この素晴らしい世界に祝福を! このぼっち娘と冒険を!   作:暇人の鑑

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更新です。
ちょっとシリアス気味ですが楽しんでいってください。


第24話 この転生者に告白を!

 現在、アクセルの街にはこの国「ベルセルク」の第一王女『ベルセルク・スタイリッシュソード・アイリス』嬢が来訪している。

 

 その目的は、これまで多くの勇者達がなし得なかった魔王軍幹部の討伐を成し遂げた冒険者「サトウカズマ」とその仲間達との会食であり。

 

 仲間達の1人にいる『ダスティネス・フォード・ララティーナ』嬢の自宅である「ダスティネス家」の邸宅にて執り行われていた。

 

 

 そして、仲間達と一緒に2日かけてアクセルの街まで戻ってきた俺は。

 

「いきなり来て、当家のお嬢様を出せと言われましても……普段ならまだしも、今は無理ですよ」

「そこをなんとか……せめて、話を通してくれるだけでもいいからさ」

「そうは言われましても、ただ今アイリス姫との会食中ですので…」

 

 守衛のお兄さんと、押し問答を続けていた。

 まあ、普通ならこんな話を通してくれるわけないのはわかっているが……話の内容的に聞いてもらわないとまずいのだ。

 

 だからこそ大衆浴場で汚れを落とし、懐かしの中学の制服を着てフォーマルな感じで来たのに……。

「大体、貴族の屋敷に事前の約束なしに来るだなんて、非常識にも程がありますからね?他の貴族なら無礼撃ちされても文句は言えませんよ?」

 

 

「それは分かってるんだけど、この話はむしろそのお姫さんにも聞いてもらわなきゃならん話で……」

「そんな事を私に伝えようとしていたのですか⁉︎通せるわけないでしょう、そんな話!というか、そんな話聞きたくありませんよ!」

 

 青ざめた守衛さんに、断固反対の意思を示されてしまった。

 そこはぼかして、「大事な話があるから少し聞いてほしい」とでも言ってくれれば良いのに、真面目なんだか頭が硬いんだか………

 

「あー、だったら!会食してるメンツの中に青髪の女性がいるはずだから、その人を呼んでくれ。この際それで良いから……」

「譲渡してるつもりなんでしょうけど、一守衛の私には荷が重すぎますよ⁉︎お願いですからお引き取り下さい!」

 

 そう言って俺の背中を押して門の外に追いやろうとするお兄さん。

 

 こうなったら、打ち首覚悟で侵入してやろうかと考え始めたその時。

 

 

「やけに騒がしいと思ったら……ナギトか?

 

 こんな時に、何をやっているのだ?」

 なぜか、袖が赤く汚れたダクネスさんが俺に気づいて声をかけてきた。

 

 

「お嬢様……あ、こら……!」

「ダクネス……じゃない、ララティーナさん!丁度いいや。少し話があるんだが……!」

 

 声をかけてきた隙に守衛のお兄さんをかわし、ダクネスさんの近くまできて話しかける。

 

「ララティーナ呼ばわりはやめろ!

 と言うか、今私はアイリス様との会食の最中、ゴタゴタがあったのでドレスを変えようとして、たまたま通りかかっただけだぞ?

 

 お前の話を聞いてやるほどの余裕は……」

 

 と、難色を示すダクネスさん。

 

「いや、そのアイリス様にも関わりかねない事態になったんだ!だからできれば王族関連の人に話を聞いて欲しくて…」

 そこに食い下がるように俺がアイリス姫の名前を話に出すと。

 

「……分かった。すぐに着替えるから応接室に案内しよう」

 途端に態度が変わったが、聞いてくれるのならありがたい。

 

……でも、今の一番の目的はこっちじゃない。

 

 

「ちょっと待ってくれ。外に置いてきた物があるから、それを持ってきたいんだが……」

 その為に呼び止めると、ダクネスさんは怪訝な顔をして。

「え?ああ……別に構わないが、危険な物ではないだろうな?」

「ある意味で危険かな…?」

 危ないものではないが………下手に扱うと中身が大変なことになる。

 

「……私が改めて、問題なければ良いだろう」

 

 そうして、ダクネスさんに見せたものは………。

 

「お、おい!

 

 これって……」

「だから言ったろ?

