この素晴らしい世界に祝福を! このぼっち娘と冒険を!   作:暇人の鑑

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第2章開幕です!

原作4巻にはゆんゆんがあまり出てこないので、オリジナル色強めとなります。

また、今回はスマホゲーム版からキャラクター達を登場させてみましたので宜しくお願いします。


第2章 ぼっちと始まる異世界生活with踊り子
第8話 この踊り子達と初冒険を!


前回までのあらすじ!

 

 不慮の事故で死亡し、異世界に転生した少年「マトイナギト」は、初対面の女の子にお金を借りたり、女盗賊の8102平野を晴天に晒したり、真冬に馬小屋で過ごしたりとさまざまな苦難に見舞われながらも、冒険者としての生活を始めた。

 

 そして、国家転覆罪に問われていた冒険者「サトウカズマ」とその仲間達と共に魔王軍幹部バニルの討伐に貢献して、棚ぼた的に小金持ちとなるのであった……!

 

 

 少し、昔話をしよう。

 

 あれは、調査報酬の50万エリスを貰って数日経ったある朝のことだった。

 

 

 

「へ⁉︎」

 金がなくなる不安に駆られ、いつもの新聞配達のバイトに励んでいた俺の目の前に飛び込んできた人物に俺は間抜けな声をあげる。

 

 

 いや、それはそうだろう。

「………おや、新聞配達か?これはご苦労」

 忘れもしない白黒の仮面をつけた大男が、町外れのそれなりに良い家が並ぶ路地にいたのだから。

 

「いや、待ってくれ。あんた………バニルか?

 

 ちょっと前にやり合った魔王軍幹部、バニルなのか?」

 

 タキシード姿に箒を持ち、ピンク色のエプロンをつけたそいつがこちらに近寄ってきたので、ウインド・バレットを唱えられるように構える。

 

 すると、その男は口元を歪め。

 

「フハハハハハ!少し違うぞ、小僧!魔王軍幹部ではなく、我が名はしがない魔道具店のアルバイトのバニルである!」

 と、そんなよくわからないことを言い出した。

 

「ちょっと待ってくれ。あの爆裂魔法を撃たれてあんたは粉々になってたよな?それがなんで普通に蘇ってんの?」

 

すると、バニルは額を指さして。

 

「何を言うか。あんなのを食らえば、流石に無事ではいられん……残機が一つ減ったので、二代目バニルというわけだ」

「バカにしてんのか!

 

 

………それで、魔道具店ってなんだよ。まさかそこにも幹部がいるとかじゃないだろうな」

 

 そうして魔道具店と言う看板が立つ建物を見ると、その扉が開き、中から出てきたのは……。

 

「あら?初めて見る方ですね……うちに何か御用ですか?」

「へ?今度はお姉さんが出てきた……?おいおい、もう意味がわかんねえぞ」

 

 野暮ったいローブに身を包んだ、血色の悪い顔の女性だった。

 

 

 

 

「ふぅ………成る程。つまり、バニルと店長………ウィズさんは魔王軍幹部同士の古い友人で。

 

 あなたは元々なんちゃって幹部だから危険性もないし、バニルも初代が死んだことで魔王軍幹部ではなくなったから、夢を叶えるためココでアルバイトを………ってことですか?

 

 まあ、夢の内容はアレですが………」

 ウィズさんが淹れてくれた紅茶を飲みながら、ことの経緯を聞いた俺は息を吐きながら寛いでいた。

………残りの仕事はこの辺りの家に配るだけなので少しくらい休んでも良いだろう。

 

「ええ。ですので、何か魔道具が欲しくなったらいつでもうちにいらして下さいね?」

 そうして俺は魔王軍の幹部だった男と意外な形で再会するのであった。

 

 

 

 そして、それから一週間近く経ったころ。春の陽気が見え始めて今に至る。

 日本でも春には出会いや始まりの行事が数多く行われるように、この世界でも厳しい冬を越したモンスター達が出てくるため、冒険者達にとっても仕事始めの季節だ。

 

 勿論、俺も例外ではなく。

「さてと。お仕事探しすっか」

 

