この素晴らしい世界に祝福を! このぼっち娘と冒険を! 作:暇人の鑑
色々悩んだ末にグダリましたが許していただけると幸いです。
紅魔の里に辿り着いた俺たちは、ひとまずは手紙の送り主……つまり、族長さんに話を聞くことにした。
だが………俺たちはそこで、今回の旅の目的を揺るがしかねない事実を聞かされることになる。
「お………お父さん?もう一度言ってくれない?」
手紙を受け取ったゆんゆんが、本気で意味がわからないと言う顔で聞き返すが、それはそうだろう。
なぜなら……
「いやあ、アレはただの近況報告だよ。つい筆が乗ってしまってな…」
あの、焦燥感を煽られる文面の手紙は…………ただの近況報告だと宣ったのだ。
「ちょっと何を言っているのか分からないです」
その場の全員が思ったであろうことをカズマさんが代弁する。
「この手紙を読む頃にはこの世にいないだろう、って…」
「ああ、紅魔族のいつもの時候の挨拶じゃないか」
「時効の挨拶って……なんたらな秋のかんたらーって奴ですよね?」
「ああ。そうだよ……少なくとも、私が知ってるのはそれだよ」
「それがどうしてそんな挨拶になるのよ…?」
「ボクが知りたいです…」
父娘のやりとりを聞いた俺とアクセルハーツの3人の認識が、「訳がわからん」で一致した瞬間である。
「魔王軍の基地を破壊することも出来ないって……!」
「ああ。破壊するか観光名所とするかで、意見が割れているんだよ…」
そんな危ない観光名所があってたまるか。
「………ゆんゆん。お前の親父さんを一発ぶん殴って良いか?」
「………良いですよ」
「ゆんゆん⁉︎」
娘からのまさかの発言に愕然としているが、今までの行動とその結果を鑑みればさもありなんだよな……。
と、ここでダクネスさんが思い出したように問いかけた。
「待て。魔王軍の軍事基地は本当に建っているのか⁉︎」
「ええ、来てますよ?
魔法に強いのが。そろそろくる頃かな………」
と、待ち合わせでもしてるかのような軽さを見せ始めた族長に最早胡散臭さを覚え始めたその時だった。
「魔王軍警報。魔王軍警報。
手の空いている者は至急、迎撃に向かってください。
敵の数は千匹程度かと思われます」
「「千⁉︎」」
アナウンスが流れ、その内容にその場の皆が息を呑む………はずだが、何故か紅魔族の面々は落ち着いた顔をしている。
「なあ、いくらなんでも落ち着きすぎじゃねえか?千って……ここの人口の倍くらいはいるだろ⁉︎」
その落ち着き用に思わず問いかけるが、族長さん達は散歩にでも誘う様に外に出る様に促した。
「まあ落ち着いてくださいよお客人。良いものを見せてあげますので私について来てください」
そんな言葉の意味が全くわからなかったが………大人しく族長の後をついていった俺は、嫌と言うほど知ることになった。
それは、戦闘というにはあまりに圧倒的すぎた。
「シルビア様〜!撤退を!どうか、貴方様だけでも撤退をおおお‼︎」
「畜生、畜生!せめて奴らに近づければああああ⁉︎」
「だから紅魔の里を攻めるのは反対したんだ。だから、俺は行きたくないと……!」
里にある崖の下には、泣き叫び、逃げ惑う魔王軍の兵士達。
石の投擲を食らわせようとした大きな鬼も、投げることなく崩れ落ちて行く。
迎撃に出た紅魔族達数十名達の上級魔法の嵐は、最早どっちが敵かわからなくなるレベルであった。
「どうです?観光の目玉にしようと思うんですよ!」
負けることがないと知ってるからこその考えか。
軍事基地があれば、当然兵士は補充されてまた攻めてくる。
そこを魔法の雨あられで倒して行くのは、闘技場で奴隷を戦わせる見世物よろしく人気が出ると踏んで、観光名所にしようって訳だな。
………ホント、この里どうなってんの?
