この素晴らしい世界に祝福を! このぼっち娘と冒険を!   作:暇人の鑑

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第7話、3巻のストーリーが終わることになります。

それではお楽しみ下さい。


第7話 この仮面の騎士と決着を!

「カズマさん、一体何をするつもりだ……?」

「ひゃっ…⁉︎」

 

「しょうがねえなあああ‼︎」と声をあげて、バニルの前に立ちはだかったカズマさんの意図が分からず、思わずつぶやいた。

 

 失礼だとは思うけあんまり強そうには見えないカズマさんが、10人以上の冒険者を圧倒し、俺の必殺技を受けてもピンピンしているバニルの相手が務まるとは思えない。

 

「なあゆんゆん、切れた魔力の回復に普通はどれだけ時間がかかる?」

「あ⁉︎え、えーと……その……一晩……です……」

 

 今からでも復帰しようとゆんゆんに聞いたが、返ってきたのは戦力外通告だった。

 

「そうか……そうなると、カズマさんに全て任せるしかないって事だな」

 なぜか顔を赤らめてモジモジしているゆんゆんを不思議に思いつつも観戦に戻ろうとすると、すぐ近くまで来ていためぐみんが。

 

「おぶってもらったのをいい事に、この状況でセクハラを働くとはなかなかいい度胸ですね!ほら、プリーストを連れてきたのでさっさと降りて下さい!」

「せ、セクハラって、俺そんなつもりじゃ!」

 

 ゆんゆんが耳元で囁かれて赤くなってたことを教えてくれた。

 

 

 

 めぐみんが連れてきたプリーストのお姉さんにヒールをかけてもらった俺が、不慮の事故の影響でゆんゆんと気まずい雰囲気になりつつもセナさん達と合流すると、カズマさんがダクネスさんの意識を引っ張り出そうとしていた。

 

「おいダクネス!何悪魔に躾けられてるんだ?お前ってば、そんなちょろいお手頃女だったのか⁉︎」

「無駄だ小僧!この娘に貴様の声は(誰がちょろいお手頃女だ!躾けられてる訳じゃないぞ!) な、なんたる鋼の精神……」

 ダクネスさんの異様なスタミナは、どうやら俺との戦いによってある程度の支配権を取りもどしていたのか、先ほどよりも会話の節々にダクネスさんが出てくる頻度が高くなっていた……と考えておこう。そうでなければ俺自身が報われない。

 

「今からおれが仮面に貼られた封印の札をなんとかする!そうしたら一瞬でいい!体の支配感を取り戻して、バニルの仮面を投げ捨てろ!」

 

「なんとかって………盗むなり燃やすなりするのか?」

 カズマさんのステータスがどれほどのものかはわからないが、ちょこちょこ聞こえてきていた会話を聞く限り、ここにいる冒険者の中では最弱との事。

 

 つまり、俺よりも雑魚なあの人がどうやってあの化け物を出し抜くんだ…?

 

「貧弱な貴様が、この娘の身体を完璧に使いこなした吾輩の封印をどうやって解くというのだ?(うむ。今の私は誰にも負ける気がしない!)」

 いわば、本来の身体の持ち主お墨付きの無茶だが、そんな状況に趣でも感じたのかバニルはさらにその声のトーンを挙げた。

 

「フハハハハハ!

 

 この我輩をねじ伏せて!(封印の札を)剝がすとでも(言うのなら!)

 

 やれるものなら(やってみるがいい!)やかましいわ!」

 

 

「シンクロしてんじゃねえよ……」

「何というか、いまいち緊張しきれないですよね……」

 

 どうにも締らない掛け合いに先ほど繰り広げた戦いが何だったのかと理不尽なものを感じる。

 

 

 

「(スティールだ!きっとカズマお得意のスティールを使うつもりなのだろう!)」

「お前‼手の内をさらしてどうする!」

「カズマ! 

 

 あなたの後ろにはこの私がついてるわ。

 

 勇者っぽくやっちゃいなさい‼」

 

 

 まあ、その前で行われている戦いはどうやらクライマックスを迎えそうだが、得意技がスティールって、なんだか嫌な冒険者だよなぁ……。

 

 

 そんな俺の気分を置き去りにするように、カズマさんとバニルの間で繰り広げられようとする一瞬の決着の行方を、その場の冒険者やセナさんが固唾をのんで見守る中。

 

 

 スティールを警戒されたカズマさんが出した技は………⁉

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ティンダー』ッッ!!!」

「(ああっ⁉ズルいぞカズマ、卑怯者‼)フハハハハ!やるではないか、この見通す悪魔をだまくらかすとはな!」

 

 

 