 冒険者達がひしめくクエスト募集の掲示板を前に、初めてのクエストを何にしようかと考えていた。

 

 「ジャイアントトード討伐に、山小屋への荷物運び。あとは………ダンジョン探索…リザードランナー討伐…」

 クエストの難易度がどれくらいかはわからないが、どれかに決めないと他の冒険者に取られそうなので、地味なギャンブルである。

 

 こう言う時にゆんゆんでもいてくれれば色々教えてくれそうなんだけど………何故かどこにもいなかった。

 

 酒場の隅っこを見てもいないし、他の冒険者に聞いても「あの子は頭のおかしい方と比べると、あんまり存在感ないからな…」と言う反応をもらっただけだ。

「ソロはまだ怖いし、どこかのパーティーに混ぜてもらうかな…」

 

 と、今度はメンバー募集の掲示板を見に行こうとした時だった。

 

 

「アア、どうしたらいいの⁉︎

 

 私たちだけで高難易度のクエストにいかなければならないなんて……!

 

 こんなに可愛いアタシじゃあ、高難易度のクエストなんて無理よ!」

 

「だ、大丈夫だー、私がついているー。こう見えても槍の武術の大会で優勝したことがあるんだー」

 

「そ、そうですよー。ボク、アークプリーストですが、武道の心得もあるんです!」

 

「なんて頼もしいのかしら!可愛いアタシもついてるし、これならドラゴンとかでも怖くないわね!」

 

 ギルドの真ん中あたりで、3人組の女の子達が妙な芝居をしていたのだ。

 

 ショートカットのボクっ娘とツインテールのピンク髪、更には黒髪ロングの………ん?

 

 

「あれ、顔立ち的には日本人だよな………しかも、かなり前だけどテレビで見たことあるような……?」

 

 記憶を辿っている間にも、その女の子達の芝居は続いているが………その近くでくすんだ金髪のチンピラ……受付のお姉さん曰く要注意人物の「ダスト」が何故か転がってるのも意味がわからないので、とりあえず近くにいた冒険者を捕まえて話を聞くことにした。

 

 

「あの子たちって?」

「あの子達は「アクセルハーツ」っていう踊り子集団だ。この街を拠点として各地を回っているんだよ」

戦士風の男がそう教えてくれる………ふむ。

 

「じゃあ、あそこに転がってるのは?」

「ああ。アレはシエロちゃん……ショートカットの子に触ろうとして吹っ飛ばされたんだよ。あの子は男性恐怖症だからな。ちなみにピンク髪がエーリカちゃん、黒髪の子がリアちゃんだよ」

「…………ひょっとしてファン?」

「………余計な詮索は無しだぜ、少年」

 

 そうしてその男は、チケットのようなものを渡してさっていった。

「布教か?布教しようってのか?」

 

………サムズアップを添えた、アクセルハーツの公演のチケットを。

 

 

 

 まあ、チケットはどうでもいいとしてもその子達の周りにはあまり人がいなかったが…………あんな大根芝居じゃ逆に怪しいコスプレ集団だ。

 

 さらに言うと、キワモノ揃いのアクセルの街の冒険者は、危機回避能力は中々なものを持っている………低レベルの俺にアクアさん達を押し付けてきた程には。

 そんなこの街の冒険者が、わざわざ貧乏くじを引こうとは思わない事が、あそこに閑古鳥が鳴く理由ってわけだな………そもそも、大半の冒険者はすでに数人でパーティーを組んでいる為、3人も新たに雇おうとは思わないだろう。

 

 

「…『潜伏』」

 この状況で普通にメンバー募集掲示板に行ったら芝居をしているあの3人にロックオンされそうなので潜伏スキルを使って気配を消してから探そうとしたその時。

 

 

「ちょっとそこのあなた!潜伏スキルを使ってまで逃げようとするとか酷くない?見たところ1人なのに!」

 

エーリカとかいった人が、がっしりと俺の肩を掴んできた。

 

「敵意を出したわけでもないのになんで潜伏スキルが……!」

「アタシのスキル『看破』の前じゃ、潜伏スキルなんて役立たないわ!」

 

