この素晴らしい世界に祝福を! このぼっち娘と冒険を!   作:暇人の鑑

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久しぶりです。
頑張って捻り出したんで、ぜひ読んでください。


第23話 この雪山に争奪戦を!

「「リアさん⁉︎」」

 ウォルム山の中腹あたりで休憩していた俺たちの前に現れたのは、この場にいないはずのリアさんだった。

 

「あ、あんたなんでここに⁉︎俺たちがなんとかするから良いって言っておいたはずだぜ?」

「そうですよ!コンテストの本選が近いのなら、練習したほうがいいんじゃ……」

 

 アクセルの街でついて行くと言い出した時に説得して、なんとか納得してもらえたと思っていたのに……。

 

 俺とゆんゆんが食ってかかると、リアさんは申し訳なさそうにしながらも。

 

「ごめん!

 2人の気持ちは分かるし、そう来るのも当然だと思う……でも!

 

 あれから考えたんだ……やっぱり、2人だけに任せることなんてできない。古代兵器の復活は……私がしてしまった事だから」

 

 と、はっきりと口にした。

 

「そりゃそうだけど……でも、リアさんが抜けて練習ができなかったら、せっかくのコンテストでの優勝が……!」

 エーリカやシエロさんは、止めたりしなかったのだろうか?

 

 気持ちはわかっても行動への納得はできないと食い下がる俺に。

 

「優勝をするためにも来たんだ。

 

 私が攫われなければ、こんなことにはならなかった……そう思ったら、コンテストの練習に集中できなくて……!」

 

 リアさんは、よほど思い詰めていたのか少し泣きそうになりながらも。

 

「だからお願いだ、ナギトにゆんゆん。

 

 良かったら私も連れていって欲しい……気がかりを残したままでは、コンテストに臨めそうもない…!」

 

 頭を下げたリアさんに、ゆんゆんが思い出したかのように。

「リアさん……あの、エーリカさんやシエロさんには?」

「私が考えてるのを見て、悩んでるくらいなら行けって……」

 そう苦笑するリアさん。

 

 まったく、エーリカと言いシエロさんと言い、リアさんに甘いんだから。

………これだけ聞かされたら、追い返すわけにはいかないじゃねえか。

 

 

「手間取らせやがるな……でも、こんなところまでついて来た奴に、帰れとは言えないし、言う権利もないわな」

「……!じゃあ!」

「……いいか?」

 

 視線を向けると、3人からOKサインが出る。

 

「しゃーねえな……自分の身は自分で守れよ?

 そして、さっさと回収してお暇するぜ」

「………!ありがとう、ナギト…」

 涙ながらに微笑むリアさんは、何というかとてつも無く……

「その笑顔は心臓に悪いから、抑えてくれると助かるかな」

「ええ?えっと……」

 心が持っていかれそうな感覚を晒していると、ゆんゆんが苦笑して。

 

「素直じゃないんですから……ナギトさん?」

「ピュアと言ってくれ…」

 こうして、ミツルギの代わりにリアさんを含めた5人組で、ウォルム山頂上への道を再び歩き出した。

 

 

 数時間後。途中参加のリアさんと共に野菜達と戦いながら進んでいた俺たちは、ようやく山頂の近くまでたどり着いていた。

「疲れたし酸素が薄い……なあエイミーさん、後どのくらい歩けば頂上だ?」

「後10分くらいよ。後少しだから頑張ってね?」

 連戦の後で疲れた体に、薄くなっている酸素はなかなかきついものがある。

 

 因みに、ダニエル達はミツルギが足止めをきっちりやってくれているのか、出会うことはなかった。

 

「ナギト。ヤールングレイプルが手に入ったらこの後どうするんだ?」

 

 その道すがらでリアさんに話を振られて、そう言えば考えてなかったことを思い出す。

 

 そうだな……

「壊しちまうのが手っ取り早いんだろうが……多分無理だろうな」

 

 爆裂魔法以上の威力を持つ魔道具を制御できるほどの魔道具を、どうやったら壊せるんだって話だ。

 

 すると、ミーアが閃いたかのように。

「なあ、ナギト。その手袋、ミーアがもらってもいいか?

