プレイボールVSドカベン   作:コングK

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ここまでお読みただきありがとうございました。
水島新司先生に見せたい一心で書いてきた作品が、先生が亡くなられた後も何とか続けられてきたのは読者の方々の支えあってこそだと思っています。度重なる誤字報告等感謝いたします。

プレイボールファンの方、ドカベンファンの方と楽しさを共有できたとすれば感無量です。
ドカベン、大甲子園基準のためプロ野球編とは違う球団に入りもしますが、そこはコラボ作品という事で。




最終話    「それぞれの出発」

 墨谷と明訓の引退試合から時は流れ。

 新聞各紙にはドラフトの記事が掲載される時期となった。

 

「ドラフト速報①六球団競合の明訓山田は、西武ライオンズへ。ノムさん、後継者が見つかってよかったかとの質問に、『商売敵が現れて何が嬉しいんや』とボヤキ節。渦中の山田は野村道場に一刻も早く入りたいと意欲を見せる」

 

『ドラフト速報②山田同様六球団競合の青田の中西球道は東京メッツの岩田鉄五郎が黄金の左腕で一本釣り! 『相思相愛じゃからのォ。こればかりは仕方なかろう』後継者が見つかり、老雄安堵。後進に任せて引退かの質問には『若い奴らにばかり任せていられるか。今年もわしは投げるで』と飄々とうそぶく』

 

「ドラフト速報③岩鬼、南海ホークスへ。『酔っぱらいはおるし、あのやーまだのそっくりさんはおるし、退屈せえへん球団やで』入団会見でいきなりの発言。一方の盟友殿馬は『盗塁王へのアシストに秘打でも考えるづらか』と、阪急福本の盗塁数増への貢献を口にする。」

 

「ドラフト速報④小さな巨人里中、その異名通り巨人入り。盟友微笑とのバッテリーにチョーさん、日本シリーズでの山田との対決に期待膨らむ」

明訓五人衆はその進路も決まり、プロという荒波へと漕ぎ出して行く。

 

「どうしました、丸井さん。新聞なんか持ってきて」

 部室で新聞を広げる丸井に、イガラシが尋ねた。

「ああ。なんか谷口さんのことが書いてねえかと思ってよ」

「ったく、そんなことより、選抜の反省をすべきでしょうよ」

「ああん、オメ。そんなこととはどういうこった!」

 腹を立てる丸井をイガラシはなだめる。

「おれ達があの人の心配をする必要なんかありませんよ。そうでしょう?」

「ああ、まあそうだな」

 自分達が心配しなくても。

 ことこうと決めた谷口ならどんなことでも成し遂げるだろう。

「それよりも、近藤のやつだ。まさかあんにゃろうがうちに来るとは思っていなかったぜ。てっきり滑ると思ったから激励してやったのによ」

「またそんなこと言って」

 呆れ顔のイガラシは、かりかりする丸井の後についていく。

 

 そして。

 

 東京メッツ国分寺寮から程近い合宿所に朝から怒声が響く。

「ったくだらしねえ。何がショーマンだ! 頭を丸めやがれってんだ!」

 スポーツ新聞を読むその男こそ、東京メッツの二軍監督小仏善兵衛が、是非にと頼みコーチとして雇った人物だ。

「ちょっと、武藤さん。戻ってきて早々、相変わらずあんたの声は朝からでかいね」

「おばちゃんも朝から元気なのは変わらねえな!」

 寮母に言われ、豪快に笑うのは武藤兵吉。かつて東京メッツに所属していた彼は、ファーム暮らしが十年続き、空威張りの鬼軍曹と揶揄されていた。そんな彼が覚醒することになったのは日本プロ野球史上初の女性投手水原勇気の入団がきっかけである。水原のタマを受けることにより、彼女独自の変化球ドリームボールの開発を思いついた彼は、水原にその実現に向けての特訓を課し、その成功を見届けることなくメッツを去って行った。広島カープに拾われた武藤は、今度は打倒ドリームボールの鬼として、水原の前に立ちはだかり、セ・パの強打者を打ち取ったドリームボールを、文字通り身を粉にし骨を砕いてホームランにし、引退していった。

