なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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記録四十六・『兵器破壊組』~実戦の選択肢~

 

 

 

記録四十六・『兵器破壊組』~実戦の選択肢~

 

 

 

Side~アインハルト=ストラトス

 

 

 

「ディバイン…バスター!!」

 

 

ヴィヴィオさんの高速砲、ディバインバスター。

発生、弾速の速さは勿論、砲撃と言うことで威力もそれなりにある厄介な代物。

 

放たれたと同時に地を蹴った私は、少なくとも距離は詰められる予定だったのだが…

 

「ふっ…」

「な…っ!!」

 

薊さんが開いた扇で砲撃を私に向かって投げ返した事によって、距離を詰めることすらままならなかった。

駆け出していたその時だった為避けることも叶わず、交差させた腕で砲撃魔法を受ける。

 

直後…

 

 

「ひ…っ!!!」

 

 

 

内腿を撫でる優しく冷たい感触。

交差させた腕のすぐ前で、距離をつめて来ていた薊さんが笑っていて…

 

私は咄嗟に、ジャブのように左手をつきだした。

薊さんが髪を掠めるようにして簡単に直撃を外した所で今の状態に気付く。

振り上げられた左手の扇、左足に触れている冷たい右手の扇。

 

 

…馬鹿!戦闘中だ!!

 

 

後悔も遅く、左膝裏に滑り込んだ扇によって体勢を崩され、私は左手の扇で顔面を強打される。

 

後頭部の強打のみは辛うじて受け身で避けた所で、薊さんに虹色の魔力弾が降り注いだ。

公転から立ち上がると、どう動いたのか無傷の薊さんの姿があった。

 

「っと…片割れだけでも詰めたら楽やったんおすが…流石世界最強候補の御二人だけありまんなぁ…」

「ウェイブステップまで…」

 

ヴィヴィオさんが驚きながら漏らした名前に、驚きと納得が同時に起こる。

 

顔面にきれいに入った割には少なく済んだダメージは、脱力が必要なウェイブステップにいつでも入る為のものだったのだという納得と、実物を知ったところでそうそう再現できない高位技能をあっさり使った驚き。

 

だが、そんな私達を前に薊さんは楽しげに笑う。

 

「舞踊に力は無粋…侘寂わきまえた日本にたしなみあれば、難しくこそあれ不可能やおまへん。むしろ静動きっちり別れとるもんがベースのこん世界の住人なんに綺麗に動いとる水の妖精はんが見事なんよ。」

「ワビ…サビ?」

「近年やと日本の子供すらそないな反応やからなぁ…」

 

突然出た辛い調味料の名前にヴィヴィオさんが首をかしげると、薊さんはなんだかとても残念そうに肩を落とした。

 

「ゆるりしてって増援でも来られても面倒やし…これで行きますわ。」

 

開いた扇を合わせた薊さん。直後、光ると、扇は傘に変形していた。

 

…つくづく武器に見えないものを扱う。

舞踊と言っていたし、実際武器から選んだものではないのだろう。

 

「シュート!!」

 

ヴィヴィオさんが展開した誘導弾を、薊さんを包囲するように放つ。

が、器用に傘を回した薊さんは、やわらかいステップと共に回した傘で誘導弾を受け、弾いていく。

 

その間で距離を詰め、断空を狙いに行く。

 

一撃目をかわさせて二撃目を…と思っていたが、薊さんは傘を私に向けた。

受けるつもりなら好都合…そう簡単にっ!!

 

 

私の拳が触れると同時、受け止める所かまるで素通りさせるかのように傘が閉じられる。

 

 

薊さんの姿を隠すように構えられた傘。

防御じゃなく、突きの体勢をとっている事を隠す為だったのか…っ!