 

 手袋があったら農作業に便利だし、野菜を育てるのに使う!」

「だったら軍手でも使ってくれ……少なくとも魔道具でやる事じゃねえ」

 この世界に軍手があるかは謎だが……ヤールングレイプルで農作業をやる意味はないのは確かだ。

「とってもいい考えだわ。

 流石は、賢くて偉いミーアちゃん、いい子いい子……」

「そこは賛同するところじゃありませんよ?」

 ……賛同しているエイミーさんに関しては、とりあえずとてつもないシスコンと言うことだけが分かったが、疲れている今あんまり突っ込ませないで欲しい。

 

 

「ナギトさん。ここは冒険者ギルドに預けたほうがいいんじゃないですか?」

「それよりも、王都にでも預けるのはどうかな……?アクセルの街よりも警備は厳重だろ?」

 それならと、ゆんゆんとリアさんがそれぞれ意見を口に出してくれたので、考えてみることにしよう。

 

 たしかに、王都に預ければ厳重な警備の庇護下にはいるので、ダニエル達が取りに来ようともそうそう問題はないだろうが……義賊騒動でバタバタしているらしい王都が、果たしてダニエルなんて厄介なやつを呼び込む物を受け入れてくれるのやら。

 

 そうなると…やはり、ゆんゆんの言う通りアクセルに預けるしかなさそうだな。

 とりあえず、やばいものってのは伝えてあるから、すぐになんらかの措置をとるだろ。

 

「まあ、取らぬ狸のなんたらはやめにしようぜ。まずは手に入れるのが先さ」

「……その例えは分からないけど、まずは頂上に……」

 

 と、そこでミーアが。

「ん?この辺……前に来た時と何か違わないか?エイミー」

 

「ミーアちゃんも同じことを思ったのね……多分、トールハンマーが復活した影響じゃないかしら」

 それにエイミーも頷く。

 

「ここから遠く離れた場所に封印されていた物が?」

「ひょっとしてトールハンマーが復活したら、ヤールングレイプルが一緒に復活するんじゃないですか?」

 つまり、トールハンマーが復活しない限り封じ込められたままってわけで……

「もしかしたら、その存在すら知られていなかったのかな…?」

 

 あのメリッサが碌な宝がないって言ってたのも、リアさんの予想通りに存在が知られていなかったのなら頷ける。

「なら、それに呼応して突然変異したモンスターが出てくるかもってか?」

 ゆんゆんは俺の質問に、緊張感を漂わせて。

「私もこういう経験はありませんので何とも言えませんが……皆さん、気をつけてくださいね?」

「うん!ミーア、全部残さず食べる!」

「あらあらミーアちゃん……でも、お腹壊しちゃダメよ?」

「得体の知れないものを食べようとしない方がいいんじゃないかな……?」

 

 

 本当にブレない2人に、リアさんが苦笑していると……俺たちの後ろから声がした。

 

「フハハハハ‼︎ とうとう追いつきましたよ!」

  

「ダニエルに……チャーリーも一緒か!」

 ここでは初めて会うリアさんが、追いついてきたダニエル達に驚きの声をあげていると、ダニエルの後ろで荒い息をついていたチャーリーが。

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……

 崖崩れに巻き込まれた仲間を見捨てて、先を急ぐだなんて酷い奴らだ!

