この素晴らしい世界に祝福を! このぼっち娘と冒険を!   作:暇人の鑑

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 生存報告を兼ねて更新です。


第21話 この古代兵器に復活を!

「ここが祭壇………あのでっかい魔法陣にトールハンマーが封じ込められてんのかね」

 

 リアさん達を追いかけていた俺たちがたどり着いたのは、大きな魔法陣が床に刻まれている大きな空間だった。

 

「お城の外で感じたものがより一層強くなってます……一体、どんな武器なの…?」

「……価値のあるお宝なのは間違いなさそうだけど、すこし危険な香りがするわね…」

「それよりも、今はリアさん達だ。一体どこに消えた…?」

 

 部屋こそやたらと広いが、そう距離は離されていない筈だ。

 

 

 そうして部屋を見渡すと……魔法陣を挟んで向かい側に3人と一匹を見つける。

 見つけたんだが………

 

 

「か、可愛くないとは聞き捨てなりませんな!トロールは結構愛嬌もあるのですよ!」

「可愛くない可愛くない可愛くなーい!世界の可愛い代表として、断固として断固として物申すわ!」

「ダニエル様!そこまでムキにならないでください、従者として少し恥ずかしいです!」

 

「………いたわね」

「いましたね」

「ああ……何してんだ?アイツら」

 

 エーリカとダニエルが、何かを言い争っている様子だった。

 

 

「リアさん!これは一体……」

「えっと……」

 リアさん達の近くまで来て話を聞こうとすると、リアさんやダニエル側のチャーリーはどう言えばいいのか悩んでいる様子だ。

 

 これは当事者に話を聞いたほうがいいとエーリカに話を聞こうと振り向いた時、ダニエルとエーリカがこっちに詰め寄ってきた。

 

「ナギトも言ってやってよ!アタシとトロールのどっちが可愛いかを!」

「トロールはオークやゴブリンなどと違って愛嬌があると思います!貴方も彼女にそれをわからせてあげてください!」

「エーリカはまだわかるけど、何でお前まで俺に頼んでるんだよ…」

 

 二人とも顔がマジで………尚更こんなところで何やってんだ感がすごい。

 

「エーリカさんはなんか質問の意味が変わってません…?

 

 トロールが可愛くないかどうかって議題……だと思うんですが…」

「子供の口喧嘩ね。

 

 しかも、比較対象がオークやゴブリンって……醜い争いだわ」

 

 困惑しているゆんゆんに、バッサリと切り捨てるメリッサ。

 

 まあ、オークにゴブリン、トロールでの可愛さ対決なんて最下位争いみたいなもんだが。

 

 

……とりあえず。

「二人とも今から封印を巡ってやり合うんだから、もうちょっとこう……緊張感をだな…」

「「……!」」

「目的を忘れてるんじゃねえよ‼︎」

 

 本題そっちのけでかわされたバカな論議は、強制終了させてもらう事にした。

 

 

 

「そうでしたね……確かに、可愛いかどうかなどどうでもいい事でした。しかし……今回は特別にこの姿で戦わせていただきましょう!」

「ガッツリ気にしてんじゃねえか」

「お黙りなさい!」

 

 仕切り直すように戦闘態勢に入ったダニエルは、先程の論議を気にしてか、あのトロールロードの姿にはならないようだった。

 

「ダニエル様、正気ですか⁉︎………この人数相手にこのままでは流石にキツい、流石に私は変身しますよ?……うおああああおおおお‼︎」

 

 まあ、チャーリーは変身してトロールの姿になったが。

 

「……やっぱり気色悪いわね」

「それはもう聞き飽きた。精神攻撃など、もう通用しない!」

「その割には、ちょっと表情変わったような……」

「エーリカちゃん、リアちゃん!今はそれは良いでしょ⁉︎」

 

 やはり可愛いを自称するだけあって、可愛くないものにはとことん厳しいエーリカさん……言いたいことはあるが、今はいいや。

 

「それでは、行きますよ……チャーリー‼︎」

「かしこまりました、ダニエル様!」

 

 ダニエルとチャーリーが、戦闘態勢に入っているからな。

 

「ナギトさん、来ます‼︎」

「やるしかねえな……行くぞゆんゆん、皆!」

「ああ!」

「任せなさい!」

「うん!」

「仕方ないわね……」

 こうして、魔法陣が煌めく祭壇での戦いが幕を開けた。

 

