この素晴らしい世界に祝福を! このぼっち娘と冒険を!   作:暇人の鑑

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第6話、バニル戦です。


第6話 この仮面の悪魔に切り札を!

地上に湧いている自爆人形は大体50体。

 

 一方こっちの地上組の冒険者達の数は15人程度で、1人3から4体の割り当てだった。

 

 だがこちらには前衛職も魔法使いも、低レベルの冒険者が多いのでタイマンは無理だ。

 

 その為、何人かでチームを組んでそれで集団戦に持ち込もうと言うことになったのだが………

 

 

 俺は、この組み合わせになったことを心から後悔した。

 

「めぐみん!お前上級職のアークウィザードなんだろ?なんか使い勝手のいい魔法ないのか?」

「ありませんよ?私の魔法は、強靭、無敵、最強の爆裂魔法ただ一つ……小手先の技ばかりのゆんゆんと一緒にしないで欲しいのです!」

「今は小手先の技の方が嬉しいんだよ、この役立たずの固定砲台が!」

「なにおう⁉︎」

 

 めぐみんと言い合っている隣では、アクアさんが何故か焚き火の準備をする。

「アクアさん?いったいなにをなされてるので?」

「見ての通り焚き火ですけど?ほら、寒いから紅茶でも……だって、怪我した人がいないと私は仕事がないわけだし…」

「この乱戦時にくつろごうとしないでくださいよお!」

 

 

 このやりとりから分かる通り、俺は体よく問題児を押し付けられたのだ。

「1番レベル低いんだし、その上級職2人と一緒に組んでくれ」と言って俺に押し付けた他の冒険者達に文句の一つでも言ってやりたい……!

 

「カズマさんって実はすごい人なのかもな……いくらなんでも癖が強すぎるぞ」

「おい。これまでの発言の内容について話をしようじゃないか」

 

 やや重い性格をしながらも、色々な魔法を使えるちゃんとした魔法使いなあの子が物凄く恋しくなったが、残念ながらまだこの場にはいない。

 

 

「兎に角俺1人でやるしかないのか……だったら!」

 

 めぐみんをセナさんに預けた俺は、先程覚えた新しいスキルを使うために詠唱を行い、人差し指と中指に魔力を込めて風を纏わせた。

 

 それに感づいてこちらに走ってくる人形に向けて……!

 

「『ウインド・バレット』………BANG‼︎」

 

 銃を撃つような構えから、風の弾丸をぶっ放した。

 

 このスキルは、俺のチート能力がもたらした新たなスキルらしく、相手に向けて威力を高めた空気砲のようなものを何発か撃てるようになる。

 

 そして放たれた風の弾丸は人形に命中して、受けた人形は爆発と共に消えてなくなってしまう。

 

「痛ッ………反動が少しあるな。もうちょっと威力弱まんないのかな?」

 

 このまま撃ち続けたら肩を痛めそうだったので、もう一体の足元を今度は人差し指だけで撃ってみると、勢いが減る代わりに肩への反動はなかった。

 

「威力重視の二本指か、使いやすい一本指って感じだな……BANG!」

 

 使い方をなんとなく覚えたところに、先ほど足元を撃たれた人形が突っ込もうとしてきたので今度は当ててみると、どうやら攻撃をちょっとでも受ければ爆発するらしく、一本指の射撃でも先ほどと同じように人形は爆発した。

 

「後7体……なんとか行けるか⁉︎」

 後の2人がほぼ役に立たないのは目に見えてる為、剣を片手に気合を入れて集団で固まっている人形達へと突撃しようとした時。

 

 

「ああっ⁉︎ごめん、取り逃がしたモンスターがそっちに!」

「はあ⁉︎……クソッ、BANG!」

 近くで戦っていたペアが取り逃したのか、横槍から人形がかっ飛んできたので慌てて避けると、その避けたところに俺の正面にいた人形が走り込んできていた。

 

 

 

「『突風』!そして……しまった、弾切れ⁉︎」

 

