なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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記録四十九・『戦艦待機組』~正義との戦い~

 

 

 

記録四十九・『戦艦待機組』~正義との戦い~

 

 

 

Side~ディアーチェ

 

 

 

全く…見事なものだ。

此方とて対高速戦闘用の策の一つや二つ用意してない訳でも無いのだが…

 

出がかりを潰そうと高速弾や誘導弾を放っても剣の一振りで掻き消して来るし、リングバインドも拘束前にあっさり斬ってくる。

 

そして、手先の速さでどうにもならないようにと思い砲撃を放てば…

 

「アロンダイト!!」

「ソニックムーブ!」

「ち…ぃっ!」

 

砲撃とすれ違うように高速移動魔法を行使してくるリボンが我の横から迫ってくる。

首狙いの横薙ぎを遠ざかってかわした所で突きに切り替え繋いでくる。

防御魔法で受け…っ!

 

「ええいっ!!!」

「っ…」

 

受けた瞬間に、先に障壁をあっさり破った連撃を振るおうとするのが見えた。

咄嗟にバリアバーストで無理矢理距離を取るが、向こうもソレを察知して爆発前に少し距離を離す。

 

く…っ、入局して出世したらしいが、あのまま競技者やっておればいい所行ったのではないのかこいつ…

 

「さすがに幾度も災害現場に現れて横槍を入れていっただけのことはありますね。」

 

我等の事も噂程度には知っているのか調べたかのか、横槍等と上から目線で語るリボンを、我は鼻で笑う。

 

「はっ!町の小物集団に捕まって襲われかけた小娘が随分大口を叩くようになったものだな。」

「お陰様で少しは大人になれましたから、貴女方も盗品で遊んでいないで平和に尽力してはどうでしょう?」

「断る。速人の下に集いし者は籠の鳥ではない。それゆえうぬのような勘違いする小物が出てくるのだが…一緒にするな。」

 

規則に縛られずにやれば上手く行く…なんて話ではなく、縛り無く動いても上手くやりきるための力を知恵を絞り集め磨き使いきっていると言う話。

それを勘違いするから、多少できるだけの愚かな子供が我等の真似をしたがるのだ。

 

「そうですか。」

 

短く応えたリボン。

それ以上言葉はいらんと見て我も杖を構え…

 

 

 

「スナイプシフト!」

「な…うおぉっ!?」

 

 

 

唐突に、射撃弾の雨が我に向かって降り注いだ。

弾幕の先を見れば、3人の魔導師が汎用デバイスを手に我に向かって射撃魔法を連射してきていた。

スナイプの名の通り結構な距離だが中々命中軌道に乗せてくる。

 

「ち…ぃっ!雑魚が!!」

 

砲撃で降り注ぐ弾幕ごと打ち抜こうとして…

 

 

目の前に、リボンの姿があった。

 

 

「ぐ…っ…」

「籠の鳥ではなく群の長なので、常套手段という事で。」

 

 

こやつから意識を外した一瞬、元々ソレを狙っていたのだろう。

少し申し訳なさそうなリボンに肩口を貫かれていた。

 

 

 

Side~レヴィ

 

 

 

「い…っけえぇぇっ!!」

 

紫天乃建御雷神で全力で飛び回る。

防御じゃ勝負にならない、攻撃力だって高密度魔力刃を受けたら下手をすると打ち負ける。

 

だったら当然…速度で勝負!!!

 

 

「斬っ…斬…斬斬斬斬ざぁんっ!!」

 

 

全面から斬撃で囲むように移動しては斬撃と、全力で無差別に思うまま繰り返す。

幾らリライヴをベースにしたOAシリーズって言ったってさすがについてこれないと思ったんだけど…

 

「ふ…っ…全く…せわしない…」

 

どこから斬りかかっても盾と片手剣で受け流される。

量産って訳でも無いんだろうけど、結構数いるのにどれだけ強いんだよもー!!

 

『貴女が分かりやすいので読んでいるんです、速度だけでついてきている訳ではないですよ。』

 

シュテルからのアドバイスに、ちょっと戸惑う。

読まれてるって言ってもなぁ…

 

『じゃあ変なことしたほうがいいの?』

『いえそのままで。逆に言えば読んでついていくのに手一杯なのです。』

『成程!』

 

それだけでボクにもさすがに分かった。

一回出来る事は十回できる、十回出来る事は百回できる…けど…

 

 

その間一回も失敗しないかどうかは…どうだろう?

 

 

ボクは思う様飛び回っているだけ、向こうが読んでついてきてるなら…

 

 

読み違えるまで飛ぶだけだ!!!