 

 貴様ら、それでも人間かぁ⁉︎」

 

 そう指をさしてくるが……まさかトロールに、そんな正義の味方みたいな台詞を吐かれる日が来るとは思わなかった。

 

 

 何ともいないモヤモヤを抱える俺だったが、その後のダニエルの言葉にそのモヤモヤは頭の中から追い出される。

 

 

「ですが……その様子ですと、ヤールングレイプルはまだ見つかっていないようですね。

 

 残念ながら時間切れです。そこをどいてください」

 

 ダニエルが退く様に告げるが…

「馬鹿言うなよ。こっちもここまできたら引き下がれないんだぜ?」

「ナギトさんの言う通りよ……あなた達に、ヤールングレイプルは渡さないわ!」

 ヤールングレイプルを求めてここまでの山道を登ってきたのに、今更はいそうですかと帰るわけがない。

 

 覚悟を決めた様な表情のゆんゆんと共に武器を構える。

「やれやれ……物分かりが悪いですね。

 

 ならば……少しお仕置きしてあげましょう!」

 そんな俺たちに、呆れた顔をするや否やで殺気を放ちはじめたダニエルと一触即発の空気を醸し出していると、下から足音が聞こえてきた。

 

 

「そこまでだ!この魔剣グラムから、そう簡単に逃げられるとは思うなよ!」

 そのすぐ後に、ここまで登って追いかけてきたらしいミツルギが、俺たちの横に並び立つ。

 鎧や顔にあちこち傷がついているものの、大したダメージは受けていない様だ。

 

「無事で何よりだ……骨を拾いに行く手間も省けたしな」

「君、それ本気で言っていたのかい……?

 僕には、女神様から与えられた使命がある……それを果たすまでは死ぬわけにはいかないさ」

 

 そんな、勇者っぽいセリフを恥ずかしげもなく言ったミツルギは……なんと言うか、本当に童話とかに出てくる勇者みたいだと思った。

 

 

……俺も同じ勇者候補なのに、どこでこんなに差がついたのやら。

 

 考えると虚しくなるので、強引に思考を中断してダニエル達との戦いに臨もうとした時。

 

 

 突然、地面が揺れだした。

「おい、誰だ大技使ったやつ!」

「なんでそこで僕を見るんだ⁉︎前ので懲りたよ!」

 

 ミツルギではない様なので周りを見ると、ゆんゆんとリアさんも首を振る。

 

 じゃあ、ミーアかエイミーさんかと思って振り向くと、2人はまずいと言わんばかりの表情だった。

 

「え、え、エイミー!これってもしかして……!」

「ええ……不味いわ!騒がしくしたせいで、サムイドーの王様が目覚めちゃったのかも……⁉︎」

 

 サムイドーの王様⁉︎

「おいおい、何がくるんだよ⁉︎」

「わかりませんが……こんなところじゃ逃げ場がないですよ⁉︎」

「そ、そんな……!」

「くっ……僕のグラムで倒せるのか?」

 

 エイミーさんの発言に対して、各々に困惑の表情を浮かべている間にもその振動は強くなり、やがて。

 

 

「メロメロオオオオオオオオン‼︎」

 

 雄叫びとともに、球体らしき何かが地面から飛び上がった。

 

 

 その何かが地面に降り立つと、全体像がはっきりとわかる様になり……その姿に対して。

 

「……メロン?」

 

 赤いマスクに覆われてはいるが、上のヘタやマスクからチラ見えしている模様から、それがメロンだと推測する。

 

……なんでここにメロンがいるのかと言うのは、残念だが分からなかった。

 

「エイミーさん、あれは一体⁉︎」

 そんな謎のメロンを前にして疑問を投げかけると、エイミーさんは実際に見るのは初めてなのか、声を震わせた。

 

 

「あれは、この山の主にしてサムイドーの王様…………

 

 

最高級「マスクメロン」よ!」

「そのまんまかよ!」

 小さい頃、マスクメロンと言うメロンがあることを知った俺は、「メロンがマスクかぶってるのかな」とか思ったりしたものだが……まさか、その想像通りのメロンがあるとは思わなかった。

 

 ダジャレみてえな生物ばっかだな、この世界!