 後ろに飛んで距離をとりつつ撃とうとするが、一回の詠唱で使える弾数は一本指での5発分らしく、先ほどまで纏っていた風は消えてしまっていた。

 

 

 詠唱しなおす時間もない今、突っ込んでくる人形を前にダメージを覚悟したその時だった。

 

 

 

「『ストリーム・ウォーター』‼︎」

 

 背後から突然激流が飛んできて、飛びかかろうとした人形を撃ち落とした。

 

「ナギトさん!今のうちに下がってください!」

 

「ゆんゆん!来てくれたのか!」

 

 

 続いてかけられた声に振り向くと、そこには目を紅く光らせたゆんゆんがワンドを構えていて、少し汗ばんでいることから、走ってここまで来たのが分かった。

 

 

 俺はゆんゆんがいるところまで撤退して。

「全く最高のタイミングだぜ、ありがとよ!」

「い、いえ…!遅れて来たんですしこれくらいは…!それより、あのモンスターはどういう…」

「アイツは攻撃されると爆発するし、動くものを見ると自爆特攻をやってくるんだ。だから、ほら…!」

 

 指を差した方を見ると、下がった俺に向けて残っていた人形が組みつこうと走って来ており、それをみたゆんゆんは詠唱の後。

 

「それならこれで…!『ボトムレス・スワンプ』!」

 

 人形の足元に泥沼を作り、おおよそ7体くらいいた人形達をまとめて沈めてしまった。

 

 

「俺達が苦戦してたのをあんなにあっさりとやるのか……」

「え?えーと……ごめんなさい!せっかくのレベル上げのチャンスを!」

「いや、あんな数を1人でやるのは流石に無茶だったし全く問題ないんだけど、何というか……」

 

 理不尽なものを感じたが、今はそれよりも。

「こっちの配分は片付いたし、助太刀した方がいいよな?」

「そうですね。私に任せて下さい」

 そういや、俺が遠距離攻撃の手段を手に入れたことをまだ言ってなかった。

 

「いや、俺も魔法が使えるようになったし俺も行くよ。ゆんゆんに任せっきりなのも悪いしな」

 

 詠唱を行なって再び指先に風を纏わせたのを見たゆんゆんは、少し驚いたような顔をした後、嬉しそうに笑うのであった。

 

「……はい!行きましょう、ナギトさん!」

 

 

 10分後。

 

 絶好調のゆんゆんと共に苦戦していた冒険者達を助け、地上に湧き出ていた人形をあらかた倒した俺は、負傷してダンジョンから上がって来た冒険者達も加えて、カズマさんとダクネスさんの帰りを待っていた。

 

 まあ、怪我をした冒険者はお茶を飲んでいたアクアさんの手によりヒールを受け、武器や防具に傷が付いた冒険者は応急処置をとっており、言ってみれば野戦病院だな。

 

 だが、そんな病院の中で暴れ回る狂犬がいた。

 

「なんですか、なんなのですか!遅れて来たくせにあんな主人公みたいな活躍をして!私がほぼその他大勢ではないですか!」

「そ、そんな理不尽なこと言われても!というか、そんなのめぐみんが

他の魔法を覚えればいい話じゃない!」

 

 おいしいところを前にお預けされたのが悔しかったのか、めぐみんが周りの冒険者にお礼を言われていたゆんゆんに掴みかかっていた。

 

「おい固定砲台モブみん。まだカズマさん達は帰って来てないんだから、ゆんゆんにちょっかいかけるんじゃないよ」

「この男、私の逆鱗を網羅しましたね⁉︎よろしい、ダンジョンの主の代わりに私が今ここでラスボスをやってあげようじゃないですか!」

 

 そう言ってめぐみんは変なポーズを取って威嚇し始めた。

「そんなに悔しいなら小手先の技でも覚えろって!あーあ!ゆんゆんはこんなに強いし優しくて頼りになる魔法使いなのになー!」

 