 

 

「い…っくぞおぉぉぉぉっ!!!」

「加速…しますか…っ!!」

 

 

ひたすらに連撃を繰り返す。

二剣に出来れば手数も増えるけど、ルシフェリオンの性能を射砲性能を残したまま融合させるためにバレルソードに絞ってる関係でそういう訳にもいかない。

 

一本にしておかないと多分壊されるし、ボクは大剣が気に入ってるからコレでいいけど。

 

 

ただ…いっくら同じ事繰り返せばいいって言ったって…

 

 

全力運転を繰り返し続けるって事がそもそも無茶な訳で。

 

「っ!!」

 

息が切れた。

そのタイミングでボクは距離を開け、バレルソードをゲンブに向ける。

 

『ブラストファイアー…フォースバースト!』

 

シュテルの制御によって放たれた四本の砲撃がゲンブを囲むように四方から向かう。

炎熱変換による砲撃だから氷の盾位…

 

 

とか思ったけど、四発全部受け止めても壊れなかった。

凄い盾だ。

 

でも、それでもまだ終わりじゃないっ!

 

 

「雷神・疾風脚!!!」

 

 

全力の飛行から、その勢いのまま魔力を込めた蹴りを放つ。

盾で受けたゲンブ。だけど、盾が壊れないとしても衝撃をとめた本人がその場に留まっていられるかどうかは話が別で…

 

よろけた所に向かって、ボクは追撃で剣を振り下ろした。

 

 

これこそコンボ!コレだけ入ればあの盾だって…

 

 

 

ゲンブの体が光を放つと同時に、いきなり高速で動いた。

 

あ、バーストモード!?

 

「いっ!?ぐ…」

「無理をすれば他にも破る手段はあったのですが、生憎貴女一人に消耗する訳には行かないので。」

『此方の消耗を待っていたという訳ですか…』

 

背後から首をつかまれて何も出来なくなる。

無理矢理引き剥がすって言っても、つかまれた首が凍りに包まれてる。

 

「局の仕事なので非殺傷にしておきます、少し眠っておいてください。」

 

直後、ボクは海中に向かって冷気を伴ったスパイラルバスターで吹っ飛ばされ、海に着くと共に海水ごと凍らされた。

 

 

 

Side~月村忍

 

 

 

敵艦を落とそうと出張って隊長格に細くされたディアーチェと、ソレを置き去りに接近してきたゲンブを引き受けてくれたレヴィとシュテルから少し離れ、私達は追撃部隊の相手をしていた。

 

戦艦から出る武装隊は甲板についたグレンデルのマリーヤちゃんとカート君が打ち落としにかかってくれていて、イレインが飛行ユニットを装備して近場で遊撃についてくれていた。

けれど、さすがに副砲のプチなのはでそうそう何度も墜ちてはくれないか、追撃してくる艦は今だ健在だった。

 

 

あ、追加で転移してきた。

 

 

二隻に増えた戦艦から速度を上げて逃げ回る。

 

 

「まいったわね…三人は大丈夫かしら…」

『じゃないです。』

 

一人呟いたつもりだったけれど、アースラと繋がっているユーリから返事が返ってきた。

三人との繋がりがあるユーリは、全容とまでは行かなくとも三人の状態を把握している。

 

『えっと…この座標に向かって、アレお願いします。』

「了解!」

 

送られてきた座標に照準を合わせる。

ちょい遠いけど…敵相手じゃないし、なんとかなるでしょ。

 

 

 

Side~ディアーチェ

 

 

 

「…だから貴様は小物なのだ。」

「何…っ!!」

 

密着状態のリボンに向かって、零距離砲撃を放つ。

些少は驚いたようだが、それでも当てたからと油断せずに咄嗟に直撃を回避して距離を取る。覇王のような相打ち狙いの強打者もいるから直撃を入れても油断しないよう癖をつけているのだろう。

 

距離を取ると同時に剣を引き抜かれ、肩から血が流れだすのを無視し、我はバーストモードとブラスターを展開。

 

 

「消し飛べえええぇぇっ!!!」

 

 

ひたすらに砲撃を連射。

遠巻きに射撃を放ってきていた雑魚を3発で片付け、残りの照準をリボンに向ける。

連射される砲撃を上手くかわすが、一定距離で炸裂するアロンダイトの連射によって空間ごと潰し、だんだん回避する空間そのものを減らして動きを封じていく。

 

そして…

 

 

 

「ナイツオブラウンド!!!」

 

 

 

13撃目の砲撃の直撃によって、悲鳴すら爆音により聞こえずリボンの姿は光に完全に飲まれた。

直撃を確認したところで強化の全てを切る。

 

