この素晴らしい世界に祝福を! このぼっち娘と冒険を! 作:暇人の鑑
また、前回解説し忘れたこともあるのでそちらも解説していきます。
「えっと………なあ、なにかあったんだよ?」
「めぐみん?一体どうしたのよ、こんなところに来るなんて……」
踊り子集団の「アクセルハーツ」と共に初めてのクエストをこなしてから数日。
「ジャイアントトード」の討伐クエストをこなした俺とゆんゆんは突然の来訪者に困惑していた。
なにせめぐみんは、前に行った屋敷でカズマさん達と暮らしているので、寝床には困らないはず。
それなのに、「しばらく泊めてほしい」と訪ねてきたものだから、とりあえずゆんゆんの部屋で話を聞くことになっていまに至る。
「……………」
同世代の女の子の部屋と言うのに、俺が感じるものは妙な緊迫感だ。
………そもそも同じレイアウトの宿の部屋でドキドキもクソもないが。
「なあ、泊まるんなら理由を話してくれてもいいんじゃねーか?ゆんゆんも困ってるぞ」
もう一度促すと、めぐみんは静かに語り出した。
「………と言うわけですよ。全く、人の気も知らないで………」
「成る程ね………」
「カズマさんが全部悪いとは言えないけどな……」
めぐみんが涙ぐみながらも怒ってる様な口ぶりで話し終えたのを聞いた俺は、ゆんゆんが淹れてくれていたお茶を飲んでいた。
ちなみにめぐみんの話の内容はこうだ。
カズマさん達は今日、『リザード・ランナー』の群れを討伐するクエストに向かった。
クエストこそ成功したもののカズマさんが木の上から落ちて死んでしまった………いや、まあこれだけでも大惨事だとは思うが。
そして、アクアさんに『リザレクション』で蘇らせてもらったのだが、なんとカズマさんは生き返るのを拒否して赤ん坊からやり直すと言い出したのだ。
で、その後何やかんやあってカズマさんは無事に生き返ったが、めぐみんはそのことがまだ許せなくて今に至るってことらしい。
…………ん?でも、なんかおかしいな。
「それでしばらく帰らないってなんか変じゃないか?お前の性格的にこんないい話で終わらないと思うんだけど」
こいつは、色々ゆんゆんとは対照的だ。
バトルスタイルや背丈に始まり、さらには性格もその例に漏れない。
仲間意識が強いが喧嘩っ早く、やられたらやり返すタチのめぐみんがこの程度で済ませるとは思えないのだ。
すると、ゆんゆんが少し咎める様な顔を向けて。
「ナギトさん失礼ですよ。いくらめぐみんだってそんな事は………」
「ええ。この私がやられっぱなしで終わるわけがありません。むしろその結果こうしてここに………ああッ⁉︎ゆんゆんやめて下さい、いきなり何をするのですか!」
「私のフォローや同情を返して!あんた一体何をやらかしたのよ!」
めぐみんの味方をしようとしたものの、めぐみん自身の手によって無駄にされたことにキレていた………わかっちゃいたが、相変わらずオチがひどいな。
ゆんゆんをなんとか宥めて、そのやったことを聞くと。
「カズマが生き返らないと言い出したので、カズマの体に落書きをしたのです」
………こいつの報復としてはなんか大人しいな。
「……因みになんてらくがきした?」
一応内容を聞いてみると。
「聖剣エクスカリバー」
「な、なななな何やってんのよ、あんたバカなんじゃないの⁉︎」
とんでもない落書きをしていためぐみんに、顔を真っ赤にしたゆんゆんが詰め寄る。
「お前それまさか、カズマさんの股間の近くに……」
呆気に取られていた俺がなんとか出した質問には、更にあっけからんと。
「ええ、書いてやりましたとも。それでカズマが気付く前にここに来たというわけで……」
「お前、これ匿った俺たちまで被害を被らねえだろうな⁉︎」
あの人は強くはないが敵にはしたくないタイプだ。もしこの落書きの逆襲の巻き添えでも喰らおうものなら何が起こるかわからない。
とんでもない事態に巻き込まれてしまったと頭を抱えていると、ゆんゆんは顔を真っ赤にしてあわあわと。
「わ、わあ………、め、めめめ、めぐみんがぁ……カズマさんと一緒にお風呂に入った次には、服を脱がせてイタズラを……⁉︎」
「ちょちょちょ⁉︎や、やめろお!ナギトの前で、なんてことを言い出すんですか⁉︎」
「待て待て!お前カズマさんと混浴したの⁉︎あの人まさかロリコン……」
「な、なにおう⁉︎誰がロリっ子ですか⁉︎もし私の体を見てそう言っているのなら、タダでは済ませませんよ‼︎」
そうして、それぞれに大きな傷を残しためぐみんの来訪イベントは、疲れきった3人の寝落ちという幕引きを迎えたのであった。
数日後。
「1日一回のあの爆発は、めぐみんの仕業だったんだな………よし、ワンペア」