俺は、その光景を少し引きながら眺めているのであった。
一通り見終わった後、ゆんゆんはあるえという今回の騒動の発端とも呼ぶべき黒幕を制裁してくると離れていったので、俺はアクセルハーツと一緒に宿を探そうとしたが、族長さんに呼び止められていた。
と、言うのも……
「ゆんゆんの素行?なんでそんなまた」
「いやあ、娘が時折手紙をくれるんだがね……親としては心配が拭えないんだよ」
「あの子はお友達がいないことがあってかかなりのお人好しでしょう?それで悪い人に騙されてないかと………」
奥さん共々、ゆんゆんの普段の生活について聞きたいらしい。
ちなみに奥さん………つまりゆんゆんの母親は、どこかゆんゆんの面影がある、セミロングで黒く艶のある髪の、若干口元や目元に小皺のある綺麗な人だった。………ちなみに、体型は遺伝の様だが、性格はそうでもないらしい。
「で、娘の手紙に君のことが書いてあったから、いったいどう言う男なのかと思ったんだよ」
「は、はあ……。と言うか、ゆんゆんって紅魔の里でも友達が……?」
ゆんゆんが俺をどう書いたのかは知らないが、どうやら嫌われてはない様でほっとしながら聞いてみるとやっぱりか、と言う顔をしている奥さんが。
「ええ。あの子は名乗り上げを恥ずかしがるほどの変わり者……と見られていて、お友達があんまりいなかったんです。それに……」
水晶に手を当て、そこから出てきた映像を見る様に言われたので見ると………。
「………1人バースデーパーティーに、1人チェス。1人ボードゲームって………!」
そこには目を背けたくなる様な寂しい行いの数々が映し出されていた。
「と、この様な行動をとり始めてまして……」
「………トランプタワーがまだマシに思える程だぜ……」
あの子はギルドの片隅にあるテーブルで、トランプタワーやジグソーパズルなどの一人遊びをやってることが多いが……その前提条件でさえこの切なさを掻き消してはくれない。
そんな映像をみていると、族長さん達は先ほどまでとは打って変わって真剣な顔をこちらに向けて来た。
「それで……あの子はアクセルの街でうまくやっているのかね?」
………え?
「そんなの本人に聞いてみたら………いや、あいつは「大丈夫」しか言わねーか…」
「そうなんです。とても気遣いでいい子ではあるんですが……その分、自分のことについてあんまり話してくれないものでして」
どうやら月並みのことしか手紙には書いてない様だった。
要するにこの質問は、純粋に娘を心配する親心だな。
………親に会うことができない俺からすれば、向けてもらえることが羨ましい。
でも、それなら……。
「まあ、たしかにぼっちでチョロい所はあるし、1人で勘違いして自爆することもあるけれど。
めぐみんやカズマさん達。そしてリアさん……困った時に手を差し伸べてくれる人がいて、ゆんゆんはそれを心から感謝出来る。
だから……そこまで心配しなくても大丈夫です」
せめて、目の前にある親心には報いてやろうと思う。
そんな意図を持たせた言葉が、どう届いたのかはわからない。
だがしばらくして、俺の言葉を聞いていた族長さんが。
「……そうか。では最後に……君はウチの娘をどう思っているのだね?」
と、とんでもない質問を投げつけてきた。最後の質問らしく直球なのに答えに悩むやつだ。
