なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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記録四十八・『戦艦待機組』~対艦隊~

 

 

 

 

記録四十八・『戦艦待機組』~対艦隊~

 

 

 

Side~オーリス=ゲイズ

 

 

 

世界全土でさまざまな犯罪が起こり、事件が起こり、人手が足りない管理局。

さりとて、全ての人員が隙間無くあちこちを飛び回っているという訳でもなく…

父と共に罪科に関わっていた関係で重役から降ろされた私は、奔走しようにもあまり重要案件を任される身でなくなっていたため前より間が出来てしまった。

 

ともあれ、最低限有能であらねばと食堂で食事を済ませた後の休憩時間にニュースを漁る。

情報は最大の武器…一般誌とはいえ軽視は出来ないし、問題があれば対処もしなければならない。

 

「はぁーあ…武装局員っつっても結局才能かよ…」

「ぼやく位なら訓練しといたらどうだ?」

「それをフレア一尉とかの前で言えるなら言ってみろ。強くなるか死ぬかの二択だぜ?」

 

武装局員の同期なのか、愚痴を漏らすものとその傍らで苦い表情をしている二人組の姿が映る。

 

…武装局員の訓練は、基本的に楽ではない。

追加で自主連をする者もいるにはいるが、そもそも通常鍛錬だけで身体を壊しかねないような程度の者も存在する。

 

地獄の門と噂されるフレア=ライト一等空尉を始め、鍛錬に耐えうる身体そのものが才能と言えなくも無い部分すらあるのだ。愚痴っただけで彼が怠け者という訳ではない。

 

だからこそ…必死に力を集めても集まらない状況に苦心して父は…

 

振り返り、頭を横に振る。

過ちで咎なのだ、今更振り返ってどうなるものでもない。

 

「気分転換でもしておけ。」

 

慰めのつもりか、備え付けのモニターのチャンネルを弄る局員。

やたら明るく装飾が施された、いかにもな番組が映し出される。

 

タイトルは…『おしかん!世界の犯罪と管理局!その現状と内情に迫る!!』

 

おしえて管理世界の略称らしい生放送番組で、管理世界での流行りや知っておくと便利な話などを取り上げるらしい。

調査中とか言って発表もまばらなヴァンデインの一件なども含めて世間に広い騒ぎが起きている昨今丁度いい題材で

 

 

 

『本日の特別ゲスト!レジアス=ゲイズさんです!!』

「なばっ!?」

 

 

 

唐突に聞こえてきた、犯罪集団に連れられ行方不明の筈の父の名前に、私は読んでいた記事を叩きつけるように捨ててモニターにかじりついた。

 

 

 

Side~カート=グレンデル

 

 

 

出撃連中が出払った後の艦内で、暇なメンバーは揃って休憩室でくつろいでいた。

 

「しっかしよぉ…何で生放送のバラエティなんだ?」

 

モニターに映し出されたおっさんの姿に軽く笑いながら駄菓子を摘む。

そんな俺の横でモニターを眺めているシュテルが相変わらずの硬い表情で淡々と告げる。

 

「一応根回しもしてあります。強制的に放送を中止される事は無いでしょうし、バラエティ番組の放送を無理矢理止めればその直前の発言が本当だと自分達から証明するようなものですから、コレで管理局に放送をとめられる事は無いでしょう。」

「あれだけ騒がしい所で客もいっから狙撃役が観客にまぎれてりゃ護衛も糞もねぇ気がすっけどな。」

 

傍らで見ていたマリーヤが狙撃手として会場を見る。

生放送のステージには、当然番組がチケットを売っぱらって集めた観客もいる。

武具の類が無くたってあんなおっさん一人殺すだけなら出来る奴は余裕でごろごろいるだろう。

 

「備えはしていますし、仕掛けてきたら仕掛けた者を捕らえるまでです。」

「おっさんが命がけってとこ以外は問題ない訳だ。」

 

真相報道みてーな重たい真面目な番組で下手なこと喋る奴なんか出しておけねぇし、バラエティの方が見てる人間が多い分散らしやすい。

 

ただ…

 

『いや、すさまじくやせましたね!狸と電柱位違いますよ!』

『やめろや!』

『ははは…』

 

バラエティと言う特製上出てきた芸人に弄られ、ボケに突っ込んでいる様を見て愛想笑いをしてるおっさんだが…超似合わねぇ。

 

 

作戦云々じゃねーとこで失敗なんじゃねーかこれ?