 わざとらしくゆんゆんを褒め称えてみると、ゆんゆんは口元をニヘラと緩ませて、クネクネしている。

「そ、そんな……言い過ぎですよナギトさん…。フフッ、めぐみんに勝っちゃった!」

「なにおう⁉︎勝負した覚えはありませんが、2人ともかかってくるといいですよ!活躍の機会がなくてイライラしてたのです、ここで鬱憤を晴らしてくれるわ!」

 

 そうして飛びかかって来ためぐみんに対抗していると、いつのまにかこちらに来ていたセナさんが頭を抱えて。

 

「3人とも元気が有り余っているのはいいですが、はしゃぎすぎですよ?まだ原因が分かっているわけでもないんですし、もうすこし緊張感を持って下さい」

「そんな紅茶を飲みながら言われても…いえ、なんでもございません」

 

 ヒートアップしていた俺たちは我に帰り、3人揃って踵を返すセナさんにペコペコした。

 

 

 俺は気を取り直すようにアクアさんが振る舞っていた紅茶を飲みながら冒険者カードを手に取る。

 

「結構レベルが上がったな…あの人形、結構経験値あったんだな」

 俺が倒した人形は通算8体。

 それによってレベルは8上がり、これでレベルは11だ。

「スキルポイントは余っていたのを含めて11…取り敢えず基本的なやつを覚えるか」

そうして新たに「片手剣」と言う武器の扱いが上手くなるスキルに「ウインドブレス」と言う風の初級魔法と、盗賊のスキルの一つ「罠探知」を習得してから、後はチート能力からいくつか覚えようと欄を漁っていると、なんだか見覚えのある名前が出てくる。

 

「螺旋玉、影分身……これN○RUTOからの輸入だよな。天界も日本の漫画って読むんだな…」

「スキルを覚えてるんですか?それならこれ、使ってみて下さい」

 カードをいじっていた俺に、突然ゆんゆんが鉱石を渡して来た。

 

「これは?」

「これはマナタイトって言う魔力が込められた鉱石です。本来なら、魔法使いが魔力を枯渇させないように魔力の肩代わりとして持つものなんですが……ナギトさん、先程の戦いで結構魔法を使ってたから魔力大丈夫かなーって思って…」

 

「魔力が尽きるとどうなるんだ?……ていうか、ゆんゆんは魔力大丈夫?使ってた魔法的に俺よりも使ってそうだけど…」

「倒れちゃいますね。あと、私はまだ魔力に余裕がありますからご心配いりません」

 どうやら、新しくスキルを追加することでさらに多くの魔力を使うことを見越して、回復アイテムをくれたようだ……いや、まじでこの子頼もしいんだが。

 

「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

 折角だしゆんゆんからアドバイスをもらおうと呼び止めておいてスキル漁りを再開すると、他にも「ソードサイクロン」だの「ストームソード」だのと、やはりどこかのゲームで聞いたような名前が出てきていた。

 

 そして、探していくうちにある魔法にたどり着く。

「『ルミノス・ウィンド』……ラノベまで守備範囲内か」

「らのべ……ってなんですか?」

「故郷にある小説の一つだよ」

 「ダ○まち」のリューさんの必殺技で、詠唱はかなり長いけどカッコいいんだよな。

 

「それに、こんな魔法初めて聞きましたよ?必要なスキルポイントは5……一つのスキルにしては少し高めですね」

「そうなの?」

「ええ。魔法使いが一連の中級魔法を覚えるために必要なポイントは10で上級魔法は30……つまり、一つの魔法に必要なスキルポイントはかなり少ない事になるんです」

 ゆんゆんの話を捉え直すと、中級魔法や上級魔法はいくつかの魔法を一気に覚えるために10や30のポイントが必要で、一つの魔法に振り分けられるポイントは少ない事に対して、このスキルは一つの魔法を覚えるために5ポイントも使うってわけか。

 

「つまりは上級魔法…いや、それ以上って事だよな……」

「でも、それだけ強い魔法には多くの魔力が必要になるかもしれないので、気を付けてくださいね?」

 そうして俺は5ポイントを使って『ルミノス・ウィンド』を習得した。

 

 

 冒険者カードをしまって立ち上がると、中のモンスターを駆除し終えたのか、ダンジョンに突入していた冒険者たちが地上に戻ってきていた。

 

