゃないさ。時間を見ていなかった俺に非があるしな」
「私も時間の事を考えていませんでした……」
「まぁまぁ!……そうだ!今から演劇部のやつ見に行くけど、一緒に行く?」
「あぁ、俺達も見に行きたかったから誘ってくれてるのは嬉しいな」
「じゃあ一緒に行くっス!」
「えぇ、共に行動しましょう!」
と話合い体育館へ目指している時、スマホから通知音が聞こえ取り出す。
相手はモカだった。
『やっほー、今どこにいるー?』
『今、麻弥達と出会って演劇部の劇を見に行く為に体育館に目指している途中だけど』
『おぉー、じゃあモカちゃん達もそっちに向かうねー』
「モカ達も体育館で合流するみたいだ」
「了解ー!」
体育館着き、蘭達が来るのを待っていると──────。
「お待たせしましたー!」
「いや、こっちもさっき着いたばっかりたから大丈夫だぞ」
「おや、アコも一緒だったんですね」
「うん!おねーちゃんと出会ったから一緒に行きたいって言って着いてきたの!」
「それは良かった、私もアコと一緒に入れるのは嬉しいですから」
「えへへ!」
あこはセイバーとハイタッチしながら、嬉しそうに笑っていた。士郎はそんな様子を見ながら、蘭に話し掛ける。
「お疲れ様、大変だったか?」
「……コンビニバイトの時よりは楽だった」
「ハハハ、確かにその通りだな」
「……士郎さん、ドラム叩いたんですよね?どうでした?」
「いや、直すのは得意でも扱うのは素人なんだって改めて理解させられたよ」
「士郎さんも一緒に練習しますか?」
蘭は不敵な笑みを浮かべながら、聞いてくる。
「ハハハ……あぁ、また今度頼むよ」
と、笑みを浮かべ返した。
「おーい、もうすぐ始まっちゃうよー!」
リサからの報告を聞き、士郎達は体育館へと入っていった。
「あぁ、ジュリエット……君はどうしてそこまで儚いんだ……!」
公演してからしばらく時間が経ち、士郎は演劇のレベルが高過ぎる事に驚きを隠せなかった。
特に1番の衝撃は、薫の演技力だ。
いつもの彼女を知っている士郎だったが、今の彼女は完全に役になりきり、まるで本物のような立ち振る舞い、そして観客を魅力させるような演技を見せ付ける。
(千聖が言ってた事って、これの事か……)
現役アイドルの彼女さえも、認めざるを得ない程の演技力……
改めて士郎は薫の事を評価した。
素子であり、演劇の知識もない自分がこう言うのも失礼なのかもしれないが、心の中で彼女に向けてこう告げた。
─────とても儚い演劇だったよ
演劇が終わり、次何処へ行こうかと話し合っている時、セイバーが士郎の元へ近付いて来る。
「どうかしたか?」
「いえ、今回も前回もこんなに楽しい時間を頂いたのに、私は何も返せないのが少し……」
暗い顔をしたセイバーに、士郎は近くに売っていたクレープを頼み、セイバーに渡す。
「シロウ、こちらは……?」
「クレープって名前だな」
「いえそうではなく、何故……?」
「いいから、食べてみな」
セイバーは言われるがままにクレープを口に運ぶ。
「……美味しいです」
「その顔だよ」
「───え?」
セイバーは呆気に取られ、士郎はそのまま言葉を続ける。
「今クレープ食べて笑顔になっただろう?それがちゃんとお返しになってるんだよ」
「笑顔が……」
「楽しんでもらう為にやってるんだから、ちゃんと楽しんで笑顔を見せたらいいんだよ。それがお返しになるんだから」
「……えぇ、そうですね。今日も、そして明日も楽しんで行きましょう!」
「あぁ!」
お互い顔を見合い、そして笑い出す。
「あー!クレープズルい!私も食べる!!」
「お〜、モカちゃんも食べたいぞー」
「ふ、2人とも!」
いつの間にか話し合いが終わっており、クレープに目移りしていた。
士郎とセイバーは、クスッと笑い合う。
「よし、じゃあクレープ欲しい人は手を挙げてろー!」
士郎がそう言うと、全員手を挙げる。
「全員かよ!?」
「だって、ね〜」
「2人だけとかズルいしな」
「ったく、仕方ないな」
士郎は各々好きな味を頼み、会計を済ませる。
このあとも色々と買わされた士郎だったが、彼女達の楽しそうな笑みが見れて嬉しそうだった。
セイバーがバンド……?
そういえばセイバー似のフォーリナーでいたような……
気のせいか!