この素晴らしい世界に祝福を! このぼっち娘と冒険を! 作:暇人の鑑
とりあえず、コレを出してるので生きていると言うことでお願いします。
突然起こった爆発は、街の外れからのものだった。
そちらにはめぐみんの家があるとのことで、俺とゆんゆん、アクセルハーツはカズマさん達と共にそちらに向かう事にした。
だが。
「あんな街の外れから進軍してきた割には、随分派手に動くじゃねえか」
「言われてみれば、そうですよね……辺りは森なんだから隠れていくこともできそうなのに、どうして…?」
俺はこの行動に違和感を覚えていて、それはゆんゆんも同じようだった。
昨日のような正面突破では勝ち目がないと理解して、街のはずれから奇襲しようと考えるのは理解できる。
だが、それなら音を立てず、潜伏スキルの使用や森の中に隠れるなどの手段を駆使して、攻め込むべきだ。
あんな派手にやった意図は一体………
「潜伏スキルが使えないか………あるいは陽動でもする気か?」
そこにカズマさんが割って入る。
「鍛冶屋から戻ってきたダクネスが堪えてるのかもしれないし、今は急ぐぞ。俺たち以外にはあんまり紅魔族の人たちを呼んでないから、もしナギトの考えが当たってたとしても、戦力不足にはならないはずだ」
因みに今向かっているのは俺たち5人に、ダクネスさんを除いたカズマさんのパーティーの3人。そして5人の紅魔族で合計13人だ。
いや、今は考えるより動くのが先だな。
「そうですね……失礼しました」
「とにかく急ぎましょう。こめっこが……」
めぐみんの心配そうな声に急かされて、俺達は爆発の煙が上がっている場所まで急いだ。
「何だこの女は!一体、何がしたいんだ!」
「シルビア様!こいつの目的が全くわかりません、お下がりを!」
「何で邪魔な女だ!攻撃がスカなくせに硬いとか……!」
爆発があった場所までたどり着くと、ダクネスさんが魔王軍らしき集団のまえに立ち塞がっていた。
………相手の反応的にあまりの硬さに手こずっているみたいだな。
「ダクネス!よく持ち堪えたな、里の人たちを呼んできたぞ!」
カズマさんが呼び掛けると、ダクネスさんは残念そうな顔をしてこちらを振り向く。
「カズマ!期待のオークがメスしかいなくてガッカリしていた上に、魔王軍の幹部は女と来た!どうなっているのだ、今回の旅は!」
「お前はちょっと黙ろうか、色々と台無しだから!」
「ダクネスさんと言い、シエロさんと言い……やっぱ貴族も人間だよなあ」
「格上のララティーナさんに失礼かもしれないけど、その納得のされ方は見過ごせないよ⁉︎」
シエロさんの突っ込みを聞き流しながら相手を見ると、真っ赤なドレスを着こなした美女がそこにいた。あの人が魔王軍幹部か……。
「何をしてくるかわかりませんので、油断しないでください!」
「ああ。仮にも幹部だしな…女を斬るのは気が乗らないけど、そうも言ってられないか」
剣を抜き、ワンドとダガーを構えたゆんゆんの隣に並び立つ。
「エーリカ、シエロ!」
「ええ!」
「支援は任せて、2人とも!」
アクセルハーツもそれぞれ戦闘態勢に入ると、シルビアとか呼ばれていたその美女はダクネスさんに流し目を送った。
「そう……仲間が来るまでの時間稼ぎをしていたのね。
ここまで耐え切ったことからして、かなり高レベルのクルセイダーみたいだけど……さっきまでのも、悟られないようにするための演技だったのかしら」
「バレてしまっては、仕方ない…かな………?」
チラチラこっちを見てるあたり、単に性癖を満たしたかっただけだと思うが………。
勘違いだとしても、物は言いようだよな。
そして、カズマさんはその勘違いに乗る事にしたようで、一歩前に出た。
「シルビアとか言ったな。そこにいるクルセイダーは、アクセルで魔王軍幹部のバニルと渡り合った猛者だ!」
「バニルですって⁉︎アクセルの街に行ったきり帰ってこないって聞いてたけど。
……まさか、あなた達が⁉︎」
その発言に、シルビアを始め魔王軍がざわつき始める。
「そう。俺の横にいるこのめぐみんが、バニルにトドメを刺した」
次いで出た言葉に、紅魔族たちがざわつき、めぐみんは口元をニマニマさせる。