 

 だが……

 

「カズマさんとダクネスさんがいない……?」

「あ、そう言えば……」

 一緒に潜っていたはずの二人が見えなかったので、先ほどここに来る前に話していた冒険者の話を聞いてみると、より奥深くに消えていってから戻ってこないのだとか。

 

 

「何かに巻き込まれたとみるか、それとも何かを隠しているのか。どちらにせよ二人を探して事情聴取をしまいといけないようですね……すいせん!この中でまだ戦う事ができる冒険者の方々は、あのお二人の探索のお手伝いをしてほしいのですが……」

 

 セナさんの提案の元、消耗が少なかった冒険者たちでダンジョンの中へカズマさんたちを探しに行こうとなった時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!!!」

「「あああああああああああああああーッ⁉」」

 お茶をふるまっていたはずのアクアさんが、突然壇上の入り口に向けて魔法をぶちかました!

 

 

 

「あ、アクア⁉いきなりどうしたのですか、浄化魔法を……って、ダ、ダクネス⁉」

「ん?なあ今、ダクネスさんとは別の声の悲鳴も上がってなかったか?」

「たしかに……でも、今のは対魔魔法よね?あれを受けても人間のダクネスさんには影響がないはずなのに……」

 

 その突然の行動に唖然としながらも、聞こえてきた声に違和感を覚えていると、後からやってきたカズマさんがアクアさんに怒鳴る。

 

「おいこら!いきなり魔法をぶちかますなよ!」

「なんか、邪悪な気配がしたから撃ち込んでみたんだけど……」

 

 アクアさんの発言に俺は突発的に思いついてしまった。

「ダクネスさんが、魔王軍のスパイ⁉︎そして、悪魔だったのか」

 それにゆんゆんが一瞬驚いた顔をするが。

「ええ⁉︎でも、それなら対魔魔法の効果があったことが頷けますけど……」

「2人してアホなことを言い出さないでください!それよりあの仮面ですよ仮面!」

 

 めぐみんに突っ込まれた俺とゆんゆんがあらためてダクネスさんを見ると、たしかにその顔には突入前にはないピエロみたいな仮面がある。

 

 

「カズマさん!ダクネスさんについてるその仮面は⁉︎」

「ああ、ダクネスは今、魔王軍の幹部に体を乗っ取られているんだ!」

「魔王軍の幹部に⁉︎」

 俺とカズマさんのやりとりにセナさんが驚愕していると、アクアさんがすんすんと匂いを嗅いだ後、唐突に鼻を摘んだ。

 

「臭っ‼︎何これ、臭っ⁉︎

 

 間違い無いわ悪魔から漂う匂いよ!ダクネスったらえんがちょね!」

 

 えんがちょって言葉実際に使う奴初めてみた気がする……まあ、この状況じゃどうでも良いけど。

 

 そんな中で、幹部に身を乗っ取られたらしいダクネスさんが、ついにその口を開いた。

「フハハハハ、まずは自己紹介だ。

 

 忌々しくも悪名高い、水の女神と同じ名前のプリーストよ!

 

 

 我が名は(アクア!私自身は、匂わないと思うのだが…)……我が名はバニ(カズマも嗅いでみてくれ、臭くはないはずだ)やかましいわ!」

 

 

 ちょこちょこダクネスさんの声は聞こえてくるものの、主な声はその乗っ取った幹部のものだろうが……その声はどこか苦労を滲ませている。

 

「わ、我が名はバニル……!

 

 それにしても、出会い頭に対魔魔法とは……これだから、アクシズ教徒の者は忌み嫌われるのだ!

 

 礼儀というものを知らんのか⁉︎」

 そんな、抗議じみた声にアクアさんがわかりやすく煽る。

 

「やっだ〜、悪魔相手に礼儀とか何言っちゃってるんですかぁ?

 

 悪魔なんて人の悪感情がないと存在できない寄生虫じゃないですかぁ〜!

 

 プークスクス!」

 

 

 そして一拍置いて……!