……全く、似てない親子だと思ってたが、親子揃って無茶振りしやがるし妙に強引じゃねえか。
改めて俺とアイツの関係を考える。
先輩………同業者? なんか事務的すぎるな。
恋人じゃないし………パーティーメンバーでもない。それを言ったら殺される可能性が高いし、2人でパーティーと呼んでいいかわからん。
そうなると知り合い…………いや、知り合いと言うにはもう関わりが濃すぎるだろう。
そうなると………やっぱり、あれだよな。
「なんだかんだで、一緒にいて楽しいやつ…………「友達」だと思ってます」
「友達」…………この一言に尽きるだろう。
そして、その言葉は。
「そうか。ありがとう………これからも娘のことを頼む」
「……が、頑張ります…」
………少し気になるところはあるけど、どうやら報いる事につながった様だった。
翌日。
オークのオスは絶滅したと聞いていたが、どうやら後一匹いたらしい。
その発見者の名前はめぐみんで、そのオークの個体名は「サトウカズマ」。
発見者がゆんゆんの家に逃げ込んだことで、その存在が発覚した………。
「はじめてみた時からスケベそうだなーとは思ってたけど、まさか本当にやるなんてね」
「でも、めぐみんが言うにはゆいゆいさん……母親の許可をもらっていたらしいぜ?」
紅魔の里の市街地で、俺はリアさん達に昨日起こったことを話していた。
ちなみにさっきの話をまとめると、昨夜カズマさんが夜這いをかけようとして来たから、ゆんゆんの家に逃げて来たって話だな。
「お母さんまで何をさせようとしてるんだ……?」
エーリカとリアさんが引いた様に話す隣ではシエロさんが。
「紅魔の里の武器は質がいいって聞きますからね、胸が高鳴ります!」
1人、これから行く場所へと心を躍らせていた。
ライトさんに聞いたのだが、紅魔の里の武器は出来が良い。
インフェルノの魔法で通常より高い温度で鉄を精錬するかららしいが……そんな武器を拝見できると言うことで、シエロさんの武闘派貴族の血が騒ぐ様だ。
「シエロさんって、意外にも武器マニアとか…?」
「そうだね……気弱に見えて、意外と脳筋な発言する事も多いかな」
「ナギト君!リアちゃんまでひどいよ!」
そんなシエロさんの提案によりまずは鍛冶屋へ行き、その後で色々回った後に、ゆんゆんが待つ「レッド・プリズン」物騒な名前の魔法学校がゴールになる。
「地図を片手に紅魔の里を回る……なんだかオリエンテーリングみたいだ」
因みにゆんゆんは俺たちについてくるかと思っていたが、めぐみんとの先約があるとこの紙を渡してきた。
「なら、まずはチェックポイントに到達ね!」
エーリカの声の通り、たどり着いた鍛冶屋の扉を開けると。
「おや。4人もここに来たのか?」
ダクネスさんがこちらに気づいて声をかけて来た。
「うわぁ……!すごいですね。綺麗な光沢出してますよ」
「おお!わかってくれるか嬢ちゃん!」
シエロさんと鍛冶屋のおっちゃんが、武器談義を繰り広げている隣で、俺達はダクネスさんと雑談をしていた。
「ここの鍛冶屋とは随分前から懇意にさせてもらっていてな。私の前の鎧もここで買ったのだ。
で、いまはバニル討伐の時に貰った鎧をつけているのだが、やはりここの鎧に馴染みがあるので……」
「ほーん?
