記録三十四・優しい妖精の悪戯
Side~ヴィクトーリア=ダールグリュン
ベルカ王家縁の魔法戦技者として気にかけていた二人が、犯罪者と逃亡するのを手伝ったのは…よりにもよって以前私を屈辱的な辛勝に追い込んでおきながら去年の大会にも出ずに放浪し始めたあの詐欺師だった。
「貴女ね…遊びで済まされませんわよ?」
「たはは、さすがに怖いね皆。」
こんな状況下であの娘とヴィヴィ達を逃がしておきながら、緊張感も見せずに笑うアクア。
大舞台で恥ずかしい格好を躊躇いもせずして見せる神経の図太さは相変わらずのようだ。
「一応言っとくけど、多少の情報はあっても雫ちゃんみたいに実務に協力してないからね?」
「犯罪者である事を知りながら匿った時点で十分です。大なり小なり情報を持っていると言うなら逃がせませんね。」
「あー…だよねぇ…」
他人事のように呑気に言うアクア。
この娘は本当に…
「雫ちゃんを追わせる訳にもここで捕まる訳にもいかないし…クラウ!!」
弟に声をかけるアクア。
逃がす気もなかった私は、構えて何をするか備えつつ、しかし、逮捕はさすがに本職の方に任せるべきかと攻勢にでるのは止めておいて…
直後、頭が真っ白になった。
弟がデバイスを起動させた。
同時に映像投影魔法で自身の姿を巨大に映し出した。
それはいい。
けど…けれど…
その弟が…デバイスの起動と同時に…
全裸になっ……
「「「「やああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」
少女のいくつもの悲鳴が重なる。
私の声も重なっていた。
よくよく見れば完全な裸でなく、肌色のブーメランパンツを穿いていたけれど、正直そこまで救いにならない。
思わず目を逸らすと、初等科の子には刺激が強すぎたか、立っていることすらままならない娘もいた。が…そんな中躊躇いもなく飛び出した影が一つ。
「鍛えこんでるじゃないか!!」
若干楽しげな声のミカヤさんだった。
ミカヤさんは迷いなく居合い刀を抜き放つ。
水月・二連。本気だ。
一撃目を浮かされずに受け止めた弟は…
「鏡崩。」
「っ!?」
二撃目の命中の瞬間にあわせて踏み込んで、衝突の衝撃をミカヤさんに丸々押し返した。
衝撃は、全くびくともしないものに加えれば逆にほぼ全て返ってくる。
普通対人で技を繰り出す場合には、受けた側もよろめいたり衝撃を受けて姿勢が崩れたりするが、彼は全力の攻撃を受ける瞬間に止めるどころか踏み込む事で、その『全くびくともしない』状態を意図的に作り出したのだ。
全力の居合いの衝撃を、武器破壊に至るでもなく返されたミカヤさんは、顔をしかめて腕を震わせる。
アレは…手首が罅か折れたか…
いずれにせよ、変態が出来る芸当じゃない。
あの詐欺師の作戦だ、彼はただそれに真剣に従っただけだ!
ミカヤさんに次いで背後に躍り出た教会の剣士さんも、返す大剣の一撃を受け止めて上空に打ち上げられる。
「っ!ふざけた真似を!!!」
照れている場合じゃなかった。
シスターさんを弾き飛ばすために背を向けた弟目掛けて、私は飛び掛って突きを放つ。
四式『瞬光』。
振り返った直後に受ける羽目になった彼は、受けきれずに地面を転がる。
彼も重量級の両手武器である大剣持ちだが、私の方も戦斧。
姿勢が崩れたところに飛び込みから突きを放てばさすがに型を崩せた。
破廉恥な巨大映像も消えた。これで…
「ご苦労様、クラウ。」
あの詐欺師の作戦だ、彼はただそれに真剣に従っただけだ。
そこまで気付いていながらまだ私は、彼の方を狙ってしまった。
致命的なミス。
デバイスを振り上げ、魔法発動の準備を終えたアクアの姿。
危険。
歴戦の戦闘勘、とでも自分で言うのもアレなのだけれど…
分かっていてもどうしようもないほど絶望的な『ナニカ』を、彼女が準備したのを感じ取る。
「っ!」
百式『神雷』を全力で撃って相殺する。
そう決めて、戦斧を地面に突き立てて…
「エターナルコフィン!!!」
私の雷撃をすら嘲笑うかの如き氷の世界が、辺り一帯を飲み込んだ。
寒い。
眠い…眠…って……る…場合じゃないッ!!!