 

「私が囮になる!その内に皆んなは攻撃を……シエロ!支援をお願い!」

「うん……!『プロテクション』、『パワード』‼︎」

 

 迷わずリアさんに向かっていったダニエルの一撃を槍で受け止めたリアさんが、俺たちに攻撃を促した。

 

 だが……

「シエロオオオオ‼︎」

「させるかよ!」

 もう一人がシエロさんに迫った為に俺が割って入り、鎌で受け止めた。

 

 そう。

 今回はチャーリーの相手もしなくてはならない為、ダニエルにみんなでかかる事はできない。

 

 そうなると………より強い方であろうダニエルに戦力を回した方がいい。

 

「俺とゆんゆんでチャーリーの相手をするから、後のみんなはダニエルを!」

「分かったわ!でも、早めにこっちに来てよね!」

「分かりました!行きますよ……『ライトニング』‼︎」

 

 ダニエルに4人がかかっていったのを尻目に、ゆんゆんがチャーリーに魔法を放つ。

 

「さすがは紅魔族といったところか、だが……!」

 チャーリーは横に飛んで避けた。

 

 しかし……飛んでいる時は踏ん張りが効かない!

「『突風』……『ウインド・リーパー』‼︎」

「ええい!こんなタイミングで……」

 

 俺は、地面に足がつく前にチャーリーに肉薄し、『ウインド・リーパー』による連撃を仕掛ける。

 

 

「中々の攻撃だが……深手には至らんぞ!」

 

 直撃はしたが、チャーリーの巨体を吹っ飛ばす事はできず、分厚い脂肪の盾に阻まれてダメージにもなってなさそうだ。

 

 お返しとばかりに振られた斧を鎌で受け止める。

 

「やっぱ、一撃が重い……!」

「フハハハハ!トロールの恐ろしさ、思い知らせてくれるわ!」

 相変わらず、とんでもない威力の一撃だが……ダニエルのものよりは軽い。

 しかも……

「力任せの癖に、偉そうに言うんじゃねえや!」

「何ィ⁉︎」

 斧を押し付けてくるだけなので、鎌を逸らしてやるだけで簡単に態勢を崩していた。

 

 このチャーリー、ダニエルと比べると駆け引きでは劣るようだ。

 

「ナギトさん、離れていて下さい……『ストリーム・ウォーター』‼︎『ライトニング』‼︎」

 その隙にゆんゆんが、水と雷の中級魔法をチャーリーに打ち込む。

 

「アガガガガガ⁉︎

 

 そ、その若さにしては凄まじい威力……!やはり、紅魔族は伊達ではないな…」

 

 タフネスが自慢のトロールでも、豊富な魔力から放たれた中級魔法のコンボはキツイのか、膝をついていた。

 

……つまり、追撃のチャンスだ。

「まだまだ終わらないぜ!」

 俺は、ライトサーベルを引き抜いてチャーリーに迫る。

 

「寄るな!」

「『ウインド・バレット』‼︎」

 追い払うように片手で斧を振りかぶっていたので、全力のウインド・バレットで斧をはたき落とす。

 

「コレで終わりだ‼︎」

 かつてダニエルの斧をも切り裂いた光剣で、チャーリーに斬撃を喰らわせようとしたその時。

 

「……何⁉︎」

 突然地面が激しく揺れ始めた。

 

「この城が揺れるとは……しかし、今のうちに‼︎」

 

 その揺れに戸惑っている内に、チャーリーには逃げられてしまうが、それに反応する間も無く、突如として空から雷がほとばしる。

 

 落ちた先は………祭壇に広々と刻まれていた紋章だ。

 

「祭壇に……⁉︎」

「私たちが突入した時は、雷雲なんて無かったはずなのに……」

 先程までとは明らかに違う空模様に、やって来たゆんゆんと顔を見合わせていると、またもや同じ場所に雷が落ちた。

 

 その、自然現象ではなさそうな雷の落ち方にリアさん達は大丈夫かと思って視線を向けると。

 

 

「フハハハハハハ!やりましたよ、私はついにやりました!」

「おお………!と、言う事は‼︎」

 ダニエルとチャーリーが興奮冷めやらぬといった顔をしていた。

 

 そのダニエル達から少し離れた位置に4人が固まっていたのでそちらに合流する。

「リアさん!みんな……何があった⁉︎」

「分からない!私が必殺技を使おうとしたら、急に……!」

 リアさんが必殺技を使おうとしたら……?

