なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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記録二十九・馬鹿は笑う

 

 

 

記録二十九・馬鹿は笑う

 

 

 

Side~トーマ=アヴェニール

 

 

 

あの薊達を退けた一戦から数日、敵側の本拠地が分からないまま攻め手に出れず、執務官のフェイトさんやティア姉が捜査に出て、俺達は訓練や警邏任務に就く日々。

見習いの身だからか全ては教えて貰えてないんだけど…

 

そんな中、吉報と言うべきなのか…

 

 

 

「カート=グレンデル以下3名、今日からお前等の面倒みてやるぜ。ヨロシクゥ!」

 

 

 

ポケットに手を突っ込んだまま片手を上げて挨拶するカートと、微妙な表情の女性二人。

ロロって運び屋の子だけがいつも通りと言うべきかにこにこと並んでいた。

 

「って誰が誰の面倒見るってのよっ!全員捕縛されたくせに!」

「うるせぇよ貧乳。」

「んなっ…どいつもこいつも!!」

 

あんまりこういうのよく思ってないのかいきなり知らされて騒ぐアイシスに、グレンデルの狙撃手であるマリーヤって子が割と禁句を言ってしまい火に油。

アイシス自身は胸のサイズは嫌がってないらしいけど…フッケバインの皆も好き放題胸であだ名つけたりしてるから聞きたくないって所だろう。

 

「カカカッ!どっちもどっちでいいんじゃねーか?坊主はどっちが好みよ?え?」

「いっ!?お、俺に振るなよっ!!」

「照れんな照れん…あだっ!」

「黙れエロ首領ッ!!」

 

笑いながらこの空気に乗っかって、オマケに俺まで巻き込もうとしたカートがマリーヤに頭を殴られる。

ほ、本当勘弁してくれ…ただでさえここ女性陣が強くておっかないって言うのに、こんな話題に乗せられたら後で何言われるか…

 

あたふたと視線をさまよわせると、リリィが自分の胸元に手をあてて何か確認していた。

だ、駄目だ…いろんな意味で保たないから誰か話を進めて…

 

「はいはいそこまで。女性が多いから少しは話題にも気をつかってね?カート。」

「へーい。」

 

なのはさんに名指しでとめられても軽いカート。

ある意味凄いな…肝が据わってるって言うか、そういう所は見習うべきかも知れない。

 

「まぁ見ての通りこんな感じだから通常業務に就く…って訳じゃないんだけど、グレンデルの皆には感染者として手伝って貰う事になったの。」

 

苦笑しながらなのはさんが今回の経緯を説明してくれた。

 

俺は元々管理局にいる唯一の感染者。しかも成り行きの感染で、症状とその能力に関してはちょっとフッケバインで聞いた話とフォートが持ってた話くらいしか聞いた事がない。

戦闘関連に至っては、感染者としての師にあたる人がいない。

 

けれど、元々運用前提でハーディスに仕立て上げられたグレンデルの皆は、武装、感染症状、その能力の使い方まで把握している。

 

感染者の先輩としては今の所唯一頼める所だ。

 

一方でグレンデルの皆は…

 

「ぶっちゃけ暇なんだよ。ただ飯喰らってノンビリしてんのも悪かねーけど、何もする事ねーってのも。」

「脱走も失敗しちゃったしねぇ。」

 

凄い理由だった。

さ、さすがにソレが全てじゃないんだろうけど。暇をもてあますくらいなら修行したり、局の情報を得て置いた方が後々楽になるって算段くらいはあるはずだ。

…って言うか、あってくれ。暇つぶしに教えられた能力で戦えるか。

 

「つか何なんだよここは…あたしの有効射程の数倍の距離からマッハで動くボートのエンジンを揺れるヘリから狙撃で打ち抜くってあのヘリパイ…人間業じゃねぇ…」

 