 

 

事前に仕込まれたんだろうがとにかく似合わねぇおっさんの映像を眺めながら、俺は肩を竦め

 

 

 

警報が鳴った。

 

 

 

待てよ?そーいやこの艦…

 

『無登録流用戦艦アースラ!止まりなさい!時空管理局です!』

 

管理局戦艦からの通信なのか、艦内にその内容がそのまま流される。

届けも出してないだろう戦艦乗り回して、辺境ならいざ知らず管理世界近辺の次元空間をあちこち動き回ってりゃそりゃ捕捉されるに決まってる。

 

 

 

…決まってる?

 

 

 

『うむ!仕事熱心で何よりだ!断る!!』

 

今現在、テロリストが関わってるらしい違法施設ぶっ壊したりしてる所だが、地方の事件と違法次元航行艦の活動、管理局がどっちをとめるのに人手を裂くかっつったらそりゃ…

 

『聞いた通りだ!おそらく付近の海の部隊がいくらか集まってくる!適当に数集めてから無人世界に出現!対艦戦闘で集めた局の戦艦をしばらく動けなくする!敵の数は多いだろうが艦だけ止めてこっちが逃げればそれで追えなく出来るから気張れ!!』

「確信犯かよっ!!!」

 

思わず叫んだ。

結構な大事件だろうに主要メンバー残すのに疑問がねーでもなかったが、俺等の見張りと思って納得してた。

 

事実判明してみりゃ敵『艦隊』相手とか、待機組一番キツイんじゃねーのかコレ!?

 

 

『出るなら非殺傷は徹底!出ない奴は、艦が揺れるから気をつけろ!以上!』

 

 

一方的に艦内放送を終わらせる王様に、俺は頭を掻いた。

あーあー滅茶苦茶だな全くこんちくしょう!どの道空戦できなきゃ出れねーけど、それを理由に放っといても潜入されたら一緒か。

 

「マリーヤ、出入り口で艦載機銃役頼む。配置は王様に聞いとけ。」

「完っ全に名指しかよっ!ついてねぇ!ぜってぇついてねぇっ!」

 

ぼやくマリーヤだったが、敵の艦載砲撃ってこの旧型が落ちたら終わりの俺等だって落ち着いてはいられなかった。

 

 

 

Side~月村忍

 

 

 

いやぁ…遊んでるわけじゃないのは分かってるんだけど…

 

「気持ちいいわねコレも。」

『あ、あの…忍さん…無敵ではないので…』

「分かってますよ…っと!」

 

ユーリを繋いでエグザミアの力で強化されているアースラの出力は、局最新の戦艦をわずかに上回る。

アルカンシェルクラスだと消滅させられる可能性もあるユーリの力を借りて、防御や出力を強化している以上、『桁外れ』までの差はつけられないのだ。

 

この僅かに上回ったのを操作しながら主砲を避けたり副砲に耐えて貰ったりするのが、なんとなくエースパイロットっぽい感じでいい。

コントローラーで操作するなんて仕様にしてあるからゲームっぽいけど、墜ちたらホントに死んじゃうから油断は一切出来ない。

さすがに管理局の人も墜としには来てないけど…航行不能にされれば十分問題だ、下手なものは喰らえない。

 

「囲まれてたり先回りされても不味いからね…早めに近場の無人世界に出て、出撃して貰いましょ。イレイン、分かってる?」

『はいはい、殺したり四肢ふっとばしたりしない程度にしときゃいいんでしょ?』

 

武装を取り上げられた上で説教されたイレインは、ある程度の装備と空戦ユニットをつけられてご満悦といった感じだ。

自我を持つのは結構だけど、それと好き放題して上手くいく事は別なんだって事をそろそろ学習してくれないと、廃棄処分しないといけなくなる。

 

ノエルの同族って意味でも、速人君にこれ以上渋い顔させる原因を増やしたくないって意味でも我慢を覚えて欲しい所だ。

 

第14無人世界…確かフッケバインの襲撃があったとこだっけ。

今更ながら凶悪犯助けようとしてるのね…と、何処か他人事のように思いつつ、次元転移の準備を進める。

 

「ユーリ、出るなり砲撃連射しちゃってOK?」

『あ、はい。ディアーチェ達が楽になるのなら幾らでも。』

「それもそうね。」

 

ユーリの負担を気にして確認してみたものの、世界に出た後にディアーチェ達が複数の戦艦とそこにいる局の複数部隊を纏めて相手にするほうが絶対に大変だ。

無用な心配だったと今更ながらに思いながら、出現秒読みに入る。

 

次元転移を済ませ、そして…

 

 

 

「プチなのは!ファイヤー!!」

 

 

 

ユーリの出力に合わせて製作した、満場一致で決定した名前の副砲を連射。

 

 