 

 頭にはてなを浮かべている俺に応えるように、ダニエルが。

「『女神の如き舞いを披露せし者、蒼き衣を纏いてこの地に降り立つべし』………やはり、私の目は本物でした!

 

 

 リアこそが、この条件に当てはまる踊り子だったのです!」

 

 分かりやすい説明をしてくれた。

 

 つまり…………!

 

「嵌められたか‼︎」

「やたらと逃げてばかりだと思ってたけど。

 

 祭壇で技を使わせて儀式を行わせる作戦だった……ってとこかしら?豚のくせにやるじゃない」

 

 普通に踊ってくれと頼んでも、これだけやれば断られるのは目に見えてる。

 それなら、追い込まれたふりをして祭壇まで誘導し、その上で必殺技の『水のラプソディー』を儀式の踊りとして使ったと言う事だろう………意外と狡猾なドルオタである。

 

 

「見て!だんだん稲妻が何かの形になってるわ!」

「あれは………槌?でしょうか?ハンマーって言っていたからもっと大きいのかと思ってましたけど……」

 エーリカ達の声の通り、迸る雷は何かの形を為して………

 

 やがて、ゴツいデザインな金色の槌がその場に鎮座した。

 

「とんでもない魔力だな……」

「ええ。まさに古代兵器、って感じですよね…」

 

 俺とゆんゆんが戦慄していると、ダニエルがその槌を手に取り。

 

 

「フハハハハハハ‼︎ 

 

 とうとう手に入れました!

 

 最強の古代兵器『トールハンマー』を‼︎」

 

「トールハンマー……高く売れそうだけど、危ない香りがするわ」

 

 メリッサも口調は冷静ながらも冷や汗を流していた。

 

「どうするのよどうするのよ、大ピンチじゃない!」

「本当にすごい魔力ですね……!」

 

 そうして各々に戦慄しているこちらと違い、ダニエル達は大喜びだった。

 

「ダニエル様!ついに………ついにやったのですね!」

「ええ。後は、ここにいる冒険者達にとどめを刺せば終わりです……

 

 

 もちろん、踊り子達は丁重に扱いますが」

 そして、こちらを攻撃する気も満々なようだ。

 

「逃げ道は無いのか⁉︎」

「逃すとお思いで?

 

 残念ながら、あなた方には逃げ道も勝機もない!

 

 それをわからせてあげますよ、今すぐにね‼︎」

 

 各々に武器を構える俺たちの前で、ダニエルはそのハンマーを振りかぶり……!

 

 

 

 勢いよく振り下ろした。

 

「唸れ!稲妻よ‼︎」

 

 それと同時に城を揺るがすほどの稲妻が俺たちを襲った。

 

 

「「「きゃあああああ⁉︎」」」

 

 

「なんつー破壊力……城が揺れたぞ⁉︎」

 当たった奴はいないが、その威力は城を揺るがすほどのものだ。

 

「ナギトさん、あんなの一発でも喰らえば死んじゃいます!気をつけて下さい!」

「ああ……でも、あんなんどう対処すれば」

 

「ボクの結界の魔法でも、あんなの耐えきれそうに無いです……!」

「それどころか、こんなのが世に出たら大変な事に……!

 

私は、なんて事を……!」

「真面目ねえ……知らない振りして逃げちゃえばいいのに」

 

 リアさんが顔を青くしているが、あれは流石に事故みたいなもんだ。

 

 メリッサみたく知らんふりして……は無理だな、この人の場合。

 

 

「クックック……今更恐れ慄いても遅い‼︎

 

 ダニエル様!もう一発お見舞いしてやりましょう!」

 

……って、おい⁉︎

 

「もう1発来るのか⁉︎」

 

 チャーリーの声に一瞬死を覚悟して、雷がこちらに当たらない事を祈りはじめたが。

 

 

 

「ナギトさん!あれ、ダニエルさんも感電死しかかってませんか⁉︎」

「はあ⁉︎」

 

 なぜか、攻撃をしていたはずのダニエルが感電していた。

 

「え?え?どう言う事だ…?」

「よく分からないけど……」

「ボク達、助かったのかな?」

 

 

「えええ⁉︎ど、どうしてダニエル様が感電死しかかってるんですか⁉︎」

 

 チャーリーが慌てて駆け寄ると、ダニエルは荒い息を吐いて。

「わ、私にも分かりませんが……これは、大きな誤算です。

 

 一体、どうしてこのような……?」

 

 ひょっとして、力が強すぎて生半可に使うと逆に痛い目を見る……とかかな?