 

「ま…だだっ!!」

 

 

耐える手段でもあったのか、それともただひたすらに防御で耐えたのか、光の中から飛び出してくるリボン。

 

「はあっ!」

 

渾身の一撃だったのだろう。

泳ぐ身体を無視して振りぬかれた一撃は、防護服ごと我の身体を斜めに裂く。

 

が…無視して、剣を振り抜いた結果向けられた頭を右手で鷲づかみにする。

 

「っ…」

「貴様、我等を倒すのに躊躇いがあるくせに戦っているだろう?」

「なっ…そんな事は…」

「『犯罪者は止める』の一言で、無理矢理納得しておらぬか?」

 

頭を掴んで顔を逸らせないように持ち上げ、目と目を合わせて問いかける。

案の定と言うべきか、その瞳は揺らいでいた。

 

速人をヒーローと見て追いかけていたと聞いている。

罪状に関して情報が入った所で、我等を悪と納得できるほど単純ではなかったのだろう。

 

聞き心地のいい正義に盲目になるよりはマシかも知れんが…それで部下を引きつれ、墜とされていては部下も報われまい。

 

「自分の正義だけで戦えまい、それが籠の鳥の限界だ。貴様の言う『群』の仲間を巻き添えにしたくなければ慣れることだ…なっ!」

「あ!ぐっ…」

 

右手で頭を掴んだままで左拳で肩を殴りつける。

我も近接型ではないので折れるような事は無いが、完全でなくとも腕に痺れが残せればこやつメインの手数は出せなくなる。

 

剣を握る手が軽く痙攣しているのを確認して、我は掴んでいた頭を放した。

 

 

「墜ちた連中を拾ってダメージを抜いて、まだ追ってきたければ来るがいい。相手をしよう。」

 

 

言うだけを言って、我はアースラを追って飛び立った。

 

 

 

…割と重傷だ、さすがにふらつく。

肩は貫通、袈裟斬りを直撃した身体からも出血が続いている。

 

ともあれ、言ってはいられん。

おそらく復帰してくるだろう優秀な局のエースに備えるためにも、早めにアースラに合流せねば。

 

 

 

Side~シュテル

 

 

 

さすがに全力で飛ばしすぎ、それを狙っていたかのようにバーストモード。

フルドライブによる連続攻撃を盾だけで凌いでいたあたりから消耗を避けていたのは察しがついていた。

 

 

 

…が、察しがついていて思いっきりその通りに動いたのには当然訳がある。

 

 

 

氷に包まれた身体に、力の塊が着弾する。

 

ユーリの力を射出する形で遠距離に届けるエナジーブラスター。

魔導師へのディバイドエナジーにも使えるが、基本的に私達紫天の騎士用の回復手段である。

ただ攻撃するだけでなく、コレにも砲身として使うため、プチなのはの名を冠するにふさわしいと相なったのだ。

 

エネルギーに覆われ、身を包む氷が罅割れていき…

 

 

 

「ふ…っ…かああぁぁつっ!!!」

 

 

 

ひび割れた氷の拘束を存在しないかのごとく吹き飛ばしたレヴィは、アースラに向かったゲンブの背に一気に迫る。

 

「何…」

「光翼連斬!!!」

 

誘導性を持つ円刃を2発続けて左右に放つレヴィ。

両側から迫ってくる魔力の刃に対して、ゲンブは片手剣を振るうことで二つをかき消した。

 

『ブラストファイアー!』

 

ゲンブが円刃を消している間に砲撃の体勢を取ったレヴィに合わせて、炎熱砲撃を放つ。

あいも変わらず硬い盾で受けたゲンブは、しかし苦い表情で私達を見ていた。

 

『予定通りです。』

「へっ?」

 

さすがに、私達とて全力戦闘をぶっ通してOAシリーズの一人を倒しきれるとまでは思っていなかった。

 

けれど、彼女は強いが有限の身。

ただの魔導師よりかなり簡単に補給を受けられる私達が全快して、フルドライブまで相手に凌いでいた今のゲンブがまだ私達を上回る力を持つかといえば…

 

それに、マスターのように技量で強い訳でなく、リライヴの遺伝子と言うスペックに融合、変換資質による強化を追加しているのが彼女達の強み。

 

魔力、出力で互角なら、遅れをとる理由は少なくなる。

 

『ここで決めますよ、彼女を放っておいていい理由もありません。』

「オッケー!」

「そうそう簡単には行きませんよ!」

 

距離を詰めようとした瞬間、ゲンブがシューティングスターを放つ。

何気に非殺傷設定になっている弾幕に対し、私が防御魔法を張る。

 