「ティンダー……火の初級魔法!」

「……なるほどな!予告スティールは囮か!まあ、そもそも盗む必要がないもんな!」

 さらには事前に「俺が勝ったら約束していたすごい要求に、更にとてつもない要求を足させてもらう」とドMの餌を撒くことで、抵抗されにくくしていたのだろう。

 

「おいダクネス、根性見せろ!」

 実際、仮面に貼られた札は焼け落ち、ダクネスさんは早速仮面をはずそうとするが。

 

 

 

「嘘だろオイ……あの怪力で外せないのかよ……⁉︎」

 バニルが全力で抵抗しているのか、全く外せずにいた。

 

「カズマさん、どうするの…?もう、撃っても良いのかしら⁉︎」

「いや、浄化魔法を撃ってもきっとダクネスの耐性で……!」

 

 先ほどから少しも好転していない状況にいよいよ焦りを感じていると。

 

 

 

 

 

「(撃て。

 

 アクアの浄化魔法が効かないのなら……構わん。

 

 私もろとも、爆裂魔法を喰らわせてやれ)」

 

 ダクネスさんが覚悟を決めたように………って⁉︎

 

「正気ですか⁉︎

 

 俺のルミノス・ウィンドが無傷だった訳じゃないでしょう⁉︎」

「そうですよ!それなら私が上級魔法で……!」

 

 確かに、浄化や対魔の魔法に耐性があるのなら残された手が魔法による自爆攻撃しかないのはわかるが、だからと言って「強靭☆無敵☆最強」の爆裂魔法では最悪ダクネスさんが死にかねない。

 

 

 先程までの気まずい空気を気にするのも忘れてゆんゆんと共に呼びかけるが、強い口調で拒否された。

 

「(ダメだ!

 上級魔法や先程のナギトのスキルでは私の耐性が邪魔をして、この悪魔を倒す程の力を出せない。

 

 

 だからめぐみん!私に構わず爆裂魔法を!)」

 

 そうしてダクネスさんに促されためぐみんは泣きそうな顔で首を振る。

 

「だ、ダメです!我が爆裂魔法は、日々の鍛錬により更なる高みへと到達しています!いくら、ダクネスでも………‼︎」

 

 

 たが、そんなめぐみんや俺たちの声に耳を貸す様子もなく、ダクネスさんは広い空間へと歩き出した。

 

「バニル。

 

 お前といた時間は悪くなかった。

 

 

 だから……選べ。

 

 このまま爆裂魔法を喰らうか、私から離れて、アクアに浄化されるかをな」

 

 

 そんな呟きと共に遠ざかっていったダクネスさんが、やがてこちらに向き直り、両手を広げて重々しく告げた。

 

 

 

「我輩は悪魔である!

 

 

 敵対者である神に浄化されるなど…………

 

 

 

 

 

 

 

 真っ平だ!」

 

 

 何を選択肢にしたのか、バニルも爆裂魔法を撃たれることを望み始めている。

 

 

「さあ、めぐみん!」

 

 

 後退り、顔を青くしているめぐみん。

 

 

 固唾を飲んでことの次第を見守る俺を含めた冒険者たち。

 

 

 

 そんなキリキリと胃が痛む状況の中、カズマさんが覚悟を決めたようにセナさんの肩を叩いた。

 

 

 

 

 

「もしダクネスの身に何かあったら、俺が指示したって事で、あんたが証人になってくれ。

 

 

 

 

 

……今回も、全責任は俺が取る。

 

 

 

 

 

 めぐみん!」

 

 

 

 

 そうして、カズマさんの覚悟に決心がついたのか、遂にめぐみんが詠唱を始めた。

 

 

 

「"現世に忍び寄りし、叛逆の摩天楼"。

 

 

 "我が前に示されし、静寂なる信頼"。」

 

 詠唱が紡がれるたびに、凄まじい熱を持った光を纏った魔法陣がダクネスさんを中心に描かれる。

 

「なんて熱量だよ……。こりゃ、俺たちとは比較にならねえな……」

「ナギトさん。見ていてください……。

 

 

 これが『爆裂魔法』。

 

 

 私のライバルが撃つ、人類最大威力の攻撃手段です。」

 

「強靭・無敵・最強」と呼ばれるのもこの熱量を前には頷くしかない。

 

 

「ダクネスさん……大丈夫だよな?」

「私達には、めぐみんとダクネスさんを信じることしかできません」

 

 不安がる俺に、ゆんゆんが冷や汗をかきながらも、俺の目を真っ直ぐに見て告げた。

 

 

「"時は来た!今、眠りから目覚め、我が狂気をもって見界せよ!"」

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 

「穿て‼︎

 

 

 

 

 