 潜伏スキルが通用しないほどの猛者かと思ったが、スキルを使われただけのようだ………いや、捕まったんだし安心はできないが。

 

 

「え、えーと……俺、レベルがそんなに高くないし。高難易度のクエストは………」

 とりあえずレベルを原因に断ろうとしたがリアさんが申し訳なさそうに。

 

「い、いや。高難易度って言っておけばレベルの高い冒険者が集まると思ってそう言ってただけで……。別に、レベルが低くてもついてきてくれるだけでいいから……!」

 どうやら選り好みしてただけだったらしい。

 

 そんな中、シエロという子がエーリカと俺を交互に見ながら。

「え、えーと……その男の子も困ってるみたいだ…………し…………あっ‼︎」

 

 止めようとした時に、突然声を上げた。

 

 そして、その視線の先には俺がもらったチケットが………

 

 

 これはまずい!

「見てよ、リアちゃん!この子ボク達のチケット持ってる!」

「本当だ!もしかして私たちのファンなの⁉︎」

 

 すると、エーリカはニヤリとした笑みを浮かべて。

 

「もう、そんなにアタシ達に会いたいなら、正直に言えば良かったのに。素直じゃないんだから〜」

 他の冒険者のところへ逃げようとしたが、その冒険者達もこの隙にとクエストへと向かってしまった………敬礼してる奴らには今度お礼参りでもしてやろう。

 

「そう言うわけで、よろしく頼むわね!」

「なんでこうお守り役ばっか………」

 こうして、俺の初めてのクエストはこの妙な3人組と冒険へ出かけることとなってしまったのであった。

 

 

 

 

「えっと………この人達は?」

「アクセルハーツとか言う踊り子集団だってさ。クエスト探してたらなんやかんやあってクエストに付き合うことになった」

 

 アクセルの街をでて少ししてから見えてくる山道にて。

 

 何か使える道具がないかとウィズさんの店に寄り、そこに居たゆんゆんを回収した俺は、今回の経緯を説明していた…………決して、貧乏くじのおすそ分けという事じゃない。

 

「へ、へー………そうなんですか…」

 それを聞いていたゆんゆんは、大人数の知らない人にビビって人見知りを発動していた。

………友達増えると言って張り切らせたんだが、後も簡単にへし折れやがった。

 

「2人とも、今日は付き合ってくれてありがとう。私はリア………職業はランサーだ。年は多分私の方が上だろうが、敬語じゃなくても構わない。それでこっちの2人は………」

「こら!普通に自己紹介してもつまらないでしょ!ここは……」

 と言いかけたところでエーリカがシエロさんとリアさんを連れて円陣を組んだ。

 

「「………?」」

 突然のことに俺とゆんゆんは顔を見合わせるが、すぐに円陣を解いた。

 

 

 解いたのだが………自己紹介としてはあまりにインパクトが強かった。

 

「ぼ、僕のこと……もっと知りたーい?教えろ教えろ、アークプリーストのシエロちゃん!」

「見た目はクール、中身はホット!リアで………ほっと、一息ついてね?」

 

「世界中のかわいさ大集合!可愛さ1000%、みんなのハートを鷲掴み、レンジャーのエーリカちゃんでーす!」

 

 

 本来は名乗り返さないと失礼なのだが、そのインパクトの強さには言葉は喉奥に引っ込んでしまう。

 

 それぞれの時間が一様に止まり、季節は春だと言うのに肌寒くなっていた所に………その沈黙を破る者がいた。

 

 

 

「わ、我が名はゆんゆん!アークウィザードにして上級魔法を操る者!やがて里の長となる者!」

 

………いや、この空気にとどめを刺していた。

 

「俺はナギト。職業は盗賊…………えっと。とりあえず、受けるクエストについて聞かせてくださいよ」

 

 白けた空気を強引になんとかすべく、俺はリアさん達が受けていたクエストについて話を促すのであった。

 

 

「こ………今回のクエストは、鉱山の鉱物を食べる虫「ライトワーム」と、それを餌にやってくる怪鳥「ジュエル・バードン」を討伐するクエストだよ」

 

 