「っ…ぁ…はあああぁぁぁぁぁっ!!!」
魔力任せに私を包む氷を破る。
どうにか自分だけ出られたものの、周囲はとんでもない事になっていた。
範囲を絞ったらしく町までは広がっていないものの、魔法の範囲内が永久凍土のように完全に凍り付いていた。
一応は押し返す事ができたのか分からないが、私が放った神雷は、『それごと飲み込まれるように』技の形の氷を形成していた。
その氷の世界の中心で、片膝をついて荒い息を吐いているアクアが、私の姿を見て目を見開いた。
「は…はぁ…ふ、不死身…なの?ヴィクターさん…」
「こんなの使っ…使ってる癖に…人を…化物みたいに…」
言葉を返す私の方も、必死と言うか一杯一杯と言うか。
上位選手で高防御系の私がようやくぎりぎり持ち堪えた程の技、当然ながら他の方々に耐える術がある訳もなく、皆氷の中で眠ってしまっている。
おそらくは…オーバーS級の氷結魔法。
しかも、その質も異常だ。巻き添えを食ったらしい飛んだ姿勢のまま墜ちてきた氷のオブジェと化した鳥。それなりの高度から墜ちたはずなのに、全く割れる様子もなく固まっている。
金属か、それ以上の硬度に凍り付いている証拠だ。並じゃこうはならない。
デバイスを手によろけながら立ち上がったアクアは、私を見て力なく笑う。
「まいったなぁ…キャパシティ一杯一杯の魔法なんだけど…」
「こんなもの…二度も三度も撃たれてたまりますかっ…」
多分、氷結による行動阻止、意識低下、冷却による体力消耗と魔法そのものの魔力ダメージを使った非殺傷設定。
私の身体も、氷結を無理に破ったにしては砕けたり傷ついたりしていないから、さすがに配慮はしているんだろう。
そもそも普通、この規模の氷結変換込みの大魔法でそんな調整出来る人間なんて数えるほどもいないと思うけれど。
ただ…逃がす訳には行かない。
配慮していようが、こんな規模の魔法を子供達に使ってでも逃げようと…逃げなければならない話を月村雫も彼女も抱えている。
おそらくは、ただ純粋に友人の全てを知って止めようとしていたヴィヴィやアインハルトが、それすら安易に出来ないほど重い何かを負わされているなんて状況を…放置出来る訳がない。
「けどゴメン、これ試合じゃないんだ。」
「は…っ!?」
ニヤリと笑ったアクアに寒気を覚え、ボロボロの身体を引きずり背後を振り返る。
直後、大剣の峰を躊躇いもなく振り下ろしてくる無傷の弟の姿を見て私の意識は途切れた。
Side~フレア=ライト
「…って訳で、ヴィヴィオに逃げられちゃってさ。」
途中から説明に合流したセインが、稀に見ぬ浮かない表情で締めくくった。
さすがに教会騎士が貴重な聖王縁の人間をむざむざ逃がしたと言うのは重い事態なのだろう、ましてなのはの娘でもある。
当人が自分の意志で雫について行ったとなると家出扱いでもいい気はするが、悪い人に言葉巧みに騙され連れ出された…と言えば誘拐にはなる。
親権を持つなのはや教会としても家出されたと言うよりは体裁がいい。
担当している誘拐事件とは全くの別件になるが。
「敵クローン体の中にヴィヴィオとアインハルトが居たが…さすがに関連はなさそうだな。」
タイミングとしては最悪だったが、連れて行ったのが雫ならば、クローンの材料にされたわけでは無いんだろう。
危惧していた事態では無かったので少し肩の荷が下りた。
「それで焦っていたのですね…」
今回初出で報告できていなかったヴィヴィオ、アインハルト、CAシリーズと呼ばれるリライヴのクローンについて今知った騎士カリムが申し訳なさそうに小さく頭を下げる。
「まさか…聖王覇王の形質を継ぐクローンや、無色の魔力光までクローニングで再現するなんて…」
シスターシャッハが驚きの声を漏らす。
オリヴィエのクローンであるヴィヴィオ自体、能力を完全に受け継いだ訳でも無い。ゆりかごの資質を得るだけでも難しかったらしい。