 

「が…」

「茉莉花・零。」

 

喉に刺さるかのように当たった傘の先端が光った直後、私の意識は途切れた。

 

 

 

Side~高町ヴィヴィオ

 

 

 

アインハルトさんに対して開いた傘を構えた時点で嫌な予感がした為、そのタイミングで私は単発の高速弾を放っていた。

速射とはいえ砲撃を放った直後で回避は出来ないはず。

アインハルトさんが直撃を食らうのまでは止められなかったけど、コレなら…

 

「おっと。」

 

予想通り回避まではされなかったけれど、空いている左手で私の魔力弾を弾き飛ばす薊さん。

扇無しでもやわらかく流す事は出来るのか…やっぱり凄い技量だ。

 

おまけに魔導師。

突きに速射砲が連携してるって、とんでもない殺傷攻撃だ。

アレだと、突きを食らった時点でジャケット以外完全に抜かれているから、突きを受けたら絶対にノーガードで砲撃を直撃する事になる。

砲撃も速射で威力が落ちる分貫通効果に特化させているみたいで…正直喉に喰らったアインハルトさんの命が心配…

 

 

 

ズダン!と、床を思いっきり殴りつけるような音がした。

 

 

 

見れば、アインハルトさんが立ち上がっていた。

あ、あれで意識落ちなかったんだろうか?とんでもない人と打ち合ってたんだな私…

 

普通なら到底立てないだろう殺しの一撃を貰っておきながらピンピンしているように立ち上がったアインハルトさんの姿に、薊さんも驚いているようだ。

 

「ウチは火力不足あらへん筈…えろうしぶとい方と会いまんなぁ。」

「そう簡単に倒れていては、勝ち進んだ方々に申し訳ないですから。」

 

言いながら構えを取るアインハルトさん。

首は急所には違いないが、完全にやられてなければ顎やボディより動きに制限は出難い筈。

 

 

まだ…これからだ。

 

 

深く息を吸い…そしてゆっくりと吐く。

この人とまともにあたってどうにかするには…アレしかない。

 

私は、今度は全力で薊さんに向かって駆けた。

 

中後衛援護では必要なかったけど、多分通じるのはこれしかない。

 

 

アクセルドライブ。

 

 

極度の集中状態によって動き全てがスローモーションにすら見える、反応速度の限界突破。

 

アインハルトさんの力量でまともに触れられすらしないとなると、コレしかない。

 

弛緩しきった筋肉の動きが見え、右に動…否、切り替える。

 

「ぉ…」

 

左フェイント、右拳。傘で防御。

拳引き、同時にステップイン。

囮の左フック、傘防御継続、逆回転から左足払い。

 

「とっ…」

 

跳躍回避。

 

 

…今だ!

 

 

「スペースインパクト!!!」

 

 

着地点を狙って、空間爆発魔法を放つ。

魔法を扱うにはどうしても中、高度の制御が必要になって来るためさすがにアクセルドライブと併用は出来ない。

けれど、どのタイミングで魔法を使うかまでは決められるから、的をスローモーションで捉えた上で放つ魔法を決める事は出来る。

 

が…薊さんは開いた傘を一振りして、着地タイミングを遅らせながら私の魔法を防いだ。

 

凄い…けど!

 

 

「はああぁぁっ!!!」

「あら…」

 

 

着地を『遅らせた』為、完全にそのタイミングを狙えたアインハルトさんによる、断空の蹴りが一閃。

開きっぱなしの傘で防御した薊さんだったけれど、傘の骨が軋むような音とともに思いっきり壁に吹き飛んだ。

 

今薊さん、ウェイブステップだった。跳躍着地からでもすぐに出来るんだ。

とは言え、そうでもなければ防御主体だろうあの傘ごと破壊しかねないアインハルトさんの一撃も凄い。

傘を閉じて顔を覗かせた薊さんは、驚きを隠さないで一息吐いた。

 

「まともに受けたら砕けまんなぁ。ハードヒッターとカウンターヒッターん最強候補…ほんに見事おす。」

 

彼女に認められるのは正直な話こんな一件じゃなかったら光栄極まりない。

けれど、同時に複雑な気持ちもあった。

だって、最強候補とか言っておきながら私達の攻撃をどっちも捌ききっているんだから。

 

 

単発のソニックシューターを放って制御を放り、アクセルドライブに入る。

 

 

傘を回転、受け止め投げ返してきた。

左裏拳で弾き飛ばす。

 

傘を閉じての横薙ぎ。

飛び越えるように側転、着地と同時にジェットステップからアクセルスマッシュ…ダブル。

 

一撃目は左腕に防がれる。

間髪入れず二撃目を顎へ。

 

接触…と同時に半回転跳躍。

天井に着地、傘を左手で逆手に持ち、右手を柄に…

 

仕込み傘っ!?

