プレイボールVSドカベン   作:コングK

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ドカベンとプレイボール、何とか両者のすり合わせができればいいと思っています。
ドカベンファンからすると、何かやりそうなのが墨谷。
プレイボールファンからしても、何かやりそうなのが巨人学園。

明訓戦に行くために、なんとか頑張って書いていければと思います。


第十四話 「対巨人学園戦決まる」

丸井とイガラシが部長に呼ばれ、職員室に行っている頃。

墨谷高校のグラウンドに見慣れぬ二人組の姿があった。

金太郎の恰好をした九郎と巨人学園の帽子を被った真田一球である。

異彩を放つ二人は、先ほどからじっと墨谷の様子を見ているが、声を掛けようとしない。

 

「随分と狭いグラウンドで練習してるね、一球さん」

「都立と私立は違うよ」

私立であり、各地から優秀な選手を呼び寄せるほどの資金力がある巨人学園とは異なり、墨谷は公立である。施設には雲泥の差があり、それは事実だ。

 

だが、一球の言葉にかちんときたのが、側で投球練習をしていた井口だった。

「都立だからどうしたって言うんスか?」

眉をしかめて、二人の方へ歩み寄り、一触即発の雰囲気となる。

墨高に入って揉まれ、最近はめっきり次期エースとしての自覚が芽生えてきた井口だが、もって生まれたけんかっ早さは治らぬらしい。

「お、おい・・・・・・」

 

側にいた久保がなだめようとすると、すっと間に入ったのが谷口だった。

「よせ、井口。本当のことだ」

「いや、でも・・・・・・」

 

谷口の姿を見て、途端に井口が大人しくなる。

谷原に惨敗した後、しゃかりきになって打倒谷原を目指すキャプテンの姿に、疑問を持った井口は、旧知のイガラシに尋ねたものだ。

 

「本当に谷原に勝つ気があんのかね」

それに対するイガラシの返答を井口は今でも覚えている。

「あの人は本気だぜ。いい試合をできれば、なんてハナから思っちゃいないんだ」

その時は半信半疑だったが、イガラシの言葉通りの言語を絶する特訓と、夏の大会での谷口の奮闘は、井口をして尊敬の念を抱かせるに十分なものだった。

 

その様子を見ていた一球は、探し人を見つけたように、満足そうにうんうんと頷くと、谷口へと歩み寄った。

 

「その帽子、巨人学園の・・・・・・」

「うん。真田一球に呉九郎だ。練習中すまないね。とりあえず、これを受け取って欲しい」

そう言って一球が手渡したのは、毛根鮮やかに書かれた巻紙の果たし状だった。

「これは?」

意味が分からないと首を傾げる谷口の脇で、井口がふざけるなと拳を震わせる。

「そっちがその気なら遠慮なく喧嘩を買うっスよ」

「むむっ!?」

九郎も拳を突き出し、井口と睨み合う。

「おいおい、九郎。よさないか」

「井口もだ」

間に入った一球は、谷口に事情を説明する。

明訓と練習試合をすると聞き、急遽思い立ったことがあった。

墨谷が明訓と闘うなら、その前に東東京大会準決勝のやり直しが先だろう、と。

 

「やり直し?」

「ああ。無念の臍を嚙んだのは君たちだけじゃないってことさ」

「がっかりしただ~よ。一球さんと二人で楽しみにしていたのに」

「す、すまん。俺がもっとしっかり部員の体調管理をしていれば・・・・・・」

「そんな。谷口さんだけのせいじゃないスよ」

 

井口の言葉に一球が頷く。

敗戦の責任はリーダーに帰すべきだが、全てをリーダーが背負う必要はない。

「勝ち敗けは兵家の常。終わったことは終わったことだ。だが、正直ぼくたちは納得していない」

 

一球の言葉は東京の高校野球ファンたちの声を代弁するものだった。

西東京代表、智将ダントツ率いる光高校が、日本全国の星を集めたスター軍団一番星学園を粉砕した後、次に彼らが期待していたのは、忍者の子孫と噂される真田一球率いる巨人学園と都立の星墨谷の一騎打ちだった。

 