「カズマの煽りがヒートアップしてるような気がするんだけど…」
「多分反応が面白くて調子に乗り始めてるよね、あれ……」
「スケベでお調子者ねぇ……ねえ、本当にあの人が魔王軍幹部の討伐に関わったの?」
アクセルハーツの面々が微妙な視線を向けているが、「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもんだ。
「それだけじゃない。
デュラハンのベルディア、デッドリーポイズンスライムのハンス。果ては、機動要塞デストロイヤーに至るまで……!俺達4人が討ち取らせて貰った!」
「な⁉︎ベルディアにハンスまで……⁉︎
アルカンレティアからの定時連絡が途絶えたことを考えると、嘘ではないようね……!」
これまでこの世界の人類が、チート持ちの異世界人を使ってまでも討ち取ることができなかった魔王軍の幹部を、この人達は立て続けに………。
他の奴らは、今まで何をしていたのかが気になる所だ。
俺が不相応にも不甲斐なさを感じていると、調子に乗りまくっていたカズマさんが。
「……あなたがパーティーのまとめ役みたいね。名前を教えてくれないかしら?」
忌々しげに唇を噛んでいたシルビアの一言で、一瞬動きを止め。
「………俺の名はミツルギ。
ミツルギキョウヤだ。覚えておけ」
「あ、あいつ……他人の名前使いやがったぞ?」
「カズマさん………最低……」
名前を覚えられるのにビビって、他人の名前を使いやがった……!
「この男、土壇場でヘタレましたよ」
「後ろに紅魔族やマントの人達がついてて、調子に乗っちゃったのね……」
俺とゆんゆん、アクアさんにめぐみんがドン引きしていると、シルビアはカズマさんが腰に差していた日本刀もどきを魔剣グラムと勘違いしたようで。
「ミツルギって言えば、魔剣使いの……!まさか、こんな大物パーティーに出くわすなんてね……!」
「ここでお前を倒しても、紅魔族の力を借りたみたいでスッキリしないな……!」
その言葉と後ろにいる人数を見て不利だと悟ったのか。
「感謝するわミツルギ。また会いましょう、その時こそ決着を………!
撤退!」
シルビア達が、踵を返して逃げ出した!
「逃がすな!『ライトニング・ストライク』!」
「『ライト・オブ・セイバー』!」
「捕まえて、魔法の実験台だあ!」
それを追いかけていく紅魔族の皆さんを見送り、ひとまずはこの戦いは終わりを告げた。
その夜。
族長さんの家に帰った俺とゆんゆんは、とんでもない知らせを受けた。それは……
「お父さん、それは本当なの……?」
「ワイバーンに乗ったトロールロード⁉︎」
「ああ。直接戦闘になったわけではないが、人間の姿でウロウロしていた所を遊撃部隊が見つけてな。不審に思って尋ねた所、トロールの姿になって飛んで逃げたらしい。見た目は老紳士のようだったとも言っていたな」
なんと、先日出会ったあの紳士……ダニエルがここに来ていたというのだ。
タイミング的に俺たちがシルビアのところに行っている時に忍び込んだのだろう。
「それで、ダニエルは何を⁉︎」
「分からないが……何かを探しているようだったな」
族長さんが紙束を見ながら話す。
「あいつが探すものって言ったら、アクセルハーツ………特にリアさん。後は……」
「ナギトさんも、リアさんがついた嘘で逆恨みされてる可能性が高いですよ………お父さん、どこで見つけたのか分かる?」
やはり陽動だったと頭を抱えていると、ゆんゆんに聞かれた族長さんは。
「目撃証言はいくつかあったが……最後に見つけたのは地下格納庫らしいな」
その言葉に、ゆんゆんの表情が強張った。
「地下格納庫……?何だいそりゃ?」
その表情の意味がわからず聞いてみると、代わりに族長さんが教えてくれた。
「………要するに、ヤバいものがわんさか眠っている場所って事ですか?」
「ああ。でもあそこは私や妻………里随一の学者にも読めない古代文字が書かれているんだよ」
地下格納庫とは、用途も正体もわからない施設………「謎施設」の隣に併設されている格納庫で、そこには「世界を滅ぼしかねない兵器」という用途がわからないが兎に角凄いものや、魔法使いの天敵である「魔術師殺し」が眠っているんだとか。
