プレイボールVSドカベン   作:コングK

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巨人学園、真田一球の知略か。
墨谷高校、谷口タカオの奮闘か。

幻に終わった東東京大会準決勝、ここに開幕!!


※大甲子園風に書いてみました。
書き溜め分が無くなりましたので、次回まで少し時間がかかります。


第十六話 「出るか、真田忍者野球!」

タイムをとってマウンド上に集まる墨高内野陣。

「いや参ったぜ。シュート狙いとはよ」

「む。まさか、いきなりバントで仕掛けてくるとはな」

 

谷口は驚きながらも、これは強敵だと気を引き締める。

 

これまで墨谷が相手をしてきた高校はどこも自分達より遥かに強い高校で、彼らはいわば横綱相撲をすることが多かった。初回は様子見や自信からくる大振りなどが目立ち、格下と侮る墨谷相手に初回にバントヒットをしてくる高校など見たことはない。

甲子園出場校としての驕りは巨人学園にはなく、むしろその姿勢は挑戦者そのものだ。

 

「とにかくだ。真田が塁に出たからには確実に走ってくる。頼むぞ、倉橋」

「ああ」

頷いて戻る倉橋だが、内心やれやれと困る。

 

(オレへの信頼は分かるんだが、あの一球は厄介だぜ)

続く二番の法市に対し、倉橋の要求は初球高めのストレート。

 

ビシュッ!

 

「ボール!!」

 

キャッチと同時に二塁を伺うが、一球は一塁から動かない。

(リードからもまるで分らねえな。)

 

穴の開くように一球の顔を伺うが、涼しい顔で何を考えているか分からない。

(とにかく、用心よ。)

(はい。)

 

間に井口の牽制を挟み、二球三球と同じく盗塁を警戒するが、一塁の一球は全く動こうとしない。

 

(どういうこった。普通にバントで送るつもりか。ま、ノースリーだしな。)

「内野!」

倉橋が内野守備陣に指示を送る。

 

フォアボールはまずいとストライクをとりにいったところをバントというのはよくある話だ。

警戒しながら真ん中に放り様子を見る墨谷バッテリー。

 

 

ビシュッ。

 

ブン!! 

「ストラーイク!!」

勢いよく振られる法市のバットが倉橋の判断を狂わせる。

 

(バントはなし? ここは自由に打たせて次の九郎で勝負ってことか)

普段なら4番を任されている九郎は巨人学園では一球に次いで期待のできる打者だ。

 

「いいぞ、井口!」

丸井の激励に合わせるかのように一塁から一球が法市に声を掛ける。

「いいぞ、法市!」

「へん。てんでタイミングが合ってないじゃねえか」

セカンドの丸井の皮肉にも、一球は動じない。

「気にするな。法市! バットを持ってるんだぜ。振れば当たる!」

 

振れば当たるの言葉に井口がカチンとくる。

(よく言うぜ。真田と呉以外はみんな野球ド素人じゃねえか。)

 

過去巨人学園はレギュラーメンバーと当時の監督が対立し、一斉に退部するという事態に陥った。結果できた新チームは野球未経験者の集まりで、お世辞にも野球がうまいとは言えない。

 

(こちとらずっと野球をやってるんだぜ)

 

ビシュッ。

 

ブン!!

 

よしと気合いを入れた井口がど真ん中に投じた球を勢いよく法市が振る。

「ストラーイク!」

 

(どうだ!)

井口がちらりと一塁を見るが、そこに一球の姿は無い。

「え?」

「セカンド!!」

ファーストの横井が叫ぶのと、倉橋の送球は同時。

だが、井口がバッターに意識を集中させた隙をつき、まんまと一球は盗塁に成功する。

 

「おいおい、なんてえ足だい」

事前に調査をしていたが、まさかここまでとは思っていなかった倉橋は舌を巻く。

甲子園であの明訓バッテリーですら間一髪で刺せたぐらいなのだ。今の様子では自分では厳しいだろう。

 

井口、二塁へ牽制。余裕の表情で戻る一球に内心の動揺を隠せない。

(てんで読めないな。)

 

「井口、バッターに集中しろ!」

谷口からの檄に気持ちを切り替えようとした井口だが。

 

「大丈夫だ、法市! ストレートだけ狙ってけ!」

再びの二塁の一球からの一言にかちんとくる。まるでストレートなら簡単に打てると言っているようなものではないか。

さらに井口の怒りに輪をかけたのが、法市が左打席に入ったことだ。

 

(おい、おい。さっきの振りからしてそれはないだろう。)

倉橋が呆れる。一球と九郎以外は野球素人ということだが、これはどういうことだろう。

東東京大会の谷原戦では、確かに効果的に働いたが。

(ナメやがって。こいつでどうだ!)

ストレートでねじ伏せる。意地になった井口の六球目は指にかかり、ワンバンドとなる。

 

ザッ!

ブン!!

 

思い切り振った法市はそのまま振り逃げで一塁へ。

後逸せぬよう体で抑えた倉橋は慌てる。

『法市くん、振り逃げで一塁へ!!』

「やろう、このための左か!」

してやられたと状況を見る倉橋。すでに一球は三塁に到達しようとしている。

『倉橋くん、三塁を伺いますが、間に合いません! すでに真田くん、スタートを切っている!』

「横井!」

倉橋、一塁へ送球。

自分を虚仮にした法市がアウトになるとやったと笑みを浮かべる井口だが、そこへ谷口の声が飛ぶ。

「バックホームだ、横井!」

「え!?」

 

『真田くん、止まらない。三塁を蹴ってそのまま一気にホームを狙う!!』

 

三塁に止まらず、一気に本塁を突く一球。

横井からの返球を受けてタッチを試みる倉橋。

砂煙舞う本塁上の激突に両軍ナインも観客も固唾をのんで結果を見守る。

 

『手がはやいか。それともタッチか。さあ、判定はどうだ~』 

「セーフ!!」

主審が高らかにコールする。

 

『なんと、セーフ、セーフだ~。 巨人学園、この回なんとバントと振り逃げで先制~』

 

「どうだい、墨谷! これが巨人学園の野球だぜ!!」

湧き上がる巨人学園ベンチとは対照的に井口はショックを隠せず呆然とする。

 

『とりもとったり。これぞ、真田巨人学園の真骨頂~。墨谷高校井口くん、呆然自失~』

 

(オ、オレはバントと振り逃げしかされてないんだぜ。そ、それでどうして一点入っているんだよ・・・・・・)

 

 

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