プレイボールVSドカベン   作:コングK

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巨人学園一点リード。好投手真田一球に対し、墨谷はいかに挑むのか!


第十七話 「一回裏の攻防」

「ストラーイク。バッターアウト!」

主審の声が響く。

 

(さすがにやるな。)

四番の花田を三振に打ち取られ、一球は内心呟く。

一回表、一球にヒットに盗塁といいようにやられ、意気消沈した井口だったが、再三のキャプテン谷口の声掛けが功を奏し、見事立ち直ることに成功。後続を打ち取ってなんとかこの回を一点で切り抜けていた。

巨人学園としては本来ならばここで動揺した井口を畳みかける予定だったが、それができなかった。

一球はベンチに戻る墨谷ナインの中に谷口の姿を見付け、頷く。

「さあ、先制したぜ。このままいっちょ完封といこうかい」

ぐるぐると肩を回しながら守備につく巨人学園ナイン。

 

一方の墨谷は、ベンチ内でお互いに顔を見合わせる。

「まさか、おれたち相手に初回からバントとはよ」

横井が心底驚いたという感じで口を開く。

「すまんな。谷口。せっかく気付いていたってのに」

とこれは倉橋だ。

「仕方ないさ。向こうが一枚上手だった」

 

今思えばしきりに一球が声を掛けていたのは井口を挑発するためだろう。

一球が何か仕掛けてくると思ってはいたが、まさか自分達相手に初回からバントや盗塁を絡めて仕掛けてくるとは思わず、隙を突かれた格好だ。

 

「向こうもこっちを研究してるってことでしょう」

イガラシの言葉に谷口はうむと口元に手をやりながら同意する。

「ああ。巨人学園の戦い方はこれまでの相手と違う。連中には甲子園に出たという驕りが全くない」

「清々しいまでに一点もぎ取っていきやがったからな」

倉橋が渋い顔を作る。これまで相手を徹底的にマーク、研究し、その隙をついて勝ってきた墨谷にとって、相手の意表をつくプレーを連発する巨人学園はやりづらい相手だった。

 

「丸井、とにかく初球から様子を見ていけ」

「了解です」

 

「お願いします」

バッターボックスに入った丸井は一球の方をぎろりと見る。

初回、まんまと自分ものせられてしまったが、このままでなるものかという気持ちを込めて。

 

(どっちでくる? 上か下か?)

東東京大会の時の一球はオーバースローだったが、甲子園の対明訓戦では里中の影武者としてアンダースローに変えている。普通投球方法を変えるなど長い時間をかけていくものだが、一球はもって生まれた天性の野球センスであっという間にそれを物にしてしまった。

 

「プレイ!」

 

主審から声が掛かっての一球目。

 

ビシュッ!!

 

ズバン!!

 

下手投げからの勢いのあるストレートがど真ん中に突き刺さる。

 

(思ったよりもタマが伸びてきやがるな。)

墨谷は里中対策として、東実から提供された映像テープからアンダースローの特徴をつかむと共に、器用なイガラシや片瀬が下手から投げ、その球筋を確認して打撃練習をしていたが実戦で戦うとなるとまた勝手が違う。

 

「おおっ!!」

甲子園、対明訓戦での影武者里中を彷彿とさせるその球の勢いに観客から声が上がる。

 

「丸井!」

ベンチからの谷口の指示。とにかく当てていけとのジェスチャーに丸井はこくりと頷き何とか食らいつこうとするも、二球目三球目と掠らず無念の三振となる。

 

「どうだ、真田は?」

倉橋の問いに苛立ちを隠せない丸井。

「オーバースローより球がきてますね。浮き上がってくる感じで」

バッティングセンターに頼み込み、対専修館戦以上の速さの直球対策をしてきた墨谷だが、丸井は体感ではそれ以上の速さに感じると言う。

「見ている以上にバッターボックスに入ると打ちづらいっスね」

「下手投げの効果って訳か。まったく、明訓のせいで余計な面倒が増えたもんだぜ」

甲子園の対明訓戦の影武者作戦から一球の下手投げが始まった。倉橋としては文句の一つも言いたくなるだろう。

 

二番島田、同じく三振。

 

「イガラシ、頼んだぞ!」

ベンチからの声援を受け、バッターボックスに入るのは一年にして三番を任されたイガラシ。

その天性のバッティングセンスは墨谷随一と言ってもいいだろう。

『三番、ショートイガラシくん』

(ストレート一本槍とは舐めやがって)

二度三度とスイングをし、バッターボックスに入るイガラシ。

『さあ、墨谷は一年生ながら三番に入ったイガラシくんです。このイガラシくんは墨谷二中時代に全国大会制覇を成し遂げた期待のバッターです』

 

(三番のイガラシか。)

じっとその様子を観察する一球。

 

「しまっていこ~!」

「オウ!」

一球の声に反応する巨人学園ナイン。

(器用なバッターと聞いているがさて。)

 

初球、インコースへのストレート。積極的に振っていくも、振り遅れる。

「ストラーイク!」

 

(大分、球がホップしてやがんな。これでもボールの下か。)

こんなものかとバットを短く持ち、タイミングを測る。

 

二球目。同じくインコースへのストレート。

 

ちっ。

 

バットに掠り、ファールとなり、おおと声上がる墨谷ベンチ。

(いかん。大分差し込まれている)

予想以上に球威のある球に、驚くイガラシ。再度バットを振り、先ほどよりバッターボックスの前に立つ。

「こんなものか」

 

(さっそく、色々とやってきたな。)

マウンドの一球はじっとイガラシを見る。

(この男も全国を知っている男だ。決して侮れない。)

 

三球目。アウトコースへのストレート。イガラシ、当てるも一塁線へのファールとなる。

「さっきよりはよさそうだな」

うんと頷きつつ、タイムをとってふうと息を吐くイガラシ。

 

(さて、この男をどう打ち取るか、だが。)

その落ち着きを払った様子に一年生なのにすごいものだと素直に賛辞を贈る一球。

 

ぐっとグラブの中で握りを決めて、投じた一球の四球目。

「何っ!」

 

ククッ!

ブン!!

 

ストレート狙いだったイガラシは、まさかのカーブにタイミングがずれる。

「くそっ!」

何とかさきっぽに掠らせたボールはそのまま九郎のミットに収まる。

 

捕手の九郎がキャッチしそびれ前にタマを落としたのに気づき、振り逃げを狙うが、すかさず拾った九郎にタッチされ地面を叩いて悔しがるイガラシ。

 

「あ、あいつ。カーブも投げられるのか?」

自分達が得ていた夏の大会のデータとは大きく異なる一球の様子に墨谷ナインはただただ呆然とするしかなかった。

 




現在のスコア
     
巨人学園 1ー0 墨谷
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