『エクスプロージョン』ッッッ‼︎」

 

 

 

 

 

 めぐみんの魔法が、灼熱の奔流と共にダクネスさんへと突き刺さった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 

 魔王軍幹部バニルは討伐され、ダクネスさんは瀕死の重症を負ったものの、アクアさんの介抱によってなんとかことなきを経た。

 

 あと、カズマさんに掛かっていた疑惑もあの戦いを見ていたセナさんが疑いを晴らすようにいろいろ手を尽くしたことにより、無事無罪放免になった。

 

 

「なーんてことがあった訳ですよ」

「成る程……しかし、お前卸したての剣で無茶すんなよなあ…」

 

 そして俺は、ライトさんの鍛冶屋にお邪魔して、防具や武器のメンテナンスをして貰う中でことの顛末について話していた。

 

「そうは言っても、相手は爆裂魔法に耐えるレベルの硬さだったんですよ?」

「なんでそんな奴がこの街に留まってるんだ……でも、これで俺の腕は分かっただろ?」

「ええ。お陰でやられずに済みました」

 

 人形の爆発や、ダクネスさんとのやり合いで傷ついていた防具だったが、ライトさんの手により既に修復されたのでピカピカだ。

 

 

 そうして剣の修復に取り掛かろうとしたライトさんが時計を見て。

「ああ……お、そろそろ時間じゃないのか?」

 

 

……おっと、もうそんな時間か。

「じゃあ、ちょっと行ってきますよ」

「おう。ウチの売り込みも頼むぜー」

 

 俺は、今日行われるカズマさんの表彰式に向かうために、冒険者ギルドへと向かうのであった。

 

 

 

 ギルドに向かうと、既に中は飲めや歌えやの騒ぎになっていたのだが。

「こっちでの馬鹿騒ぎに参加すれば、飲み仲間にしろ友達にしろ出来るかもしれないのにさ……隅っこで定食食べるのはどうなんよ」

「で、でも……私、そう言うことしたことないですし、いきなり参加して、「何この子、いきなり出てきてはしゃいじゃって、空気読めなーい」とかって思われたら嫌ですし……」

 

 その中から離れていたところでゆんゆんが定食を食べていた。

 友達が欲しいと言いながら、この子は何をやっているのだろう? 

 

「そんな陰湿なこと考えてるような顔してないって!もうちょっと気楽に考えようぜ」

「き、気楽にですか……?」

 ウェイトレスさんにジュースとカエルの唐揚げを頼みながら、もじもじとするゆんゆんをどうにかできないものかと考えていると、セナさんがこっちに来いと手招きをしていた。

 

「なんなんです?」

「何って、今回参加した冒険者への報酬だよ。カズマのパーティー以外では、にいちゃん達で最後だ」

「ああ、そう言う………ほらゆんゆん、報酬もらいに行こうぜ」

「え?ナギトさんの分の料理きましたけど……」

「それはそこに置いておいて下さい、ほら行くぞ!」

 

 冒険者の説明に納得がいった俺はゆんゆんを連れてセナさんのところへと向かった。

 

 

「冒険者、マトイナギト殿、同じくゆんゆん殿。

 

 今回のキールダンジョンの調査の報酬及び、魔王軍幹部バニルとの戦いにおいて解決へ向けての貢献をなさいました。

 

 よってわれわれはここに、調査報酬の30万エリスに特別報酬20万エリス、2人分で100万エリスを進呈いたします!」

 

 ずっしりと重い袋を手渡された俺は聞こえてきた喝采に腕を掲げて応え、ゆんゆんにも目を向けたが。

 

「ほら、ゆんゆんも………って、立ったまま上がってやがる」

 

 人の視線への耐性がなかったのか、顔を赤くして目を回していたので、慌てて先程までの隅っこに戻ると、カズマさん達が表彰され始めたので、ゆんゆんの介抱をウェイトレスさんに任せて人の輪に入ることにした。

 

 

 

「冒険者、サトウカズマ殿!

 

 貴殿を表彰し、この街から感謝状を与えると同時に、嫌疑をかけたことに対し、深く謝罪をさせていただきます」

 

セナさんが深々と頭を下げ、カズマさんに感謝状を渡され、それを見ていた冒険者達がわいわいとし始めるが、そのセナさんの後ろから来た騎士達が持ってきたものに、冒険者達は声を潜める。

 

 

………いや、正確には。

 

「そしてダスティネス・フォード・ララティーナ卿!今回における貴公の献身素晴らしく。ダスティネス家の名に恥じぬ活躍に対し、王室から感状並びに、先の戦闘で失った鎧に代わり、第一級の技工士達による全身鎧を贈ります」 

 

