なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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記録五十・『戦艦待機組』~黒槍からの逃亡~

 

 

 

記録五十・『戦艦待機組』~黒槍からの逃亡~

 

 

 

 

Side~フレア=ライト

 

 

 

 

局の制服に身を包んだリライヴのクローン体を相手に戦っているレヴィ。

その辺りの組み合わせを見た限りで、なんとなく程度には事情か状況か、察する所はあった。

この状況で速人が局と素直に協力出来る訳も無いだろう。

 

 

が…知った事か。

 

 

誘拐事件関連で既にどれだけ暗に被害者が出ているかも分からず、何かしら情報を持った上で抱えていると言うだけで、十二分に捕縛する理由になる。

まして、今となっては雫がヴィヴィオとアインハルトを巻き込んでしまっているのだ。

放置する理由がない。

 

 

「ルーテシア。アースラへ先行、停止しなければ海の部隊に協力して止めてくれ。私はこの二人を捕縛してから行く。」

「え…あ…はい。」

 

私とレヴィと青髪のリライヴクローンを見比べるようにして躊躇うルーテシアだったが、結局現状放置出来るものでもないと飛び立って行った。

 

 

「逃が…あ、うん。」

 

 

咄嗟にルーテシアを追おうとしたレヴィだったが、融合中のシュテルに何か言われたらしく私を見る。

 

シュテルはさすがに妥当だな。

コレで余所見するようなら一閃で墜とせたが、そうも行かんか。

 

「お前は墜ちた艦にて治療を受けて来い。」

「え?で、ですが…」

「嘱託だろう?大人しく聞いておけ。」

 

ただでさえややこしい事態、厄介ごとを払う意味でも謎の氷クローンに下がるよう指示する。

部隊が違うため他に指示でも出ていれば無視される可能性もあったが、ダメージを負った状態で下がれというのは大概妥当な指示ではある為、不満そうではあったものの大人しく下がって行った。

 

 

横目にそれを見送っていると、レヴィの体が光り、紫色の光が空色と赤色に分かれ、シュテルと二人に分離した。

 

ポーカーフェイスではあるが、少し苛立っているようにも見える表情で私を見るシュテル。

 

「交渉の余地はなさそうですね、愚直と言うべきでしょうか…」

「愚かなほど変わらぬのは速人も同じだろう?」

「嫌に返す言葉の浮かばない事を言わないでください。」

 

一緒にするなとは言いたいが、否定もできないのだろうシュテルが分かりやすく不快を示す。

レヴィも浮かない表情で私を見据えていた。

 

家に寄って試合をし、食卓を囲む事もあった身で、何も思わないではないが、放っておいても黙って動き続けるだけならば…

 

 

「無辜の民を護る為、全てを暴いて片付ける。…いい加減暗躍してるな。」

「光に影は消しきれませんよ、だから彼女が局にいるんです。真面目に暗躍させて貰います。」

 

 

一声と共に槍を構える私を前に、変換された炎と雷が舞い上がった。

 

 

Side~月村忍

 

 

 

厄介極まり無い状況に拍車がかかる。

ただでさえ戦艦二隻と撃ち合いながら鬼ごっこしてるって言うのに、ルーテシアちゃんが現れた。

 

フツーの武装局員さんなら多少優秀程度では感染者であるマリーヤちゃんとカート君の迎撃射撃にすらろくに耐え切れないんだけど…

 

 

「距離あるうちはあの娘には当たんないわねぇ…さすがルーちゃん。」

『るせぇ畜生!』

 

馬鹿にした訳じゃないんだけど、あっさり避けられまくっているのに狙撃手としてプライドがあるのか、マリーヤちゃんが怒ってくる。

 

しっかし…JSの時だってゆりかご撃墜に十隻も出なかったのに、旧艦魔改造しただけのアースラに、墜としたのも含めて既に三…あ、また来た。

コレで四隻。近隣に報告して近場の部隊かき集めてるんだろうけど、ここまでするのは高町速人をフリーにしておくことをゆりかご並に警戒しているのか…

 

 

…狙いがユーリなのか。

 

 

施設壊滅に向かってCAだの警備だのと戦う予定の皆も、攻略できたとして無事…『何事も無く』って訳にはいかないだろうし、回収するためには出来るだけ近隣世界から離れたくないし、そういう予定ではいるんだけど…