 

 そんな想像をしていると、チャーリーが地面に落ちていた紙を拾い上げた。

 

 

「ああ!ダニエル様、ここに兵器と一緒に復活した取扱説明書があります‼︎」

 

……取説⁉︎

 

 

「なあ、あれって電化製品とかじゃないよな⁉︎古代兵器なんだよな⁉︎」

「で、でんかせいひん……?よくわかりませんが、多分古代兵器ですよ!ねえ、メリッサさん⁉︎」

「古代には、きっと取扱説明書と一緒に封印しておく風習があったんでしょ……訳の分からない事を言い出さないでちょうだい」

 メリッサにそう言われて少しは落ち着いたので、チャーリーの話を聞くことにする。

 

 

「『今回はトールハンマーのご利用、誠にありがとうございます。

 

 トールハンマーは、古代の言葉で「打ち砕くもの」を意味します。

 

 凄まじいエネルギーの塊である為、生身で扱うのは危険です。』……」

 

「そう言うのは、使う前に言って欲しかったですね。

 

 まあ、読まなかった私の落ち度でしょうか…」

 

……やっぱり俺、アレが電化製品にしか思えなくなってるんだが。

 

「それで?続きを」

「はい。

 

『安全にご使用いただくためには、手袋型の魔道具『ヤールングレイプル』を併用してください』との事です」

 

 

「必死に手に入れたものの、それ一個じゃ効果を発揮しないとか……悪徳商法みたいな古代兵器ね」

「それを伏せて売りつけて……的な?」

「まあ、そんなところよ」

 ダニエルに促されたチャーリーが続きを読んでいる前でメリッサが頭を抱えている。

 

 まあ、そんな俺たちに構わずチャーリーは説明書を読み進めて………

 

 

「なお、ヤールングレイプルは遥か北にある「ウォルム山」に安置されていま「チャーリー!それは言わない方が……!」

 

 

 とんでもない情報を教えてくれた。

 

「お前ら、聞いたか?」

「ええ。この可愛いお耳でバッチリとね!」

「あんな物が制御可能になったら、どれだけの被害が出るかわからない!私達の手で無力化するんだ!」

 

 だが……問題はどうやってここから逃げるか、だ。

 

「口を滑らせた失態を取り返すためにも……!ここからは一歩も出さない!」

 

 ダニエルはハンマー使用の代償を受けて動けないとしても、チャーリーはほぼ無傷だ。

 数は圧倒的にこちらが多いけど、戦ってる間にダニエルに回復されても厄介だし……ここは!

 

「ゆんゆん!ありったけの魔力で水の魔法を使ってくれ……流れに乗って脱出する!」

 祭壇は天井がひらけているから、風魔法で打ち上げられながら脱出するのもアリだろうが……それだと脱出した後で落下死の危険がある。

 

 だから……水の流れに乗って脱出しちまおうと言う話だ。

「何⁉︎そんな事をすればこの城が水浸しに……」

 

 ゆんゆんにそう叫ぶと、チャーリーがそうはさせないと向かってきたが……ゆんゆんの詠唱の方が早かった。

 

 

「行きますよ‼︎

 

 

 

『ストリーム・ウォーター』ッッッ‼︎」

 

 そうして生み出された大量の水の流れに乗って、俺たちは城の外まで流されて行ったのであった。

 

 

「お、おのれええええええええ⁉︎」




いかがでしたか?

今回はトールハンマーの復活回でしたが、取説付きの古代兵器ってなんぞやと、このすば世界の出鱈目さをしっかり表してる魔道具だな……と、ゲームをやりながら感心しています。

次回は、ウォルム山へ向けての準備としてあの姉妹が出てきます。

どうぞ、お楽しみに!
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