 

 そんな武藤に声が掛けられたのは三か月前。鉄五郎と五利からの連絡にはいい返事を寄こさなかった彼だが、十年と付き合いの長い小仏に水原勇気以来の逸材が入った、任せられるのはお前しかいないと頼まれ、ようやく重い腰を上げた経緯がある。

「よし。そろそろ、あの野郎を起こしに行くかな」

 時刻は六時。そろそろ起きだす頃合いだろう。武藤が立ち上がると、寮母は呆れたようにため息をつく。

「何を言っているんだい、あの子だったら当の昔に出て行ったよ」

「な、なんだって!」

「あんたの早朝練習の記録もこの間破っていたしね」

「あの野郎! 先輩を立てるってことを知らねえのか!」

 かりかりしながら、武藤はグラウンドへ向かう。

 まだ暗い中だというのに、素振りをする音が聞こえ、武藤はふんと鼻を鳴らした。

「おい、谷口。テスト生入団だからと張り切るのは分かるが、手を抜くことも考えろ。プロにとって怪我は大敵だぞ!」

「は、はあ……」

「まあ怪我を恐れるようなプレイをする奴はろくな選手にはならんがな」

(どっちなんだろう……)

 疑問に思いながらも、谷口は素振りを続ける。

「へん。同期の山田と中西が気になんのか。あいつらは別格だ。気にしても仕方がねえぞ」

 中西と山田はプロ入り後オープン戦で対決し、大いに球界を盛り上げた。

「とにかく、この武藤兵吉が来たからにはお前にはたっぷりとグラウンドの土を舐めてもらうからな。そのつもりでいやがれ!」

「は、はい!」

 素直に返事をする谷口に、武藤は調子が狂うと、ボヤキながらもキャッチャーミットを持ってくる。

「ほれ、打つほうばかりじゃなくてこっちもしやがれ。三塁の方はあの国立がいるから厳しいが、投手なら万年投手不足の我がメッツだ。岩田のじいさんと水原の馬鹿が揃いも揃って開幕から調子を崩しているせいで、火の車よ。下手くそなお前でも十分チャンスはあるぜ」

「お、お願いします!」

ズバン‼

 心地よいミットの音に、武藤は笑みを浮かべる。

「よし、その調子でどんどん投げてこい! そして、オールスター明けには一軍合流を目指そうじゃねえか!」

(一軍か……)

 じっと右手を見ながら、谷口は思う。

 自分の実力が一軍に、プロに見合うか分からない。

 だが、一度自分でやると決めたからには、最後まで諦めずにやり通すだけだ。

 

「どうした、谷口! もっと投げてこんかい!」

「は、はい!」

 ビシュッ!

 ズバン!

 

 谷口と武藤の様子を離れた所からじっと見つめるのは岩田鉄五郎と水原勇気。

「朝もはよから武藤もようやるな」

「武藤さんがと言うよりは、あの谷口くんがでしょう」

 二人の練習の様子に、勇気は相好を崩す。

「こうしちゃいられない。私もランニングランニング」

 再び野球の道を歩み出してくれた武藤の姿に勇気は笑みが止まらない、そして、そのきっかけとなった谷口の野球への真摯な思いにも。

 

「谷口くん、野球は好き?」

 我慢できずに声を掛けた勇気に返ってきたのは、

「はい」

 迷いのない一言。

「そう。でも、私も野球の好きさでは君に負けないわよ!」

 走り去っていく勇気の後を、鉄五郎は苦笑し追いかけていく。

「今年入ったばかりの新人に宣戦布告たあ、水原の野郎。いい度胸じゃねえか」

 言いながらも、武藤は大声で笑う。

「女狐とじいさんには負けられねえ。そうだろう、谷口!」

 武藤の檄に、谷口は力強く頷く。

 

 ここにもまた、期待してくれる人がいる。

 そのためにも。

 

(よし、がんばらなくっちゃ!)