鎧がなくても充分硬そうだけどな。でもまあ、そんなに良いものなら俺も買おうかな」
「アタシは良いわ。おニューの装備下ろしたばっかりだもの」
「うん。私も今の装備で十分かな」
何か言いたげなダクネスさんは放っておいて武器達をみると、確かに今の武器よりも質が良さそうな武器が並んでいた。
「なんか武器を見ると心が躍るんだよな……男の子のサガってヤツかな」
「私もだ。この武器でどんな攻めができるのかと………」
「妄想と一緒にすんな!」
嫌な同意をしやがったダクネスさんに突っ込みながら、様々な武器のウインドウショッピングを楽しんだ次は。
「猫耳神社……くだらねえもん祀りやがって」
「可愛さ10000パーセントになれますように!」
同郷者の奇行の足跡に頭を悩ませ。
「で、伝説の聖剣って、これがあのなんとかカリバー⁉︎」
「シエロ?アレは王族のところにある物じゃ……」
パチモンの聖剣にシエロさんが反応して。
「んー……落ち着くね。それに、このお茶に団子、どこか懐かしい様な味がするよ」
「……ん」
甘味処でリアさんが気になる発言をしたりした。
他にも童話を想起する湖や、里随一(唯一)の服屋。
さらには「サキュバスランジェリー」と言うときめくワードフルコンプな店など、独創的な施設の数々を巡った末に…。
「ようこそ、わが母校レッド・プリズンへ!」
「よ、ようこそ………」
ゴールに辿り着いた俺たちは、赤を基調とした制服姿のめぐみん達から歓迎を受けていた。
「何で、ゆんゆんまで……と言うか、ナギトの連れの目が痛いんだが?」
「昨日私にしたことを考えれば当然でしょう?あと、ゆんゆんに関しては泊まりに行ったら、仲間が泊まっているのに声をかけられずに寂しそうだったので誘っておいたのですよ」
「べ、別に寂しいだなんて……」
さっきも少し触れたが、昨日俺達は族長さんと奥さんの厚意に預かり、ゆんゆんの家に泊めてもらっていた。
それを踏まえてめぐみんの発言を元に推測してみると、恐らくゆんゆんが俺たちの為に何かしたいがどうしようか悩んでいた所に、逃げてきためぐみんが学園でのレクリエーションを持ちかけたのだろう。
で、俺達が観光している間に準備をしていたってところか。
ゆんゆんの足取りを考えていると、アクアさんが興味深そうにその制服を見ている。
「それってめぐみん達の制服?可愛いわね」
「そうでしょう、そうでしょう!伝統ある魔法学園を案内するのですから、正装に着替えて当然なのです」
得意げなめぐみんだが、普段の格好とあんまり変わらないように思える。むしろ、こっちの方がゴテゴテついて豪華だ。
「自分が懐かしくなって着替えただけだろ」
「カズマってば、学校のことになると途端に辛辣よね……。きっと、馴染めなかった古傷が痛むのね」
「おいやめろ!プライパシーの侵害だぞ」
そんなやり取りが聞こえて来る隣では、めぐみんと同じ格好をしたゆんゆんがいた………いつもより露出少ない格好で、何で恥ずかしがってるのかは謎だが。
「ナギトさん。その………似合ってますか?」
そう言うことね完全に理解したわ。
「ああ。委員長!って感じがしてすごく良いよ」
ちなみに今の俺はいつもの冒険に行くときの格好から防具、マントを脱ぎ、黒いシャツにグレーのズボンの軽装状態だ……地味とか言うな、シンプルイズベストだ。
「いいんちょう?と言うのはよくわかりませんが、褒めていただいて嬉しいです……」
ホッとしたように微笑むゆんゆんは、もし同じく日本にいたら間違いなく惚れてそうなレベルで可愛かった。
………マジで、見た目や性格は間違いなく良いのに、どうしてあんな虚しい一人遊びに興じるのやら。
「何だか微笑ましいね」
「そうね……今のゆんゆんはアタシに勝るとも劣らない可愛さよ」
「あはは……」
後ろの3人の声に何だかむず痒い空気を感じていると、突然ドアがバタンと開かれて、そこには3人の人影が立っていた。
その3人はめぐみん達と同じ制服を身に纏っており、決めポーズをとっていて、やがてそのうちの1人………ゆんゆん以上に色々育っている子が。
「我が名はあるえ。紅魔族随一の発育にして、やがて作家を目指すもの……!」