CAシリーズの存在が衝撃過ぎて目が向かなかったが、そもそもかなりの完成度のクローンを量産しているというだけで異常事態なのだ。
「競技者襲撃を行っていた雫さん…犯人では無いのでしょうが、誘拐事件と無関係では無いでしょう。雫さん達とトーティア姉弟の捜索をお願いしたいのです。教会からもセイン、ディード、オットーに加わって貰いますので…どうかよろしくお願いします。」
「了解。」
短く返事を返すと、茶菓子とお茶の残りを頂いてから席を立つ。
ルーテシアが合流する前だが話が済んだ。
のんびりしている暇は無い、全員集まって今度の行動指針を決めていかなければ。
「あ、ちょっと待った。ほいコレ。」
席を立った段階でセインに声をかけられ、バスケットを渡される。
「摘めるもの作っといたからさ、魔力回復させるには栄養も必要でしょ?」
「感謝する、後程ルーテシアと合流してから頂こう。」
確かに、幾分消耗は激しかったところだ、丁度よかった。
礼を告げて部屋を出ると、協力するという事でついてきて並んだセインは私の顔を覗き込んで笑う。
「素直になったのもフェイトさんのお陰かな?」
「ひねくれていたつもりは無いが、変わったのなら彼女のおかげだな。」
私の答えに満足したのか、これから事件だというのにセインは楽しそうについてきた。
気を抜くなと糾弾しない自身を意外に思いつつも、それを悪いと思えなくなっていた。
それにしても…エフス達の脱走は計画外としても、クローンの投入に襲撃事件と、纏めて発生している。
フッケバインにしても、こんなタイミングで丁度捕捉されるような無茶をする訳があったのか…
ヴィヴィオは強く聡いが…少女だ。
そんな彼女が、想う母も競技者としての立場も失いかねない選択をしなければならないような事実が雫から示されたのだとすれば…やはり彼等の行方を追うのは、かなりの重要案件になりそうだ。
まったく…いつまでも勿体付けていないで出て来い、馬鹿英雄め。
なりたいものの割に暗躍ばかりが得意な馬鹿な知り合いの姿を思い出し、私は小さく息を吐いた。
Side~高町ヴィヴィオ
逃亡の末に森に逃げ込んだ私達は、火をおこして一息ついていた。
「たく…アクアの奴…無関係の癖に無茶するんだから…」
「え?」
どこか心配そうに呟く雫さんの言葉に、私は首をかしげた。
絶妙なタイミングで現れたアクアさん。
てっきり何かあったら来る手筈になってたのかと思ったけど…
「イクスを目覚めさせる下準備に飛び回ってる筈だけど、たまたまこの近くにいたんでしょう。…襲撃事件の話題を知ってれば、インフィニティーアナライザーを使えば大体の行動予測は出来るだろうしね。」
苦い表情で呟く雫さん。
インフィニティーアナライザーは、頭を無理に使い限界以上の性能を叩き出す分析術。
行動予測にそれを使った上、あの包囲を引き受けてくれたアクアさんが心配なんだろう。
でも…仕方ない。
あの紙にあった話が事実なら事態は重いなんて言葉じゃ片づかない。ただ…
「私達に教えてくれたのは何でなんですか?」
競技者と護り手を分けていた雫さん。
さすがに協力なんてさせる気はないと思う。なら、格闘家襲撃の方に理由があるはず。
「…力を…借りたくて。」
けれど、強く厳しい友人から放たれた言葉は、あまりにも意外なものだった。
雫さんは、弱弱しい笑みを見せた。
「洗脳能力を使う知り合いが敵にいるのよ。私と同じ夜の一族で、純血の敵が。大会なんかで一瞬でも出られて能力、素養が確認できる女の子から使えるのを襲って洗脳を施して…特に何でもないように家に帰す。その処置をされてる子を探すのに、片っ端から倒して確認してたの。」
「それで襲撃を…」
まさか当人に『貴女洗脳されてませんか?確認させてください。』なんて訳には行かないだろう。
「なんだけど…ね、当然ながら、同族の異能を確認するには異能が必要で、それには血の力が必要で…」
言いつつ、濡れタオルを手にした雫さんは化粧を施した顔を拭っていき…っ!?
