IFもうひとつの約束 〜もし1年生だけで全国を目指すことになったら〜   作:勘解由小路龍之介五郎左衛門十兵衛

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オリキャラ登場回です。

あと一応補足として、この世界には性別は女しかいません。女同士で結婚し、女同士で子供を作る感じです。
原作は男が一切登場せず、女同士で恋愛するのが当たり前といった、きらら漫画にありがちな世界観ですが、性別や結婚に関する言及は無かったと思うので念のため。
たまに間違えて男キャラを出しそうになる時があるので、もし出してたら指摘してください。



3. ゆらゆらハートで考え中

「これからどうするし……」

 

私、丹羽(にわ)有希(ゆき)は頭を悩ませていた。

 

まさか、新越谷高校に卓球部がないなんて。

卓球部なんてどこの学校にもあるものと思っていた。

 

私は七歳のときから卓球を始めた。でもそれは卓球をやりたかったからではなく、共働きの両親が留守の間、託児所代わりに地元のおばさんがやってる小さな卓球クラブに通わされていただけだった。

だけどコーチはすごく優しくて、卓球もそれなりに楽しかったのでずっと続け、三年のインターミドルでは弱小中在籍ながら個人で全国に出場し(一回戦負けだったけど)、地元ではちょっと名の知れた選手だった。

高校進学にあたって、強豪校からの誘いもあったけど、今までずっと小さなチームでのほほんとやってきた私には『卓球に人生を賭ける』なんて覚悟はなく、普通に家の近くの新越谷高校に入学した。偏差値的にも丁度よかったし。

卓球部の実績なんて聞いたこともないし、どうせ弱小校だろうと高を括って、ちゃんと調べもせずに。

 

でも、まさか弱小どころか、卓球部の存在自体がなかったとは。

なんでも、八年前までは卓球があったらしいのだが、部員数不足で同好会に格下げされ、さらにその同好会も六年前にメンバーが全員卒業して自然消滅してしまったらしい。

 

今まであまり実感なかったけど、卓球ってやっぱり人気ないんだなぁ……。

だって、数ある運動部のなかで唯一、卓球部は地味でモテないし。

中高生がスポーツやる理由なんて99割がモテるためだし(偏見)。

私なんて、天才卓球少女なんて騒がれていたのに全然モテなかったし。初恋の女の子は気づいた時には弱小野球部の先輩と付き合っていたし。

 

け、野球なんかのどこがいいんだか。

あんなの、野蛮人がやるスポーツだし!

ここの野球部だって、暴力事件で活動停止していたって話だ。

 

けど、これからどうするか……。

 

私には選択肢が3つある。

 

1. 自分で卓球部を作る。

2. 転校して別の高校で卓球部に入る。

3. 諦めて他の部活に入るか、帰宅部になる。

 

まず1。

これは、一見一番マトモそうだけど、たぶん無理だ。

これができるなら、そもそも部員不足で廃部になったりなんてしない。同好会として一人で卓球を続けることもできるかもしれないけど、それはちょっと寂しすぎるし……。

 

つぎに2。

これはたぶん親が許してくれない。

うち、そんな裕福じゃないしなぁ。そもそも裕福なら共働きなんてしない(偏見)。

でも、土下座したら許してくれるかもしれない。どっちのママも、なんだかんだ私に甘いとこあるし。

……まあ、そこまでして卓球を続けたいかって聞かれると微妙だけど。だって卓球なんていくら強くたってモテないし。

 

最後に3。

まあ、これかな。

高校デビューついでに、モテそうなスポーツでも始めるのだ。テニスとかサッカーとかバスケとか。

でも野球部だけは絶対NO! 野球は野蛮! 野球は危険!