 

 国分寺の空は吹き抜けるような青空だった。

                                  完

 




あとがき

  構想二十年以上、執筆一年以上をかけたプレイボールⅤS.ドカベンはいかがだったでしょうか。最後の最後まで試合結果には悩みました。墨谷が勝つというシナリオも考えましたが、水島新司先生とちばあきお先生が共著をしたらどうなるか、が本書のテーマでしたので、熟考の結果、引き分けといたしました。作者の思いが互角だったのもありますが、お二人の先生で書かれていたのなら、きっとそうしたのではと思うのです。最強チーム明訓の前に立ちはだかるライバル達を倒していくドカベンと、負けて強くなる墨谷のプレイボール。墨谷が勝っては嘘になるかなと思いました。(プレイボールファンの方、すいません。あくまでプレイボールという話の続きとしたらどちらが面白いかという視点で考えました)無論、途中まではどちらが勝つのか作者自身も分からず、どちらが勝ってもいいように無茶な特訓を墨谷に積ませました。徳川監督、巨人学園、土門達仮想明訓、中西球道。ここまで特訓をして、ようやく互角の勝負になるかもなと対明訓戦にいった次第です。作中の多くに原作の名シーンをオマージュしたものを入れています。拙い文章から伝わるか分かりませんが、是非どこのシーンかなと思って原作を見直してみていただけたらと思います。未読の方は両作品とも一読をお勧めします。

 よくあるコラボ漫画のようにキャラを絞り、分かりやすくするつもりは毛頭ありませんでした。両方の漫画の延長線上として考えています。ラストでドカベンプロ野球編とは違う球団に入り、あれ⁉ と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、わざとです。大甲子園時点、ドカベン時点で考えたらどこに水島新司先生は彼らを入団させるかなと考えました。山田が西武に入っているのはもちろんあの球界を代表する大捕手がいるからで、岩鬼が南海に入っているのは水島新司先生が南海が好きなのと、酒しぶきと物干し竿バットのあの人と組ませたかったからに他なりません。里中が巨人なのは大甲子園の里中の夢からです。そして、谷口の進路についてはもうここしかないと作者の我儘を通しました。キャプテン、プレイボールと読めば読むほど彼の異常なまでの純粋さに気づきます。作中、何度も登場人物たちが語るように、どうしてそこまで一つのことを突き詰めることができるのか。何もそこまでしなくてもと言いたくなるほどです。そんな彼を別な言い方で表すとするのなら紛れもなくこう言えるでしょう。野球狂谷口。そう考えた時、最後の場面がすんなりと浮かびました。そして、彼を導いて欲しい人間もまたお気にいりの人物としました。
 熱の中書きましたし、書きすぎて頭がパンクしました。読むのが嫌になりそうになった時もあります。そんな時はキャプテン谷口の台詞を糧に頑張りました。才能も素質もない人間はこうするしかない。とにかくがむしゃらにやるしかない、と。そして、やり通してみて残った感情は楽しさです。本当に楽しい一年でした。ドカベンとプレイボールの新たな魅力に気づき、両先生の凄さに改めて震える思いがしました。そして、何より野球というものの奥深さ、楽しさに触れることができました。水島新司先生のように年間何十試合と野球をしている訳でなく、観る専門の身ですが、単行本の参考文献にも書きました野村監督の書籍を読むにつけ、バッテリーがこの場面ではどのように考えているのかということに思いを馳せることができ、より野球が楽しくなりました。
 
 最後に、このような楽しい作品を世に遺していただき、私たち読者に野球というものの魅力を伝えてくださった水島新司先生、ちばあきお先生に深く御礼を申し上げます。素晴らしい野球漫画を本当にありがとうございました。これからも一読者として大切に読み続けていきます。
  
    野球マンガ好きの皆さんへ感謝を込めて。野球狂に乾杯!                                          
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