 

「姫空木。」

 

天井からの抜刀連撃。

回避し切れる訳も無くセイクリッドディフェンダーの制御に入って…っ!

 

 

「ぐ…っ!!」

 

 

二撃を防いで三撃目をバックステップで『半分』かわした。

身体を触れていった斬撃の線から鮮血が舞う。…直撃じゃないってだけで、かわしたって言うのは言い過ぎかもしれない。

 

アクセルドライブとディフェンダー…自分で言うのもなんだけど、回避防御の奥義に近いと思う。

 

ただ…併用できない。

 

普通の人は回避不能の必殺攻撃なんて撃てないから、使いわければ無傷でいけるけど…

今のは二撃しか見えなかった。

 

納刀前に攻め…

 

「ぶっ…」

 

着地前の薊さんの顎を、衝撃波が打ち抜いた。

アインハルトさんの空破断だ、ずっと狙ってたのか。

 

 

「ヴィヴィオさんっ!!」

 

 

アインハルトさんの声に頷き返し、魔力を溜める。

よろめいたものの体勢を立て直した薊さんが刀を傘に納める中…

 

 

 

「破城槌・土竜!!」

 

 

 

アインハルトさんが床を叩くと、思いっきり地面に亀裂が走った。

雫さんや私みたいなのの足を殺すために、真下でなく斜め前方を砕いていくように改良した破城槌。

盛り上がって砕けてとひび割れ形が変わった床が周囲に広がっていく。

 

「ディバインバスター!!」

 

それに合わせて、私は砲撃を放った。

狙いは薊さんではなく、その足元にひび割れ盛り上がった地面。

砲撃の炸裂で砕けた床の破片が薊さんの身体に襲い掛かる。

 

薊さんはなんでもないように傘で自分の身体を覆い隠し…

 

 

 

 

私とアインハルトさんは、その隙に撤退した。

 

 

 

 

『合図を決めておいて、どちらかがそれを送ったら何があっても撤退する。』

 

 

雫さんに言われて決めておいた合図は、名前を呼ぶ際のさんの『さ』のイントネーションを変えること。

敵にすぐには気付かれないだろうサイン。

二人とも熱くならなきゃ大丈夫なように二人とも合図を覚えておいて、どっちがが送ったら逃げるというようにしておいた。

 

「大丈夫ですか?」

「はい、まだ大丈夫ですっ!」

「なら予定通りですね。」

「はい。」

 

敵は本職で本命である雫さんや速人さん達が最悪処理するから、手伝いって認識がちゃんとあるなら、『余力があるうちに』引くように、二人共に念をおされていた。

 

薊さんと戦っててついちょっとやりきってみたくなっちゃってたけど、アインハルトさんが合図してくれてよかった。

 

「とりあえず撤退できないように外を押さえつつ、傷を癒したほうがいいでしょう。」

「ですね。」

 

それに、薊さんに勝利する事より、内部の研究者の人を離脱させない事の方が重要なんだ。

護衛であそこにいたなら空ける訳には行かないだろうし、同行者を守りながらの方が不利になるのは間違いない。

 

 

最良の判断だと思う。ただ…

 

「うぅ…二人がかりであんなにあっさりしのがれるなんて…まだまだかなぁ…」

「見事な技量でしたからね。一度死力を尽くして試合してみたいものです。」

 

ちょっとショックだった私に対して、アインハルトさんは淡々とした様子だった。

まぁ…分からなくはない。元々余力を残しておく予定だった以上、危険な賭けに出て攻める事は一切しなかったんだ。

特にハードヒッターのアインハルトさんは無理を押して特攻、距離を詰め強打、当たれば勝利って手立てが使えない。

 

つまり、アインハルトさんは私と違って打てる手立ての全てを使いきって捌かれたわけじゃない。

一撃見事に放り込んで見せたのもアインハルトさんだったし、さすがだと思う。

 

 

でも…本当、是非一回本気で試合してみたいなぁ。

 

 

平和になってから薊さんが世間に出られるようになるのなら、絶対試合を申し込もうと決め、私達は帰路を駆けた。

 

 

 

Side~氷村薊

 

 

 

合図自体は、アレだけトーンを変えたら稚拙で分かりやすいものだったけれど…まさか逃げる準備しとったとは予想外もええとこやった。

 

