記録五十一・『戦艦待機組』~誰が為の…~
Side~ディアーチェ
移動中の戦艦狙いの転移、しかもそれなりに無茶をしたため、若干墜落気味に転がり込む。
「いたたたたぁ…ディアーチェ下手ぁ…」
「やかましいっ…あのフレア相手に丁寧に座標指定なぞやっていられるか…」
ユーリが接続している動力部で三人揃って潰れるように倒れていると、ユーリが心配そうに我等を見ていた。
「あの…大丈夫ですか?」
「すまんが全員補給を頼む。フレアの奴が追いつく前に片をつけたい。」
「あ、は、はいっ。」
近場にいれば、わざわざ射出機構など使わなくとも力を完全回復させられる。
システム…肉体的に完全回復するにはそれだけでは足りぬが、とは言え特殊な壊され方をしていなければ補給と同時に怪我も修復可能だ。
「しかし、片付けると言っても…」
「船だけ潰して転移すれば、次元空間で戦艦を追い回すような真似する者などおらん。船だけなら一撃で片がつく。」
「…できるなら、彼等も行動不能程度には持ち込んでおきたいものですが。」
艦隊を一撃で止めるという算段に問題はないらしいが、それでもシュテルには懸念があるようだった。
彼等…おそらくは、フレア達とOAシリーズのゲンブだろう。
オーバーSにとっては単独の次元移動技術も時間の差こそあれど普通に使用可能なものだ。
直接戦闘に傾倒しているフレアがどうなのかまでは知らんが、ルーテシアとゲンブは放っておけば船を潰しても追跡してきかねない。
「確かに分からんでもない。が…選んでおれるか?」
我は外の様子を映し出すモニターを指差す。
海の戦艦三隻と、それらが連れていた局の撃ち漏らしの50人規模の部隊二つが接近中。
甲板ではルーテシアとクインが交戦中で、落下したグレンデル二人を拾いに艦載空走車を使ってロロが出払っている。
イレインはガリュー一人に押され気味で、ノエルが出撃。
心臓に風穴開けられたはずのドゥビルは白天王と交戦中だが、サイズ差のせいか斬れても掠り傷のような傷付き方しかしない。
「…無理ですね、すみません。」
「構わん、出るぞ。」
一応は緊迫した状況…なのだが、すさまじく楽しげに笑っているレヴィ。
全くアリシアの奴め、『こんな事もあろうかと』なんてニヤついてる様が目に浮かぶわ。
Side~ドゥビル
放たれた光を短距離転移で回避し、その巨体の死角をとる。
「むんっ!!」
全力で振り下ろした一撃は、それでも肩に食い込む程度に留まる。
外骨格も筋量もその質も並外れている、ただの巨体なら断ち切ることも可能なのだが…
振り向き様に振るわれた右腕を、斧で受けるもそのまま吹き飛ばされる。
防御しているというのに腕所か全身が軋み…
心臓が痛む。
焼却され跡形も残らなくされた心臓部、戦艦内の特殊な溶液につけられていたお陰か、治療に必要なエネルギーは十二分にあったが、それで重傷そのものがなかった事になるわけでもない。
手足程度ならいざ知らず、心臓、脳のような重要部位は少々再生に手間取る。
まだ機能は完全ではなく、多少ふらつく。
だが、言っていられん。
艦にはステラとフォルティスも乗っているし、高町速人含む対感染者装備で固めた『正義の暗部組織』とやらとの盟約も、無視すれば管理局と異なり裏ですらまともな活動が立ち行かなくなる。
ここはどうにか守りきる他無い。
『ドゥビル。』
「なんだ?」
『近隣の二体の自動機械、ノエルとイレインを回収して帰投してください。大技を撃つそうです。』
「了解。」
フォルティスから届いた連絡に答え、報告にあった自動機械の救援に飛ぶ。
幸い、戦艦へ狙いを切り替えたか、此方を狙うような事はなかったが…逆に言えば奴を素通りさせる事になる。どの道急がねばならない。
やがて現地に近づくと、アサルトライフル形のエネルギー弾射出装備を左手に、右手に雷光を走らせる鞭を持つ機体が、黒い影と交戦していた。
能力やエネルギー放出では飛べないのか、飛行用バックパックを装備している。
あれを破壊されただけで墜落となると、全身から武装のような部位を出して飛び回る黒い影相手には不利と言わざるをえない。
「そう簡単にやられるもんか!!」
飛び回る影目掛けて射撃を乱射するも、直撃には至らない。
あの召還虫、先に相手にしていた巨躯のような出力はなさそうだが…手練だな。
短距離転移。
死角を取って、一撃を狙う。
片腕も飛ばせば死なせず戦闘不能に出来ようと肩を狙って全力で打ち下ろした。
が…回避された。