 そして、そのマスクメロンは……

 

「メロメローン‼︎」

 

 咆哮と共に襲いかかってきた‼︎

 

 

「ナギトさん!あのメロン、すごい魔力を感じますから気をつけてください!」

「りょーかい!」

 突っ込んできたメロンを横っ飛びで避けた俺たちは、ダニエルに目をやる暇もなくそれぞれ攻撃の準備に移る。

 

 

「カットメロンにしてやるぜ‼︎……『ウインド・リーパー』!」

「追撃は任せてくれ!」

「ゆんゆんやエイミー達は私が守る!2人はメロンを!」

 

 俺が放った風の刃を避けた所にミツルギがグラムを振り下ろす。

 

 だが……

「くっ……かすっただけか⁉︎」

 

 どうやら急激な方向転換もできるらしく、マスクに切り傷をつけたくらいだった。

 

 そして、グラムの一撃を避けたメロンは、眼前に光を溜めて……!

 

 

「メロメロ〜ン‼︎」

 

 光線のようなものを俺たちに発射した。

 

「うわぁ⁉︎」

 俺は、隣で驚くリアさんの腕を掴んで。

「『突風』‼︎……野菜が魔法を使えるのかよ⁉︎」

 

 咄嗟に避けるが当たった場所は雪が溶け、中の地面は暗く焦げていた。

 

「ありがとう、ナギト……」

「ああ……それにしても、なんてえ威力だ。崩れやすい雪山で、あんまり撃たせすぎるのも不味いか?」

「もしかしたら、雪崩が起こるかも知れないわ……この山には人は住んでいないけど、気をつけてね?」

 

 エイミーさんの言葉に、少し安堵する。

 流石に、雪崩に巻き込まれて村が壊滅……とかになったらやばいからな。

 

「なら、撃たせないように断続的に攻撃を加えるしかないか……?」

「でも、アイツは宙に浮いていて、なかなか俊敏だぞ?君もさっきのでわかるだろう?」

 ミツルギの言う通り、確かにあのメロンは大きさの割にはなかなかに早い。

 サムイドーの王様と言うあだ名は伊達ではないようだ。

 

 だが……素早さなら俺もそれなりに自信がある!

 

「なら、俺がそのメロンの上から魔法を撃って、地面に釘付けにするから、みんなでタコ殴りで!」

 

 そうして俺はハイジャンプを使い、メロンのさらに上の高度まで飛んだところでホバリングで留まる。

 

「『ウインド・バレット』‼︎」

 

 そして、メロンを地面に打ち付けるようにウインド・バレットを連射する。

「成る程……拡散させて籠みたいに囲ったわけか」

「威力はお察しだけどな……!よし、地面についたぜ‼︎」

 

 取り回しのいい1本指、威力重視の2本指が今までのウインド・バレットの撃ち分けだったが、指を5本全て使うことにより、威力は低いが広い範囲に拡散して撃つことができるようになったのだ。

 

「今だ!『水のラプソディー』‼︎」

「リアさんに続く……!『パワー・スラッシュ』‼︎」

「私も行きます!……『ライトニング』‼︎」

 

「メロメロメロメロ〜⁉︎」

 

 そんな、拡散弾の檻の中で地についたメロンに、3人の攻撃が襲いかかる。

 

「メロ…メロ〜ン……」

 少し、慄いたように声をあげるメロンだがこの後に……あれ?

 

「そう言えば、ダニエル達は……⁉︎」

「『ライトニング』……ナギトさん!今は戦いに集中してください!」

 

 ダニエルはどこだと見渡していると、地上からゆんゆんがそう咎めてきた。

 

「お、おう……」

 俺は、嫌な予感を感じながらもウインドバレットでの押さえ込みを続けていた。

 

 

 

 数十分後。

「あのメロン、最初の時と比べて抵抗しなくなってきてねえか?」

 マスクメロンとの戦いを繰り広げている中で、俺はある変化を感じていた。

 何というか、怯えて必死に耐えているというか……。

 

 とにかく、マスクメロンが最初に見せていた敵意をあまり感じないのだ。

「大分弱ってきましたね…」

「そうだね…」

「メ、メロロ〜ン…」

 

 そんなことを考えている間にも、逃げ場もなく攻撃を受け続けてきたマスクメロンは、グロッキー状態である。

「よし、みんなは下がってくれ!ここはぼくがトドメを……」

 