……決して初恋相手を奪われた妬みなんかじゃない。断じて。

 

さて、今後の方針も決まったことだし、とりあえずテニス部の見学でもしてみようかしらん。テニスなら卓球と似てるし、高校から始めても上手くなれると思う。それに、部紹介の時にチェックしたけど、うちのテニス部はレベルが高そうだし(顔面偏差値的に)。部長とかめっちゃ綺麗だった。同学年にも可愛い子がいるかもしれない。

 

そう思い立ち、教室を出ようとした私の背中に、誰かから声をかけられた。

 

「あのー、すみませーん。野球はお好きですかー?」

「野球ぅ……!?」

 

誰だし、その野蛮な球打ち遊びの名を口にしたやつは……!

私が振り向くと、そこにはにこにこした笑顔が愛らしい、背の高い女の子がいた。

ずっきゅーん!

 

「大好きだし! スポーツ少女ですから!」

 

私は反射的にそう答えていた。一目惚れだった。

中学時代の初恋なんてもう私の中ではどうでもよかった。

野球サイコー! 私のホームランで彼女のハートを射抜いてみせるし!

 

「よかった! 私たち部員不足で困ってるんです! ぜひ入部してくれませんか!?」

「いいでしょう、可愛いお嬢ちゃんのお願いだし。私なんかで良ければぜひ協力するし。……で、お嬢ちゃんのお名前は?」

「武田詠深です」

「武田詠深ちゃんかぁ。あの、連絡先とかって……?」

「え……連絡先? ラインで良ければ、部員はみんな交換してるけど……」

「じゃあ今すぐ入部するし! どこに行けばいい? 何をすればいい?」

「え、ええと、じゃあ、グラウンドに行きましょう! 私に付いて来てください。きっとみんなも喜びますよ!」

 

そう言うわけで、私は詠深ちゃんに誘われて、野球部に入部することにした。

 

 

 

***

 

 

 

「そういえば芳乃、ヨミはどこかしら? 見当たらないけど」

 

グラウンドでトスバッティングをする私に、息吹ちゃんが問いかけてきた。私は練習を中断して、息吹ちゃんに答える。

 

「えっと、ヨミちゃんは部員を勧誘しに行くんだって」

「部員ねぇ……。確かに、あと一人来てくれたら大会に出られるようになるのよね。でも、野球経験者にはもうすでに全員声をかけてダメだったんでしょ? 上手くいくかしら?」

「今日からは未経験者も勧誘するって言ってたよ。希ちゃんや白菊ちゃんの時みたいな強引な勧誘してなきゃいいんだけど……」

「でも、そればっかりはヨミに感謝しなくちゃいけないわよね。希はもちろんだけど、白菊も相当な金の卵だもの」

「たしかにそうだよね。なにせ、剣道全国優勝者! 心技体、鍛え方が違うよ!」

 

そう、後に判明したことだけど、白菊ちゃんは中学時代、剣道で個人優勝したことがあったらしい。

白菊ちゃんは野球こそ素人だけど、他の分野とはいえ頂点に立った貴重な存在。アスリートとしてのレベルはこのチームでも頭ひとつ抜けている。私たちも彼女から学ぶことは多い。

全身無駄なく鍛え抜かれた体、うーん、美しい! 惚れ惚れするよー!

 

「あ、噂をすればヨミが帰ってきたわ」

「ほんとだ。それに、誰か一緒にいる。もしかして、勧誘うまくいったのかな?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

短い黒髪ポニーテールの女の子だ。

身長は低めで、小動物みたいで可愛い。

だけど、下半身を中心によく鍛えられている。

筋肉の付き方を見るに、敏捷性が重要なスポーツをやっていたのかな?