 

 ……アクアさんを呼んできてくれ。頼む」

「………お前、何を話す気だ?」

「…ちょっと、シャレにならない話」

 

………リアさんの遺体を収めた棺だった。

 

 

 

 

「ナギトさん、お待たせしました。

 

 アイリス様の教育係を務める、レインと申します。

 一応貴族ですが……ダスティネス家程の家格があるわけではないので、そこまでかしこまらなくていいですよ」

  

「助かります……」

 小さな応接間に通された俺は、目の前に現れた女性に軽く会釈をしていた。

 

 その人…レインさんは、金髪碧眼という貴族の特徴を揃えているものの、ダクネスさんや新聞で見たアイリス姫と比べると、どこか地味な印象だ。

 

「それで……お話と言うのは?」

「ええ、まずは単刀直入に言うと……トールハンマーって魔道具を知ってますか?」

「……ええ。たしか、古代兵器で稲妻を生み出す、とか」

 

…詳しくは知らないパターンか。

 

「その稲妻の威力はなんと、あの爆裂魔法に及ぶのですが……魔王軍の関係者であるダニエルが、封印を解いてしまったのです」

「まさか、爆裂魔法に……⁉︎ですが、アレは単独では使えない欠陥兵器では……」

 思い出したかのように首を傾げるレインさんに。

 

「それを制御するための魔道具が、ウォルム山にあったんです。

 

 それで、それを先に手に入れてしまおうと俺達はウォルム山へ向かったのですが……」

「ダニエルに、奪われてしまったのですか?」

「ええ。そして、そのトールハンマーで仲間が……」

 あの時には考える余裕もなかったが、改めて話した今になって、守れなかったと言う後悔が俺に突き刺さる。

 

 言葉から何かを感じ取ったのか、レインさんは慌てたようなそぶりで。

「こ、これ以上は大丈夫ですよ!

 

 ただ……魔王軍の関係者と言いましたが、なぜあなたはそれを知っているのですか?」

 

 どこか疑わしさを感じるような目で聞いてきた。

 まあ、魔王軍の関係者と言い切った事が、引っ掛かったのだろう。

 

「自分で、「魔王様に認めてもらって、魔王軍への再雇用を…」とか言ってたんですよ。

 

 つまり……魔王へ自分の力を誇示する為に…」

「王都が狙われる可能性があるから、こうして報告してくださったんですね……ありがとうございます。

 

 王都で会議にかけますが……後々、お話を伺う可能性がありますので、その時はよろしくお願いしますね」

「ええ……こちらこそ、急にこんな話を聞いてくださって、感謝します」

 話がまとまったのならと、レインさんが立ち上がった時。

 

 

「ナギト、アクアが蘇生を終えたそうだ」

 ダクネスさんが、応接室の扉を開けた。

 

 

 

 

 

「蘇生が終わったけど、しばらくは無理しちゃダメだからね……」

 リアさんの蘇生を終えたアクアさんは、俺に軽い説明を終えると眠そうに目を擦って部屋を出ていき。

 

 目が覚めたら、エーリカ達の元へ送り届けようと見守っている中で俺は考えていた。

 

 

 アクアさんの話だと、死者の蘇生には条件が二つある。

 

 一つは死体の状態だが……幸運値モリモリにしたとは言えど、チリからカズマさんが蘇生できてたことを考えると、今回のリアさんの死体の状態はかなり良かったとも言えるだろう。

 

 二つ目は魂が現世にとどまっているかと言うことであり……こちらはかなり危なかったらしい。

 この世界の女神様である「幸運の女神」エリス様がリアさんの魂を天国に送ろうとしていたところに滑り込んだんだとか。

 

 因みに、魂を天国に送った後だとリザレクションを使っても死者を生き返らせる事ができない。

 

 

 これが、この世界における死者蘇生のルールなのだが……アクアさんがさっきの説明で気になることを言っていたのだ。

 

「あと、この子既に一回死んでるらしいけど………まあ、カズマさんを何回も甦らせてるんだし今更よね」や。

 

「この子、かなり前に見覚えがある気がするのよね……」とか。

 

 補足だが、基本的には一回死んだ事がある人間も蘇らせることはできない。

 

 そうなると、この世界で一回死んでいたと考えるのが自然だが……シエロさん曰く、リザレクションは「存在するけど、まず覚えられる人がいないレベルのスキル」であり、アークプリーストですらも覚えられる奴は普通いないらしい。

 

………そう考えると、リザレクションを使える上に複数回死んだ人間を蘇らせてしまうアクアさんは、やはり人間とは根本的に違うと言うことだ。

 

 閑話休題。

 