 そして、ミツルギが魔剣グラムを構えてトドメを刺そうとした時。

 

「待て!」

 ミーアが突然割って入ってきた。

 

「うわっと⁉︎

 

 ど、どうしたんだい?急に目の前に出てきたら危ないだろう?」

 

 ミツルギが注意するが、ミーアはそんなことはどうでもいいと言わんばかりに。

「マスクメロン……何だか怯えてる!だから、ここはミーアに任せろ!」

 

 と、必死な顔をしてメロンを庇いはじめた。

 

「エイミーさん!ミーアちゃんを…」

 俺が地面に降り立つと、ゆんゆんがミーアをマスクメロンから離れさせようとしていたが、エイミーさんは少し考え込むような仕草の後後。

 

「大丈夫。ミーアちゃんは素直な子だから……きっと、マスクメロンの気持ちがわかったのよ」

 

 まさに、お姉ちゃんな見解を示した。

 

 

「ナギトさん…」

「分かってる。もしもの時にはすぐに飛び出す……突撃要員になるなら、ライトサーベルを」

「はい、ありがとうございます」

 ミーアがメロンと話し合いを始めたのを見て、ゆんゆんに促された俺は武器を構えて待機していた。

 

……一応、ゆんゆんにライトサーベルを渡して警戒しているが、果たして……?

 

 

 そして、その場にいたみんなが固唾を飲んで見守っている中で。

 

 

「ミーアは敵じゃないぞー?ここにいる奴らも、優しい奴ばっかりだからなー?」

「メ、メ〜ロ〜ン〜…」

 

「なまら、怖かったんだよな?だから攻撃したんだよな?

 よしよし……」

「メ〜ロ〜ン、メ〜ロ〜ン‼︎」

 言葉はわからないが、声のトーンからどうやらミーアの言葉に賛同しているらしい。

 

「ナギトさん?私、なんだかすごくひどいことしてた気分なんですが…」

「そ、そうだね…」

「まあ…あの盤面じゃあ、ああなるだろう?」

「一応心の中でごめんなさいをするしかねえな」

 

 怖がるメロンを地面に押し付け、タコ殴りにした事に罪悪感を感じて

いる俺たちが顔を寄せ合ってヒソヒソやっていると、エイミーさんが。

 

「すごいわミーアちゃん……『果物一の暴れん坊』の異名を持つマスクドメロンを、こんなふうに手懐けてしまうだなんて…!」

 

 と、まさかの戦わずして戦いを終えたミーアに拍手喝采を浴びせていた。

 

「ほら、お帰り。

 

 もう人を襲ったりしたらダメだぞ?」

「メロロロロ〜ン‼︎」

 

 こうして、ミーアにすっかり絆されたマスクメロンは、遥か遠くの空へと帰っていくのであった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 って、それで終わりじゃない。

 

 

「よし、これでようやくヤールングレイプルを手に入れられるね。早く手に入れて、コンテストを……!」

 リアさんのいう通り、ヤールングレイプルを手に入れて……って、そうだよ!

 

 

「なあ、そう言えばダニエル達はどうした⁉︎さっきからずっと見てねえんだが…?」

 嫌な予感がして聞いてみると、ゆんゆんが考え込む仕草の後に顔を青ざめさせた。

 

 

「もしかして、私たちが戦っている間にヤールングレイプルを……」

「だ、だが!あの混戦の中で巻き込まれるかも知れないリスクを冒してまで……」

「アイツ、行動力は只者じゃないらしいぞ…」

 反論しようとしたミツルギが冷や汗を流し、いよいよこれはまずいと思った俺が直ぐにヤールングレイプルのある場所へと向かおうとしたその時。

 

 

「フハハハハ‼︎その必要はない!」

 

 高笑いと共にチャーリーがやってきた。

 

 

「チャーリー!どういう事だ、それは!」

 リアさんが声をあげると、その後ろから。

「露払い、感謝しますよ。

 