『都立の星墨谷、続く快進撃』

『巨人学園準決勝進出。墨谷と谷原の勝者と対決』

新聞に踊った見出しは、高校野球ファンの期待の証でもあった。

 

それも当然だろう。

万年一回戦負けだった都立の弱小チームが昨夏には優勝候補専修館を、昨秋には東実をくだし、シード校となった。今大会では彼らは台風の目として一躍注目される存在だったのだ。

強敵相手に食らいつき、追いすがり、ついには勝利をもぎ取るという墨谷ナインの全力プレイと、超高校級のプレイヤーである真田一球率いる巨人学園が当たれば一体どちらが強いのか。高校野球ファンが居酒屋でビール片手に口角泡を飛ばして語る場面が多く見られた。

 

ところが。

 

墨谷が準々決勝で勝利するも、部員の怪我のために準決勝を辞退するとなった時、多くのファンは墨谷の健闘を称えつつも、その悲劇的な結末に割り切れない思いを抱かざるを得なかった。

野球の神様は何と酷なことをするのだと、文句の一つも言ってやりたい気分だった。

 

 

それは、準決勝で谷原を下し、その勢いのまま東東京代表に昇りつめて大甲子園に出場し、明訓相手に堂々と戦い抜いた巨人学園バッテリーからしてもまたしかり。対墨谷戦を心待ちにし、胸を躍らせていた彼らからすれば、肩透かしを喰ったようでいたたまれず、そのわだかまりは胸の中にずっと残っていたのだ。

 

「是非この勝負受けてもらいたい」

「どっちが本当の東東京代表か、決めたいだーよ」

九郎は無邪気に谷口の肩をポンポンと叩く。

「弱ったな。今の俺は一度引退した身だし」

谷口の言葉に一球はきょとんとした顔をした後、笑みを浮かべ、谷口を指差した。

 

「引退した身?」

明訓との練習試合に向けて気持ちが高まり、授業が終わるとすぐさま練習を始めた谷口は見るからに汗だくになっている。

「あ・・・・・・」

己の様子に改めて気が付いたのか、谷口が恥ずかしそうにすると、一球は豪快な笑い声を上げた。

 

「そ、その二人は・・・・・・」

職員室から戻ってきた丸井とイガラシはグラウンドにいる巨人学園バッテリーの姿に目を丸くした。

「ああ、丸井。この二人は・・・・・・」

「きょ、巨人学園の真田一球と呉九郎・・・・・・」

イガラシの呟きにあっと大きな声を上げる丸井。

「な、なんでそんな二人がうちのグラウンドに!?」

 

谷口の説明に目を白黒させながら、丸井とイガラシはぼんやりと一球を見つめた。

練習試合を申し込む時に巨人学園の真田一球なら引き受けてくれるかもと当たりをつけてはいたが、まさか向こうからやってくるとは思わなかった。

 

ただでさえ、対明訓戦に向けて、強敵相手の試合経験を積んでおきたい時だ。

甲子園に出場し、明訓と互角の勝負を繰り広げた巨人学園との練習試合は是が非でもやっておきたい。

しかも、彼ら曰く幻の東東京大会準決勝のやり直しをしたいという。

怪我人が続出し、無念の涙を流した墨高ナインにとってこんなにも美味しい話はない。

 

「な、なんでこんな・・・・・・」

 

イガラシは戸惑いながらも、一球に問わずはいられなかった。

どう考えても、一球達には得がない。

どうしてこんなことをするのだろうと。

 

一球はにっこりと微笑むと、

「お互い高校野球に悔いがあるのはよくない。そうだろう?」

そう答え、じっと谷口の方を見つめた。

「で、どうする? 墨谷のキャプテン」

 

谷口は何も言わず丸井の方を向いた。

「丸井さん・・・・・・」

脇からイガラシが丸井を小突くと、谷口の方をちらりと見た後に、丸井は大きく頷いた。

「よ、よろしくお願いします」

「よろしく!」

 

望む答えが得られ上機嫌になった一球は九郎と共に、

「よし、それじゃあ早速こっちも帰って打倒墨谷の練習を始めるぞ!」

「負けないだ~よ!」

声を掛け合いながら墨谷を後にした。

 

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