 

針のような円錐状の障壁。

 

 

対弾幕用に編み上げた避弾経始防御。

一切止める気が無いソレは、傘に降り注ぐ雨の如く直撃だけを外して素通りしていく。

 

「厄介な魔法に対策の一つもできていないとでも思ったか!」

「っ…」

 

剣を振り上げ接近、盾で受けようとしたゲンブに対して、レヴィは剣から手放した左手を伸ばしてゲンブの盾を掴む。

 

 

あくまでも『破る』気らしい。レヴィらしいというか何と言うか…

 

 

「『真・爆雷掌!!!』」

 

 

零距離で打ち込んだ爆雷が、ゲンブの無双の盾に直撃してすさまじい音を響き渡らせる。

が、消耗させられているといってもあのリライヴの魔力を防御に特化した彼女が持つ盾。

そう簡単には崩せない。

 

 

なら…『そう簡単』で、なければいい。

 

 

レヴィの発想は単純だった。

 

 

「雷神・疾風脚!!」

「な…っ!」

 

必殺技から必殺技へ、マスターから教わったコンボの形で、防御が崩れるまで攻撃を叩き込む。

防いではいるものの姿勢を崩したゲンブ、その盾に向かって迷うことなく魔力を込めた突進蹴りを繋ぐレヴィ。

一撃ずつでも並の相手ならKO可能な強攻撃のコンビネーション。

盾を構える腕ごとめり込ませるかのような衝突音がして…

 

 

「まだ…だあっ!!!」

 

 

振りかぶっておいたバレルソードを、全力で打ち下ろすレヴィ。

当てにいけただろうにあくまでも盾を壊したいらしいレヴィの一閃は…

 

 

今度こそゲンブの氷の盾を破壊した。

 

 

その瞬間を狙って私はバインドを展開、ゲンブを拘束する。

レヴィだけが動いていても魔法の準備は私が別で出来る。融合してはいてもあくまで二人掛かりなのだ。

 

「トドメはシュテルに譲るっ!」

『どうも。』

 

少しだけ距離を取って、拘束にかかったゲンブに向けてバレルソードを構えるレヴィ。

バインドを破っても避け切れないようルシフェリオンブレイカーを撃つ…のは愚作。

彼女にはまだ高位の防御技能がある。

 

 

だから…

 

 

「『EBディザスター!!!』」

 

 

ブレイカーほど時間を食わない五連砲撃を、彼女が動けないうちに直撃させる事にした。

盾が破壊されているため、再構成までの間を与えなければ直撃する事になる。

 

フィールドだけでは…

 

「っ…ぐ…」

 

凌げないだろうと踏んでいたが、五発もまともに入ったのに意識を切らす事なく浮いていた。さすがOAシリーズと言うべきか。

とは言え、ダメージはかなり通ったのか、デバイスを握ってふらついている。

 

 

 

「だったらコレでっ!!!」

 

 

 

完全に意識を断ち切るべく、再度剣を構えて接近を図るレヴィ。

 

だが…

 

 

直後、黒い光が私達とゲンブの間を貫いていった。

 

 

咄嗟に急停止するレヴィ。

私達と彼女の戦いに使われた魔法に比べれば、あまりに普通の地味な砲撃魔法。

しかし、そんなものを放つ黒い魔力光に若干の嫌な予感を感じる。

 

 

「ようやく捕捉できたけど…これは一体どういう状況なんでしょう?」

「話は捕らえてからでいい、いい加減大人しくさせるぞ。」

 

 

予感などと言う必要もまるで無く、管理局の黒き断罪の槍…フレア=ライト一等空尉が、最近共に動いているらしいルーテシアと並んで現れた。

 

 

 

最悪だった。

身内や知り合い、事情があると言った所で全く通じないだろう相手。

 

おそらくは…も、何もない。

彼は今言った通り、『話は捕らえてからでいい』と全力で来る事だろう。何を言っても。

 

その実力は、十二分に知っている。

消耗させてさえしまえば技量や策は十分通じるOAシリーズと異なり、いついかなる状況だろうと接近を許せばほぼ負ける。

 

戦艦に通す訳にも、止めようと進路を塞ぐ訳にも行かない、全てを貫く槍。

 

マスターとは全く別の意味で大馬鹿の来襲に、私は苦い気分を覚えた。

ええ全く本当に。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 




局員は追わなければならず、アースラは捕まるわけに行かず、どっちも平和も何も害する気が無く…現在戦艦1隻墜落、2隻分武装隊員負傷etc…
シグナム対セイリュウが可愛く見える無駄骨(汗)。
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