ぶつぶつとぼやくマリーヤ。

俺たちが任務で出てる最中にボートを使って脱走を図ったらしいけど、警戒についてたヴァイスさんにボートのエンジン打ちぬかれて失敗したらしい。

 

「頑張るなら出来るように鍛えてあげるよ?」

 

楽しそうに言うなのはさんから、全力で目を逸らすマリーヤ。

…うん、気持ちは分かる。失礼だから言わないけど、正直…どっちが化物だ、ってたまに思うし。

 

「ま、そういう訳だからよろしくな坊主!」

「あ、うん。」

 

明るく言うカート。

でも…正直、ちゃんと教わるのは数日は後の話になる気がしてる。

 

だって…

 

 

 

「それじゃ、いつも通りフィジカルメニュー一通りから行ってみようか!」

 

 

 

俺達当初、これだけで瀕死だったからなぁ…

 

 

数十分後、予想通りというべきか健闘したと言うべきか、よたよたの四人を見ながら息が上がる程度で済んだ俺達は軽く訓練初めを懐かしんでいた。

 

 

 

Side~フォート=トレイア

 

 

 

「健康的な犯罪者もいたもんだ。」

「ぜ、ぜってぇ健康じゃねェ…ッ…」

 

一日を終えて、食堂で息を切らしてぐっだぐだに崩れているグレンデル一家。

特に、戦闘要員ですらない運び屋のロロって子は、頼むから裏方にしてくれと死んだ目で繰り返していた。

 

「それでも感染者かよ。」

「俺等はヴァンデインのとっつぁんに仕立て上げられた擬似感染者なんだよ。」

「擬似?」

 

聞きなれない話に首を傾げる。

感染するのに擬似も何もあるんだろうか?

 

「レプリカディバイダーを使って感染したんだよ、技術的な細けぇ事までは聞いちゃねぇが、無事に力を得られるように調整したんだろ。」

 

感染症状って結構人生を大幅に左右するというのにあっさり言うカート。

 

首輪…キーワードを言おうとすると爆発する脳内爆弾をつけた感染者を何人も保有しているらしいハーディス=ヴァンデイン。

普通に感染者を探せば町一つ分くらいの人間を使っても全滅する事も珍しくない感染者を、何人も保有してるってのは妙な話だと思ったが、そういうカラクリがあったのか。

 

「まぁ感染者とかあんまり関係ないって。俺も感染して身体が強くはなったけど、特務の訓練最初は全くついていけなかったから。」

「0点ドライバーの坊主にフォローされるようじゃ確かに反省がいるかな。」

「う…否定できない…」

 

フォローに入って返された言葉に落ち込むトーマ。

通常戦闘、って意味じゃ結構成長しているものの、ディバイダーを扱う感染者としての能力は無に近いトーマ。

今は訓練全部普通についていける身体になってるしそんなに落ち込む事もないんだけどな。

 

カート達にしても、初日のアイシス程度に持ちこたえてるあたりそれなりに鍛えてある証拠だ。初めリリィは完全に動けなくなってたし。

 

仲間みたいに話してる姿に、そう言えば…と思い出す。

 

「カート、ありがとな。」

「あ?」

「ゆっくり礼を言う機会がなかったが、お前のお陰でアイツの影に近づけた。」

 

俺はカートのお陰で薊と交戦できて、それがきっかけで後を追う事が出来て、それで判明した事実もある。

俺にとっては返しきれない位の恩だ、事態が落ち着いたら全力で返礼をしたい所だが、それでなくても礼を言うくらいはしておかなきゃな。

が、呆れたように息を吐いたカートは、ぐしゃぐしゃと自分の髪をつかむ。

 

「どいつもこいつも調子狂う連中ばっかだな…」

「甘いって?」

「まぁな。」

 

感染者相手にこの対応、確かに甘いと言われて妥当なものだろう。

俺はそれを承知の上で笑う。

 