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』‼︎」

 アクアさんが再び魔法を放ったが、今度は横飛びに避けられる。

 

「ちょっとダクネス!どうして避けるの⁉︎じっとしていてちょうだい‼︎」

「そ、そんなこと言われても……!」

 

 

 それをみてなんとか止める方法はないか考えていると、先ほどから隣で興奮していためぐみんが。

「カズマカズマ!私もあの仮面が欲しいです!あの仮面は紅魔族の琴線に激しく響きます!」

「アンタなにいってるのよ!どうみてもあの仮面はやばいわよめぐみん!」

「全くだこのバカが!あの仮面が幹部の本体なんだよ!」

 

 

 つまりはあの仮面を壊してしまうのが1番早いのか。

 

 とりあえず狙い撃ちができるように詠唱を済ませていると、めぐみんがゆんゆんとカズマさんに突っ込まれている隣で、セナさんが冒険者たちにダクネスさんの確保を命じていた。

 

 

「確かにアレは、手配書に示されていた悪魔ですね……皆さん、確保をお願いします!」

 そうしてアクアさんが浄化魔法を撃ち、それを当てるのを援護しようと、動ける冒険者たちが参戦する。

 

 俺も行くつもりだが、念のため。

「ゆんゆん、あの仮面を狙い打てる魔法は?」

「あんな密集している中で撃ったら、他の皆さんを巻き込んでしまいますよ!」

 魔法で狙い撃てないか聞いてみるも、申し訳なさそうに断られてしまう。

 他の魔法使いも同じ理由からか、ダクネスさんの確保には動けないようだ。

 

「そうなると、隙を見て壊すか……あるいは盗むかだな」

「スティールを使うにしても、対象が定まらないかも知れまんよ?まあ……近寄ればなんとかなるかもしれませんが」

「なら、突風で近寄ってスティールか……」

 他の冒険者を巻き込まないタイミングを見計らうしかないと思ってタイミングを伺っていたが………。

 

「な、なあ……あれ、相当ヤバくないか?」

 

 ダクネスさんは重そうな鎧と大剣をものともせず、アクアさんの魔法を俊敏に躱しながらも襲いかかる冒険者をいなし続けている。

 

「くそっ!あのダクネスが、こんなに手強いだなんて……!」

「当たらねえ!簡単に剣で弾き返されちまう!攻撃も剣速も凄いしよ……俺たちがやられないのが不思議なくらいだ……!」

「そんなあ!もし本気を出されたら、アタシ殺されちゃうわよ⁉︎」

 

「カズマさん、普段のダクネスさんって今くらい強いんですか⁉︎」

「普段は硬いが鈍臭くて攻撃が当たらないポンコツなんだよ!それならバニルを封じ込めておけば弱体化できるんじゃないかと思ってたんだが……でも、封じ込めておかないと殺人光線とかも撃てちまう!」

 元々の素材の良さが嫌な形でわかったって事か。

 

 

「フハハハハ!この体は随分と具合がいいな!筋力はあるし耐久力もある!更には忌々しい神々の魔法への耐性というオマケもついてくるとは!」

 つまり、接近戦には無類の強さを持ってるのに、弱点に対しても耐性を持った強ボスが目の前にいるって事だな。

「ダクネス!助かりたいか助かりたくないかはっきりしなさいな!」

「さあ!このへなちょこ冒険者め、キリキリとかかってくるがいい!」

 

 

 ちょっと帰りたくなってきた俺の前では、バニルがダクネスさんの声で挑発したことにより、それを受けた冒険者のヘイトが被害者である筈のダクネスさんに向かってしまっている………いや、表情的にはそれはアリとでも言いたそうだがな。

 

 だが、そんなヘイトを向けながらも、狙いをつけられたアクアさんを守ろうと動く冒険者達が、囲いを解いてアクアさんの前に立ちはだかっり…………

 

 

 

 俺が求めていたシチュエーションが図らずも完成する。

 

 今、ダクネスさんの背後には誰もいないから近寄ってスティールをかけても他の冒険者を巻き込む事はない!

