そして悩んだ結果が、シンプルすぎる…
⤵
「士郎さん!流しそうめんしましょう!」
「……」
CiRCLEで、スピーカーの調整をしていた士郎の元に香澄が近寄り、近寄るやいなや唐突に笑顔で話し出した。
「えーっと、前に言った件の話か?」
「はい!前に士郎さんから提案してもらった流しそうめん計画です!」
香澄が言うように、流しそうめんの話は士郎が1番先に提案したものだった。故に士郎はその事をしっかりと覚えていたのと同時に、実現不可能だろうとも思っていたのだ。
この計画は、大前提に全員が集まらないと出来ないといった欠点から始まる。別に全員が集まらないと出来ない、なんて事はないが、香澄からの主張では全員揃ってこそ楽しくなる、という事で全員集合がまず大前提。
2つ目の欠点が、それを実行する場所と資材。資材である竹はなんとか用意できるが、大人数でやる場所がないのだ。蘭の家でやるも流石に30を超える人数が来るのは行けない事はないが、蘭の父さんがそれを許可するかは別なのだ。
他にも色々と問題はあるが、この2つに比べると小さい事なので、まだ大丈夫な方だった。
そんな実質不可能な計画を、香澄はやろうと提案してきたのだった。
「やるのはいいが、全員集合してやるのはもういいのか?」
「勿論、全員集まってやりますよ?」
「他の子達も色々と忙しそうだし、無理なんじゃないか?」
士郎は香澄の提案を出来るだけ否定したくはなかったが、今回は仕方なく諦めるように促す。─────が。
「??」
何故か顔を傾げ、頭に“?”を浮かべる。
「いや、だからな─────」
士郎が説明しようと話し出すと、それを遮るように声を被せて言う。
「みんな来ますよ?」
「─────は?」
まさかの発言に硬直する。最近士郎の周りで他の子達と会う事も話す事も減り、忙しいんだな、と解釈していたのだが、そんな彼女達全員が集合するなんて誰が予想出来るだろうか?
「え、マジ?」
「マジのマジですよ?あとは士郎さんが参加するだけです!」
「いや、俺は別に断るつもりは一切ないが……大丈夫なのか?」
「何がですか?」
「いや、ほら、香澄達もそうだけど今ライブとかの準備や練習で忙しんだろ?そんな無理に集まらなくても……」
彼女達の活躍を知るからこそ心配するが、それは逆に彼女達に不安を与えていたようだった。
「そんな事ないですよ!みんな久しぶり集まれて嬉しそうにしてましたし、士郎さんとあんまり会えなかったので会うのを喜んでいましたよ!」
彼女は笑顔で続ける。
「士郎さんがいたから私達はここまで来れたんです!士郎さんのおかげで私達は笑顔でいられたんです!」
その瞳は光り輝き、見る者を魅力する。
「士郎さんからいっぱい貰った物を私は返していきます!返し終わっても、私は士郎さんに渡していきます!それは、他のみんなも同じだと思います!」
香澄は士郎に、笑顔のまま、瞳を輝かせたまま、手を差し出す。
「私達からの贈り物、受け取ってくれませんか?」
士郎は呆気に取られ、そして笑みが零れる。
やっぱり、香澄達には敵わないな……
「じゃあ有難く受け取らせて貰うよ。ありがとな」
士郎は礼を述べながら、その手をとる。
「はい!まだまだありますので、全部受け取って下さい!」
「そうだな、今回は俺がした提案だからな。しっかり働かせもらうとするよ」
「お願いします!」
香澄に決行する日付と場所を教えてもらい、彼女は帰って行った。
士郎は1人残された部屋で、頭を掻きながら笑みを浮かべていた。
「参ったな……いつも貰ってるのは俺の方なのにな……」
◆
士郎はキッチンで、そうめんを茹でながら、下準備していた。
庭では楽しそうな笑い声を耳に入れながら……
そう、1番無理だろうと思っていた美竹家の庭で流しそうめんをやることになっていたのだ。
蘭の父さんに蘭本人が伝え、無事許可が降りたようだった。
蘭の父さん曰く、「夏を友達と楽しむなら、別に構わない。それに士郎くんもいるなら安心だ」とのこと。
やる人数は言わなかったらしいが、流石に30人越えの人数でやるとは蘭の父さんは思ってないだろう。
ちなみに料理係が士郎で、彼女達が竹の設営といった形で分かれている。
ちょま!水をこっちに飛ばしてくるな!
えー、有咲水浴びたいって言ってたじゃん!
浴びたいって言ったけど誰もかけろとは言ってないだろう!!
