プレイボールVSドカベン   作:コングK

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第六話 「勝負の行方」

「ほ、本当に悪球打ちなんだ・・・・・・」

 

新聞やテレビで散々話題になっているが、実際に対戦してみるまで岩鬼が悪球打ちというのはどこか誇張された情報だと思っていたイガラシは、驚きのあまり思わず呟いた。

 

「いけそうじゃねえか。その意気だ、イガラシ!」

「いや、気を付けないと。あのハッパ、何を考えているかわからないづら」

 

2ストライクをとり、いけそうだと興奮する丸井を、殿馬がたしなめる。

「ただのよ、悪球打ちってだけじゃないのがよ、あのハッパの厄介なとこづら」

「そっちがそうくるなら、わいにも考えがあるで!」

 

岩鬼がポケットからぐりぐり眼鏡を取り出し、装着したのを見て、審判の里中が抗議の声を上げる。

「おい、岩鬼。スターなんだ。ファンサービスをしたらどうなんだ」

「じゃかましいわ。ええか、里中(サト)。わいはファンを大切にする男やが、こと勝負事には手を抜かんのや」

 

(困ったな。)

当初の目論見が外れた山田はふうとため息をついた。

岩鬼の性格上、気軽に引き受けられず、仕方なしに勝負という形にすることによって、練習試合を引き受ける口実としようということかと思っていたが、どうもそうではないらしい。

 

(勝負にこだわった時の岩鬼は強い。ど真ん中に投げても打たれるかもしれない。)

名だたる速球投手、剛球投手達が岩鬼の悪球打ちを攻略しようとしたが無理だった。唯一岩鬼に悪球で勝負することができたのは、あの青田の怪童中西球道だけだ。

 

(だが、ど真ん中だ。)

山田のサインにイガラシが頷き、三度ど真ん中へのストレート。

キィーン。

打球が真後ろに上がり、ネットにぶつかり地面に落ちる。

 

「ファール。・・・タイミングが合ってるな」

里中の呟きに山田が頷いた。

 

「岩鬼がど真ん中を打てるとなるとお手上げだ」

「なんや、やーまだ。随分素直やないか。お前が万が一プロに引っかかるようなら毎回わいと対戦するときは頭を捻らせなあかんで」

「本当にそうだ。今のうちから気を付けておかないと」

山田の賞賛に気をよくした岩鬼は眼鏡をしまうや、マウンドのイガラシに吠える。

「もうサービスはおしまいや。よくよく考えたらこのスーパースターのわいがお前らみたいな三下にここまでファンサービスしてやる必要はないさかいな。さあ、悔いのないようにかかってきやがれ!!」

 

「おい、山田。どういうことなんだ、あいつ。打とうとしたり、そうでなかったり」

里中がこっそりと耳打ちするも、山田も首を振る。

「さあ。俺にもよく分からない」

「ドアホ!お前らがいくら考えようと、わいの考えを理解することはできん!!」

 

「墨谷のピッチャーよ、ここはチャンスづら。あのハッパ。山田に褒められていい気分になっているづら」

「ここで打ち取らないといけないってことか」

 

「イガラシ、落ち着いていけ」

丸井の檄が飛ぶが、イガラシはそれに反論する。

 

「これが落ち着けるもんですか」

たった3球投げただけなのに、この高揚感はなんだろう。

「お前なあ」

それ以上何も言わず、イガラシは無言で振りかぶる。

 

投げたのはストレート。だが、汗がボールにかかり、やや変化した。

「しまった!!」

ど真ん中からややボール気味の球。それは岩鬼にとっては打てる球だ。

「残念やったな。いい手土産に持って帰るとええ。爆打岩鬼の一発を!!」

 

「え!?」

丸井が驚いたのは、打つ前にショートの殿馬がすっと動いたことだった。

グワキィン!!

半分だけストライクに入っていたためか、ネットを超えることはなく打球は勢いよくセンター方向に上がる。

深めに守っていた微笑がダッシュする。

なぜか、ショートから追ってきていた殿馬と、その動きに気づき、同じく動いた丸井もボールを追いかける。

 

「これは俺がとらなくちゃならないんだ!!」

わき目もふらずに凄まじい勢いで走っていく丸井に、殿馬は追うのを止め、指示を出した。

 

「前、前、前、前。そこづら、振り返れ!!」

殿馬の指示に従い、振り返った時。

ずどんと、グラブにボールがおさまったかと思うと、そのまま打球の勢いに押されたかのようにごろごろと丸井は転がった。

 

「おっと、落とすんじゃないぞ」

カバーに入った微笑が笑みを浮かべる。

「万が一落としでもしたら、もうひと勝負と面倒くさいことを言いそうだからな」

「誰が言うかい!わいは一度言った言葉はひっこめん。高代(タカ)! わいらの引退試合を企画せえ!」

「はいはい、了解しました!」

新キャプテンとなった高代を小間使いのように扱う岩鬼の態度に山田は苦笑を浮かべた。

 

「それじゃあ、追って日時を連絡します」

「ああ。楽しみにしているよ」

と嬉しそうに言うのは山田。一方の岩鬼は背を向けている有様だ。

「ふん。わいらの高校生活最後の試合を独占できるなんて、とんでもない栄誉や。感涙にむせぶとええ」

「おい、岩鬼。もうちょっとマシな言い方がないのかよ」

里中(サト)、肘の具合はどうなんや。悪いようやったら、わいがピッチャーをやったるで。なんせ甲子園でも投げとるさかいな」

言葉とは裏腹に先ほどまでとはうってかわってやる気を出した岩鬼に周囲は呆れ顔を見せる。

 

「ハッパが投げるようならよ、ボールばかりで別の意味での記念試合になるづら」

「とんま~。おんどりゃ、青田戦で好投したわいを舐めとんのか!」

 

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