それに続いて勝ち気そうなツインテールの子も。
「我が名はふにふら!紅魔族随一の弟思いにして、ブラコンと呼ばれし者!」
「我が名はどどんご!紅魔族随一の……!随一の………なんだっけ?」
「特に思い浮かばないなら、普通に名乗れば良いのに…」
「この流れでそれは無理だぜ、リアさん……まあ、後の2人も発育とブラコンだし何とかなるか……」
リアさんの呟きに待ったをかけるがときすでに遅く。
「聞こえてるわよ!」
「ま、まだかっこいい名乗りを思い付いてないだけよ!」
「ご、ごめんつい…」
「天然は程々にお願いしますよ…」
ふにふらとどどんこがこちらに詰め寄って来るのをいなしていると、めぐみんが。
「あるえ……それに、どどんことふにくら…」
「ふにふらよ!わざとね、わざとやってるでしょ!」
ふにくら……じゃない、ふにふらに突っ込まれていた。
「里に帰ってきたって聞いて、あるえとふにふらを誘って会いにきたのよ」
「そう言うことですか……ところであるえ?うっかり信じてしまう人がいるので、もうあんな手紙は送らないようにしてくださいよ」
そして、どどんこにここにきたわけを説明されためぐみんの釘刺しで、ゆんゆんにも被害が及んでいるが、この話題を出すならそれは避けられないだろう。
と、ここでふにふら達が妙なことを言い出した。
「それにしても、手紙に書いてあったゆんゆんのパーティーメンバーって実在したのね!」
「本当よね。今度見に行ってやろうとおもってたけど……でも変ね。そうなると1人足りないし、4人くらい当てはまらない人もいるけどこの人たちは一体……?」
1人足りない? 4人多い?
その言葉の意味がわからず、その場の全員の視線がゆんゆんに向くと、ゆんゆんは意を決したように。
「しょ、紹介します!
この人達が私のパーティーメンバーの冒険者の男の子にアークプリーストの女の子!
ここにはいないけど、とても頑丈な金髪のクルセイダーのお姉さんもいるのよ!
それで、最近ぼっちしていためぐみんを、仲間に誘おうとして………!」
やたらな早口で頓珍漢なことを言い出していた。
「おい…」
「それって………」
引いた目を送る俺や、めぐみんの方を見ようとしなかったが、アクアさんは………
「ええ。パーティーメンバーじゃないけどいつも助けてもらってるわ!パーティーメンバーじゃないけど!」
「ええ⁉︎」
特に気にしてないように思わせて、思いっきり突き放していた。
「ええ。パーティーメンバーじゃありませんね」
「ちょ⁉︎」
さらにめぐみんにも否定され、変な汗を浮かべ始めたゆんゆんに。
「「でしょうね……」」
「………………‼︎」
ふにふらとどどんこがトドメを刺して、ゆんゆんは恥ずかしいのか顔を覆っていた………そりゃそうだ。これは、めぐみんとゆんゆんの立ち位置が逆だ。
「ナギト君。助け舟を………」
「妙な嘘を吐かなけりゃ良いのによ……」
シエロさんに頷き返し、俺が前に出た。
「俺がゆんゆんと一応協力関係だよ。そんで、後ろにいるこの3人は今回の旅の助っ人で、「アクセルハーツ」って言う踊り子ユニット達だ」
ゆんゆんが救いの神でも見るような目を向けてくる………もうちょっとよいしょしてやるかな。
「へえ……ま、まあ!変わり者だったとしても1人くらいはちゃんと仲間がいるのね!」
「ちなみに、あなたは何て名前なの?」
どどんこに名前を聞かれたので、ちょっと小洒落て答えてやることにした。
「俺はナギト。
逃げも隠れもするが、嘘はつかないマトイナギトだ。
お見知り置き頼むぜ」
「え、ええ……よろしく、お願いします……」
何故か狼狽えるどどんこ達の意味がわからないでいると、アクアさんが。
「でも、私はゆんゆんのことを心の中で「カエルスレイヤー」と呼んでいるわ」
「なにそれ?」
一言一言を紡ぐように変なことを言い出し、カズマさんが困惑していた。
「ほら、ピカピカ光る剣みたいな魔法で助けてくれたじゃない」
それって「ライト・オブ・セイバー」だよなと考えていると、同じことを考えていたのかあるえが。
「おや、立派な上級魔法じゃないか」
「ええ?ゆんゆんって中級魔法使いじゃなかったの?」
それに乗っかるようにふにふらも………ん?
