プレイボールVSドカベン   作:コングK

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一番丸井にヒットが生まれ、勢いにのる墨谷。
立ちはだかる巨人学園真田一球を打ち崩すことができるのか!


第二十三話 「反撃!墨高打線」

『二番、センター島田くん。二番、センター島田くん』

 

(いい感じで決めて打たれたな。)

出塁した丸井を警戒しながら、次打者の島田に一球は意識を集中する。

 

カウントは1アウト。連続三振をとり、勢いに乗る三番のイガラシに廻す前にダブルプレーで流れを断ち切っておきたい。

 

「内野!」

送りバントを警戒し、前進守備をとる巨人学園に対し、打席の島田はバットを長く持ったままだ。

(強打か?)

 

ビシュッ。

一球目、ストレート。

キィン!!

一塁方向へのファール。

 

「島田!!」

墨谷ベンチから谷口が何やらサインを出すと、島田が頷き、バットを短く持ち直すが、依然その姿勢は打ちのままだ。

(一点を追うゲーム。セオリー通りならここはバントだが)

打ちの姿勢から一転してのバントもあり得るだけに、一球は頭を働かせる。

 

一方の墨谷ベンチ。谷口のサインに倉橋が異議を唱える。

「おい、谷口。一点差だぜ。送らなくていいのかよ」

「ああ。おそらく真田は読んでくる」

谷口はじっとマウンド上の真田を見つめ、呟いた。

 

恐るべきは忍者の子孫と言われる真田一球の深い洞察力である。

打者の気配からか、相手の心理を読むのか。

既にこの回までに二度。墨谷はバントを仕掛けるも一球にそれを悟られ、いずれも失敗に終わっている。

 

「なら好きに打たせようってのはまあ分からなくもねえが」

昨夏の対専修館戦。東実メモの小さな違和感に気づき、逆転のきっかけをつくったのは半田だが、あやふやな指示に対し、自ら考え、攻略の糸口を見つけ出したのは島田だった。

 

「ここは島田に任せよう」

墨谷二中以来の付き合いになる後輩に、谷口は任せることに決めた。

 

 

(一つ試してみるか。)

島田の様子に探りを入れようという一球の二球目。

インコース高めいっぱいのストレート。

「くっ!」

 

キィン!!

『ファール!!』

 

またも一塁線へのファール。

ストライクを二球続けたと言うのに、島田は全くバントの姿勢を見せない。

 

(ここは打ちじゃないのか?)

(もう少し後ろに下がった方が・・・・・・。)

巨人学園内野陣の迷いを読み取った一球が大丈夫と声をかける。

(そう皆が思う時はバントだ。)

 

打席の島田。一塁の丸井の方を見ながらこくりと頷く。

 

(やはりバントだ。)

 

『真田くん、振りかぶって投げ、おおっと、一塁ランナー丸井くん、走った!!』

「なに!!」

 

(一球さん!)

(捕ってから投げれば間に合う! 頼んだぞ、九郎!!)

 

シュッ!!

ククッ!!

 

ブン!!!

『カーブに島田くんのバットが回る!! 呉くん、急いで二塁へ!!』

「あっ!」

『あっと、なんと呉くん慌てた! これをお手玉だ!! 二塁へは投げられない!! 墨谷高校、ツーアウトながら、ランナーが二塁に進みました!!』

 

(いいぞ、島田。)

(やったな、丸井。)

二塁上の丸井ぐっと拳を握ってみせると、島田も同じポーズでそれに答えた。

 

「いいぞ、丸井!!」

やんややんやと声援の挙がる墨高応援団。

「ランナーもよかったが、打者のアシストも褒めてやらにゃあな」

徳川は島田の方にくいと顎を向ける。

「端からこうするつもりだったんじゃろう。バントしようにも一球はやたら鼻が利く。かといって打てばゲッツーになる危険があるからのう」

「ストレートならやばかったぜ。無茶すんなあ、谷口の野郎」

「ふえへっへっへっへ。無茶なもんかい。この回、一番からバッティングが変わったのがわからんのか」

「丸井から? 何か変わったか?」

近くにいる応援団長に声をかける田所。

「さ、さあ」

「ふん。どいつもこいつも見る目がない。お前さんの後輩、どうやら気づいたようじゃぞ、影武者の弱点に」

「え・・・・・・」

 

(じゃが、問題はいくら弱点に気づこうと一球は間違いなく超高校級。畳みかけることができるかじゃが。)

 

「ごめんだ~よ、一球さん・・・・・・」

タイムをとり、マウンドに集まった巨人学園の内野陣に文六。

しょげる九郎の肩をぽんと一球が叩く。

 

「気にするな。よくあることだ。大事なのはこの後どうするかさ」

「にしてもよ、さすがは墨谷づら」

法市殿馬が感嘆の声を上げる。幻の準決勝の相手。甲子園で明訓に対し善戦してきた自分達なら多少のブランクは関係なくいけると思っていた。

 