 リアさんが受けたクエストの内容を説明してくれているが、その雰囲気は悲惨なもので、エーリカを除いた皆なの顔は何かを失ったようだ。

「『ライトワーム』は鉱石を好んで食べる芋虫型のモンスターです。食欲旺盛で、食べた鉱石によって様々な能力を使えますが、鎧を食べてくる場合もあるので気をつけてください。

 そして、その鉱物の要素をたっぷり蓄えたワームを餌にやってくるのが『ジュエル・バードン』。こちらはかなり好戦的で強いです。

 

 本来はワームの方を殲滅できればバードンがやってくることもなくなるのですが……今回は既に来てしまっているので両方倒さなくてはなりませんね」

 

「これを放置していると鉱石が食べ尽くされてしまい、鉱山が壊滅する。だから、速やかに退治してほしいとの事だよ………にしても、まさか虫を相手にするなんてね」

「ねえ、可愛いアタシは虫に触られたら気絶しちゃうんだけど……」

「で、できればボクも……」

 最悪の相性じゃねえか。

 

「クエスト要項読んでから受けてくださいよ……道理で高かったわけだ」

 ちなみにこのクエストの報酬は60万エリスでかなり高額な報酬だったのだが、戦うことになる相手の量と達成による鉱山関連の利益が見込めることを考えた今はそこまで高くは感じない。

 

 

「でも、なんでそんな高いクエストを?ジャイアントトード討伐とかでも良かった気がするんですが……」

 それを聞いていて思い浮かんだようなゆんゆんの質問に今度はシエロさんが答えた………男性恐怖症なだけあって俺が話してる時はリアさんの後ろに隠れていたが、同じ女であるゆんゆんは平気なようだ。

 

「公演に使う衣装や小道具、ステージの使用料にチケットの広告費。更にはボク達の生活費を稼がないといけないので、安いクエストだと足りないんですよ…」

「だったら普通に誘えば良かったのに。あんな芝居してたら逆に人寄らないぞ」

 

「それはアレよ。可愛いアタシ達が困ってたらきっと誰か助けてくれるって思って…」

 

 このエーリカはどうやらかなり自意識が強いようだが現実はそう甘くはないのだ。

 

 そんなことを考えていると、目の前には鉱山の入り口と書かれた看板があり、その向こうには。

 

「………なんか妙にでかいし、うじゃうじゃいるしでちょっと気持ち悪いな」

「……夢に出てきそうですよね……」

 ちょうどベンチくらいの大きさの金属色の芋虫が、20匹くらいで群れていた。

 

 その光景に顔を顰める俺とゆんゆんだが、後の3人はその比ではなく。

 

「ひ、ひい!あ、大きな虫が……!」

「いやあー!アタシあんなの触りたくないわ!きっと可愛さを捨てるわよ!」

「で、でもここでやらないと賞金が……!」

 

 俺とゆんゆんの後ろでガタガタと震えていた。

 

「ナギトさん、あの虫達は敵意を向けてきてますか?」

「『敵感知』に反応はないな………今はお食事中で周りに目がないのかも」

「それなら、私が魔法で見えてる虫は倒しますので、ナギトさんは逃げ出した虫を倒してくれると嬉しいです」

「了解……」

 

 

「ふ、ふたりともすごく冷静だね……」

 リアさん達の視線に尊敬の念が篭っているが、虫はアースウォームで耐性がついているだけだと思う。

 

「そんな事はないですが………ゆんゆん。この3人はどうしようか?」

 するとゆんゆんは少し考え込んだ後。

 

 

「シエロさんは皆に支援魔法をかけてあげてください。エーリカさんはそのシエロさんを守ってあげて………リアさんはナギトさんと一緒に撃ち漏らした虫を……」

「うう………コン次郎……」

 そう言ってリアさんは何故かずっと持っていたぬいぐるみを抱きしめる……てか、コン次郎って。

 

「そのぬいぐるみ、シエロさんに預けた方がいいんじゃないんですか?汚したくないでしょ?」

「いや、コン次郎がいないと安心できないと言うか……」

 

 ぬいぐるみを抱きしめながら首を振るリアさんは何というか……ギャップ萌えってやつだ。

 まあ、そんなに大事なら引き離すのもかわいそうか。

 

「俺が極力片付けるから、リアさんはコン次郎を守ってあげてください…」

「あ、ありがとう……」

 そんなリアさんがほっと一息ついた所で。

 

 

「準備はいいですね?じゃあ……行きますよ!

