プレイボールVSドカベン   作:コングK

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キャプテン50周年なんて知りませんでした。
集英社での特別展示だけでなく、どこかで特別展を開いて欲しいです。


プレイボールVS.ドカベン 後編
第三十七話 「仮想明訓に挑め!(」


河川敷グラウンドに吹き荒れた土門剛球旋風。

まるで神奈川県大会決勝の明訓戦を思い起こさせるかのような土門の力投に、墨谷打線は圧倒され、一巡しての結果は丸井のバント失敗と倉橋のキャッチャーフライを除く全てが三振という有様だった。

 

「少々ムキになりすぎたか」

マウンドへと歩み寄って来た谷津に土門が苦笑してみせる。

徳川の煽りを受け、思う存分投げ込んだものの、本来の役目は対明訓の助っ人だ。

これでは相手をただ意気消沈させるだけになりはしないか。

 

「いえ、そういう訳でもなさそうですよ」

谷津はちらりと墨谷ベンチの方を向く。

影丸と同じく一回りでマウンドを降りるつもりだった土門だが、墨谷の面々はバットを片手にひそひそと話し込み、次打者の丸井に至ってはそんなことは関係ないと続ける気満々で素振りを始めている。

 

「成程。こいつは侮れないな」

神奈川県下土門の剛球のすごさは鳴り響いている。明訓を追い詰めたことだけでなく、その剛球を捕れるキャッチャーがおらず全力投球ができなかったという話は、今や各野球部間でまるで伝説のようにまことしやかに語られている。そんな己のタマに臆することなく敢然と立ち向かってくる者達があの明訓以外にいようとは。

 

(この時期に明訓に挑もうとするだけのことはある。)

秋季大会も近いこの時期。代替わりが起こり、新たなチームのための土台作りに忙しい筈だ。

王者明訓へと挑むことは無駄ではない。だが、今必ずしもすべきことではないだろう。

3年生もまた然り。卒業に向けて進路のために忙しい時間を削り、ただ一試合のために地獄のような特訓をする意味はあるのか。普通に考えたらありはしない。

 

(まさに野球狂。)

余人からすれば愚かとしか言えぬ選択。

だが、打倒山田を目指す土門にとって、彼らの熱い思いは理解できるものだった。

その思いに応えようと再びマウンドに向かおうとする土門を、

「おっと待ちな、土門さんよ。一回ずつ交代といこうじゃねえか」

横合いから影丸が呼び止めた。

 

 

「カゲマル・・・・・・」

先刻までとは打って変わった元チームメイトの態度に、傍で見ていたフォアマンは驚く。

 

「かっかっかっか。影丸よ。居ても立っても居られなくなりおったか。結構結構。お前さんが振るのは棒切れじゃねえ、バットよ」

「それじゃあ・・・・・・」

土門からボールを受け取り、マウンドへ上がろうとした影丸を徳川は制す。

「おいおい。まだお前さん達の攻撃が終わってないぜ」

「どういうことだ?」

「何のためにわしがフォアマンも呼んだと思ってるんじゃ。打つだけじゃねえ。投げる方も鍛えるためよ。仮想明訓を相手にしてな!」

 

「か、仮想明訓!?」

徳川の言葉に墨谷ナインが反応する。

巨人学園との練習試合で真田一球が秘策として繰り出した影武者明訓作戦。

本物の明訓ナインそっくりの仕草を見せる彼らの前に墨谷ナインは翻弄された。

 

「巨人学園の連中がやったのはあくまでもただの物真似よ。ま、あそこまで突き詰めて真似れば本物に近い動きはできようが、本家明訓と比べりゃあ格落ちもいいとこじゃ。だが、このわしの仮想明訓はそんなものとは訳が違う。少なくとも本家明訓に劣ることはなかろうぜ」

「まさか、そんな・・・・・・」

自らの発言にどよめく墨谷ナインを愉快そうに見渡すと、徳川は大きな声で告げた。

 

「一番、土門!」

「む」

 

「三番、影丸!」

「何だと?」

 

「四番フォアマン!」

「!」

 

「五番谷津!」

「え・・・・・・」

 

「な!!!」

余りの衝撃に、墨谷ナインは一声発したまま、言葉を失った。

クリーンハイスクールに横浜学院。関東きっての強豪であり、明訓を大いに苦しめた異なる二チームでクリーンナップを務めた4人。その彼らが、まさか同じ打線を組むことになろうとは。

 

「じょ、冗談だろ・・・・・」

戸室の呟きに、徳川が首を振る。

「だが、それほどや。明訓の上位打線の破壊力は」

誰よりも明訓を知る男の反論に対し、皆言葉を返すことができない。

 

「確かにそうですね」

イガラシは丸井と共に明訓を訪れた際のことを思い出し頷いた。

世間では大言壮語の色見本という者もいる岩鬼だが、実際に対戦して肌で感じたその迫力はこれまで感じたことのないものだった。あの岩鬼の後に、五番に座る微笑まで一切気を抜くことができないのが王者明訓打線の特徴だ。おまけに何と言っても、四番には日本一の打者である山田が控えている。

 

「あれ、でも二番がいなくねえか」

横井の一言に、皆があっと気が付く。

「そういや呼んでなかったな」

「呼び間違いか? いや、でも五番と言っていたぜ」

どういうことかと見つめてくる墨谷ナインに対し、徳川はポリポリと頬をかいた。

 

「ああ。実はもう一人呼んでいるんじゃ。二番に座る奴をな」

「成程。そいつを合わせて仮想明訓ってことか」

「じゃが、飛行機が遅れておるらしい。仕方ない。待っている時間がもったいねえ。おっぱじめるとするか」

「飛行機? そんなに遠くから来るのか?」

谷口がそう隣にいる倉橋と顔を見合わせた時だった。

 

キキ――――ッ!!

 

河川敷の土手に派手な音を鳴らしながら、一台のタクシーが止まったかと思うと、中から一人の少年が姿を見せた。

その姿に気が付いた徳川が嬉しそうに徳利を掲げて見せる。

「遅いじゃねえかよぉ、知三郎! 待ちくたびれたぞ!」

 

「知三郎って、ま、まさか・・・・・・」

いち早くその正体に勘づいた谷津は目を大きく見開いた。

 

よれよれの学生帽から眼鏡をかけた片目だけを覗かせた少年は、一見野球でもするのかと思われる程色が白い。だが、彼こそが今夏の甲子園においてあの山田を不調に陥らせ、全国の名だたるエースを打ち砕いてきた秘打男殿馬のリズムを狂わせた張本人なのだ。

 

「これでも朝一番に高知を出てきたんですがね」

飄々とした表情ながらも、油断のならぬ雰囲気を漂わせグラウンドへと歩み寄る少年に、墨谷ナインはお互いの顔を見合わせる。

 

「おい、あれって!」

「ああ、間違いない」

 

どうして彼がここにいるのか。

素人同然の仲間たちと共に、明訓と死闘を繰り広げた南国土佐の雄あの土佐丸を撃破し、甲子園で明訓を相手にゼロの神話を見せつけた男。

 

高知県代表室戸学習塾のエース。

 

そして、あの犬飼三兄弟の末弟。

 

「い、犬飼知三郎・・・・・・」

 

 

 




仮想明訓打線
一番 土門
二番 犬飼知
三番 影丸
四番 フォアマン
五番 谷津
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