なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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記録三・エンカウント

 

 

 

記録三・エンカウント

 

 

 

 

Side~フォート=トレイア

 

 

 

 

「っ…ぐ…」

 

…寝てる場合じゃない、トーマ達がやばい。

無理矢理目を覚ます。

 

周囲の状況を見る限り、どうやら近隣の病室に担ぎこまれたらしい。

身体ごとベッドに拘束具で止められている。

重傷だし、トーマ達と一緒にいた件についても聞く予定だったのかもしれない。

 

まだルヴェラらしいのは好都合だ。

拘束具は大抵、硬い素材を用意するのに限度があるから、どっちかと言うと魔力を含め、外部に発揮させる力そのものを封じるようなものが一般的だ。身体強化可能な魔導師に普通の縄や手錠なんて効果薄いし。

 

だから、拘束具本体の強度は、よっぽど厳重なところでない限り、それほど高くはない。

そして…

 

「リベリオン、シュートエッジ!!」

 

身体強化や外部への魔法を阻害する系統の力はしっかりしていても、『体内』の魔力は阻害しきらない。

だから、身体の内側でリベリオンを刃として精製、体内から拘束具を断ち切るように射出した。

皮膚や軽い怪我くらいは今更知ったことじゃない、内臓や太い血管さえ切らなきゃどうにでもなる。

 

体を覆う布団を跳ね上げ、腕に刺さった点滴を引っこ抜く。

そして、さっさと窓から飛び出した。

 

 

『戦艦級の移動反応が空に。』

「ち…」

 

間違いなく、それは今回の一件に関わってるものだろう。

有名なフッケバインのアジトか、フッケバインを追ってきた局の戦艦か、あるいはその両方か。

 

『追いますか?』

「当然だ。」

 

正直、寄り道ではあるし、管理局に関わるとなると俺も自由が利かなくなる可能性が高い。

それでも、トーマ達の安全が確保されるまでは…

 

『…不便でしょうが、頑張ってください。』

「人助けに不便もあるか、いくぞ。」

 

無視すれば少なくとも局に捕まらなくて済む可能性が高い。

俺だって探し人の最中なんだし、それは妥当な判断だ。

 

 

 

けれど…それじゃ、俺は約束に辿り着けない。

だから、戦地となってるだろう空に向かって飛んだ。

 

 

 

Side~シグナム

 

 

 

飛空挺フッケバインに集うフッケバインファミリーの逮捕任務。

 

レヴァンティンの応急処置こそ済んだものの、感染者の相手には心もとないという事で、同行したまではよかったが艦内待機になってしまった。

リアクト前なら押し切る事も可能ではあったんだがな…

 

対感染者戦な上に何があるかわからない以上備えとして残っているが…出来るなら突入隊に回りたかったものだ。

攻撃が無効化されるのに前線に出ようなどと言っても的が増えるだけだが。

 

 

飛空挺を捕捉し攻撃が開始したところで、唐突に通信が入る。

それは此方に高速で接近する物体があるという連絡で…

 

 

 

全身にブースターをつけて生身のまま吹っ飛んでくる、昨日拾った少年の姿だった。

 

 

 

呆れたな、此方は戦艦だと言うのに。

 

 

『シグナム…接近次第止めて回収してもらえるか?』

「了解。」

 

都合よく仕事があったと思うべきか否か、まったく…

 

 

 

Side~フォート=トレイア

 

 

 

生身で、魔力の節約も兼ねて防御系張らずにブースターだけですっ飛んでは見てるが、息とか衝撃が結構きつい。腹の傷も地味に痛むし。

 

…言ってられないか、どう考えても今やばいのはトーマ達のほうだ。

 

『こらそこの馬鹿!』

 

いきなりどこかで聞いた声で念話が届く。

 

『昨晩の?今子供の相手してる場合じゃねぇんだよ。』

『んだと!じゃなくて、危険なんだよ!これ以上突っ込む気なら無理矢理止める!』

 

念話と同時、傍の戦艦から人影が飛び出し、俺の進路上に入る。

ち…っ、面倒な。

 

「…昨晩の一件は礼を言う、だが」

「やかましい!敵でも犯罪者でもないのにかまってられるか!!」

 

無理矢理振り切ろうとしたのだが、魔力の炎を迸らせた剣を構える局員。

 

「火龍…」

「面倒な!!」

 