 

『インフェルノ』ーッ‼︎」

 

 虫の群れに向けて、ゆんゆんが炎の上級魔法を叩き込んだ‼︎

 

 

 

 

「『パワード』!『スピード』!『ガード』!」

 それを受けて4分の1程度は消し炭となったが、残った虫達が敵意を向け始める。

 

 短剣を持ったエーリカの後ろで、シエロさんが掛けた支援魔法によって身体が淡く光ったのを尻目に俺は剣を引き抜き、リアさんは槍を構えた。

 

 

 そして、その攻撃から運良く流れていた虫達はお返しと言わんばかりに粘液のようなものを吐き出して飛ばしてくる。

「『ウインド・カーテン』!………ナギトさんも!」

「分かった………『ウインド・ブレス』!」

 

 2人の風魔法で粘液を吹き飛ばすが、それが当たった岩はどろりと溶けていく。

「アレは消化液か………武器や鎧にあたるとやばそうだな」

 また、それだけでなく固まって動けなくする液体を飛ばしてくる奴もいるらしい………あれが、食べた鉱石による変化というやつだろうか。

 そうなると、反撃の可能性がある接近戦はやめておくべきだろうが、この中に遠距離の強い攻撃ができるのはゆんゆんだけだ。

 

 だが、もう一体の鳥モンスターがまだ現れてない段階でゆんゆんを消費させるのは良策とは言えない。

 

 そうなると………

「気づかれないように倒す……潜伏スキルで隠れた後に、後ろから不意打ちで倒すしかない!」

 そうして潜伏スキルを使おうとすると、同じく前衛に出ていたリアさんが顔を青くした。

 

「で、でも!そうなると私たちに標的が余計に……キャア⁉︎」

「ゆんゆんがガス欠になったら終わりだぞ………って、おおッ⁉︎」

 何か言いかけたリアさんに、虫モンスターが吹きかけた液体が数滴当たってしまう。

 

 

「………キャアアア⁉︎ふく、服が溶けて……ナギト、こっち見ないで!」

「いやっほ………じゃないや。リアさん!その鎧や服を脱ぐなり、溶けそうなところを切るんだ!放っておくと肌にまで沁みる!」

 どうやら鉄をも溶かす溶解液だったらしく、リアさんの服がじわじわと溶けて行き、白い肌が露わになるご褒美………いや、大惨事となっていた。

 

 

「いやぁん⁉︎アタシにも⁉︎」

「エーリカちゃん‼︎………ああッ!胸のところに⁉︎」

「BANG!BANG!…………BANG!」

「うう………コン次郎がいてくれて良かった。こうして前を隠せるんだから………!」

 

 涙目でうずくまるリアさんを庇うようにウインドバレットで牽制していると、となりではウインド・カーテンで弾ききれなかった液体でもかすったのか、エーリカにまで被害が及ぶ。

 

「ナギトさん!リアさんにマントを貸してあげて下さい!これ以上溶けたら色々見えちゃいます!………『ブレード・オブ・ウインド』!」

「分かった………あとゆんゆん!目眩しとかできないか?その隙にまとめてやっつける!」

 マントを脱いでリアさんに渡し、インナーのシャツにライトアーマーをつけた状態になったのを見たゆんゆんが、これが答えだと言わんばかりに。

 

 

「皆さん、目を閉じて下さい‼︎………『フラッシュ』ーッッッ‼︎」

「ライトさんの新しい武器、期待してるぜ………『潜伏』…!」

 

 俺は潜伏しながらベルトの後ろにくくりつけていた鉄の塊を取り出し、それを組み立てると…………そこから大鎌が出来上がった。

 

 これは、ライトさんが作った新しい武器で、名前はシンプルに「ポータブル・サイズ」。3つに折りたたむことで持ち運びを楽にすることができるのだ。

 辺りが閃光に包まれ、みんなが目を閉じている中で俺は潜伏を発動させて………!