「多分皆、その甘いもの欲しさにこれだけの事をやってきたんだろ。」

「あ?」

「お前等一家が全員へとへとになるような労働を、その甘い夢を買うために積み上げてるんだろうさ。お前の方こそその有様で手に入るような程度のもので満足か?」

 

自分を守って生き残る。

それだけならきっと、この六課の面々ならたとえ一人一人ばらばらになって管理局が滅んであちこちが荒れ果てるような騒動になっても、大した努力しなくても素の才能だけで結構な所まで出来るだろう。まして、今尚鍛え続ける必要なんか全く無い。

それでももっともっとと訓練を積み、力を磨くのは…きっとそういう事なんだ。

 

「ケッ…馬鹿は感染するらしいな坊主。同じ様な事言いやがって。」

 

トーマを見ながら笑うカート。

馬鹿馬鹿言う割になんだか楽しそうだった。

 

勧善懲悪、みたいな空気のある部署じゃないからだろう。

治安を守る公務組織だ、基本的にはそうあるべきではあるんだが…そういう連中だと、俺やトーマも問答無用で裁きにはめようとしていただろうし、カート達も例に漏れない。

ここの場合、懲悪をあくまで『手段』として、本当の目的は守るものを守り救うものを救う事としてやってるから、型にはまった裁きで全て片付けようとはしないんだろう。

 

だからこそ皆色々大変なんだろうが…アイツがそんな中ヒーローをやりきってきたのなら、俺だってやって見せないとな。

 

内心で決意を繰り返しつつ、ふと思う。

 

こんな感じで色々を扱ってると、型にはめたい大人相手に交渉繰り返すの大変なんだろうな…

喧々諤々、会議に振り回されてるだろう六課のちび狸さんに、少しだけ尊敬と感謝の念を送って俺は夕食を終えた。

 

 

 

Side~シグナム

 

 

 

仕事の終わり、私はテスタロッサを捕まえて休憩室で気がかりを話してみる事にした。

大した事ではないし、悪い事でも無いのだが…

 

 

剣友会すら組む程にはバトル馬鹿扱いされるような身として、どうしても気になって仕方がなかったのだ。

 

 

「フォートの奴、本当に強くなっていないか?」

 

 

ここ数日…つまり、奴が速人の弟子だったと判明してから今までの事。

何故か部隊長、主はやてから度々多対一を課せられていたフォート。

高町も詳細まで聞いていないらしいが、奴は『速人の後継』ならと気にもせず乗っかっている。

 

そこまではいいのだが…明らかに強くなっているのはおかしい。

 

「マント一つ手に入れただけで強くなる訳が無い。コツを掴んだ…とか、何か新たに身に付けた、と言う形で激変する事も無くは無いが、特別奴が何かしてきた訳でもない。」

「そうですね。」

 

テスタロッサは頷き、模擬戦の映像を再生する。

 

映っているフォートは、剣、盾を駆使し、銃から単純な直射弾を乱射し、何の変哲も無い直射砲撃を放ち、ただの高速移動魔法を使って戦っていた。

フォートの使うそれらは、エースと呼ばれる者達や、ストライカーと張るにはあまりにも頼りない武器だ。

 

一人一人と張り合うのに頼りない武器を多数使って…隊長陣との4対1で我々を脅かし、フォワードチームの4対1でキャロとエリオを撃破、スバルと相打ち気味に倒れた。

 

「厄介と言えば…クリーンヒットでも無い限り、ほぼ確実に連続攻撃が繋がらない事…でしょうか。」

「確かにな、囲んだ所で連携が繋がらないのでは多対一の意味合いが少しは薄れる。」

 

…そこに関しては、正直感心する。

 

あの速人達相手に一撃も受けない技量の持ち主などいるわけも無い。

受けて、連携に入られたらそれで終わってしまう。

 

攻撃を受け慣れている、なんて歪で特殊な鍛え方は、そんな奴等に非才の身で抗う為に強靭な意志と願いで得た力だろう。

今では優秀な執務官のティアナですら、数ヶ月で周りの強さに苦しみ折れかけた事があったと言うのに…それ以上の差を数年。

どれほどの精神力がいるのか、想像もつかない。

 