 

 

「ちょっとあんた、良い加減しつこいんですけど!」

「それはこっちのセリフであるわ!ええい、人海戦術とは小賢しい!我輩が手を殺さぬからと言って、いつまでも調子に乗るな冒険者共よ!」

 

 

 俺は、他の冒険者に向けて襲いかかった所で潜伏を使って隠れつつも追風で素早く背後へと移動して………駆け出した!

 

「『突風』………そして!

 

 

 『スティール』‼︎」

 

 一気に距離を詰めて、窃盗スキルを発動させる。

「ぬぅ⁉︎」

 

 大剣を振るい、冒険者達の武器を叩き折っていたところで、突然背後から強襲してきた俺に驚いたらしいバニルが後ろに向けて横薙ぎを振るうが、ギリギリで当たらない。

 

 そして、そのスティールの光が止んだ後、俺の手にはこれといった感触がなかった…………って、ええ⁉︎

 

「フハハハハ!乱戦に紛れ、気配を消して我輩を不意打ちでくすねようとするとは、中々知恵が回るようだ……。

 

だが、残念ながら運は良くなかったようだな!」

 

 盗みに失敗した俺を嘲笑うかのように大剣の平たいところで頭を狙ってきたので、飛び上がりながら詠唱を行い。

 

「盗めないなら壊すだけだ!……『ウインド・バレット』ッ‼︎」

 風の弾丸を大剣に向けて全力で放ち、その反動を使って距離を取った。

 

「ええい、小賢しい……くっ、邪魔をするでない!」

 その隙に他の冒険者が取り押さえてくれるが、俺が体制を立て直すその短い時間で、力尽くで解かれる。

 

 

「フハハハハ!中々面白い戦い方をするな……どうやら貴様をまず無力化したほうが吉と見た!」

 

 今度は笑いながら突撃してきたので剣を抜き、応戦するが……!

 

「ぐっ……なんてパワーだよ、ダクネスさんは!」

「(お、おい!私が怪力女みたいに言うんじゃない、きっとバニルの使い方が上手いのだ!だから言い直せ!) やかましいわ怪力女!」

 何度か剣で撃ち合うものの相手のパワーと硬さが尋常じゃなく、俺の攻撃は全く響いていないのに、相手の攻撃は一撃一撃がこちらの剣を叩きおらんというほどの重さがあった………はっきり言って、仮面を壊しに行ける程の隙がない。

 

「BANG!BANG!……2本で剣を弾く程度だったし、1本じゃ大した事ないか!」

 ウインド・バレットを使いつつ距離を取るが、やはり距離稼ぎ程度だ。

 

「おい!そんな怪力と真っ向から撃ち合うな!」

「ダクネスの両手剣なんて、盗賊が相手にできるパワーじゃねえ!おい、逃げろ坊主!」

「そうよ!無理する事ないわ!」

 他の冒険者達はすでに殆どが無力化されており、俺にも逃げろというが……ここで逃げたらゆんゆんやめぐみんを筆頭にした魔法使いや、目の敵にしているアクアさんがやられてしまう。

 しかし、接近戦では勝ち目がないし、遠距離攻撃なんて大した威力に……いや、まだ一個だけあったな。

 

「フハハハハ!どうした、もう打つ手なしか?それなら優しい我輩からの名助言だ、そのまま何もせず戻るがいい!そうすれば貴様には手を出さないと約束しよう」

「さみしいこと言うなよ。後一手だけ見てからでも遅くはないだろ?」

 

 これでダクネスさんについたバニルの仮面を壊せるかはわからないが、ここである程度消耗させられればアクアさんも魔法を当てやすくなるだろう。

 

 

 そうして俺は、バニルの返答がない事にも構わず、頭から勝手に浮かび上がる言葉を紡ぎ出した。

 

 

 

 

「今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤む無限の星々…」

 

 紡ぎ出した言葉が、俺の周りに風を纏わせ始める。

 

「愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を。」

 