 

 

「行くぜ………『突風』ッッ‼︎」

 

一気にワームの群れに突っ込むと同時に、大鎌で薙ぎ払いをくらわせた‼︎

 

 剣よりもリーチが長く、勢いがついた一振りは、標的になったワームを何匹かまとめて両断する。

 

「…今度はお前らだ!斬って斬って斬りまくる……!」

 

 フラッシュの明かりがワーム達の動きを止めている間に、俺は鎌で片っ端から斬りつけていった………おっと!

 

 

「逃さねえぜ………『ウインド・バレット』‼︎」

 

 逃げ出したワームの1匹を風の弾丸で打ち上げ、一気に切り抜けようしたその時だった。

 

 

「うわあッ⁉︎」

 突然大きな影が俺の前を横切り、その勢いに吹っ飛ばされてしまう。

 

 

「ナギトさん!大丈夫ですか⁉︎」

「ああ。だけど今のは……」

 駆け寄ってきたゆんゆん達に手を引っ張って立たせてもらいつつその前を見ると。

 

 

 

「なんだ、あの鳥は⁉︎」

「すっごーい!宝石みたいにピカピカね!」

「エーリカちゃん!喜んでる場合じゃ……うう、虫の頭が嘴から見えてるよぉ……」

「ナギト、ゆんゆん!あれがもしかして……」

 リアさんの言葉にゆんゆんが頷いたことで、アレがもう一体のターゲットである「ジュエル・バードン」である事を理解した。

 

 その頭は鶏冠を生やした鶏のようでありながら、ダチョウのよう逞しい足に、鉤爪を持った大きな翼と、宝石のような輝きを持つ鱗に覆われていた。

 俺達が困惑している間にも、バードンは「ライトワーム」の生き残りへと襲いかかり、啄み始めている。

 

 そんな、しばらく食事タイムを見せられていた俺たちだが………その視線は。

 まるで、「足りないからあいつらを食うか」と言うものに………!

 

 

「ゆんゆん!敵感知にビンビン来てる!こいつら俺たちを食う気だ!」

「ええ⁉︎えーと、それじゃあ私は詠唱しますのでナギトさんは……!」

 こちらに翼を広げて威嚇するように迫ってくるバードンを前に、ゆんゆんと共に焦り始めていると。

 

 

 俺のマントをバスタオルの様に巻きつけたリアさんや、ゆんゆんのローブに身を包んだエーリカ、そしてシエロさんの3人が前に出た。

 

「いや。ここは私たちに任せて欲しい………ナギトやゆんゆんだけに押し付けたりはしない!」

「そうね!1000%の可愛さからくる強さ、見せてあげないと!」

「ナギトさんたちは休んでてください……今度はボクたちの番です!」

 

 

 

 突然の行動に互いに顔を見合わせる俺とゆんゆんを尻目に、リアさんは薙刀でバードンと突き合いを始めていた。

「行くよリアちゃん、エーリカちゃん!………『風のロンド』!」

「アタシも可愛くいっちゃうわよ!『炎のセレナーデ』!」

 

バードンの嘴でのつつきのラッシュを薙刀で受け流すその姿は、まるでどんな攻撃も流す激流の様なしなやかさを放つ中で、シエロさんの魔法により緑色の光を纏ったエーリカが、リアさんと打ち合っていたバードンを、炎を纏ったダガーで幾重にも切り裂いていた。

 

 いや、緑色の光を纏ったのはリアさんも同じで、バードンのつつきを食らっても応えてなさそうだ。

 

 

「すっげえ………踊り子冒険者の名前は伊達じゃないな!」

「そうですね。すごく綺麗……」

 

 そんな光景を前に目を輝かせていた俺たちの前では、エーリカの攻撃を受けたバードンがたまらず一旦後ろに下がるが、そこをリアさんは見逃がさず。

 

 

「これで決める………行くよ、『水のラプソディー』ッッ‼︎」

 

 水を纏っていることも相まって、正に激流を思わせるような連撃をバードンの体に叩き込んだ‼︎

 

 

 

 

 