「と言うことは、ダニエルの目的はその兵器……?でも、何でダニエルがそんな場所に。古代文字が読めたりするのか…?」
「分からないが……明日にでも遊撃隊に見張りを頼もうと思う。
そして模写になってしまうが、これがその古代文字だ……」
重々しく告げてきた族長さんの隣にいた奥さんが、何かが書かれた髪を見せてくれたので、拝見させてもらうと………驚愕した。
なにせ、その古代文字は………
「日本語だ……!」
俺が14年間慣れ親しんだ日本語だったからだ。
夕暮れ時。
ゆんゆんがリアさん達に報告に行っている間、俺は族長夫婦に連れられて、その格納庫にやって来ていた。
「上上下下左右左右BA………」
そこには、生まれる前にあったとされる『ホームコンピューター』ことホムコンのコントローラーっぽいものと、裏技の代名詞である小並コマンドが記されていたので早速入力してみると。
「すごいな……!私たちやご先祖様が開けることができなかった扉をあっさりと……!」
「ええ……!ナギトさん?この後、私の持っている古文書の中で同じ文字のものがあるから、それを読み解いてはくれないかしら……」
長年明けられてなかったことで苔のようなものがついた扉の先には地下に続く階段があり、中からはカビ臭い匂いがしてきた。
「では、私達はここで待っているから、何かわかったら連絡してくれ」
「分かりました」
族長さん達に見送られて、松明を片手に階段を降り始める。
「放置されてた割には、ネズミや蝙蝠がいないな……」
そこはコンクリートのようなものに囲まれた無機質な場所で、長年放置された割には埃やカビがあるだけで、ネズミや蝙蝠などはいなかった。
「まあ、カツオみたいな碌でもないやつだったらヤバいし、ラッキーってことにしとくぜ」
独り言と共に格納庫の中をぶらついてみるが、そこにあるのは意味不明な魔道具らしきものばかり。
「まあ、これらについては奥さんに何とかしてもらうとして………お?」
みるだけ見ておこうと物色してみると………見たことのある筒状のものが見つかる。
それは、某SFにでてくるライトサーベルのような………
「うわ、光った!」
スイッチらしきボタンを押すと。穴から青い光の柱が出てきたので、試しにマントに当ててみると………スパッと切れるが、魔力を持っていかれる感じがした。
どうやら、使用者の魔力を吸い取って剣の光に変えてるようだ。
「……本物と比べるとゴテゴテしてるけど、威力は本物だな。そしてこれはゲームガールっぽいけどなんか………」
ライトサーベルやゲームガールなど、ここにある日本で見たものは、 どこか手作り感が否めないものばかりだ。
ここの格納庫を作ったのは、昔に転生した日本人なのは間違い無いだろう。
そうなると散らばっている魔道具も、もしかしたら昔の日本で使われていたものを無理やり再現したものなのではなかろうか。
「でも、何でこんなところに……」
とりあえず、少し持って帰れるように準備をしながら物色を続けていると、どでかい蛇のようなものがそこに鎮座していて、その前に「魔術師殺し」と書かれた看板があった。
しかし……
「これ、魔術でできたゴーレムとかじゃなくてロボットだよな……この世界は魔術がある代わりに工学や科学が発達してないと思ってたけど、実は化学もそれなりに……?」
この世界は中世とファンタジーが合体した世界だと思っていたが、サイエンスもそれなりにいけるのだろうか?
この施設と世界への謎が深まっていた俺の視線は、机へと向いて……。
「本……それもこれ、日記か」
そこにある手記を見つけた所で、族長さん達にそろそろ帰ろうと促された。
その夜。
「ダニエルの目的は一体なんだ……?俺やリアさんを狙うなら、シルビア達といた方が会う確率は高いだろうに」
あの後見つけたものを説明し、明日の朝から調査をすることになり。
「何かを探していたのなら、ここにダニエルにとって何らかのプラスになるものがあるってことじゃないかな?」
アクセルハーツの面々は、安全策としてゆんゆんの家に泊めてもらうことになった。
今は、一室に集まって情報共有中だ。
「ダニエルとシルビアが仲間なのかもしれないわよ?