ヴィヴィオと交戦しとる間、アインハルトには『一撃を狙う』ように念を送っとった。

そして、ヴィヴィオを退けた姫空木の連撃の隙を狙って来るよう、『今』と念を送った。

いつまでも二対一で捌ける相手や無かったから、彼女の必殺の一撃に対してカウンターを放り込むことで一対一の状況に持ち込むつもりやったんやけど…

 

まさか、目の前で友人が押されている中、待ちに待った機会にお得意のハードヒットでなく、機動力減少を狙って高速遠隔攻撃で顎を狙ってくるとは完全に予想外だった。

 

 

「っ…」

 

 

ふらついた身体をどうにか倒れないように足に力を込める。

その中距離技ですら脳を揺らされこの有様。見事な強打者である。

 

ヴィヴィオにしたって辛うじて捌ききったものの…正直冷や汗ものの狙いと速さだった。

仕込み傘による抜刀連撃は対一のとっておきやったんに、戦闘不能にも持ち込めなかった。

 

 

さすが、『彼女』の友人だけん事はありまんなぁ…

 

 

荒れた床で適当に座れそうな塊を見つけて、座って一息吐く。

 

 

…あの二人だけでこんな所にくるなんて事があるはずが無い。

大人は巻き込みそうもない、そうなると二人を連れてくるのは一人しかいない。

 

「月村雫…」

 

ぽつりとその名を呟く。

少し…寂しかった。

 

彼女がここに来ているにも拘らず此方にいないと言う事は、きっとお父様の方に向かっているか、既に対峙しているか。

 

本音を言えば、ウチが彼女と戦ってみたかった。

あのジークリンデ=エレミアとすら戦える、生身の混血。

いつか破ってみたいと、ずっとそう思っていた。

 

 

けれど…今のお父様相手には、生身で何をどうする事も絶対に出来ない。

 

 

防御魔法程度ならいざ知らず、物質のことごとくを分断破壊する感染者。

それも、山のようなクローンを全て力に変えている。最早生体兵器と言う言葉すら生温い。

 

もう彼女と戦う事はないだろう。

殺されているだろうし、そうでなくても四肢を封じられ食べられているはずだ。

 

 

憧れの仇敵と相見える事無く終わる戦いに覚える寂しさに染み込ませるように、デバイスからプットアウトした抹茶をそっと傾けた。

 

 

 

Side~月村雫

 

 

 

「いつまでそうしている気だ?」

 

抜刀体勢のまま、突っ立っている遊と見詰め合う事1分程。

痺れを切らしたのか、私から動かないのが不満なのか、睨んでくる遊。だが、私はそれに付き合う気はなかった。

 

奥義の極みに至っていない私が確実に一撃を決めるには、一瞬をものにしなければならない。

 

「そもそも、本気で通用する気でいるのか?…舐めるな!!」

 

堪え切れなくなったか遊が腕を動

 

 

 

 

神速。

 

 

 

 

一瞬に全てを賭け地を蹴り、間合いを一気に詰める。

 

 

間合いも距離も武器の差も、全てを零にし必ず斬撃を当てられる、御神の奥義の極『閃』。

けれど、この異界で戦えば勝つと言い切るにはもう一つ必要な物があった。

 

魔導師による全展防御は勿論、機兵等も存在する管理世界。

ただ剣が当たっても、それで勝てない可能性がある。

 

 

だから、お父様が修行の末に編み出し…使うに使えない新たな奥義。

 

 

それは、如何なる硬度をも断ち切る斬撃。

鎧も魔法も強度の差も、全てを零にする一閃。

 

 

 

神速による動作加速を、踏み込んだ爪先から足、腰、背、腕と全てにかけて連動させての抜刀。

命中の瞬間に『徹』を重ね、後はただ無心で振り切る。

 

 

御神流奥義・龍殺。

 

 

本当に竜種が存在して、龍の大本まである管理世界。

お父様が編み出した、この場で全てを断ち斬る御神の剣につけるのに、ある意味でふさわしい名前の奥義。

 

 

の、筈なんだけど…

 

 

 

「まだ…私じゃ未完みたいね。」

「が…っは…ぁ?」

 

 

 

遊の心臓辺りで折れてしまった小太刀の刀身を見て、私は一息吐いた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 




最大の功労者…この規模の戦闘で持ち堪えている地下施設(爆)。
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