転移してくるなり直撃した先頭の戦艦がいきなり墜落し始めた。

 

…向こうの心配忘れてた。

 

「あっちゃぁ…フィールド完っ全に抜いちゃってたわね…」

『ちょっと…強すぎたでしょうか?』

「まぁ爆散じゃなくて墜落っぽいから多分大丈夫…よね。あはは…」

 

こっちもだけど、相手方の心配もちゃんとしないと。

注意点を増やしつつ、私は再び操作に集中した。

 

 

 

Side~マリーヤ=ラネスカヤ

 

 

 

開幕直後から正義の味方のしでかす砲撃たぁ思えない副砲によって、いきなり管理局の戦艦が一つ落ちて行った。

 

とはいえ、追跡が一隻って訳もなく、後から二隻転移してくる。

 

って…

 

「オイこら!速度落ちてんぞ!?」

『落としてるの!近隣世界を思いっきり離れるなら撒けるけど、近場にいないと降ろした皆が拾えないし、その状況も分からなくなる。だから、私達を追跡する艦に航行不能になってもらう!』

「マジかよ…」

 

少数精鋭なのは分かってる。だが、その運用方法じゃねぇ。

敵中突破程度ならいざ知らず、敵殲滅とか普通少数側がやるこっちゃねぇ。普通奇襲離脱とかそういうのだろ?ウチ等だってラプターとゼロぶんどれって話を引き受けられたのはそういう計算があってのことだ。

 

 

敵『艦隊』を『数人』で相手にしようって正気じゃねぇっ!

 

 

おまけに殺すなと来たもんだ、無茶苦茶だ。

 

わらわら出てくる局の武装隊員ども。

 

 

「…まー、普通の連中は魔導殺し対策なんざ出来てねーだろうから…」

 

ガトリング用の弾帯を両手に、迫り来る局員の群を見やる。

 

 

 

ロックオンマーカー…マルチロック…

 

 

 

特務にとっつかまるまではフルロックでも二人分の急所を網羅するのが手一杯だったが、特務のガンナー所かゼロの坊主ですらそんな規模を余裕で上回ってやがった。

 

だからってこの短期間で桁外れに強化できるわけもねぇが…っ!

 

 

 

「使い方次第でどうにでもならぁなあぁぁっ!!!!」

 

 

 

射出の度ロックを切り替えて、次から次へと繋いでいく。

当然、制御はこっちの方が大変だが…言ってられねぇ。

 

 

 

「おおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 

 

機銃みたいな細かい武装まで操作して対人迎撃で死人出さないのが難しいらしく、艦載弾丸をごっそり任された為、弾切れはほぼ気にせず撃ちまくる。

 

が…さすがに頭が追いつかなくなって来た上、とりあえず飛んできてたのは大体怪我人に変えられたので一息吐く事にする。撃ちっぱなしでも弾切れっし。

 

 

「ご苦労、とりあえずこの二隻は艦を潰せば終わりだな。」

「とりあえずって…」

 

事も無げに言う声が背後から聞こえて振り返ると、ディアーチェがあたしを抜いて飛び立っていった。

 

艦の後方で魔法陣を展開するディアーチェ。

そして…

 

 

 

「とりあえず墜ちておけ!エクスカリバー!!!」

 

 

 

黒の光が放たれ、戦艦に着弾。ただの一撃で艦載障壁を抜いたソレは戦艦のエンジンを破壊して沈めた。

ゆっくり下降していく艦に目もくれず、残りの一つに向かって再度魔法を展開するディアーチェ。

 

 

副砲とはいえ艦載砲撃と同じ威力をあっさり出すって、マジで化物ばっかなのな…

 

 

呆れつつ、残った一隻に向かって放たれた光が着弾するのを呆然と眺め…

 

 

 

 

途中で炸裂した。

 

 

 

 

「…銃弾の準備をしておけ、どうやら敵も大物が来たらしい。」

「了解。」

 

命令すんな、とか言いたかったが、相手が王様ではしょうもない。

それに…そんなアホなやり取りしてる余裕はなさそうだった。

 

 

 

魔力の残滓が晴れると、局の戦艦を守ったOAシリーズ…ゲンブが、此方を見ながら微笑んでいた。

 

 

 

Side~ディアーチェ

 

 

 

管理局の戦艦から出撃してきたゲンブを睨みつける。

戦艦でも落とせるんだが、やはりあっさり受けるか。

 

「何故貴様が其処にいる?」

「悪党集団に生み出され使われていた所をランド少将に救出され、更生する気があった為、嘱託として此方に配属されました。」

 