俺はあるだけの手投げ弾を全部投擲した。

殺傷兵器を使う理由もないので全部粘財や睡眠薬なんかが入ったものだが、一瞬で中身を全部判断できるわけもなく、俺も自分も巻き込むように撒かれた爆弾相手に炎熱変換の魔力を振るえず躊躇ったところを横切る。

 

が、普通の斬撃で足のブースター一個が切断された。

変換した魔力を抑えて斬撃に切り替えたのか、それにしたって手早い。

 

「リベリオン!」

『再生成。』

 

即座に修復。再び飛ぶ。

すれ違いさえすれば、直線移動で追いつかれる事もな…

 

 

 

 

 

 

急に、何もかも断ち切られた。

 

 

 

 

 

ディバイド。しかも、物質の攻撃のとかじゃなくて、生命活動そのものまで断ち切るような…

 

 

 

「し…るかああぁぁぁぁ!!!」

 

 

どうやらフッケバインの飛空挺も、後ろの騎士もきっちり範囲内だったらしく、皆不調だ。

 

だったらこれ以上ないほど俺に有利!!!

視界がブレ、力が入らないない中飛び続け、飛空挺に追いついた所で…

 

飛空挺の一部が爆発した。

 

今の…トーマか。

 

「トーマァッ!」

 

悲鳴じみた女性の声が爆発した非空挺から響く。

よく分からんが、エクリプスを制御出来てる訳でもなければ、上手く逃げ出したって訳でもないらしい。

 

それで離脱って…正気のうちに人から離れようてことか。

さすがリリィを助けた馬鹿。呑まれてるくせによくやるよ全く!

 

「逃がすか!!」

 

俺は飛び出したトーマを追って飛ぶ。

 

「誰だか分からないけど…俺に近づかないで。」

 

こっちに向けて、ディバイダーを構えるトーマ。

 

…瞳が普段とまるで違う、これは完全にエクリプス用の五感に替えられてるな。

武装破壊しかないか。あるいは、再生も出来なくなるくらい全力使い切らせるか。

手足を何回かもげたらいけるだろうが、暴走してるのに再生能力使わせるのも危なそうだし…ソレも拙いか。

 

「まぁいい、やるぞトーマ!来い!」

『敵性存在を確認、排除開始。』

 

武器に振り回されて向かってくるトーマ。二本の剣を展開してそれを迎え撃った。

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

ま…ずい。

いきなり当たり一帯の人間が全員戦闘不能にされたって言うのに、そんな状況を作った術者自身は無事なのに、その術者、トーマと、いきなり現れた少年が交戦し始めた。

このままじゃ、あの子自身が殺される可能性も勿論、無意識とはいえ人を殺してしまったなら、エクリプス影響下にある今のトーマじゃもう戻れなくなるかもしれない。

 

 

「っ…再出撃許可を!」

『アカン!準備が完全に整ってからやないと二の舞や!』

「く…っ…」

 

はやてちゃんからの注意も分かってはいた。

ディバイドはあくまで分断。魔力を直接吸い出されたりしたわけじゃなく、リズムや流れをばらばらにされたようなダメージ。

ノーダメージとは行かないけど、落ち着きさえすれば調子は戻ってくる。それに、出るならフォートレス装備でないと。

 

準備に5分はかかる。

けど…今のトーマ相手に5分…持つか?あの子。

 

 

 

ヒーロー気取りの少年、フォート=トレイア。

 

 

 

彼に限らず、魔導師と言う力ある存在に生まれ、現実を知らないまま育ってしまった子供の中にはたまに見る光景なんだけれど…聞くたび毎回気にかけていたらキリがないことなんだけど…

 

 

何でか、理由が分からないけどあの子にはいらいらしていた。

 

 

 

Side~アイシス=イーグレット

 

 

 

管理局の戦艦に押し込められそうになったタイミングで無理やり起きてとびだしたあたしは、その光景を遠くに見ていた。

 

遠くの空でトーマと戦う、小さく暗い赤の光…魔力光。

 

命がけの戦いに割って入って重傷を負わされるのは見てたから、もう来ないと思ってた。

それに、局員に担ぎこまれた先で拘束されていた筈だし、抜け出したってこんな所に来れる筈もなければ犯罪者の身で局のエースが集まってる戦場に顔を出すなんてありえないって思ってた。

 

「馬鹿って…どの有様で言ってるんだよ、まったく。」

 

エクリプスやアンチエクリプス、探し人、フォートの欲しい情報が本当なら、こんな所に来るよりも他の施設とかを回ったほうがいいはずだ。

トーマは感染者だけど、欲しいのは感染者本人じゃなくて情報なんだから、何も知らないトーマといる意味は少ない。

 