「ええ。1日に一回爆裂魔法を撃たないと死ぬ、って言い張ってまして………あ、ジョーカー……」
ギルドにて………俺はこれを引くかな。
「しかし、途中にあったあの廃城の跡、魔王軍幹部のものだったなんてな………む、せっかく渡したのに」
「かなり前からめぐみんが爆裂魔法で破壊してたからか、もうほとんど倒壊してますけどね……ま、また……」
俺たちは………よし、返品完了。あとは………
「でも、ひょっとしたらお宝とかあったりしてな……よし、これで上がりだ!」
「あー………負けました〜」
よし、俺の勝ち………って、これは失礼。
春の陽気が外に温もりをもたらしている中、俺たちはギルドの隅っこでババ抜きをして遊んでいた。
それもただのババ抜きではなく、53枚のトランプを2人で分けて遊んでいるのだから、かなりの長期戦なのだ。
………要するに暇潰しだな。
「しかし、めぐみん達は湯治へ旅行か……金があれば俺も行ってみたかったな、アルカンレティア」
ちなみに今日カズマさん達はこの街にはいない。
日頃の冒険疲れを癒すため、「アルカンレティア」という街へ旅行に行ったのだ。
ちなみにアルカンレティアとは、『水と温泉の都』と言われる様にかなりいい温泉が揃っている観光都市らしい………図書館の本にそう書いてあった。
そんなところへ行きたいとこぼした俺に、トランプを切っていたゆんゆんは。
「あ、アルカンレティアはアクシズ教の聖地でもあるんですが………」
と、何故か死んだ目をしながら言ってきた。
「アクシズ教?なんだそれ」
その言葉がわからず、聞き返すとゆんゆんはなんで知らないんだという顔をした後、泣き笑いの様な表情で。
「エリスっていうお金の単位が幸運の女神エリス様の名前から取られているように、この国ではそのエリス様を御神体としたエリス教団が国教になっている事は知ってますよね?」
「ああ。一応それは本にも書いてあったな」
この世界についての情報が欲しかった俺は、ここ最近図書館で一般常識の本を読み漁り始めたのだ。
………地球の常識とかけ離れている面もあるのでなかなか覚えにくいけど。
「そんなエリス教よりも信者の数は少ないものの、熱狂的な信者が多いのがアクシズ教徒………水を司る女神であるアクア様を御神体にした宗教なんです」
「でも、それとお前の表情になんの関係があるんだ?」
説明と表情の関連性が分からないが、何か因縁でもあるのだろうか。
「えっと……アクシズ教の人は頭のおかしい人が多いから、関わり合いにならない方がいいと言うのが世間の一般常識なんです……いや、別に悪い人じゃ………ないんですがね……」
「分かった、俺が悪かった!これ以上は言わなくてもいいから!」
どうやら何かあった様だが、あまり詮索するのはやめにしよう。
気を取り直すように別の話題を………
「えーと………この後どうするよ?何か近場のクエストでも受けるか?」
振ろうとしたその時。
「緊急クエスト発令!緊急クエスト発令!手の空いている冒険者の皆様は、街の正門前まで集まって下さい!」
突然のアナウンスに、俺たちは顔を見合わせた。
アクセルの街の顔とも言える正門の前に集まった冒険者達の目に飛び込んできたのは、青空に点在する黒い何かだった。
「おい、なんだあの黒いの!ゴキブリか⁉︎」
「違いますよ、それだったらこんなに人来ません!」
ゴキブリかと思ったら違うらしいが………どの道アレだけの量は流石に気味が悪い。
いったいアレはなんなんだと一緒に来ていた冒険者ギルドの職員に詰め寄ろうした時、いつもいる受付嬢のお姉さんが。
「皆さん!あの黒い物体は、初鰹の大群です!それぞれ捕獲をお願いします!」
「………は?」
耳を疑うようなことを言い出した。
象ならまだダ○ボがいるし陸上動物だからまだわかるが、鰹は海水魚。なのになんで当然のように空を飛んでいるのだろう。
「…なあゆんゆん。鰹って海の生き物だよな」
「確かに普段の鰹は海にいますが、春と冬には空を飛ぶんですよ。春に飛ぶものが初鰹で、冬に飛ぶものが戻り鰹……な、ナギトさん!そんな変な物を見る目で見られるのは流石に心外ですよ⁉︎」
その事態の意味がわからずゆんゆんに聞くが、帰ってくるのは頭がおかしくなりそうな単語の数々だ。
「じゃあアレか?ここでは年に二回、鰹が空飛んでやってくるのか⁉︎」
「いえ、どこに飛ぶかはランダムで………今年の春はここだったって話ですよ。この時期の鰹はさっぱりしてて美味しいんです」
「いや、旬なのはわかるけど!魚が空を飛ぶことに疑問を抱いてくれよ!」
「でも、さんまは畑から獲れますし鰹やマグロが空を飛ぶのは、別に珍しい事じゃあ……」
ポ○テやボー○ボですら可笑しいのはテンポだけで世界観は割と普通なのに……!