シルビアがアタシ達を惹きつけている間にダニエルが何かを探すって言う作戦かもしれないわ」
「その探す何かがわからないよね……ゆんゆん、心当たりはない?」
見た目は全員風呂に入った後と言うだけあって、パジャマパーティーだが。
シエロさんに話を振られたゆんゆんは少し考える素振りを見せる。
「んー……『世界を滅ぼしかねない兵器』とか、『魔術師殺し』とかならありますけど、それらが隠されている場所へ行くのはナギトさん以外は無理だと思いますよ…?」
「古代文字が読めるだなんて……意外と物知りね」
「意外は余計だ、意外は……。故郷の言葉が古代文字扱いって複雑なんだぞ?」
俺以外にもカズマさんやミツルギあたりは普通に読めるだろうし、何ならリアさんも読めるかもしれないしな。
……それよりも。
「ダニエル達って、シルビア……いや、魔王軍の仲間同士なのか?ちょっとフリーダムすぎる気がするし、共同作戦なら、気にするそぶりくらいは見せてもおかしくないと思うぜ?」
悟られないようにしてたと言われればそれまでだけど、それを引いても気にしなすぎではなかろうか。
「いくらモンスターでも、趣味はあってもいいんじゃないかな?それに巻き込まれる私達としては大問題だけどね」
苦笑しながら取りなすような事を言い出すリアさん。
それなら……。
「アクセルの街に帰ったら、ウィズさんに聞いてみますか。
あの人はなんちゃってとは言っても魔王軍の幹部の1人だし、ひょっとしたら何か知ってるかもしれない」
「そう考えるとアクセルの街って、片方は元ですけど魔王軍の幹部が2人いることになるんですよね…」
ポ○モンでいうところのトキワシティみたいな街である。
「うーん……踊り子コンテストが控えてるのに、色々と問題が山積みだな…」
「何それ?」
初めて出る単語だな。あれか?年一のお祭りとかか?
「踊り子コンテストは、各地にある踊り子ユニット達の中から1番のユニットを目指して競い合う大会よ。アタシ達はそれの優勝を目指してるの」
「そんな中で付き合わせちゃって、何だか悪いな」
そんな大事なイベントが控えてるなら、断ってくれてもよかったのだがリアさんは。
「いや、大丈夫だよ。資金繰り出来ないと参加するための道具を調達出来ない訳だしね」
「………そう言ってくれるとありがたいな。なら、調査を早く終わらせてとっとと帰るとするか」
「そうですね……私もお手伝いしますよ。あの中は小さい頃から気になっていましたし」
そうして、今日はもう寝ようという事でそれぞれの部屋に戻ったのだが………。
「はああッ‼︎」
「甘いぜ!」
槍による突きを受け流して、大上段で振り下ろす。
「でぇやッ‼︎」
「振り下ろしなら、避けるのは簡単だよ!」
振り下ろされた鎌を横に飛んで逃げられたので、詰め寄られる前に急いで地面から引き抜いて構える。
………簡潔に言うと、俺とリアさんは、鎌と槍でぶつかり合っていた。
「………にしても、リアさんは真面目だな。こんな夜にも特訓だなんてよ」
「ああ。ダニエルやチャーリーがここに居るなら……狙われてもおかしくない。その時の為に少しは強くなりたいんだ。ナギトも少しはその自覚があったんだろう?」
眠れなかった所に、リアさんから特訓に付き合ってくれと頼まれたので、魔法学園の校庭でやり合っている。
………まあ、ストレッチみたいなもんだな。
「まあ、ダニエルの目的がなんであれ俺は狙われるだろうが、何とか自衛するさ……なんせ、綺麗な嫁さんと子供が居るらしいし?」
「そ、その事は忘れて欲しいな……!まあ、それに関しては少し責任感じてるんだよ」
頬を赤くしながら突進してきたので、鎌の柄の方で弾き、鎌を軽く回してから押し当てるように突っ込んだ。
そうして、しばらく押し合いが続いたので、互いに距離を取り、両方とも様子見に入ろうとしたその時。
「見つけましたよ、リア………そして、私のリアを返してもらいましょうか⁉︎」
何時ぞや見たあの老紳士………ダニエルが俺たちの前に現れた。
いかがでしたか?
次回は魔王軍幹部とダニエルとの決戦の幕が上がりますので、お楽しみに!
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