プレイボールVSドカベン   作:コングK

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作者の趣味全開の物語にコメントをいただきありがとうございます。

高校野球漫画に出てくる高校でどこが強いのか、昔なんとなく頭の中で考えていました。タッチの明青学園、MAJORの夢島。ただ、作者が明訓びいきのせいか、いつも妄想の中で勝つのは明訓。
ならば、その明訓を苦しめる高校はいないのか。そう考えた時に出てきたのが墨谷です。墨谷ならば、キャプテン谷口ならば。あの明訓を苦しめるのではないだろうか。
その思いが、この小説の原点となっています。


第十話 「勉強特訓再び」

放課後。野球部の部室はかつてないほどの熱気に包まれていた。

丸井とイガラシの直訴によって実現することになった対明訓との引退試合の話は、夏の大会が無念の終わり方をした墨高野球部員たちの気持ちを盛り上げるのに十分だった。

あまりのうるささに丸井が怒鳴って静かにさせるが、すぐその時の話を聞こうと誰かが寄ってくる。

 

「あまり気にしても仕方ありませんよ。こうなることは予想できたじゃないですか」

「ああ、まあな。それも承知で行ったんだしよ。それより・・・」

「ええ。谷口さん、もうグラウンドにいましたよ」

嬉しそうに言うイガラシに、近くで着替えていた井口が本当かと顔を綻ばせる。

「あれ?お前、思ったよりも谷口さんに対して態度よかったんだな」

「と、当然じゃないすか。おんぼろ都立でベスト4に行った人っすよ」

「何だ、オメ。分かってるじゃないか!」

 

どことなく中学時代の後輩を思わせる井口に虫の好かなかった丸井は、嬉しそうに井口の肩をばしばしと叩いた。

 

「そんなことより丸井さん、小室先生に報告に行かないと」

「おう、そうだった。そうだった」

 

昨日明訓高校から帰ってきた時には夜だったため、二人は谷口への報告を優先し、部長の小室先生には朝に伝えるつもりだった。ところが、通勤時間の長い小室を待っている間に予鈴が鳴ってしまい、その後、他の3年生へ報告をしに行っていたため、結果的には伝えるのが一番遅れることになってしまった。

 

「OKをもらってますから、駄目だということはないでしょう」

イガラシからすれば、野球に興味のない部長は後回しで大丈夫だろうという思いがあったが、部長を知る丸井としてはすんなりそれには頷けない。

「あほ。あの部長、前例があるからな。油断できないんだよ」

 

以前野球部全体の学力が低くなっていると行われた勉強特訓はその当時所属していた部員全員にとってトラウマだった。

 

丸井の言葉通り、小室は10月に入っての練習試合ということで難色を示した。

 

「あのなあ、丸井。以前谷口にも言ったが、お前たち学生の本分は学業だぞ。野球にのめり込むのはいいが、はき違えちゃいかん」

「い、いや。そのことは分かってます」

「それに、部長はいいよと言っていたじゃないですか」

「そりゃあ、9月すぐだと思ったからな。10月の始めじゃと?二週間もしたら中間試験だぞ。分かってるのか」

「はい。ちょうど、その時期に秋季大会も始まるので」

「イガラシ!お前は成績優秀だが、他の者もそうとは限らんのだぞ。ましてや、3年は就職や進学もある」

「3年生には希望を聞いてます。無理強いはしません」

「何とかお願いします。以前みたいに勉強の特訓もみっちりやりますから!」

 

勉強特訓経験者の丸井としては正直思い出したくもない過去だったが、それでも試合の方が大事だ。

 

「オレが計画を立てて、両立できるようにします。それでいいでしょ」

素っ気なく言ってのけるイガラシに小室は目を丸くした。

「できるのか、イガラシ」

「やるだけですよ。やらないといけないのなら」

しばし見つめ合った後、小室が折れた。

墨谷二中で全国大会優勝を果たしながらも、トップの成績を誇ったイガラシの言葉には重みがあった。

 

「分かった‥。まあ、お前たちは前回しっかり頑張ったからな。だが、繰り返して言

うが3年には無理強いはするなよ!」

「それはもう重々承知しております・・・」

丸井がぺこりと頭を下げ、明訓高校の連絡先を手渡した。

 

                    

職員室で何気なく電話をしている小室に対し、他の教職員は一斉に耳をそばだてていた。昨日野球部の二人がやってきて、明訓高校に出かけていったのは皆が知っている。だが、その結果試合を行うかどうかについては誰も聞いていなかった。

 

「ええ。そちらも中間試験が近いですよね。お互い大変ですな。えっ?明訓さんでは補習なんかはしないのですか」

小室の声のトーンが変わったのが分かった。

「成程。さすがは強豪校。勉強の方も一流ということですな。うらやましいことです」

受話器を掴む力が強くなる。

「はい。それでは、10月の第一週でお願いいたします。はい。それでは」

 

電話が終わった小室を職員室の皆がわっと囲んだ。

「小室先生、本当ですか?あの明訓との練習試合って」

「ええまあ。」

野球にさして興味のない小室はそっけない。

 

「嘘だろ、おい。あのドカベンとうちがやるのを見られるってこと?」

野球好きの体育教師が咥えていたタバコをぽとりと落とした。

「こ、校長先生!これはすごいことですよ!!すぐさま全校に伝えないと!」

「新聞委員会に頼み、臨時で号外を発行してもらいましょう!すごい、すごすぎる!!」

 

興奮のるつぼと化した職員室で、一人小室はわなわなと拳を震わせていた。

「どうしました、小室先生。いくら野球音痴の先生でも明訓が相手なら興奮するでしょう」

「とんでもない!向こうの大平という顧問に言われたんですよ。うちは勉強の特訓をする必要はありません。普段それだけやってますからな、と。これは私に対する挑戦、ひいては公立高教員に対する挑戦ですよ!!」

「そうですかねえ」

「そうに決まってます。私立がなんぼのものか知りませんが、向こうがそう来るならこっちだって考えがある!!」

 

めらめらと闘志を燃やす小室に声を掛けた体育教師は唖然とするしかなかった。

 

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