だが、それは元からだ。マントを纏ってから変わった訳ではない。

 

「あるとしたら…元々強い精神力で、『ヒーローは負けちゃいけない』って強く信じる事で迷いをなくして限界値を引き上げてるのかもしれないけれど…」

「む…」

 

テスタロッサの指摘は、漠然と抱えていたものをはっきりさせた気がした。

正体不明の強さ、それはつまりリスクも分からないと言う事。

 

意志力で限界値を引き上げているだけ…奴なら妥当だろうが、それは身を滅ぼす事に…

 

 

「大丈夫だよ。」

 

 

ひょっこり顔をだした高町が、あっさりそう言った。

いや、お前がそんな調子だからテスタロッサだけに声をかけたんだが…

 

 

「速人お兄ちゃんが、あれを冗談半分で人に渡す訳無い。普段が普段だから忘れがちだけど…戦争より惨い人の生死に携わってた人だから。」

 

 

だが、少しだけ重く告げられた高町の言葉は、予想を外れた意味のものだった。

問題がない…ではなく、フォートがリスクや現実を知っている…問題がある事を覚悟していると言う意味。

 

「無茶は元々か…あの薊を相手どって優勢だった力は、認めざるを得んしな。」

 

危なっかしい子供だが、速人の後継だと言うだけのものは持っている。強くなっている気がする、と言う不思議な状態も何れ判明するだろう。

 

事件が終わりそれが分かったら、模擬戦をやればすっきりするか。

 

「ホントは1対1でやりたくて仕方ないんですね、シグナムさん。」

 

にこやかに高町に告げられ、私は目を逸らした。

多対一を繰り返し、わりと持ち堪えられている上に、私がどうにもならなかった薊を退けたフォート。直接対決もないまま負けているようなこの現状はどうも煮え切らない。

スッキリさせたい、と言うのは確かにあったが…

 

「笑うな、お前達も同じだろう。全く…」

「はい。」

「ですね、ごめんなさい。」

 

私だけの事ではないはずなので言い返すだけ返した。

 

 

 

Side~エフス

 

 

 

始まりから、俺は既に忌み子だった。

生まれた時から俺はそれを知っていた。

 

機械の中から見つけられ、手にした『頭脳』に身体がまるで追いつかず、ただ利用される身。

成長を早め、群集から逃れ、一人野を彷徨う事になって…

 

結局、管理局に捕まればそれで終わりの俺は、非合法集団に利用『される』事で、管理局の目から逃れるしか出来なかった。

善良なる彼等は、一人野を彷徨う子供など放置しておかないから。

 

 

 

嘘欲悪偽企…幼。

 

 

 

策謀と偽りに慣れ染まった大人という生き物か、そう成りきれていない運のいい子供。

この世界に居るのは、そのどちらかが精々だ。

だから知った事じゃなかった。

違法など、我が身を守る事に比べたら大して気にする事じゃなかった。

順法精神を課してくる者達が何をして来たのかを、俺は知っていたから。

 

普通の幸せが欲しかったが、生まれた時から選ぶ余地なく、生きる為に俺はその能力を駆使し、自ら罪人と成り果てた。

 

 

染まったのだ、綺麗になる事などない。

 

 

隙あらば白を己が下に染めようとする、黒い手ばかりが映るこの世界で俺は…

 

 

 

天使と出会った。

 

 

 

「よろしくお願いします。」

 

 

 

正気かと、そう思った。

両親を殺され攫われた少女、その身は既にボロボロだった。

頭の半分に妙な機械が取り付けられ、機械を無理矢理につけた部分の整備に関して下手を打ったのか、皮膚と機械の境目から膿みが覗かせていた。

その有様で、その集団の一員に挨拶など、何を企んでいるのかと本気で驚いた位だ。

 