 つまり、リアさんがもしこっちの世界で既に死んでいたとすれば、そもそももう居ない可能性が高いので………もう一つの可能性である「どこか別の星で死んで、ここに転生してきた」が考えられる。

 

……要するに俺たちと同じく「転生冒険者である説」だ。

 

 というか、恐らくそれだろう。

 ミツルギの話ではアクアさんは、カズマさんに連れて来られるまでは日本で死んだ若者をこの世界に転生させていたらしいから、「見覚えがある」というアクアさんの発言も頷ける。

 

 更には、前に師匠がミツルギの魔剣とリアさんが持っていた鍵盤が「神器」だと言ってたし。

 

 何より、リアさんのような顔立ちの人は、日本でよく見ていた。

……つまり、リアさんは日本で死んで、あの鍵盤と共にアクアさんに送り込まれた転生者という事だ。

 

 しかし、そうなると……。

「なんで、そのことを覚えていない様子だったんだ…?」

 

 と、謎が新たな謎を呼んだので考えようとした時。

 

「ん、んん……?」

 微かな声と共に、リアさんは重々しく瞼を開いた。

「リアさん……」

 

 声をかけるが、リアさんは自分の状態を認識するのが先らしく俺の言葉は聞こえてないようだ。

「ここは……そうか、私はアクア様に蘇らせて頂いたんだ」

 

 そうして体の様子を確かめていたリアさんがこちらを向くまで見守ろうとしたが……声をかけることにした。

 

 

「傷は、どうなったのかな……?」

 そんなことを言いながら、服を脱ごうとしやがったからだ。

 

「リアさん、俺いますって!」

「きゃあ⁉︎な、ナギトか……⁉︎み、見ないでくれ……!」

 

 顔を赤くして、布団で身を隠したリアさんは、初めて俺がいることに気づいたようだ。

 

「後ろ向くから、そのうちにさっさと確認してくれよ……」

「見たら承知しないからね…」

 

 慌てて後ろを向くと、後ろから「まるで、初めから傷なんてなかったみたいだ」と安堵の声が聞こえてくる。

 

「もういいかい?」

「うん、待たせたね……」

 

 許可を得たので振り返ると、雷撃で射抜かれた胸の部分が破れていたのか、棺の中に入っていたコン次郎で隠すようにしたリアさんは。

「ここは何処なんだ……?それに、ナギトはなんで学ランなんか来てるんだ?」

 

 困惑と郷愁が混じったような目を向けてきていた。

……この服を学ランと呼んだか。

 

「ここは、ダスティネス家……ダクネスさんの実家だよ。後………なんでこの衣装が学ランだってわかったんだ?」

 

 その目でもう確定だが、念のため確認すると。

 

 

「そうか………流石はナギトだね。ある程度わかってたのか?」

「ある程度はね……でも、わからないこともあるぜ」

 どこか茶化すように言ってやると、少しの逡巡の末に決心した様子でリアさんは。

 

 

「……なら、答え合わせをしよう。

 

 

 

 

 私は、日本からこの世界に転生してきたんだ」

 

 そう、はっきりと告げた。

 

 

 リアさんが、改めて懐かしいものを見るような目を向ける。

「『マトイナギト』と言う名前からして……そっちも、そうなんだろ?」

「まあな………それで、正解したご褒美として一つ聞きたいんだが」

 俺は耐えられなくなり、聞きたかったことを聞こうとすると。

 

「分かってる……今までどうして聞いてこなかったか、だろ?」

「差し支えない範囲で、頼むぜ」

 

 一つ首肯を挟んだのち、ゆっくりと語り始めた。

 

 

「私は元々………日本でアイドル活動をやっていたんだ」

……テレビで見たことあったと思ってたが、そう言うことか。

 

「なんて名前のグループだったっけ?」

「言っても分からないさ。大勢いるうちの1人だったからね………」

 

 

 アイドル養成所で研修生としてレッスンを重ねたリアさんは、デビューしてアイドルとしての経験を積み重ねていき、やがては芸能界へその名前を浸透させていく………はずだったが。

 

 

 そのアイドル生活は突然奪われることになる。

「喉の病気……?」

「ああ……それで、歌が歌えなくなったんだ。

 

 そして、ショックを受けている時に追い討ちをかけるように、交通事故で………この世界に転生したんだ」

「悪りぃ……なんか、余計なこと聞いちまったか?」

「構わないさ……今となってはね。

 

 この世界で、再び歌が歌えるようになったんだから……」

 

 それが一番嬉しかったよと笑ったあと、その表情は再び陰る。

 