書いて来たように自分の境遇をぺらぺら喋るゲンブ。

…虚言も大概にしろ、昨日ヴォルフラム襲って今日すぐ更生なんて幾ら管理局がざるでも認められるものか。

 

おそらくは、事前にグルだったんだろう。

局内での手続きも既に今言った形で済んでいた上で、局内の龍関係者の指示の元…多分今名前を出したランド少将の指示の元で昨日襲撃してきたんだろうな。

 

「投降願います。」

「寝ぼけるな。」

 

さも常識人のように投降を呼びかけてくるゲンブに対して吐き捨てるように言い返すと、ゲンブは肩を竦め…

 

「…だそうです、隊長。」

「分かった、貴女はアースラを。私が彼女を止めます。」

「了解。」

 

我を余所に飛行を続けるアースラを追うゲンブ。

だが、そっちを気にかけている場合ではなかった。

 

 

「リボン=サンフィード…か。」

 

 

いつの間にそんな位に就いたのか、かつて雫やヴィヴィオにボロ負けした細剣使いの小娘が、我の前で背中の剣に手をかけて構えていた。

 

ふん…弱くはない。とは言え…

 

「貴様程度が…っ!?」

 

いきなり斬り込まれ防御魔法で一撃目を防いだ直後、いきなり四撃の衝撃が走って防御が砕けた。

ま…てっ!?軽いが、手数だけなら二刀の速人と互角近かったぞ今!?

 

 

「砕っ!!!」

 

 

飛行による加速から空気を裂いて放たれた突きをどうにか回避し、杖を振り上げる。

 

「調子に乗るな!!」

 

単発で砲撃を放ってもかわされるだろうと多段誘導弾ほど放つ。が、リボンは視界に納めたそれらを片っ端から斬り払った。

 

 

コイツ…知らん間にどれだけ鍛えおった!?

 

 

「怪我をしたくなければ投降してください。」

「はっ…ぬかせ小兵が!!!」

 

もとより投降などと言う選択肢は無いのだが、こやつ相手だと大技を撃てん。

基本的に大技しか無いと言うのに…

 

強気で返したものの、厄介極まりなかった。

 

 

 

Side~レヴィ

 

 

 

ディアーチェが前衛に捕まって、ゲンブがアースラに向かって接近してくる。

 

ボクはいつも通りボク主体でシュテルと合体して、ゲンブを迎え撃つ為に飛び出した。

 

「行かせるもんかーっ!!」

 

バレルソードを振りかぶって斬りかかる。

彼女は左手に展開した氷の盾でボクの剣をあっさり受け流した。

 

 

「フリーレンフェッセルン。」

 

 

直後、ボクを巨大な氷が包み込んだ。

軽く家位のサイズの氷塊のど真ん中に置かれたボクは、重さでそのまま落下を始めた。

 

 

氷結捕縛魔法ってだけ…なん…だけ…ど…硬い…

 

 

「む…ぐ…でええぇぇぃっ!!!」

 

 

無理矢理に身体を動かして内側から氷を破って、バレルソードを構える。

 

「『EBディザスター!!』」

 

5連発の炎雷砲撃を、アースラの後を追おうとしていたゲンブに向かって放つ。

2発よけて残りを氷の盾で受け止めた彼女。

その間にボクは一気に距離をつめる。

 

「せえぃっ!」

「速い…」

 

高速移動で接近して剣を振り下ろす。

振り切ったけど、盾の硬い感触がしただけだった。

 

ピキンって小さな音がして、氷の盾に少し罅っぽい跡が出来たけど、それだけ。

 

くっそー…なんて硬いんだ…

 

 

「…成程、片手間で無視していくのは無理そうですね。」

 

罅の入った盾を見てからボクに視線をあわせるゲンブ。

睨むって感じじゃないけど、真剣に相手してくれる気にはなったみたいだ。

 

 

とりあえずアースラはコレで安心。

 

 

後は…勝てばいい!!

 

 

「時空管理局嘱託魔導師ゲンブ…貴女方を逮捕します。」

「紫天の騎士、レヴィアンドシュテル!この紫色の炎雷を恐れぬのならかかってこーい!!」

 

融合してて念話しか外に送れないシュテルに代わって、纏めて名乗って構えを取る。

 

マスターについていけないなりに、大事なものを、帰る場所を『守る』事を任された。

誰かを攻め滅ぼすつもりで戦っている訳じゃないマスターにとって、きっと一番大切な所を任されたんだ。

 

 

OAシリーズだろうと何だろうと、守りきってみせる!!!

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 




待機組…出番が無いとは言ってない(笑)。戦艦の修理ってどれくらいかかるんでしょうねぇ…(遠い目)。
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