 

「あら? 丹羽有希じゃない」

「え? 息吹ちゃん、知り合い?」

「何言ってるの、私たちと同中じゃない。会話したことは殆どなかったけどね。ほら、光陽台桜の天才卓球少女って地元じゃ結構有名だったじゃない。よく朝礼とかで表彰されてたわよ」

「ああ、そう言えば……。あの引き締まったふくらはぎには見覚えが……!」

「あんたはどこを見て人を見分けてんのよ……」

 

息吹ちゃんが肩をすくめる。

そんな私たちを見つけて、丹羽さんが声を発した。

 

「あっ。川口さんだし」

「あら、私たちのこと知ってたのね?」

「もちろんだし、小中一緒だったよね? あんま話したことはなかったけど、確か息吹さんとは小学三年生のとき、芳乃さんとは小学四年生のとき同じクラスだったはずだし。双子って珍しいから覚えてたし。それに、かなりの美人姉妹だし!」

「そ、そうかしら?」

 

息吹ちゃんが照れてる。

今まで野球漬けでオシャレとか全然してこなかったから、容姿を褒められる経験ってあんまりなかったんだよね。体育の時間とかに鍛えられた下半身を褒められることはよくあったけど。

 

「丹羽さんはどうして野球部に? 卓球はもうやめちゃったの?」

「ああ、うん。なんか、新越谷には卓球部なかったし」

「そうなのね。でも、それで卓球をやめるなんてなんかもったいないわね」

「別に、そんなことないし。私が卓球強かったのなんて小さい時からやってきた貯金みたいなものだし、上には上がいることなんて全国で思い知ったし。しょせん私は井の中の蛙だったし。それに……」

 

そう言いかけると、丹羽さんは隣にいるヨミちゃんを見た。

 

「こんな可愛らしいお嬢ちゃんが困っているって言うんだもん、私にできることならなんでもするし!」

「えー照れるなぁ」

 

まさか、色仕掛け!?

丹羽さんの瞳が完全にハートになってるよー!

 

ヨミちゃんがどんな方法で勧誘したのかちょっと気になるけど、でも、これは……いいのかな?

だってヨミちゃん、たぶん珠姫ちゃんと相思相愛だよね。丹羽さんの恋はたぶん実らない。部内恋愛を咎めるつもりはないけど、それでギクシャクしたりするのはちょっとまずい気もする。

……でも、せっかくの新入部員。これを逃すと、もう今年は大会に出られないかもしれない!

う〜ん。背に腹はかえられない! ここは多少の問題は見て見ぬフリをしよう!

某野球ゲームの育成モードだって、肘や腰に爆弾を抱えてる方が最終的な能力は高くなりがちだもんね!

 

私はにっこりと笑顔を浮かべ、丹羽さんに言う。

 

「卓球経験者なら反射神経もいいだろうから、きっと上手くなるよ! ささ、気が変わらないうちに入部届書いてー!」

「芳乃って目的のためなら残酷な選択肢も厭わないわよね……」

 

息吹ちゃんが小さくため息をついた。バレてた? さすが双子の姉妹。

 

丹羽さんが入部届を書き終え、晴れて野球部員となる。

 

「これで部員は九人。大会に出られるね」

「しかも、全国経験者が三人もいるわ」

「まあ、そのうち二人は野球以外の分野だけどなー」

「けど、一度何かを極めた人は他の分野でも上達が早いけん。今年は間に合わんかもしれんけど、来年以降は全国に行けるかもしれんやん!」

「わっ、私もみなさんの期待に応えられるよう、一層精進します!」

 

こうして、新生新越谷高校野球部は、夏の大会に向けてスタートすることになったのだった。




オリキャラの元ネタは、野球選手じゃありません。
実力・ネタ・知名度、どれをとっても現役トップクラスのあの卓球選手です。……え、卓球選手なんて張本しか知らないって? いい選手なので、知らない人はYouTubeなどで動画を観てみると、きっと好きになるはずです。

最初は普通に野球選手を元ネタにしようかと思っていたのですが、後々原作に登場するキャラと被るかもしれないなぁ……と思ったので回避するために筆者に馴染みのある卓球から採用しました。年代的に採用されなそうな往年の選手も考えたのですが、まあ、今回は味方チームのキャラなので特別に。

とは言っても、流石に今後登場するだろう敵チームのキャラ全員、ネタ被りを恐れて全然違うスポーツから登場させる訳にはいかないので、今後は普通に野球選手を元ネタにするつもりです。贔屓球団の選手とか出したいし。
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