プレイボールVSドカベン   作:コングK

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このプレイボールVSドカベンは拙いながら自己満足で書き上げているものですが、作者自身には密かに作品を完成させ、水島新司先生にお目にかけ、長い間楽しい漫画をありがとうございますと言う気持ちを伝えたいという願いがありました。

ですが、一月の水島新司先生の訃報を聞き、その気持ちが粉々に砕け散り、書く気が全く無くなってしまいました。そんな時にドカベンを再び読み直し、昔の興奮が蘇ってきました。細々と書き続けていければと思います。前話を加筆修正し、これまでの話も若干修正する予定です。

水島新司先生のご冥福をお祈りいたします。楽しい野球漫画をありがとうございました。野球の面白さを教えていただきありがとうございました。ドカベンのプロ野球編が始まると聞いた時の興奮と感激は忘れられません。


第三十四話 「特訓、また特訓」

各野球部間、秋季大会に向けて練習に励む中噂が広がるのは早い。

「元明訓高校監督名将徳川家康、墨谷の臨時コーチに就任す」の報は偵察に訪れていた各校部員の口から口へと伝えられ、瞬く間に広がった。

 

「と、徳川監督がどうしてうちに・・・・・・」

高校野球好きの体育教師は甲子園の時期でもないのになぜと首を捻り、ああと一人納得した。

 

徳川にとっては打倒明訓こそが全てなのだ。

地方大会だろうが、甲子園だろうが関係ない。

彼にとっては山田達のいる明訓と戦えるということこそが全てであり、そうであるならば練習試合だろうが構わないのだろう。

 

「噂の名伯楽のお手並みを拝見するかな」

呑気に同僚と連れだって、河川敷に行った彼は、特訓の余りの激しさに吸いかけのタバコをポトリと落とし、興味本位で覗いたことを後悔した。

 

「どうしたい、そんな程度の努力と根性で明訓に勝とうなんて片腹痛いぜ!!」

かっかっかと愉快そうに笑いこともなげに言い放つ徳川。

その前には、息も絶え絶えになりながらうずくまる丸井の姿があった。

 

「さあ、お次で300じゃ!!」

「さ、300? ひ、一人に?」

墨谷の様子を偵察に来ていた他校部員からため息が漏れる。

あの凄まじいノックを200も受けるというのか。

「ウソだろ・・・・・・」

自分達との大きな隔たりに愕然とする彼らの脇を通り、ボロボロになった墨谷高校ナインが運ばれていく。

 

ふらふらになった丸井を見てぐいと徳利をあおると、徳川は大きく息を吐いた。

「おいおい。どうしたい。そんなこっちゃ打倒明訓なんぞ夢のまた夢やぜ。岩鬼や山田は二年の時点でわしのノックを500近くはさばいたぜ?」

「ご、500だと!? ば、化け物だ!」

 

ギャラリーの声ににやりと笑った徳川はとんとんと肩をバットで叩く。

「そうとも化け物さ。そんな化け物連中と闘うんじゃ。普通にやってて勝てる訳あるめえ!!」

「も、もういっちょ!」

バスンとグローブを鳴らした丸井の様子に徳川は満足そうに頷くと、

「それでこそキャプテンよ。その意気じゃ!」

容赦のないノックの嵐を浴びせた。

 

夜。思い足を引きずり戻って来た河川敷組を学校組が迎える。

「な・・・。今日はまた一段とすごいな・・・」

猛練習で鳴る彼らも絶句するほどの河川敷組の様子に、松川はすぐさま一年生に指示を出す。

「怪我の手当と、荷物の片づけを!」

ぱっと散った一年生達がきびきびと動くのとは対照的に河川敷組の面々はその場に倒れ伏した。

「さてと、わしはひと風呂浴びて一杯やりに行くかな」

張本人である徳川はけろりとした様子で、疲れを微塵も見せない。

 

「あ、あの・・・・・・」

去ろうとする徳川に松川は声を掛けた。

「なんじゃ。何か用か」

振り向きもせずにそれに応える徳川。

「その・・・・・・」

「特にないならわしは行くぞ。汗をかきすぎたんでな。水分を補給しないとのう」

 

下を向いたまま松川はじっと動かない。

ちらりと松川に目を向けた徳川はやれやれと呟いた。

 

「悩みがあるなら言うとええ。わしは弱いものの味方じゃからのう」

 

                  

 

連日の猛練習の凄まじさにめっきりとギャラリーが少なくなった河川敷。

「これぐらいがちょうどええ」

徳川は頷くと、今日は特別練習があると告げた。

「特別練習?」

「い、今までのは何だったんだ」

「あんなもんは基礎練習じゃ」

戸室と横井が顔を見合わせる。既に彼らの考える以上の猛練習であるだけにそれより上など想像もつかない。

「ええか。今の明訓はわしが3年間戦ってきた中で一番強い。そんな連中と戦うにはお前たちには足らんものがある」

「それは?」

「強敵との戦いの経験よ。毛色の違う相手と戦い、それに勝ってきたのが明訓じゃ。巨人学園とやったのはいい考えじゃが、あれだけでは足りん」

「た、確かに。でも、今から練習試合を組むのは無理なのでは?」

イガラシの問いに、徳川は不敵な笑みを浮かべた。

 

「わしを誰だと思ってるんじゃ。高校野球界にその人ありと言われた徳川家康やぜ。わしのつてで特別ゲストを呼んでやったわい」

「特別ゲスト!?」

「おうとも。おい、姿を現さんか!」

徳川の呼びかけに応じ、土手の向こうから姿を現した人物を見、墨谷ナインは驚きの声を上げた。

 

「お、おい!!」

「ああ。な、何であの二人がここにいるんだ」

 

そこにいたのはかつて明訓と関東大会を戦い、今夏千葉県大会決勝ではあの中西球道率いる青田と激戦を繰り広げた男たち。

 

千葉県代表クリーンハイスクール。

背負い投法の影丸と黒い弾丸ハリーフォアマン。

歩いてくる二人にあっけにとられる墨谷ナインの反応を愉快そうに見つめながら、徳川はかっかっかと笑い声を上げる。

 

「それだけやないぜ!」

徳川が指差したのは橋の下。そこには先ほどから声を掛けるのを待っていたのであろう二人組の姿があった。

 

「なんだって!!」

「あれは!!」

二人組のうちの一人。やってきた長身の男。

片手でゴムまりを握りしめながらやって来るその男から発せられるあまりの迫力に思わず墨谷ナインはごくりと唾を呑み込んだ。

 

 

 

横浜学院が誇る大エースにして、大怪我を乗り越え神奈川県予選で明訓を苦しめること二度。

超剛球の使い手にしてもう一人のドカベン。

 

「ど、土門剛介・・・」

 

 

そして、

「どーも」

ぺこりと律儀に頭を下げてやって来るその恋女房である谷津吾朗。

 

思わぬ来訪者にあんぐりと口を開けた墨谷ナインに徳川は喝を入れた。

「さあさあ。時間は少ないんじゃ。早速特別練習といこうやないか!」

 

 

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