「中級魔法使い?普通、中級覚えてから上級魔法覚えるもんじゃ……」
「紅魔族はいきなり上級魔法から覚えるんだよ」
「マジかよ」
王道もへったくれもないな。
「ゆんゆんって、半端な時期に中級魔法を覚えちゃったから、卒業までに上級魔法を覚えられなかったのよね」
「も、もう!そんなこと言わなくて良いよ………」
ふにふらのさらなる暴露に恥ずかしそうにするゆんゆんの隣では、何故かめぐみんが表情を変えた。
その意味をめぐみんに聞こうとしたが、それを問うことはできなかった………何というか、罪悪感のようなものを感じたから。
小一時間後。
教室に差し込んだ夕日を横目に、俺はゆんゆんに教室に残ってもらっていた。
「………さっきふにふらが言っていたのって…」
さっきのふにふらの話とそれを聞いていためぐみんの顔が妙に忘れられなかったのだ。
「……めぐみんの方を見ていたということは、気になるって事ですよね?」
「……まあな。お前が意味もなく中級魔法を取る奴じゃないってことはわかっているつもりだ」
紅魔族は、生まれながらのアークウィザードであり、普通なら初級から順を踏まないといけない所をいきなり上級魔法から覚えられるとんでもない一族で。
その中でもゆんゆんは族長の娘なだけあって高い魔力を持つ、正にエリート中のエリートだ。
それなのに、何故わざわざ中級魔法を覚えているのかが不思議で仕方なかったのだ。
思ったことを言ってみると、ゆんゆんは少し照れ臭そうにした後、ぽつりと話し始めた。
「成る程な……」
「私は大したことはしていませんよ。ただ、放っておけなかっただけです」
話をまとめるとこうなる。
今から2年くらい前のこと。
当時ここの学生だっためぐみんは、生まれ持った魔力の膨大さからいずれ歴史に名を残す大魔法使いになると将来を期待されていたが、そんな周囲とは裏腹に爆裂魔法を覚えようとしていた。
爆裂魔法は威力とレンジ以外は色々と欠陥だらけのネタ魔法で、そんなのを覚えたら里のみんなに失望されてしまうと、当時のゆんゆんは反対していたそうな。
だか、時を同じくしてめぐみんのペットであるちょむすけを狙って謎のモンスターが里に侵入し、その時に居合わせためぐみんの妹「こめっこ」にまで襲い掛かろうとしたのだが………めぐみんは、上級魔法を覚えるかどうかで踏ん切りがつかなかったらしく、そこでゆんゆんが中級魔法を覚えた………。と、言うわけだ。
多分、めぐみんが申し訳なさそうにしてたのは、恐らく自分のせいで努力を続けてきたゆんゆんに、中途半端に中級魔法を覚えさせてしまったからであり、それをまだ引きずっているんだな。
「でも、どうしてそこまで……」
流石にお人好しが過ぎると思い聞いてみると、ゆんゆんは。
「私………族長になりたいって言うのも、周りに褒められたことがきっかけで、それ以外は特にやりたいことがなかったんです。
だから………自分の信じた道のため、周りの目を気にしないで進むめぐみんが、どうしようもなく眩しかった。
そして…………ライバルとして、信じた道を諦めて欲しくなかったんです」
こともなげにそう言ってのけており、俺はこの子の内にある芯の強さに少し敗北感を味わっていた。
転生しただけで守りたい物があるわけでもなく、これと言った夢や目標があるわけでもない今の俺は、ゆんゆんのこの強さに言葉が出ない。
「強いな………少なくとも俺よりずっと」
「ナギトさん、それはどういう……」
漏れ出た言葉に、ゆんゆんが反応したその時。
外から何かの爆発音が聞こえた。
いかがでしたか?
次回はいよいよシルビア戦に突入していきますのでお楽しみに。
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