「………む?何かの詠唱にしては随分と仰々しいな。しかし、どういう事だ?我輩をしても聞いたことのない詠唱であるが……」

 必殺技と宣言したことで止めようとしたが、詠唱から何を撃つかがわからないので、こちらに近づいて来れないようだ。

 

……この隙に浄化魔法でも撃ってほしいが、アクアさん達も俺の魔法が何かわからず動けないのかもしれない。

 

 さっさと詠唱を済ませてしまったほうが良さそうだ。

「来れ、さすらう風、流浪の旅人。……空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾く走れ。」

 ここまで唱えると、俺の周りには緑に輝く光を纏った風が吹き荒れていた。

 

「どうやら打たせるわけには行かなそうだな!大人しくしてもらうことにするぞ!」

「ちぃ、そのまま警戒してくれてればいいのによ!」

 危険だと認識したバニルが大剣を構えて突っ込んで来たので、急いで詠唱を完成させるが。

「………星屑の光を宿し、敵を討て‼︎」

 

 距離的に俺が撃つかバニルが剣を振るうのが先か……!

 

 

 すると、俺とバニルの間に一筋の稲妻が走り、バニルが一瞬だが動きを止めた。

 

「………ナギトさん‼︎」

 

 だが、その一瞬があれば十分だ!

 

 

 

 

 

「『ルミノス・ウィンド』ッッッ‼︎」

 

 

 俺は腕を広げ、星の光を宿した風をバニルに向けてぶち当てた‼︎

 

 

 

 

 

「ぐおおおおおッ⁉︎(おお!なんだこの暴風と光の渦は!美しいながらもガツンとした刺激が………⁉︎)」

 それと同時にもらったマナタイトの肩代わり分を差し引いても魔力が切れたのか、俺の体は意図が切れたように倒れそうになるが、何か黒いものが間に割り込んだことにより、その体が地につくことはなかった。

 

「ナギトさん……魔力切れですね。しばらく私に体を預けてください」

「……だけど、重くないか?」

「筋力はそれなりにありますし、大丈夫ですよ」

 

 電撃で隙を作ってくれたゆんゆんが、俺を背中におぶっていたからだ。

 その温もりと、嗅いだことのない匂いに張り詰めていた気が抜けるような感覚を覚えながら、バニルがいたほうに視線を向けると……。

 

 

 

「フハハハハ!なかなかいい余興を見せてくれた礼として、貴様らは見逃してやろう。さて……それでは引導を渡すとしようか!仲間の手で葬られるのだ、これ以上幸せなことはあるまいて!」

 

鎧や肌に多少の傷はあるものの、いまだにピンピンしていたバニルが、アクアさんへトドメを刺そうと詰め寄り始めた。

 

「本当、信じられないくらいの硬さだよな……俺、出し切ったってのによ」

「私の魔法でも、今のダクネスさんを止めるのは……でも、このままじゃアクアさんが!」

 

 

かろうじて動ける冒険者が壁になり、魔法使いが攻撃を始めるがまるで相手にならず、あっという間にアクアさんは壁際に追い込まれてしまう。

 

「ねえ!これピンチなんですけど!実は今までで1番ピンチなんですけど⁉︎カズマさーん!カズマさーん‼︎」

 

 アクアさんが泣き喚き、その場にいた誰もがこれで終わりかというムードを醸していた時だった。

 

 

 

「カズマさーん‼︎」

 

「しょうがねえなあああー‼︎」

 

 

 半ばやけくそ気味に、カズマさんがバニルとアクアさんの間に割って入った!

 




いかがでしたか?

今回も解説を。
ウィンド・バレット
 圧縮した空気を放つ。
威力は低いが取り回しの良い1本指と、火力に集中させた2本指のパターンを持つが、2本による射撃を全力でやりすぎると肩に怪我をする恐れがある。
ルミノス・ウィンド
「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのか」のリュー・リオンの必殺魔法。風に関する技であるため習得可能となっていた。
 詠唱が長いという弱点を持つが、上級魔法に匹敵するパワーを持つ。


次回こそは3巻編を終わりにしたいです。
皆さんお楽しみに!感想や評価をお待ちしています。
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