 お陰で……ヤールングレイプルを我が手に収めることができました」

 

 皮肉も交えてるのか、これ以上なく慇懃な口ぶりでこちらに歩み寄ってくる声がした。

 

 

「そ、そいつが……ヤールングレイプル…」

 そしてその声は……勿論ダニエルのもの。

 

 

「マスクメロンと戦っている隙に出し抜くとは……。

 

 卑怯だぞ、お前たち‼︎」

 

 

 ミツルギがそう叫ぶが……俺がダニエルだったとしても、恐らく同じ手段をとったと思う。

 

 最悪の事態に陥ってしまったと頭を抱える俺の前では、ダニエルが興奮冷めやらぬと言った顔で。

 

 

「さあ、ついに念願のヤールングレイプルを手に入れました!

 

 

 トールハンマーの真の力……今こそ‼︎」

 

 ヤールングレイプルを纏った腕で、トールハンマーの力を使おうとしていた。

 

 

 

「おい、まずいぜ!あんなもんを自由に使われたら、マジで勝ち目がない………お前ら、ここはズラかるぞ!」

「そんな危ないものを放置しておくのか⁉︎やってしまったことは仕方ないとして、それを取り返そうとは……!」

「やろうとすればここでみんなあの世行きだわ!

 

 ここは引いて作戦を立て直すしか……!」

 

 妙なところで正義感を発動させたミツルギに叫んでいると、ダニエルは。

 

 

「安心してください。

 

 散々私の邪魔をしてくれたあなた方を……今更逃すわけがないでしょう‼︎

 

 

 唸れ、稲妻‼︎」

 

 

 

 誰1人逃すつもりはないと宣言したと同時に、複数の雷を放ち、その稲妻の一つが、エイミーさんへと突き刺さろうとしたその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エイミー、危ない………

 

 

 

 

ああああああああああ⁉︎」

 

 

 黒い残像と共に、リアさんがエイミーさんを突き飛ばし………

 

 

 その稲妻に鎧越しから胸を貫かれた。

 

 

 

「リアさん⁉︎」

 その、あまりに突然の事態に誰もが固まる中、一番最初に体が動いた俺がリアさんの元に駆け寄り、抱き起こす。

 

 

「おい、おい!

 

 

 しっかりしろ、目を開けてくれリアさん‼︎」

 

 声を限りに叫び、揺すってみるが……胸に黒く焦げた穴が空いたリアさんはされるがままで何の抵抗もなく、ぐったりとしたままだ。

 

「ナギトくん………リアさんは……?」

「…………ゆんゆん、ライトサーベルを貸してくれ、早く!」

「は、はい!」

 

 ゆんゆんからライトサーベルを受け取り、リアさんの瞼を開けて光を当ててみるが………瞳孔に動きがない。

 

 

 

「リアさん………私を、庇って……⁉︎」

 

「あ………ああ……リアを、傷つけるつもりはなかったのに……‼︎」

 

 エイミーさんが慄き、ダニエルがそんなまさかと言わんばかりに呟く中で……俺は、告げた。

 

 

 

「リアさんが………死んだ。

 

 

 即死だ!」

 

 

 俺の言葉に、ミツルギとゆんゆんは固まり、エイミーさんは膝から崩れ落ちる。

 

 ミーアがそんなエイミーさんに駆け寄り………。

 

 

 

「そ、そんな………リアが、死んだ?

 

 

 

 う、うおおおああああああ‼︎」

 

 ダニエルは、その場で泣き崩れた。

 

 

 

「この馬鹿野郎!エーリカたちになんて説明すりゃ良いんだよ、こんなの…‼︎」

 

 俺を信じてリアさんを託したエーリカたちに、「リアさんは冒険の途中で死んでしまいました」なんて、口が裂けても言えないが………こうなっては言うしかない。

 

 

 あんまりにあんまりな無茶をしたリアさんの亡骸にそう叫ぶしかなかった俺の前では、悲しみに暮れたダニエルが慟哭を続けている。

 

「推しを死なせてしまうなんて、前代未聞の大失態……‼︎

 

 

 もうダメだ……死のう……‼︎」

「ダ、ダニエル様落ち着いて‼︎

 

 

 自分に向かって雷撃を撃ち込もうとするのはおやめ下さい‼︎」

 そして、自害をしようとしたところでチャーリーに止められていた。

 

 

「くっ、トールハンマーを手に入れる力を得ても、ダニエル様がこのご様子では流石に分が悪い…!