 

なら戻ってきた理由は…ただ、トーマとリリィを助けるため。

 

 

教会から戦闘音がしたからって教会に飛び込んで、局の人が死にそうだからって割って入って、トーマがまだ危ないからってここに来た。

 

「…ひっぱたくのは勘弁してあげよっか。」

 

トーマとリリィをあたしに任せて局員の人を庇いに走ったのにちょっとだけ怒ってたけど、こんな場所まで来た上に、こうも真っ直ぐなんじゃしょうがない。

任されたのにあの後あっさりフッケバインに捕まったのはあたしも同じだし。

 

「急ぐよパフィ、いっぱいいっぱいの友達が頑張ってるからさ。」

『了解。』

 

どう見ても押され気味の癖に、護るとかあっさり言ってたあのひねた目の真っ直ぐなフォートの姿を思い出してちょっとだけ笑みがこぼれた。

…護衛はあたしの本業だし、こっちも頑張らないとね!

 

 

 

Side~フォート=トレイア

 

 

 

『分断阻害効果確認、直接攻撃で破砕してください。』

 

トーマに指示出してる本がなんでもないことのようにそう告げる。

人の剣だと思って簡単に言いやがって…

内心悪態をつくものの、大振りをまともにガードしたら双剣形態じゃ一撃でひび割れて、二撃で砕ける強度。

 

砕かれるたびに修復してるから魔力消費が早い。

 

「逃げて…俺に近づかないで、殺してしまうから。」

「死ぬかよ!」

 

左の横薙ぎから、右の打ち下ろし。

こっちから打ち込んだのに防がれて右の剣が砕ける。頑丈だなディバイダー。

 

ディバイダーが光る。そして…

 

 

斬撃一閃。

 

 

「っ!」

 

左の剣で受けるも砕かれ、右手の剣、その柄を間にはさんだ右手の掌で斬撃を止め…

剣の柄も砕かれて吹っ飛ばされた。

掌が裂けて血が出るが、無視して剣を…

 

 

『シルバーハンマー。』

 

 

砲撃がすっ飛んできた。

咄嗟に剣でなく盾を生成、受け止め…

 

 

爆発に呑まれた。

 

 

 

「っ…」

 

 

二重盾でも持ちこたえるのがいっぱいいっぱいか、大した威力だよ全く!

 

「ぁああ!!」

 

直撃の衝撃が抜けないまま突撃。

盾のままで右腕を振りかぶり、砲撃の為に突き出されたトーマの右手を全力で殴る。

右腕を逸らすまでは行ったがディバイダーを叩き落とす事は出来ず…

本から分かれたページがそのまま飛んできた。

あの本なんでもありか。

 

「バレットスコール!!」

 

銃に切り替え、向かってくるページ郡目掛けて乱射。

何に当たるとかあたらないとかは気にせず、撃ちまくる。

何発か抜けて体を刻んでいったが、どうにか凌いで…

 

 

背後から気配。

 

 

 

ページを捌いている間に背後をとられたらしい。

俺は、振り返らず真後ろに下がった。

ディバイダーを振り下ろしたトーマの腕が肩に当たり、目の前には伸びきった腕。

 

「これで…終いだ!!」

 

視界に入ったディバイダーの持ち手を左の銃で撃って、振り返りながら右の銃身で腹を殴る。そしてそのまま、傍らに浮いた本に狙いをつけて…

 

 

まだディバイダーを手放していなかった。

 

 

周囲の空気ごとなぎ払うような突きが放たれ、咄嗟に射撃をやめたものの、避けきれず左肩が半分ほど裂ける。

殺傷弾でないと衝撃だけじゃ外れないか…対滅を起こさないためにも不安定な今下手に再生能力使わせたくないんだけどな…

 

「くそ…しぶとい…」

 

また仕切りなおしだ。

あくまでディバイダー狙いで戦ってるからあまり消耗したようにも見えないし…どうするか…

 

 

 

「それはこっちの感想、ホントよくもったね。後は任せてくれていいよ。」

 

 

 

と、唐突によく通る綺麗な声が聞こえてきた。

声とともに姿を現したのは…

 

 

「高町…なのは?」

 

 

時空管理局のエースオブエースだった。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 




傍から見てどう見てもいっぱいいっぱいなのに、フォート本人にその気がまったくないので周囲は気が気じゃないです。
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