この素晴らしい世界に祝福を! このぼっち娘と冒険を! 作:暇人の鑑
もう少し仕上げてから……と思ってたら1年経ってました。
それではどうぞ!
ウォルム山での一件から1週間近く経った。
生き返ったとはいえ、一度死なせてしまったことでエーリカ達から大目玉を喰らった俺は、お詫びとしてゴミ溜め……リアさんの部屋の掃除をしたり、買い出しに駆り出されたり、果ては洗濯以外の家事をやりながらゆんゆんの手料理を食べたりと、慌ただしい日々を過ごした。
その間にもダニエルが攻めてくるかと思いきや、王都に特に異変があったという知らせはなかった。
案外、リアさんを殺したショックからまだ立ち直れてなかったのかもしれないが……まあ、平和なのは良いことだ。
んで、そんな言わば臨戦態勢みたいな状況の中。
「いやー、すっげえ人だな!そんだけ人気あんのか」
「パンフレットを見ると、何千もの踊り子ユニットの中から予選を勝ち抜いた8組が参加するらしいですからね。
踊り子ファンの人や、そうで無い人たちにとっても注目度が高いのも頷けます」
俺とゆんゆんはアクセルハーツのマネージャーとして、踊り子コンテストの本選会場に足を踏み入れていた。
会場の客席にて。
「おお〜、ここが会場か!なまらでっかいステージだな!美味そうなもの売ってる屋台も一杯だ!」
「ああ…あんなにはしゃいでるミーアちゃん……!これだけでお腹いっぱいだわ…」
ミーア達も応援に行くとのことで一緒にきたのだが………それにより俺は頭を痛める事態に直面した。
それは……。
「お姉さんがなんでも買ってあげるわよ!だから……ミーアちゃんのお耳、触らせてもらっても良いかしら⁉︎」
不審者というか変態じみたことを宣うそのお方は。
「まさかここにいるとは……この組み合わせだけはアウトだったのに」
「あはは……」
先日一緒にダニエルのところへかち込んだトレジャーハンターこと、メリッサだった。
「いやあ!くすぐったいから止めろよ!」
返答もなくもふり始めるメリッサにミーアがみじろきして、抗議するがメリッサはもふもふに我を忘れているようだ。
「あの、メリッサ……さん?ミーアちゃんが嫌がっているから、やめてもらって良いかしら……?」
「じゃああなたでも良いわ。はうう、きゃわわ!
ちょっとツンってするだけだから!先っぽだけだから〜!」
「ふえ⁉︎ちょ、ちょっと待って、耳は弱いのー!」
それを注意したエイミーさんも、その代わりとしてメリッサからの洗礼を受けている。
美女2人がこうしてキャッキャウフフするのは……
「ナギトさん?ここは止めに行く場面ですよね?」
「わかった、わるかったからその無言の圧力やめてくれよ……」
目の保養として焼きつけようとしたら、ゆんゆんにストップをくらったので仕方なく止めに行く。
「百合の花を散らすのは無粋」って、クラスのヲタ友に言われてたんだがな。
「そこまでだメリッサ。これ以上はお巡りさんが来るぞ」
「……本当はもっと楽しみたいけど、仕方ないわね」
そんな、本当に名残惜しそうな顔で言われても。
「今回はリアさん達の応援に行くんだからな?メリッサやミーア達もモフ道中や食べ歩きならまた今度にしてくれや」
「ナギトさん、そろそろ……」
メリッサ達に釘を刺していると、ゆんゆんが袖を引っ張ってステージ裏に視線を向ける。
「………そうだな、戻るか」
その意味を理解した俺は、メリッサ達に一言言ってから控室へと向かっていった。
「んじゃ、俺よりもわかってるだろうが、改めて本選のルールを説明させてもらうぜ」
アクセルハーツの控室にて。
ゆんゆんが差し入れに持ってきていたレモネードを飲む3人を前に俺は告げる。
「本選に出るのは8組で、まずはこの中から4ブロックに分かれて対戦する。
審査員の評価と観客の盛り上がりを見て勝敗を決めて、そこから勝ち進んだ4組が後日、総当たりで決勝戦を行うってわけだな」
ダニエルが動きを見せてこないとはいえ、危険な状況なのには変わらないし……そもそも、義賊騒ぎで王都はかなり浮ついている。
そんな中で、踊り子コンテストをぶっ通しでやるのは危険すぎるという事があって、決勝戦は後日行うことになったのだ。
「でも、その決勝もこの一戦で勝ち抜かないと出られないし、相手も各地の予選を勝ち抜いた猛者集団ばかりらしいので……皆さん、頑張ってください!」
ゆんゆんの声に、3人はごくりと唾を飲んで緊張している様子だ。
まあ、そうなりゃマネージャーのやることは応援だよな。
「エーリカ。お前はカワイイんだろ?なら、それを審査員や客たちに思い切り見せてやれ!」
発破をかけるように告げると、エーリカは待ってましたと言わんばかりに。
「ナギト‼︎今なんて言ったの?ねえ、今なんて言ったのー⁉︎」
「エーリカさん、折角のお化粧が崩れちゃいますよ!」
鼻息荒く詰め寄ろうとしたところを、ゆんゆんに止められた。
とりあえず、エーリカはゆんゆんがなんとかしてくれると思うので、シエロさんに視線を向ける。
「ここ1週間練習を見てきた中でも、シエロさんが努力してるのはよく分かった。
だから自信を持っていけ!誰もシエロさんのことを笑わせないからよ?」
「ナギト君……うん!ボク頑張るよ!」
少しぽかんとした後、シエロさんも拳を握り締めながら頷いた。