モカ!なんで日陰でサボってるのよ!
え〜、モカちゃんはひーちゃんに手柄を譲ってるだけどよー?
何意味わかんない事言ってるのよ!早くこっち来て手伝う!
そんなー
この竹!今こそブシドーの力を見せる時!です!
イ、イヴちゃん!落ち着いて!
そ、そうスっよ!怪我するッス!
ブシに情けは無用です!お覚悟ー!
ストップー!
この竹……
友希那、どうかしたの?
いえ、なんでもないわ
そんな事言わずに〜、ね?
……この前見た動画の竹を思い出しただけよ
あ〜、前に見てた猫の?
……
ちょ、こころ!それ危ないから早くやめて!
美咲ー!これ楽しいわよ!一緒やりましょ?
やらないから!てかなんで竹の滑り台が出来てるのよ!?
なんて儚いんだ……!
儚くない!!
倉田さん、この竹を持ってくれるかしら
う、うん!
この竹はどうするの〜?
それはそこに置いておきましょう
こっちの竹は?
まだ使わないから広町さんと同じ場所に置いて来てちょうだい
めっちゃルイが仕切ってる……
チュチュ様!こちらの設営が終わりました!
こっちも終わったぜ
なら、あとはこれを繋げれば終わりね
……届く?
……パレオ!
はい!チュチュ様!
「楽しそうにしてるな……」
士郎は笑みを浮かべ、自分の作業に戻る。
「そうめんはもう出来るから、あとは……」
ホタテ貝柱を先に茹でておく
その間に玉ねぎ、ネギ、人参を千切りにして水にさらす
薄力粉と塩を氷水でさっくりと混ぜ合わせる
その後に茹でておいたホタテ貝柱と桜えび、千切りした野菜を、混ぜ合わせた氷水に、混ぜ合わせ馴染ませる
お玉やヘラなどで使用し、少量ずつ適量の180度の油で揚げる
途中、少し固まってきたらひっくり返し、箸を刺して火の通りをよくする
カラッと揚がったら……完成!
「さて、持って行くか」
庭に向かうと、既に完成していた。
「おぉ、凄いな」
「シロウ、出来たのですか?」
セイバーは士郎の存在に気が付くと、手に持つ料理に目を向けながら話しかける。
「あぁ、せっかくだからかき揚げも作ったから、食べてみてくれ」
そして士郎が来たことによって、流しそうめんが始まった。
「それじゃあ、流すぞー」
1番先にそうめんを取ったのは、香澄だった。
「1番乗り!」
「いいな〜!」
「次よ!次!」
それから次々とそうめんを流して行き、全員がちゃんとそうめんを取る事が出来た。
「うーん!夏はそうめんだよね!」
「そうですね!」
「かき揚げも美味しいわね」
「ね!なんかるんっ♪てきちゃった!」
みんなの顔色がとても嬉しいそうな表情をしていて、士郎も自然と笑い、そうめんを流していく。
士郎はそうめんを流す担当を巴達に変わってもらい、1人縁側に座り、彼女達を眺めていた。近くにある為か、彼女達の話し声と一緒に風鈴の音も鮮明に聞こえる。すると、士郎の隣にセイバーが座る。
「ん?どうかしたかセイバー?もうお腹いっぱいなのか?」
「いえ、少し涼もうと思いまして」
「なるほどね、確かに今日は暑いもんな」
そう呟きながら、一緒に香澄達の様子を眺める。
とても楽しそうに夏を満喫してる彼女達を見ていると、セイバーが話しかけてくる。
「シロウは楽しんでますか?」
「え?」
唐突な質問にセイバーを見る。セイバーは士郎の方を見ず、香澄達の方を見つめる。
「……そうだな。楽しんでいるよ」
「それは良かったです」
「セイバーはどうだ?」
「私は─────」
彼女は目を瞑り、笑みを浮かべながら士郎を見つめる。
「ラン達とそして、シロウと会った日からずっと楽しくもあり、幸せですよ」
セイバーのその一言に呆気に取られる。そんなことを余所にセイバーは立ち上がり、振り返る。
「では、そうめんをおかわりしてきます」
士郎の返事を待たず、それだけ言うと香澄達の元へ向かって行った。
「ったく。セイバーにも敵わないな……」
士郎は笑みを浮かべながら、小さく呟くのだった。
夏の風で鳴り響く風鈴は、どこか涼しさを送り届けていた
前半の香澄のセリフ、LAST STARDUST 聴きながらやってたらいつの間にか出来てたw
(σ・∀・)σウケル
※夏の暑さと某ウイルスにはお気をつけ下さい