何でも、アンチエクリプスの適合者を探していた老人と、適合者として『自身が使える間、他の子供を使わないように』…と交渉して今の境遇を受け入れたらしい。

 

 

嘘欲悪偽企幼…しか存在しないはずの世界、その認識。

罅入った…どころの騒ぎではなかった。

 

俺は人機整備に関する能力を持っていた為、ただ無理に開発され、むりやり繋がれたこの機械と彼女の体を、負荷を軽く繋ぐための整備を任された。

正直、素材から何から何まで1から変えたかったが、脳と繋がっている機器相手にそれをやるのは危険もあった。

どうにか弄れる所を細胞に合う形で適合させ、とりあえず腐食からは守ることが出来た頃、彼女とある程度の話を交わすようになっていた。

 

と言っても、彼女が専ら語ったのは、常に自分を助けてくれた幼馴染の話。

其方はどうせ彼女に好かれるのが目的だ、批難するような事ではないが、彼女と違うただの人間。特に興味はなかったのだが、好きな話をする事で彼女の心が落ち着くのなら、それはいい事だったから、よく聞いた。

 

 

 

どう見ても、どう聞いても力無い少年。

エクリプス関連施設襲撃者として彼の名が挙がった時…彼女は泣いた。

 

 

 

「約束通り来てくれた…来てしまった…」

 

 

 

一つ残った、彼女の澄んだ右の瞳から流れる涙。

その意味が分からないほど、俺は彼女と接していないつもりはなかった。

 

一つは喜び、自身が想う者が望んだ以上に自分を想って…想い続けてくれている事への。

一つは悲しみ、この一件がただの少年に過ぎない彼の身を滅ぼすものだと知っているが故の。

 

 

「フォートを…死なせないで…」

 

 

祈るように頼まれ、俺は薊と共にその約束に頷いた。

哀れな程身を削る事に躊躇いなく、それでも大切な人を傷つけたくないと願う彼女に答える為、『施設の乗り換え』を利用して奴の心を折った。

 

 

ただの少年と呼ぶには強く彼女を想っていたが、目的が叶わぬと知れば普通に幸せに生きるだろうと。

その為の家族も何もかも、彼には揃っているのだから。

 

 

 

「そんなの嫌だろ。」

 

 

 

だが、あろう事か彼は…彼女を想っていた自分を昔話にするのを嫌って…たったそれだけの理由で全てを置き去りに死地に笑って飛び出してきた。

自身の想いが実る事を望むでも、願うでもなく。

あろう事か、俺ごと救ってみせるとまで言い出した。

 

 

 

違法など、我が身を守る事に比べたら大して気にする事じゃなかった。

 

だが、自身の安全が保障されるとして、彼女を殺せるかと問われれば…俺は…

 

 

 

 

「そんなの嫌だろ…か。」

 

 

 

 

口にして笑う。

彼を、自分を。

 

笑ってから俺は、初めて笑ったんじゃないかと思い返す。

あぁ…馬鹿な話だ。

 

 

 

笑う嗤う哂う。

 

 

 

未来を捨てた愚か者と哂う、命を捨てた馬鹿者と嗤う。

 

 

 

 

 

「エフスを捕捉…フェアレ=アートは不在。追跡班と処理班に分かれます。」

「させると思うなよ人形共!!」

 

 

 

 

今を自分を…初めて手に入れた幸福を笑う。

俺は今、自分の意志で、多段転移で逃がしたフェアレを追跡させないためだけに人形の群と向かいあった。

 

 

 

Side~フォート=トレイア

 

 

 

飛空挺フッケバインの捕捉。

唐突に振って沸いた連絡に、六課は急ぎで追うことになった。

 

その為の巡航艦ヴォルフラムだ。

 

ミッドの隊舎で訓練の真っ最中だった俺達も即座に乗り込もうと転送魔法陣に向かい…

 

 

 

 

転移魔法を感知した。

 

 

 