泥の中を泳いだ秋刀魚なんて美味そうに思えない。
この世界の出鱈目っぷりに立ちくらみを覚えている間にも、ギルドの職員は檻に囲まれている、氷がたっぷり入った水槽を乗せた台車を何個も運んできており、お姉さんが声を張り上げた。
「それではみなさん!鰹を討伐したら、名前の書いたロープを巻きつけて、お配りする氷水の水槽まで運んでください!」
何故か支給されたロープの意味をようやく知ったところで、冒険者は空を飛ぶカツオを倒さんと吶喊していった………
いや、文面にしちゃダメだ。頭がおかしくなる。
「でも、鰹は空を飛んでるのに、遠距離攻撃ができない連中がどう戦うんだ?」
鰹へと立ち向かう勇敢?な冒険者達を見ながらふと思ったが、それはすぐに解決した。
「うおっ……早いぞこいつゴファ‼︎」
「剣が折れたぁ⁉︎お前ら気をつけろ!こいつ頭はマジ硬え‼︎」
…………は?
「おい!なんかミサイルみたいなことしてんだけど⁉︎」
「みさいる……はわかりませんが、この時期の鰹は、勇敢さを競うために人を見ると突っ込んでくるんです!しかも頭がとても硬く、かなりのスピードで突っ込んでくるので安易に突っ込むとケガをしますよ!」
「求愛行動で特攻すんのかよ、またはた迷惑な!」
隣を見ると、前衛の冒険者が突っ込んでくる鰹を、顔を顰めながらも受け止め、そこを魔法使いや別の冒険者が横から攻撃をして倒すと言うのが適したやり方のようだが……初めから横方向への攻撃手段を持っていればその限りでもない。
「魚のくせに人をおちょくりやがって、まとめて刈り取ってやる!」
俺は剣よりこっちだと折り畳まれた大鎌を展開して、突っ込んできたところを………!
「おらぁ‼︎」
鎌の左への横払いで、脇に刃を突き立てた。
「鎌は横から攻撃する武器だし、正面から突っ込むなら良いカモだ………おっと!」
間髪入れずに突っ込んできた2匹目は1匹目が刺さった状態で今度は右への横払いで刃を突き刺す。そして……
「2匹も刺さってんだ!普通に振り回しても十分重いぜ‼︎」
3匹目には刃が付いてない方で大上段から振り下ろしてやった………2匹分の重さもあるのだ、硬い頭越しでもひとたまりもないだろう。
「大漁大漁!」
目論見通りに3匹目を討伐した俺に、配られていた水槽を持って来てくれていたゆんゆんが駆け寄ってきた。
「ナギトさん!鰹は傷みやすいので早くロープで縛って氷の水槽に!ここは私が引き受けます!」
「分かった!」
鎌から引き抜いた時の返り血に顔を顰めつつ倒した鰹を、名札をつけたロープで縛り、檻付きの水槽へとなげこむのであった。
「『ライトニング』!『ライトニング』!『ライトニング』!」
戻ると、ゆんゆんが雷の魔法でカツオを撃ち落としており、地面には痺れて動けないカツオが何匹か転がっていた。
「なあ、あれ放っておくと鰹の痺れが解けちゃうんじゃ……」
「後で締めに行くので大丈夫です……『ライトニング』!」
「上手くやるもんだ………なら俺はもう入れてきたから、回収して来いよ。放置してると取られちまうぞ?」
「わ、わかりました……ナギトさん、危なくなったら呼んでくださいね?」
そう言って痺れた鰹を締めに行ったゆんゆんに鰹が襲いかかってこないように、ウインドバレットで牽制をしながら周りを見ると、鰹に突っ込まれて気絶している冒険者や、傷を癒しているプリーストの姿がちらほら見える。
「BANG!BANG!……数は減って来たけど、こっちのダメージも蓄積して来てんな……この際、まとめて一気に倒せれば良いのに」
爆裂魔法が役に立ちそうな時に限って、あいつアルカンレティア行っちまってるんだよな……。
俺は、ようやく全て締め終えて戻って来たゆんゆんに聞いてみることにした。
「モンスター寄せの魔法とかってないか?集まって来たところを範囲攻撃できる魔法で一掃しようぜ」
「魔法使いはそこまで万能じゃありませんよ!プリーストの「フォルス・ファイア」があればいけると思いますけど……」
それを聞いてさっきのプリーストに頼もうとしたその時だった。
