プレイボールVSドカベン   作:コングK

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大甲子園やドカベンの単行本がどこも売ってないんですよね。中古でもプロ野球編ばかり。


第五話 「岩鬼を打ち取れ!」

意外な岩鬼の申し出にいつも冷静なイガラシもさすがに聞き返す。

「しょ、勝負?」

「そうや。お前らが勝ったら試合をしたる。負けたら試合はなしや」

「なあんだ、簡単なことづら。ど真ん中だけに放っておけば勝手に三振するづら」

「黙れ、とんま。一打席勝負や。それ以上はさすがにサービスはできん」

「じゃあ、俺が受けよう」

 

キャッチャーミットを持つ山田が、イガラシに向かって頷く。

「わ、分かりました。山田さん、お願いします」

「山田のサイン通りに投げればまず間違いないづら」

 

緊張した表情を見せるイガラシの肩をぽんと殿馬が叩く。

「なんや、とんま。グラブなんぞ持って」

「打ち取るのが条件なら守備が必要づら」

「あ、あのセカンドの守備なら俺が」

「へえ。お前さんセカンドなのかい?でも、勝負に勝ちたいなら殿馬に任せた方がよくないか。

日本一のセカンドだぜ」

 

微笑の言う通りだということは丸井も痛いほど分かる。数々のライバルを葬って来た秘打だけではなく、殿馬はその華麗な守備も秘守として有名だった。

 

「それでも、後輩が勝負しようってのに、俺だけ見ている訳にも」

「そんじゃあ、お前がセカンドで俺がショートに入るづら」

とうの殿馬は気にせず、予備のグラブを丸井に貸すと、ショートの守備位置に歩いていく。その他明訓のレギュラーが守備に着き、サードには岩鬼の代わりに本来はショートの高代がついた。

 

「頑張れよ」

「あ、ありがとうございます」

里中からボールとグラブを受け取ったイガラシは、大きく息を吐くと投球練習の時間が欲しいと告げた。

「かまへん。わいみたいなスターと当たることは滅多にないことやさかいな。好きにするとええ」

「変化球は何を持っているんだ?」

「カーブとシュートです」

「よし、それならストレート、カーブ、シュートでグー,チョキ,パーでいこう」

「分かりました」

山田が構えたミットにすいすいと球を決めていくイガラシにひゅうと微笑は口笛を吹く。

「へえ、こいつは随分とコントロールがいいじゃないか。こりゃあ、岩鬼の負けかな」

「やかましい!こっちはとうに準備万端じゃい!」

「よし、いけるか?」

「はい」

 

 

カツ―ンカツーン。

 

バットとバットが合わさる音が明訓高校のグランドに響く。5.6本のバットをまとめて持って素振りをし、放り投げたバットがバットケースに見事に収まる。岩鬼一流のパフォーマンスだ。

 

「うっ・・・」

バッターボックスに入った岩鬼を見たイガラシはその圧倒的なオーラに鳥肌が立った。

(これが、岩鬼。これが、明訓か・・・)

男岩鬼。岩鬼火山。悪球打ち。

甲子園常連という谷原のバッター達と比べても、明らかに数段上であろうその存在感に、思わずイガラシは大きく息を吐いた。

 

「さあ、花は桜木、男は岩鬼。一発勝負の始まりじゃい!!」

「プレイ!」

審判に立った里中が大声で始まりを告げた。

 

(面白いこと言うてくれるやんけ。)

岩鬼はバッターボックスに入りながら、イガラシをじっと見た。神奈川県のライバル、全国で闘った強豪たちに比べれば、感じるプレッシャーは何ということはない。

だが、ぎりぎりとこちらを見つめるその気迫は恐ろしいものがあった。

 

(そないに思われとるキャプテンも果報者やな。)

 

情に篤い岩鬼にとって、丸井達の話はほろりとさせるものがなかった訳ではない。だが、それは勝負の世界ではよくあることだ。明訓にしても大黒柱の山田や、エースの里中が怪我に悩まされている。

 

「来やがれ、猿顔!!」

 

ブン!

 

「うっ」

スタンドまで届くかというような豪快なスイングに思わず丸井の腰が引ける。

「ストラーイク!」

 

ブン!!

 

「ストラーイクツー!!」

ど真ん中へ続けて二球。さすがに岩鬼を誰よりも知っている山田は小細工なしのストレートを要求し、イガラシもその期待に応えて見事に空振りに切ってとった。

 

「ドアホが。わいのファンならこそこそせんと勝負してこんかい!」

「ほ、本当に悪球打ちなんだ・・・」

 

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