 

こりゃ最悪振り切る方向で考えたほうがいいかも。

 

『アースラの皆さん、ちょっと気持ちは分からなくもないんですけど、止まってくれませんか?このまま好き放題飛ばれてるとフォローも出来なくなりかねないですし。』

「ごめーん!ルーテシアちゃんも見ての通りで、管理局危なくて!後で話しにはちゃんと代表が行くから見逃して!!」

『アレを見ちゃうと考え物なんですけど…その辺の詳細も聞きたいんでやっぱり却下の方向で。』

 

ですよねー!

とか叫びたくなったものの、直後すっ飛んできた砲撃を避けるのに必死でそんな余裕はなかった。

まいったわね…それに彼女は…

 

 

『はっ!魔導師の一人や二人なんだってんだい!あたしが…あうぁ!!』

 

 

問題点である召喚師…『味方を多種多様に呼べる人』だって事まで思考した所で、丁度イレインが黒い影に襲われていた。

 

ガリュー…だっけ?

あんまり詳しく知ってる訳じゃないけど、確か局の若い子達とは互角の実力だって聞いた気がする。

 

それってフッケバインの人とも戦闘になるレベルって事だろうか?そりゃすっごい強いわね…イレイン大丈夫かしら。

 

 

 

なんて、言ってる場合じゃなかった。

 

 

 

ガリューに庇われながら、ルーテシアちゃんが巨大な魔法陣を展開していた。

 

 

 

『白天王!!!』

「ってちょっと待ったぁっ!!!」

 

 

 

思わず叫ばざるをえない白い巨躯が出現。

腹部に光が収束されていく。

 

「防げる?」

『だ、大丈夫ですっ!』

 

一応ユーリに防御可能か確認して、避けられるか試してみる。

 

が…其処はさすがの腕前と言うべきか、防御に直撃した。

他の三隻の艦砲射撃を避けながら下から放たれる光まで避けきるのは少々無理があった。

 

っ…揺れるわね…これ、下手したら敵艦載砲よりこっちの方が威力高いんじゃないの?

 

『あの、私が出ましょうか?』

「それは…ちょっと不味い。」

 

ユーリからの提案は、ある意味美味しかったけど素直に頷けないものだった。

確かに、艦からユーリが離れてても大丈夫なように蓄積もされてはいる。

フルパワーで攻撃仕掛けるんで無く飛行と防御で逃げ回るなら、ユーリが船落としてくるまで待つのは簡単だ。

 

でも…そっちじゃなくて、多分なんにも知らない一般局員にまでユーリの姿と力をさらすのはあまりにも問題だ。

局の戦艦が集まってる狙いがユーリなら、尚更。

 

そんな事を考えている間に、白天王とガリューに周囲を任せてアースラに接近してくるルーテシアちゃん。

ノエルまで艦内から離したくはないし、離脱…

 

 

 

唐突に、白天王が倒れた。

 

 

 

少しばかり距離はあったけど、あの巨体が倒れる姿はさすがに目立つ。

映像に写るのは、その巨躯に比べたら小さな人影。

 

 

『殺さなければいいのだな?敵艦と巨躯は任せろ。』

「へ、え、あ、はい…」

 

 

心臓を破壊され生死の境をさまよっている筈のドゥビルからの通信に、状況整理が間に合わないまま私はしどろもどろに返事を返すことしか出来なかった。

 

 

 

Side~ルーテシア=アルピーノ

 

 

 

感染者…まともに相対するのはこれが初めてって事になるけど、特務六課から情報としては聞いている。

とは言え、さすがに一撃で白天王をひっくり返してくれるとは思わなかった。

大斧を頭に受けたみたいで、人が使う武器のサイズとはいえその力も含めて結構な大怪我だ。

 

下がって貰おうかとも思ったけれど、無理して立ち上がった白天王はその巨大な腕をぶん回す。

硬そうな鎧に身を包んでいる感染者を殴りつける白天王。

けれど、そんな強攻撃をまともに受けておきながら吹っ飛ばされるだけで体勢を立て直す斧使い。

…強度的にもアレは私が相手にするのはきつそうね、少し頑張ってもらうしかないか。

 