 冒険者ギルドにて。

 賑やかな酒場に5人分の乾杯がひびいた。

 

「いやー!今日は初めてのクエストだったけど楽しかったな!」

「はい!私もこんな多人数と冒険出来るなんて夢みたいでした!」

 

 ジョッキを片手にキャッキャしていた俺とゆんゆんを前に、新しい服に着替えたリアさんが笑みを浮かべて頭を下げた。

 

「2人とも、今日は本当にありがとう。急なお願い事だったけどすごく充実した冒険だったよ」

 

「いえいえ。でも、弁償しなくてよかったんですか?リアさんとエーリカの服……」

 聞けば冒険用の服はアレ一着だったらしく、今は2人とも普通の洋服だ。 

 

「アタシは気にしてないわよ?もちろんリアもね!」

「それどころか、報酬をボクたちに多めに分けてくれて、本当にありがとうございました!」

 

 ちなみに報酬の内訳はライトワームが1匹8000エリス。全部で20匹倒したから16万エリス。ジュエル・バードンが5万エリスだったので討伐報酬は21万エリス。そこにクエストの達成報酬が60万だったので81万エリスもらったが、俺とゆんゆんは10万エリスずつもらったあとは全部リアさん達に渡したのだ。

 

 まあ、流石にそれは申し訳なすぎると飯を奢ってもらったので結局は60万エリス渡したことになるが……俺たちは10万もあれば十分だ。

 

 

「そ、そんな……でも、お役に立ててよかったです」

「だな。俺も初めてのクエストだったけど楽しかった!」

 

 

 俺とゆんゆんが照れ臭さを交えつつ笑い返すと、リアさんは改めて。

「………そう言ってもらえるとすごく嬉しいよ。本当にありがとう2人とも。また、何かあったら………また、一緒に冒険してくれるかな?」

 

 返事は………勿論。

 

「喜んで‼︎」

 

 

 こうして俺の初めてのクエストは、踊り子達も含めた大冒険で幕を閉じるのであった。

 




 いかがでしたか?

今回はオリジナル要素強めなので解説も長いです。

アクセルハーツ
 アクセルの街を拠点として活動する踊り子集団。資金は観客からのチケット代とクエストの報酬であり、そのためメンバーのレベルは高い。

リア 職業 ランサー
年齢 18歳
アクセルハーツのリーダー的な存在の黒髪の美少女。天然ながらも真面目な性格で、薙刀を使いこなす。
「コン次郎」と呼ばれるキツネのぬいぐるみを常に持ち歩く変わった一面を持つ。
ナギトに異世界転生者と疑われているが、真偽の程は不明。

水のラプソディー
リアの必殺技。水を纏った薙刀による激流の様な連撃を食らわせる。
その流麗さは相手の攻撃する意志を押し流してしまう。

エーリカ 職業 レンジャー
年齢 17歳
アクセルハーツのメンバーで、ピンク色のツインテールの髪を持つ美少女。自信過剰でかまってちゃんなぶりっ子と、どこかアクアの様な性格を持つがアクシズ教徒ではない。

看破
相手の正体を見破るレンジャーのスキル。潜伏している相手を見つけることもでき、これによりナギトを確保していた。

炎のセレナーデ
エーリカの必殺技。炎を纏ったダガーによる連続攻撃。熱気は容姿も相まって見るものの魂を昂らせる。


シエロ 職業 アークプリースト
年齢 15歳
アクセルハーツのメンバー。大人しく気弱な性格のボクっ子。
男性恐怖症だが、チンピラを吹っ飛ばせるほどの力は持っている。
 
風のロンド
シエロの必殺技。癒しの力を持った緑に光る風を仲間に纏わせる。また、その風は相手の攻撃の勢いを抑えるほどの向かい風にもなる。

ポータブル・サイズ
ライトが作り出した試作武器の一つ。
三つに折りたたむことで持ち運びを容易にした大鎌。
刃の角度を変更することで薙刀としても扱える。

年齢はリア以外は適当に決め、スキルはゲーム版の効果を参考に考えてみました。
次回は4巻の序盤、めぐみんが逃げていたところからになりますので宜しくお願いします。

それではお楽しみに!
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