隊舎内の何処にでも他所から転移されても困るので、ある程度防護結界のようなものは展開されている為、転移の反応そのものは隊舎の外からだ。

だが…これは…

 

「ちょ、フォート!?」

 

アイシスの声も振り切る形で、俺は転移反応の元に突っ走った。

 

分かる。

 

いい加減いつ遭遇しても良いように、他の奴との反応の違いをリベリオンと共に調べてデータに入れておいた。

この転移魔法は、エフスのものだ。

だが、アイツがこんなところに襲撃に来る訳がない。トーマを欲しがる可能性もあるが、いくらなんでも局の本拠地付近に単独の転移術で来れる戦力で挑むのは無謀が過ぎる。

 

分かる。

 

近場の職員が数人集まっているのが見える。その中心にいる人影が見える。

 

 

 

囲まれていたのは、顔の半分を機械にされた少女。

 

 

 

「フェアレ…」

 

 

 

わずかに震える身体で、俺を見るフェアレ。囲んでいた局員さん達によいて貰うと、フェアレはよたよたと俺に近づいてきた。

心に余裕のある今よく見れば、右半身に麻痺でもあるのか、若干動きがたどたどしい。

そんな状態で…

 

 

「お願い!エフスを助けて!私を逃がしてエフスが」

「あのねっ!ソレあんまりでしょっ!!」

 

 

涙を流しながら訴えてくるフェアレの声を断ち切るように俺の背後から響く怒声。

振り返ると、アイシスがフェアレを睨みつけていた。

後を追うようにしてトーマとリリィも来ている。

 

 

 

「ぁ…ごめ…でも…うっ…うあぁぁっ…」

 

 

 

アイシスが怒っている理由が俺の為だと分かるのか、フェアレは視線を彷徨わせた後俯いて掌で顔を覆ってしまった。

 

少し…いやまぁ、大分、胸は痛む。

だが、俺はバリアジャケットを…真紅のマントを展開して、俯いて泣くフェアレの頭をそっと撫でた。

 

 

 

「任せろ、俺はお前の為のヒーローだ。エフスは必ず助ける、だから泣かなくていい。」

「ごめんなさい…ごめっ…っ…ああぁぁっ!!!」

 

 

 

安心させたかったのだが余計泣かれてしまった。

…俗世離れて仙人みたいに修行ばっかしてたからな…こういうのも上手くないと駄目なんだろうか?

 

とにかく…だ、こんな事しでかして無事に済む理由がない。

すぐ助けに行かないと。

さすがに現状を把握しているだろう技術部、シャーリーさんに通信を繋ぐ。

 

「転移元は?」

『今洗ってる最中だけど…敵本拠地の可能性もあるのに一人で行く気!?』

「そんな所に狙われてるゼロドライバー連れてく訳にも行かないだろ。ヴォルフラムはもう出るんだろ?」

『い、いやでも』

『割り込み失礼しまーす!』

 

通信画面に、ルーテシアとか言う女子が表示される。

直接は会った覚えがないが、確かこの間施設で罠に嵌められた際に外からサポートする予定だったフレアさんの知り合いのはずだ。

 

『八神部隊長からの依頼でフレア空尉とそちらに向かってます!フォートとPチームを連れてエフスさんを救出、離脱するようにって!』

「っておい、トーマとリリィ連れてくのか?」

『貴方が無敵なら守れるし、そうでないなら貴方が心配だって。』

 

ぐうの音も出ない。

やれやれ…ま、確かにそれ位はやれなきゃな。

 

『っ…馬鹿が…』

 

吐き捨てるように言いつつも、目を逸らして何処か打ちのめされたような表情を見せていたエフスの奴の顔を思い出す。

 

同類じゃねぇか、捨て身なんてやりやがって。

絶対助けてやるから持ち堪えてろよ。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 




六課で四六時中下ネタ言ってたら…訓練で酷い目に遭いそうだなぁ(遠い目)。
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