あの斧素通りさせたら多分今アースラを追ってる三隻、一瞬で墜とされるだろう。

オーバーSやそれと戦える人間なんて、それだけで動く戦艦みたいなものなんだから。

 

 

だったら…ここで打つ手は決まってる。

 

 

私が潜入してアースラのエンジンを破壊する。

外から小突いてもいいんだけど…何かさっきから見てると、多少の破損、自動修復されてる。

外からエンジン表面小突くだけじゃ、ちょっと遅くなるだけで直りかねない。

 

「ちぃ…っ!くんなこのガキ!」

「来るなって言われていかないわけにも行かないのよ!」

 

甲板から撃ってくる、確かグレンデルとか言ってた感染者の小者二人。

とは言え、近づけば魔法にも影響が出るし…

 

 

ちょっとアレだけど、インゼクトを射出した。

 

 

射撃のように使えるけれど、召還生物。

魔法、魔力の分断消滅で消せない生命体弾幕。

 

「いっ!?」

「生きてんじゃねぇかオイ!うごああぁぁ!!!」

 

甲板で迎撃を行っていた二人をインゼクトで黙らせ接近。

 

「けっ…魔導師が召還無しでどうにかなると」

「それがなるのよね!」

 

ディバイダーをこっちに向ける男の鳩尾に、掌底を叩き込み…

 

 

魔力放出。

 

 

「ごぶぁ!?」

 

 

魔力の結合を分断する相手に使ってきた私の十八番。

ドクターのところにいたときからガジェットと一緒だったし、結合分断を魔法が効かないと勘違いしている相手には素通り同然で面白いように入る。油断大敵って奴ね。

 

そして…

 

「…あ?あああぁぁぁ!?」

「っ…オイアホ首領!!」

 

何発かインゼクトを直撃していた女の子の方がこっちの状況に気付くと同時に、ソニックムーブで彼女の背後をとって、同じく魔力放出。

 

「が…っ!あ、て、てめえぇぇぇ!!」

「ハイ、二名様ご退場!さてと、中に…っ!」

 

内部に侵入しようとした瞬間、振るわれた一閃の剣を回避。

あら…まいったわね…近接の娘もいたのか。

 

「首領と…ついでに狙撃バカの分、倍返しで追い返す!」

「上等!公務執行妨害で全員逮捕よ逮捕!」

 

出てくるのが普通に犯罪者上がりの感染者の子ばっかりだからか分からないけど、気が進まなかったのも吹っ切れてきた。

 

とりあえず話はアースラ止めてからだ!

 

 

 

Side~フレア=ライト

 

 

 

分離して二人掛かりになったのは、さすがシュテルの采配と言えた。

どの道私の一撃が直撃すれば、融合していようが防げず二人纏めて墜ちる事になるし…

 

「パイロシューター!」

「光翼斬!」

 

誘導弾と円刃が迫る中、とりあえず円刃を斬り払って誘導弾を避けつつ、避け切れない分を槍で打ち消す。

 

普通牽制に使う攻撃を二人がかりで乱射されては、まともに接近できないどころかいつまでも喰らわずにいるのは至難の業だ。

 

「ブレイクブースト!!」

 

射撃準備に入ったシュテルに向かって砲撃を纏った突進。

放たれた弾を打ち消しながら無理矢理距離を詰める。

 

間合いに入った。このまま…

 

「電刃衝!」

 

止まったタイミングで単発速射の弾を放つレヴィ。

回避しつつ突きの体勢をとったが、シュテルが高速移動魔法を使用する。

 

 

何処に行くかと思ったら、ただ真っ直ぐに距離を取った。

 

 

あくまでも近接戦闘を行わないよう徹底するらしい。

いい手だが…面倒だ。

 

「っ…」

 

私はレヴィをほぼ無視してシュテルに詰めよる事にした。

砲撃以外は槍の一払いで掻き消せるし、速度はシュテルの方が遅い。

撃ちながらでも逃げ続けるだけでも、どっちにしても限界がある。

 

設置型のバインドを置いていったシュテルだが、私は身体を拘束されると同時にそれを踏み込みと共に引きちぎった。

 