そして、カワイイの催促をしてきたエーリカをかわしながらリアさんに。
「リアさん……いまのリアさんの使命は、このコンテストで優勝することだ。今はそれだけ考えてれば良い。
その後は……死ぬまでに見つければ良いさ」
「そんな悠長にしていて良いのか……?でも、今はこれに集中しないとね」
下手したら俺達の正体がゆんゆんにバレるので、ある程度ぼかしながら伝えると、リアさんは苦笑しながらも頷いた。
それを見て最後にみんなに何か話そうとも思ったが、ドアを叩く音がしたので。
「そいじゃあゆんゆん、ちょっと席を外すから一言頼むわ」
「ええ⁉︎私もですか⁉︎えーっと……」
事情を知るゆんゆんに後を任せ、俺は扉の向こうにいた騎士達に顔を出すのであった。
「んで、どうなった?俺は早く戻りたいんだが……」
「お待ちください。今、報告書を持って参りますので」
王城に連れてこられた俺は、従者達らしき男達に広間へと通された。
今回連れてこられたのは他でもなく……ダニエルのことについてだ。
なんでも、俺がマネージャーごっこをしていた間にダニエルについて調べていたらしい。
出されたお茶を飲んでいると、王都の役人らしき人が対面に腰掛けた。
「結果を知らせる前に、まずは先日のご報告を感謝します。
我が国に国難をもたらしかねない古代兵器とその使い手に関する情報、ありがたく頂戴しました。」
「まあ、今のところ動きはないけど……それは時間の問題だろうな」
ダニエルは兎も角、チャーリーはリアさんに対してはそこまでの執着は見せておらず、仕事に関してはダニエルよりも真面目だ。
チャーリーの説得でダニエルが立ち直ったら……その時こそ攻め込んでくるだろう。
「差し当たっては、王都より密使を放ち、独自調査を行いました。
その結果……」
差し出された紙を見ると………そこに書かれていたのは驚きの内容だった。
「魔王軍幹部よりも高い賞金がかけられてやがる……!」
「調査の結果です。
我々は、また魔王軍幹部候補ダニエルを極めて危険な人物と判断し……5億エリスの懸賞金をかけさせていただきました」
「ごっ……⁉︎」
たしか、シルビアの懸賞金は3億エリスだったはず。
つまり、王都からしたらダニエルの方が厄介な存在だと言うことになった訳だ。
「ですので、是非ナギト殿にもご協力をお願いします」
「いや〜、王都の冒険者にでも募集かけた方がいい気もするがな……まあ、俺も手を貸すけどさ」
と、話を進めていると聞き覚えのある騒ぎ声がした。
そういや、今日でアイリス姫がカズマさんをここに拉致して1週間くらいか。
「………そういや、カズマさんは元気してるかい?」
すると、その人は遠い目をして。
「いや、その……アイリス様の勉強の邪魔をしたり、食堂からつまみ食いをしたりと、アイリス様によからぬ影響を与えているようで……」
「……ダクネスさんもきてるみたいだし、もう少しの辛抱だぜ」
大丈夫だろうか、この国の未来は。
一抹の不安を抱えながら、コンテストの会場に戻ると。
「ナギト……大変だ!私たちの衣装がなくなってしまった‼︎」
アクセルハーツの面々が、血の気が引いたような顔でとんでもないことを言い出した。
1時間後に始まるこのコンテストでは、ステージに上がる衣装が登録されている。
その為、衣装が汚れたからと言って予備の衣装を使うことはできない。
つまり……衣装がなくなったアクセルハーツは、壇上に立つことすらできないレベルの危機にさらされていた。
「どうしようナギト!ないの!私の超絶可愛い衣装がどこにもないの!」
「落ち着いて、エーリカちゃん!ナギト君を揺らしても服は出ないよ!」
涙目で揺さぶってきたエーリカを引き剥がし、ゆんゆんに。
「なくなったって、どういう事だ?うっかり他の場所に置き忘れた、とか、誰かに預けたとか…」
すると、ゆんゆんも慌てたような口ぶりで。
「そんな筈ないですよ!衣装の入った袋を壁にかけておいたのは、ついさっきの事なんですから!」
と、速攻で否定してきた。
そうなると、相手チームの妨害工作かファンの暴走を考えるのが普通だが…。
「どうしようナギト……このままじゃ棄権に……!」
焦りを滲ませた表情のリアさんに、どう返したもんかと悩んでいると。
「棄権……?リア達のショー、見れないのか?」
後ろからこの場で聞こえないはずの声がしたので振り返ると、そこにはミーア、エイミーさんにメリッサが。
「み、皆さん⁉︎」
「3人とも、どうしてここに?」
俺とゆんゆんが目を丸くしていると、エイミーさんが事情を説明してくれた。
「本番前の激励に来たんだけど……話は聞かせてもらったわ。何とかならない?」
「何とかって言われても………その、無くなった衣装があれば問題ないんだよ」
エイミーさんに、困ったように返すリアさんを見ていたミーアが残念そうに。
「なまら楽しみにしてたのに……」
そんな、ミーアの声に反応したのは。
「任せなさい!
ここはトレジャーハンターの腕の見せ所、私が見つけてあげるわ!
だから……あとでミーアちゃんのお耳、モフモフさせてね……?」
ケモナーみたいなことを言い出したメリッサだった。
いかがでしたか?
次回はいつになるかわかりませんが、書こうとは思いますのでよろしくお願いします。
それでは、次回もお楽しみに。