 

 ひとまずは、撤退だ‼︎」

 

 そんなダニエルの様子を見て流石にまずいと思ったのか、チャーリーがダニエルと共に撤退をしようとする。

 

 その2人を誰も追撃しようと……するだけの気が起きないほど、突然のことにショックを受けているようだった。

 

 俺も……今はこの後を考えるのに精一杯で、とても仇討ちにいくだけの気力がない。

 

「うおおおああああ‼︎リーアー‼︎」

「ほら、ダニエル様‼︎

 

 いつまでもお泣きになってないで行きますよ‼︎」

 

 

 ダニエル達はその場から立ち去っていき、戦いこそ終わったが………そこにあったのは、ヤールングレイプルをも奪われてしまったと言う事実と、リアさんが死んでしまったと言うもう一つの事実だけだった。

 

 

 

 俺のマントの上に横たわらせたリアさんの亡骸を前に、ミツルギたちは悲しみに暮れている。

「くっ………仲間の1人も守れないで、何が勇者だ!

 

 僕は、勇者失格だ……!」

「エイミーを守ってくれて嬉しいけど……リアが動かないのは、なまら悲しい……」

「ごめんなさい、リアさん……私のせいで……‼︎」

 

 エイミーさんはリアさんの前で泣き、ミーアはそのそばでエイミーさんに寄り添っている。

 

 

「……ナギトさん、これから、どうするんですか……?」

 

 そんな3人から少し離れたところで、俺とゆんゆんは話をしていた。

 

 ゆんゆんも泣き腫らして瞼が赤いが、俺が考え込んでいるのを見てこちらに来てくれていたのだ。

 

 そんなゆんゆんにありがたみを感じながらも、考え付いたことを話す。

「リアさんの死体を担いで、大急ぎでアクセルの街へ行くぞ」

「アクセルに………?あっ‼︎」

「そう言うことさ」

 今、アクセルの街には王女様が会食に来ていて、そこにはカズマさんたちも参加する。

 

 つまり……そこには、王都の関係者と蘇生魔法が使えるアクアさんがいると言うことだ。

 

 

 そこにリアさんの死体を持っていき、蘇生させてもらった後にこの事件について王女様たちに聞いてもらえば、流石に何かしらの対応はしてくれるだろう。

 

 なにせ……爆裂魔法以上の火力を持つ古代兵器を制御可能な、危険人物が現れてしまったのだから。

 

「そうなると……遺体の傷みを防ぐためにも、氷結魔法を」

「ああ……頼むぜ」

 

 少し希望を持てたような顔のゆんゆんと、作戦の煮詰めに入っていると…涙目のミツルギ達がこちらを訪ねてきた。

 

「キミ達……なんの話をしているんだい?」

 

 死体の処理について……とは言えない。

 

 とは言っても、まだ確定事項じゃない以上今の考えをペラペラと話すわけにもいかない。

 

 そうなると………まあ、こうなるわな。

「エイミーさん、アクセルの街に行く最短ルートを教えてくれ」

「……いきなり、どうしたの?」

 

 

 絶望の表情をしているエイミーさんを、少しでも安心させようと俺は。

 

「……神頼み、かな」

 

 そう、不敵な笑みと共に告げた。




いかがでしたか?
今回もちょこちょこ解説を。

ウインド・バレット(拡散)
 ナギトが生み出した新しい撃ち方。全ての手の指を使うため、最大で1回に5発同時に撃つことができるが、指一本における威力は低いため、足止めなどに使用する。

 次回は、リアの正体について触れていくので、お楽しみに!

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