山田を追って野球の世界へと入った両雄が激突する。
~砲丸投法対背負い投法~
関東大会で共に明訓と当たり敗れた甲府学院とクリーンハイスクール。両者がもし明訓と戦う前に激突していたらどのような結果になっていたのか。
その日、銚子球場はただならぬ雰囲気に包まれていた。くしくも共に山田を追って柔道を捨て野球の世界へと入った二人、旧知の仲でもある賀間と影丸。二人のうちのどちらかは山田率いる明訓と相まみえることなく姿を消すことになる。
「まさか、お前もとはな」
苦笑する賀間に、
「ふん。考えることは同じか」
不敵に笑って影丸は返す。
賀間がそのコートを脱ぎ捨て、ダンベルを持った姿を露わにし、クリーンハイスクールベンチにどよめきが走る。
「あの、重いダンベルをずっと持っていたのか」
「化け物かよ」
だが、浮足立つ味方に対し、中学時代から賀間を知っている影丸は動じない。
「賀間ならあれくらいはやる。驚くようなことじゃない」
「へっ。プロレスラーになろうってんじゃあるめえし」
そう軽口を叩いた監督の徳川だったが、一回表。出し惜しみせずに砲丸投法を見せる賀間に対し、稲月、田尾が連続で凡退。
「何、鉛ダマに見えるじゃと? そんなバカなことがあるかい!」
戻って来た稲月達の言葉を徳川は否定するも、影丸もまたバットを弾かれ、嫌な記憶を呼び覚ます。
「まるで、あの土門じゃねえか」
神奈川きっての剛球投手土門。その重いタマの前に明訓打線はバントすら満足にできずに苦戦を強いられた。今、また影丸もタイミングを合わせるも、そのタマの重さにピッチャーゴロになる始末。
二回表。今度は豪打フォアマンが打席に立つ。山田以上と称される怪力を誇るフォアマンを前にし、ぐっとボールを握り込む賀間。フォアマン、緩めの鉛ダマをジャストミートするも、
ガキィ‼
バットをへし折られ、打球はセンターへのフライ。その裏、影丸もまた迎えた打者賀間に対し、必殺の背負い投法で勝負を挑む。
「そんな構えで俺の背負い投法を当てられるか!」
バントの構えを見せる賀間は影丸の背負い投法を二球見逃し、その球のノビに驚きながらも三球目はきっちりと当てるが、これが投手影丸の正面を突くピッチャーライナーとなる。
どちらが山田明訓と戦うのか。緊迫した投手戦が続く中、クリーンハイスクール監督徳川が策を弄す。
「鉛ダマなぞと言っても、しょせん握力が無くなれば、同じことよ」
そう嘯きながら、待球作戦やバント作戦を駆使して、賀間の鉛ダマを封じるためにとにかく球数を投げさせようとする。この徳川の策に対し、賀間は同じ握りで速球を投げ分け、終盤ヒットが出てきたクリーンハイスクールに対抗。 甲府学院もまた、賀間が疲れの見えた影丸の背負い投法を強引に打って出塁するが、後が続かず得点はならず。両者0対0のまま最終回の攻防へ。
力投を続けてきた賀間だったが、ここで鉛ダマの弱点が露わになる。回を重ねるにつれて、その自慢の握力に陰りが出てきたのだ。九回表。影丸が力負けせずヒットを打ち、出塁。さらに、打席に入るは、クリーンハイスクールの四番、黒い弾丸ハリー・フォアマン。
「山田と闘わずして去れるものか」
己が意地と気迫を込めた賀間の一投。これを金属バットに持ち変えたフォアマンはバットを押されながらも強引にライト方向へ弾き返す。ライト長谷川からの返球を受け、捕手佐藤が影丸をタッチしようとするが、影丸、これをひらりと躱してホームイン。その裏の甲府学院の攻撃は三者凡退で終わり、一対〇で試合終了。明訓の相手はクリーンハイスクールとなるのだった。
解説: 明訓と当たる前に甲府学院の賀間とクリーンハイスクールの影丸が対決した場合、共に中学時代に面識があり、打倒山田を目指しているという点で賀間対影丸の勝負は一点差を争う好ゲームとなると思う。だが、いかんせん賀間以外貧打の甲府学院と豪打フォアマンと徳川という名監督二人がいるクリーンハイスクールではチーム力に差があり過ぎる。通天閣戦同様甲府学院は賀間が孤軍奮闘し善戦するとはいえ、クリーンハイスクールの勝利は動かないだろう。