並以上の拘束なら、踏み込みや槍の一振りで拘束状態を断ち切る事が出来る。この程度はスバルやノーヴェですら出来る事…

 

 

「捕らえたっ!」

 

 

瞬間、真横に移動してきていたレヴィが私の左腕を掴む。

右手にて槍を手にしている事を確認した上で、一番安全と思われる位置を狙って入ったのだろう。

あれだけ接近を避けた後の死角入りだ、悪くない。

 

「これでっ!!!」

 

私が左腕を引き剥がした瞬間、レヴィは…

 

 

 

 

高速移動魔法で海中へ突っ込んでいった。

 

 

 

 

停止制御無しの高速移動で、無理矢理同行させた相手にも一撃で大ダメージを与える無茶な魔法攻撃だが、その存在を知った上で魔法の発動タイミングが分かればこの程度は容易い。

 

「初めからレヴィが痺れを切らすのを狙ってましたね…」

「子供と遊んでいる暇は無い。」

「貴方は…」

 

レヴィの捨て身の攻撃を無関心で捌いたからか苛立ちを見せるシュテル。

 

通用する相手には通用する魔法ではあるし、危険だと思うのなら初めからやらせなければいい。

私が気にする理由はない。

 

 

「アロンダイト!」

 

 

後はシュテルを…と思った所で後方からの魔力砲撃。

分かりやすい高出力の反応に、さすがに回避に入る。

 

後方を見れば、右肩に穴が開いた状態でだらだらと血を流しながらディアーチェが飛んできた。

砲撃は全身に反動が来るだろうに無茶をする。

 

「ふん…遊んでいる暇が無いのは此方のほうだ大馬鹿者め。奴を見てまだ我等を捕らえようとするか。」

「局の問題は局の問題で片付ける。今間違いないのは、お前達が事件に関わっている犯罪者と言う事だ。」

 

事件を止めに事件を起こしている、と言う点ではすぐに止めに入る事を躊躇うものもいるかもしれないが、だからといってこんなものを無許可で使用したり各地で無秩序に施設破壊をされてはたまらない。

お陰で此方も情報が無い部分もあるのだ、局全部が信用できないなりに私やカリム騎士程度には話を通せばいいものを。

 

 

「貴様相手に加減はしていられん…コレで終わらせて貰うぞ!!」

 

 

肩に深い傷を負った状態で魔力も大分消費している様相だが、そんな有様でいきなりブラスターとバーストモードの同時展開。

さすがにこれは回避しきらなければ、私でも厳しいものがある。

幸い近場にいるシュテルを巻き込めないだろう事を利用して回避行動を取るしか…

 

 

 

「ディザスター…ヒート!!!」

「っ!」

 

 

シュテルが先に、砲撃魔法を仕掛けてきた。

三連続の爆熱砲撃。

私は槍に魔力を集中させ、その全てを槍を振るう事で掻き消そうと試みる。

断ち斬るまでは行ったが、余波の全てが消える訳も無く、炎熱に飲み込まれる。

 

ち…っ!今撃たれたら不味いか?

 

三連砲撃を凌いでディアーチェに視線を移す。

 

 

その足元に魔法陣が展開されていた。

 

 

 

攻撃…じゃない?

 

 

「もう一度言う、『貴様と遊んでいる暇は無い』。」

 

 

皮肉げに笑みを見せたディアーチェが魔法を発動させた直後、その姿が消えた。

見渡せばシュテルもおらず、下方の海にいるはずのレヴィの反応も何も無い。

 

 

…強化を重ねて転移魔法とは。

 

 

夜天の書同様ラーニングを済ませておけば多種多様な魔法を自分流に使い放題である紫天の書。しかしまさか、それを使ってやる事が、『出力強化による高速転移魔法』とはな。

 

 

「…やられたか。」

 

 

いいように時間を稼がれた。

さすがに転移魔法は非常用に備えていたのだろうが、ここまで予定通りなら恐ろしい話だ。

 

ともあれ、敵に感心している暇も無い。

誰もいないならいないでアースラに向かうだけだ。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 




いつでも使える代物(魔法)を数多く持てるって、その性能が高いものでなくても策士なら使いようでかなり便利ですが…そんな夢のような書シリーズの多い事(苦笑)。
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