「でも……私はこの世界を救うと言う使命を帯びた、転生者だから。

 

 昔のように歌を歌い、踊っているわけには行かないって思った」

 

 そうして高校では薙刀部だったことも相まって、ランサーとしてレベルを上げていったんだとか。

 

 だが……ここで再び転機が訪れる。

 

 

「記憶を、失っていたのか………?」

「ああ……ある日、馬車がモンスターの襲撃にあってね。

 

 放り出されて、崖から落ちたんだ」

 

 さらりととんでもないことを明かされて、息を呑むが……同時にどこか納得した。

 

 

 そこにいるとは思わない同胞にあえば、多少なりとも変わった反応を見せるものだが……リアさんとはそんなやりとりをしていない。

 

 俺がそこまで気にしてなかったこともあるが………それは、リアさんも自分が日本人であることを忘れていたからではないだろうか。

 

 

「で、そこでエーリカやシエロさんと会って、アクセルハーツの誕生って訳かい?」

 話の重さに耐えかねた俺が話を進めると、リアさんはすごく嬉しそうに。

「ああ。自分の名前も、転生者だってことも忘れていたこともあるけど……すごく嬉しかったんだ。

 

 この世界に来ての、初めての仲間だったから……!」

 

 俺で言うところのゆんゆんみたいな存在って訳だな。

 

 ところで……

「リアって言うのは、この世界での名前だろ?本名はなんて言うんだよ」

 

 冒険者カードあたりに書いてありそうなもんだが、ふと気になったんで直接聞いてみると。

「本名なんてどうでもいい。

 

 もう、こっちの名前で呼ばれ慣れてるしね……それよりナギト。

 

私は、踊り子を続けてもいいんだろうか?」

「…………………は?」

 

 とんでもない質問で返された。

 質問を質問で返すなとか、言わなきゃいけないことはあるんだろうが……それすらも俺の頭の中から一瞬飛ぶ程に、その質問のインパクトは強烈だったのだ。

 

「何でそんなこと………踊り子、やりたくないのか?」

「そんなわけない!そんな訳無いけど……私は、転生者で………!

 

 一刻も早く魔王を倒すために動き出した方がいい気が……!」

「ああ……」

 つまり、転生者として使命を果たすのを優先した方がいいんじゃないかって話か。

 

……なんだか耳が痛いなあ。

 日々を楽しく生きたくて、そのために冒険者をやっている俺とくらべれば、まさに勇者候補の鑑だ。

 

 でも……俺から言わせりゃリアさんは硬すぎるんだよな。

「確かに俺たちは、魔王を倒す勇者としての使命を受けて転生した転生者だけど、そんなもん後付けさ………て言うか」

 

 俺は、近くにあった鏡をリアさんに向ける。

 

「そんな悲しそうな顔でやってたら……いつか壊れちまうし、アクアさんもそんなの望んじゃいないと思う」

 だけど………今勇者としての使命を語るリアさんの顔は、どこか強迫観念に駆られたようで………どことなく辛そうだ。

 

 そして、リアさんを転生者として送り出したアクアさんも……こんな辛そうな顔してまでもやってほしいとは思わないだろう。

「なんせ"汝、何かの事で悩むなら、今を楽しく生きなさい。楽な方へと流されなさい。そして、自分を抑えず本能の赴くままに進みなさい"……なんて教えを説くんだからな。やりたいことを優先して何が悪い?」

「……!」

 

 正直、アクシズ教徒の素行は大いに問題があるが……教義に関しては納得させられるものも多い。

 なんというか、肩の力を抜いてくれるのだ。

 

 それに……。

「リアさんは踊り子をやってて、エーリカやシエロさんに出会って、俺たちにも出会ったんだ。

 

 あの2人、今頃きっとリアさんが戻ってくるのを待ってるんじゃねえか?」

「シエロ……エーリカ……!」

 

「今リアさんがやるべきことはエーリカ達に元気な姿を見せて、コンテストに優勝する事さ。

 

 後のことはその時になったらゆっくり考えても遅くは無いだろうぜ?」

 

 瞳を潤ませうつむいていたリアさんだったが、ようやく顔を上げて。

 

 

「………そうだね。その通りだ」

 

 どこか、憑き物が落ちたかのような笑顔を見せた。

 




いかがでしたか?
 因みに今更かもしれませんが、ナギトの口調や振る舞いは「新機動戦記ガンダムW」の「デュオ・マックスウェル」をモチーフにしています。
 
次回から6章編の終盤に突入しますので、お楽しみに!
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