「堀田に司に一角と三球士がいりゃあな」

郷の言葉に、文六が噛みつく。

「それは言わない約束だろ!」

「文六の言う通りだ。いないものは仕方ない。まだ、こちらが一点勝っているんだ。みんな、気を引き締めていくぞ!」

「おうっ!」

 

『巨人学園ナイン、好打者イガラシくんを迎えて気合十分。一方のイガラシくん。初回に打ち取られて後はヒットを一本放っていますが、未だ得点には結びついていません。この好機をものにすることができるか!』

 

(三番のイガラシか。)

 

イガラシを迎えながら、一球の頭に去来するのは墨谷との練習試合を決めて後のことだ。

 

一球の頼みに応じ、再集結した巨人学園ナインだが、その彼らを驚かせたのが、甲子園でも活躍した三球士の不在である。

 

「三球士が来られない? お、おい。どういうこった」

不満を口にする郷に、マネージャー兼プレイヤーの文六が答える。

「司と一角はどうしても外せない用事が入っているみたいなんだよ。堀田も用事があるみたいなんだが、明訓相手ならキャンセルもするが、墨谷じゃわざわざ地方から来る価値はないとさ」

「あの野郎、予選にいなかったから墨谷のことを知らないんだ」

「どうする、一球さん。三球士がいないとなると影武者作戦はきついぜ」

「仕方ないさ。いる者で何とかするしかない。予選がそうだったんだ。条件的にはそう変わらない筈だ」

「一球さんの言う通りだ~よ」

「それはそうかもしれないが・・・・・・」

「すまない。ここはやらせてくれないか」

頭を下げる一球に、文六始め、巨人学園ナインは仕方がないなとためいきをついた。

「甲子園まで一球さんに連れてってもらったしな」

「いっちょやるか」

 

(皆に我がままを言い、おれは墨谷との試合にこだわった。明訓との再戦ならず、それでも快く応じてくれたナインのためにも、ここで打たれる訳にはいかない。)

 

一球目。

ビシュッ!!

『真田くん、ここは踏ん張るか。注目の第一球。投げた!!』

球種はストレート。ここは打ちだとイガラシはバットを振ろうとするが、

「うっ」

『イガラシくん、バットを止める止める!!』 

ズバン!!

「ストラーイク!!」

『狙いと違ったか、イガラシくん! 慌ててバットを止めましたが、間に合いません』

 

「す、すげえ」

ぽつりとつぶやく田所に、徳川が答える。

「よく止めたな。打ちにいってたら、凡打だぜ」

 

(こいつは、おっそろしい気迫だぜ。)

思った以上の球威に、打席でごくりとイガラシは息を呑んだ。

(これが、甲子園で明訓を苦しめた連中の本気かよ。)

遥か彼方のものだと思っていた甲子園。甲子園常連と呼ばれる谷原を倒し、明訓のグラウンドで岩鬼と対戦し感じていたことだが、改めてその頂の高さを思い知る。

(だが、負けるかよ。)

二度三度とバットを振り、気持ちを落ち着ける。

 

二球目。同じくストレート。

 

キィン!!

『ファール!』

バックネットを超すファールに観客からためいきが漏れる。

 

(ミートしているんだが、押し込まれているな。)

再度バットを振りながら、巨人学園の守備隊形を確認する。

(前進守備のままか。真田の球威におれが負けると思ってやんな。それなら。)

 

『さあ、ツーストライクと追い込んだ真田くん。ここは好打者イガラシくんを打ちとり、墨谷の勢いを止めることができるか。墨谷高校イガラシくん、追い込まれていますが、ここからが正念場。見事、二塁ランナー丸井くんを返すことができるか!』

 

ぎゅっとバットを握るイガラシに、一球は目を凝らす。

(妙な雰囲気を感じるな。何か仕掛けてくる気か。)

ここは様子を見ようと一球高めに外すが、イガラシも走者の丸井も動きを見せない。

(どうにも気になる。ここは打ち一択の筈だ。)

(変化球で様子を見てみるだ~よ。)

(ああ。頼むぞ、九郎。)

 

四球目、ストライクからボールになるカーブ。だが、イガラシのバットはぴくりともしない。

(どうする、一球さん。)

(考えすぎてもいかん。虎穴に入らずんば虎子を得ずさ。)

 

 

『真田くん、セットに入りました。あっとイガラシくん、バントの構え!』

「何?」

五球目。真ん中よりやや高めのストレート。

バントの姿勢を見せるイガラシに対して、ファースト二宮、サードの郷が前進する。

しかし。

 

キン!!

『あ~。プッシュバントだ~~!』

 

「しまった!」

『前進守備の内野の頭上を越えた~。レフト三原くん、懸命に追いつくも間に合わない!墨谷高校イガラシくん、技ありのバントヒット!!』

 

一塁を駆け抜けたイガラシに墨谷応援団から歓声が飛ぶ。

「いいぞ、イガラシ!!」

(ふん。丸井さんを返せなかった。そんな褒められたものじゃないさ。けど。)

 

イガラシは打席に入る谷口を見る。

(頼みますよ、谷口さん。)

 

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