化粧を落とした彼女の顔色は、完全に血の気を失っていた。
薄暗い森の中で下からの火の光で映し出されている顔だからなのか、余計に酷く映る。
「ちょ、し、雫さん!?」
「だ、大丈夫なんですか!?」
私とアインハルトさんは大慌てで雫さんに詰め寄る。
元々なんか覇気が薄いなぁとは思っていたけれど、失血死寸前の人みたいにすら見える。
可愛らしい装いにはそんな迷彩もあったのか…化粧に凝っても違和感のない格好だから、気付かなかった。
「輸血パックを個人で買う人間なんて怪しいから、そんな事する訳にもいかないし…夜の一族の事は局に漏らすわけに行かないし…誰彼構わず襲う訳にも行かないし…」
そこまでの説明で察してしまった。
一年前には居た、とか言っていたけど…本来必要なはずの人の血を摂取できないままでここへ来て襲撃に際して力を使って来たんだ。顔色が悪くて当然だ。
「混血なのを利用して、普通に栄養とって自分の血を抜いておいて力を使ったら飲んでとか滅茶苦茶やってたんだけど…ちょっと…限界。」
「は、早く言ってくださいよ!」
「血が必要なんでしたね、どうぞ。」
空腹…って言っていいのか分からないけど、すぐにでも飲みたい所を我慢しながら話を聞きたがった私達の方を優先したんだろう。
逃げ切った段階ですぐにでも言ってくれてよかったのに!
この人は本当にもー!!
一旦話を中断して、私とアインハルトさん交互に首から血を差し出す。
急所を噛み破られるからちょっと怖いけど、舐められて口を離したらそれで傷口はふさがるから、大人しく終わるのを待つ。あと、抱きつかれて舐められるのでなんだか恥ずかしい。
ちょっとだけくらくらする程度になった所で、今度は私達も栄養補給をと、元気になった雫さんが数分もしないうちに近場から獣を捕まえてきた。
食事の意味をまざまざと見る事になる野営だけれど、さすがにその程度で泣き言は言えない。調理と言うにはワイルドな焼き獣を、斬るだけは綺麗にやってくれて、お行儀は悪いけれど素手で食べる。
「えっと…血の供給をすればいいんですか?」
実戦に混ぜると雫さんが言うよりはありそうな話。
だけれど、雫さんは首を横に振った。
「素養の大きい魔導師を洗脳してるのには仕込み以外にもう一つ訳がある。魔導師の素養は遺伝しやすい、調達しやすい素養の高い人の血なり細胞なりを採取して、クローンや遺伝子組み換えの材料に使うのが目的でもある。」
人を材料扱いする所業に、私は握り拳に力が入る。
夢や希望を抱いて大会に参加する人達。ただでさえ途中で負けたら夢を砕かれるって言うのに、よりにもよってその大会参加から『手ごろな材料』と判断されるなんて…
他人事じゃない競技選手の惨い扱われ方に怒りを覚える中、雫さんは話を進める。
「そのクローンの作成や研究にはそれなりの施設が必要。位置まで分かって襲撃をかけるとして…ピッキング程度ならともかく、魔力錠を外したり障壁を破壊したりって真似は、私には出来ないから…」
対人戦で脅威の力を誇っても、魔導師ですらない人間の雫さん。
魔力や電子によるロックを破る技術もなければ、一定以上の扉や障壁で遮断された空間を突破したいとなったときにどうしようもない。
「局に詰問させないためとは言え、連れまわってるだけで迷惑なのは承知してる。この上施設襲撃にまで手を貸せなんて図々しい事は強要できないけど…」
「聞くのを決めたのも、ついてきたのも自分で決めたんです。」
「はい、出来る事があれば。」
正直、嬉しい気持ちもあった。
いくらなんでも、私達が取るに足らないほどなら、危ないから関わらせようとしないはずだ。
雫さんが私達に、自分が出来ず魔導師が出来る事を願って頼んでくれたのは、私は…きっとアインハルトさんも素直に嬉しいと思えた。