「いやあああああああ!鰹がいっぱい来てるー⁉︎」
「どうするのリアちゃん!あんなに集めて私達だけで倒し切れるの⁉︎」
「あ、えーと………私もこんなにくるとは予想外で……」
突然鰹達が一点に集まり出したので、その方向を向くと………見覚えのある3人組が、悲鳴を上げて逃げ出していた。
「ナギトさんがフラグを立てるから!」
「違うよ!アレ、俺とは関係ない……!けど、助けなきゃ………おい、なんでこっちにくるんだよお⁉︎」
言いがかりをつけて来たゆんゆんに抗議していると、なんと鰹を引きつけてきた3人組は俺の方へと駆けてきたのだ。
こうして、突然の鬼ごっこが幕を開けるのであった。
「クソがー⁉︎」
「な、ナギトさーん⁉︎」
驚きの声をあげるゆんゆんの声に耳を傾ける間もなく走っていると、リアさんが追いついてきた。
「数日ぶりだね、ナギト!ちょっと助けてくれないかなあ?」
「こんな急に言われても、どうすることもできませんよ⁉︎誰か!誰か助けてえ‼︎」
「ちょっと!いきなり人任せってどうなのよ!」
「エーリカちゃん!ナギトくんの立場的にこっちの方が普通だよ⁉︎」
シエロさんとエーリカが少し遅れながら何か言ってくるが、今はメンツを気にしている場合ではない。
だが、走っているうちに他の冒険者達と距離が離れてしまい、助けを求めようにもこれは無理だ。
「チクショウ!こうなったら距離を稼いでルミノス・ウィンドしかない………ちょっとお先!『追風』‼︎」
「ええ⁉︎ちょ、ちょっと⁉︎裏切り者ー⁉︎」
速度を上げた俺に後ろから非難じみた声が飛んでくるが、そんなの気にしてはいられないので、早速詠唱を開始した。
「"今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤む無限の星々 "。
"愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を"。」
追風の力で素早く走りながら、魔法の詠唱を行う。
走りながら魔法を唱えると言うこの行動は、普通にやろうとすると息切れを起こして詠唱が途中で途切れるか、唱えられても魔法が満足に撃てなくなるリスクがあり、普通はやらないのが鉄則だ。……そもそも魔法使いの戦闘スタイルでこれはそうそう起こらないイレギュラーというのもあるが。
だが……レベルが上がった俺は、『並行詠唱』という別の行動をとりながら魔法を詠唱しやすくなるスキルを覚えた事で、それが可能になっていた。
詠唱が進むにつれて、纏う風が強くなる。
「"来れ、さすらう風、流浪の旅人"。
"空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾く走れ"。
"星屑の光を宿し、敵を討て"ッ‼︎」
その詩が終わる時……風は星屑を散りばめた光を孕んだ。
そして、今……生まれる‼︎
「皆伏せて‼︎………『ルミノス・ウィンド』‼︎」
こうして、鰹の群れに叩き込んだそれは、覚えて以来初めてまともな戦果を上げることに成功したのであった。
いかがでしたか?
解説に入ります。
ライトワーム
芋虫のモンスターで、鉱物を食べて育つ害虫。食べた鉱石により様々な能力を得る特徴を持ち、溶解液や硬化液などが例として挙げられる。
モチーフはウルトラ怪獣の「ケムジラ」。
ジュエル・バードン
鳥のモンスターで、好戦的な性格を持つ。宝石や鉱物を集める習性があち、鉱物の要素を持つライトワームが大好きでエサとして求めにやってくる。また、家畜などの肉を食べる時もあるんだとか。
モチーフはウルトラ怪獣の「バードン」。
カツオ
魚の一種で本来は海に生息するが、春と冬にのみ空を飛ぶ。求愛の為に固く発達した頭を武器に、人間たちを襲うこともある。
並行詠唱
ナギトの新スキル。別の行動と魔法の詠唱を同時にできるようになるので、魔法を使うアタッカーであるナギトとの相性がいい。
いかがでしたか?次回をお楽しみに!感想や評価をお待ちしています。