 新しい鎧をもらいながらも、自分の名前に顔を赤くして震えているダクネスさんを前に、からかうネタができたとばかりに目を輝かせていた。

 

 

 

 そう。あの人の本名をカズマさんがバラしたのである。

 

「おめでとう、ララティーナ!」

誰かの呼びかけにビクッと震え。

 

「ララティーナ、よくやった!」

「さすがララティーナだ!」

「ララティーナ!可愛いよララティーナ!」

 

そこから次々と呼ばれる名前に、ダクネスさんは耳まで赤くなった顔を両手で覆い、テーブルへと突っ伏すダクネス……いや、ララティーナさんはやはりいじめっ子気質を目覚めさせる何かがあった。

 

 俺もなんだかいじめたくなったので、近くの冒険者に耳打ちをして………。

 

 

「あ、それ!ララティーナ!ララティーナ!はい!」

 

「「「ララティーナ!ララティーナ!」」」

俺の掛け声に合わせて、ララティーナの名前をみんなに連呼させると。

 

 

「こ、こんな辱めは私が望むすごい事では………ええい!貴様らまとめてぶっ殺してやる!」

 

 恥ずかしさのあまりブチギレたダクネスさんが襲いかかってきたので蜘蛛の巣を散らすようにみんなが逃げたが……

 

 

「ナギト!お前がこの辱めの主犯だな⁉︎」

「いたたたた!ごめんなさいララティーナさん!割れる!頭が割れる‼︎」

 

 鎧のないダクネスさんが予想外に早く、アイアンクローを喰らう羽目になった。

 

 

 と、そんな騒ぎを収めるようにセナさんがカズマさんへの賞金授与のために呼んだことで、ギルドは再び静寂に包まれる。

 

 

 俺もアイアンクローから解放されたので、痛む頭を押さえながら、セナさんの前に立つ4人を見る。

「では………改めましてサトウカズマ一行!機動要塞デストロイヤーの討伐における多大な貢献に続いて、今回の魔王軍幹部、バニル討伐はあなたたちの活躍なくばなしえませんでした。よってここに………!」

 

 

 そこで一度言葉を切ったセナさんが、まずは一枚の紙をカズマさんに渡し…………!

 

「あなたの背負っていた借金、及び領主殿の屋敷の弁償金を報奨金から差し引き………

 

 

 

 

 

 

 借金を完済した残りの分、金、4000万エリスを進呈し、ここにその功績を称えます!」

 

 続いて渡した重そうな袋を見て、ギルド内に今日1番の大喝采が巻き起こった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆんゆん!バニルを討伐したのでこれで私がまた一勝ですね!だからそのシュワシュワを飲ませて下さい!」

「さっきギルドを出て行ったカズマさんとダクネスさんに、飲ませるなって言われてるんだけど………ちょ、ちょっと!私のシュワシュワを取ろうとしないでよ!」

 

 カズマさん達の祝賀パーティーという事で、ギルド内はまさに宴会ムード。

 

 

 そんな中で出て行ったカズマさんとダクネスさんに戸惑いながら、俺とゆんゆんも場に合わせてシュワシュワ……つまりはお酒を飲もうとしたのだが、釘を刺されていたことでジュースを飲んでいためぐみんに絡まれていた。

 

「おいおいお子様。シュワシュワが飲めないくらいで大暴れすんなよ……すげえや、日本の炭酸とは違うシュワシュワ感」

「あなたは私たちと同い年でしょう!喧嘩を売っているのなら買おうじゃないか!」

「こんなめでたい席で喧嘩しようとすんな!」

 そんなめぐみんを嗜めると、今度はこちらに掴みかかってきたので、ジョッキを机に置き、腕をがっしり組み合って対抗していると、周りの冒険者達が、それを見て騒ぎ出す。

 

 

 

 そんな、騒がしくも楽しい空気に俺は、これからの異世界生活が少しだけ楽しみになるのであった。

 




いかがでしたか?

現段階での原作の主要キャラと主人公の関係と印象を軽くおさらいしましょう。

ウィズ、ダスト、リーン等とはまだ会っていないので除外します。

カズマ→知り合いの冒険者の1人。弱そうだけど頭のいい人。
アクア→知り合いの冒険者の1人。らしくない女神。
めぐみん→知り合いの冒険者の1人。固定砲台なケンカ友達。
ダクネス→知り合いの冒険者の1人。ドMの怪力女。
クリス→知り合いの冒険者の1人。 盗賊スキルの師匠でアルハラしてくる人。
ゆんゆん→知り合いの冒険者の1人。色々重いけど頼りになる先輩。


これからどんどん増えていきますので、次回からもお楽しみに!
感想、評価の方もよろしくお願いします。

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