内容が凄惨な事件でなければ、手放しではしゃいだかもしれない。
「でも雫さん、その装備で行くのですか?」
アインハルトさんの質問に、そう言えばと思い出す。
雫さんは今偽装していた可愛い軽装に、裁縫用に扮した布を切る為のサイズのナイフを持っているだけの状態だ。
輸血パックを買う事すらしなかった位だ、刀も持ってないんだろう。
「カゲハ貸して貰える?」
そもそも預かり物のカゲハ。
私とアインハルトさんがそれぞれ持っていた片割れを渡すと、少しアクセスする。
元々装備を登録しておく機能のあるデバイス。
プットアウトされたそれは、よく見ていた黒一色の服と、実体の小太刀。
二つ結びにされた髪を紐解き、飾り気のない髪留めで後ろにまとめ、服を着替えると、一気に装いが変わった。
染めてしまっている桜色の髪さえ元に戻れば、見慣れた昔の雫さんの装いだ。
「元々近辺の人を守るためにこの近くに住んでたんだけど…連中が派手に動いているなら私一人で町にいても仕方ない。ミッドの敵施設は私達で壊滅させる。」
「「はい。」」
応えるんだ。
あの紙にあった話が本当なら、数え切れないほどの人の命が懸かっているんだから…
Side~アクア=トーティア
川を使って全力で大逃亡。別の町まで来た所で宿を取る。
いやぁ…さっすがに疲れた。
競技者襲撃のニュースが出始めてまさかと思ったけど、行動予測かけてみたらやっぱり雫ちゃんだしっ。
一応非殺傷にしてたとは言えエターナルコフィン使っちゃったし、魔法のデータ教えてくれたクロノさん怒られないといいんだけど…範囲絞っても軽い大災害だもんなぁ…
「クラウもお疲れ様。」
「…ん。」
頷き返してはくれたクラウだけれど、何処となく浮かない感じだった。
競技選手の女の子しかもお嬢様が友人達のヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃん。
そうでなくとも知り合い女の子が多いし、クラウを囮と戦力封じに使うこの視覚効果作戦は大成功だったと言っていい。
けど…女の子相手にアレはさすがに嫌だったかなぁ…手を選んでられる状況じゃなかったとは言え。
「…やっぱ恥ずかしかった?」
「あ、えと…そっちはいいんだけど…」
謝ろうかと思ったけど、クラウは予想外にあっさり流した。
うん、やっぱりその辺は阿吽の呼吸って奴ね。有効打だって理解してくれてるようだ、さっすが姉弟。
でも、そうなると別の事で浮かない表情を見せている訳で。
「公然猥褻と市街地大魔法使用で本格的に手配されてたら、のんびり休んでも居られないかな…って。」
クラウの一言に硬直する。
「あ、あははー…大丈夫でしょ、氷結魔法は非殺傷、一定時間での完全解除設定してあるし、クラウのは一応水着だし…」
言ってるのと同時に、外に車が入ってくるのが見えた。
地域警邏の人なのか、わっかりやすく制服だ。
………………
「て、てったーい!!!」
折角取れた宿だったけど、部屋に『支払い』と書置きとお金を置いて窓から脱走。
こう言っては超失礼だけど、さすがに管理局の人でも雑魚相手に捕まる程私もクラウも鈍くない。
「うー!こんな事してたんじゃ紙芝居なんてやってられないよー!」
「少し休んだら管理外世界にも回ってみよう。」
「あーもー!管理局のイジワルー!」
「向こうは仕事だからしょうがない、それに姉さんは僕が守るから大丈夫。」
「ベルカの偉人大事にしてる癖にっ!イクスが起きたら教会の人には全力で謝って貰うんだからああぁぁぁ!!」
愚痴を垂れ流しにしながら、私とクラウは夜の町から脱出するべく突っ走った。
SIDE OUT
空腹って度が過ぎると本当にフラフラするんですよね…その状態で戦闘て(汗)。