振り返ることも無く前進する事で俺の一撃を避けた黒虫は、回避した後振り返って俺を見る。
死角も何も…視認範囲外を感知する耳も、触覚などの外部器官も人のソレではない…か。
「離脱しろ。」
「アンタがあたしの時間を稼いでくれるって?余計なお世話だね!」
此方は指示通りに動いたというのに、当の元々彼等の一員のはずの機体の方が話を聞かずに黒虫に向かって接近、鞭を振るう。
確かに見事な捌きで、雷光と熱量も侮れない兵器だが…
外骨格を持ち、全身を武装とする彼にとっては芯の無い武装である鞭はさして障害にならなかった。
振るった直後、直撃軌道を描いていた鞭に対して腕から伸ばした刃を振るう黒虫。
速さと複雑な軌道と『軟らかさ』が武器の鞭は、黒虫の腕から伸びた刃と当たると同時に切断された。
確認直後、短距離転移。
更なる接近を図る黒虫と機体の間に入る。
左胸を拳で強打された。
装甲の上からだが、伝ってきた衝撃に全快していない心臓が軋みをあげる。
聴覚か何かで此方の不調を察したか、つくづく厄介な。
「っ…おおぉぉっ!!」
無理矢理身体を動かし足を蹴り上げる。
さすがに直撃を嫌ってか、黒虫は距離を取った。
「もう一度言う、下がれ。」
「…分かったよ、あんたは?」
「俺だけなら問題ない。」
こっちのダメージは把握しているだろうが、短距離転移を見せたからかようやく不承不承と言った感じで離れ、近場で局の集団相手に追われているもう一機の方へと向かう。
…雑魚ならあの二機でどうにかなるか。
早々に離脱を済ませるため、黒虫を墜とすべく俺は斧を構えた。
Side~ルーテシア=アルピーノ
雑魚…って訳じゃないけど、近接型でないさっきの二人は割とすぐに捌けた。
これでも私もインターミドル出場経験者、いつヴィヴィオやアインハルトみたいなの相手にするか分かったものじゃないからそれなりに近接を捌く心得もある。基本的に離脱用だけど。
ただ…それでガッツリ近接型の感染者を相手に有利を取るのはちょっと難しい。
「大腿動脈。」
「っと、わざわざどーも!」
「頚椎っ!」
「っ…」
ノコギリ状の刃を持つ刀を二連三連と振るってくる少女。
刀から放たれる不可視の力を直線状を外す事でどうにか回避していく。
魔法防御で防げないし、デバイスは金属部のほぼ無いグローブだし、こんなんなら対感染者装備借りてくればよかったかしら。
ま、コレでおしまいだけど。
甲板の狭いところまで誘導するように逃げて来た私は…
「地雷王。」
「は…っ!?」
一旦飛び立って甲板上に落ちるように地雷王を召還した。
地割れを起こす巨大な召還虫。
ただその巨体を彼女に落とすように召還。
艦から飛び降りて離脱してくれてもいいし、感染者なら圧し掛かっても多分大丈夫でしょう。うん。
そして…これならこのまま同時にアースラも止められる。
軽く地形を変える地震攻撃が出来る地雷王、いくら感染者が傍にいたってこの出力なら船位…
「負…け…るかああぁぁぁ!!!」
突如、地雷王の下から大声が聞こえてきて、そして…
ひっくり返った地雷王がアースラから墜ちた。
リアクトしたのか、さっきまでの小ぶりな刀ではなく両手持ちの扱いづらそうな黒い大剣を手にしている感染者の娘。
まずい…地雷王、腹斬られちゃってる。
傷ついた地雷王を送還した私は、このまま乗り込むのを避けて高度を下げた。
あんまり時間もかけてられないし、しょうがないわね。
召還魔法陣を二つ展開、そして…
「えーと…お願いできます?」
「召還ありがとうございます、すぐ止めますね。」
「行くぞ。」
私以上に物騒だからできれば避けておきたかったフレア空尉とゲンブって人を呼び寄せた私は、ちょっとだけ後悔して苦笑い。
絶対アースラ墜ちるだろうし、あんまり無事じゃすまないだろうなぁ…
なんて、呑気な考えは、直後に発生した桁外れの魔力に完全に吹きとんだ。
「ジャガーノート!!!」
「亀氷壁!!!」
降り注いだ黒い凶悪な魔力の塊を、ゲンブが氷の障壁を展開してくれる。
障壁に触れた傍から炸裂する高出力攻撃。
でもこれ、ディアーチェの魔法の威力じゃない。
この氷の障壁、同出力の八神部隊長の攻撃すら防ぎきりそうな強度があるのに、もうひび割れつつある。
「まさか…っ…単騎の力でこんな…」
「…単騎ではない。」
フレア空尉が呟いた直後、再度魔力反応が膨れ上がる。
この規模もう一発来たら、防げず全滅だ。
離散、回避するため、咄嗟に障壁を解くゲンブ。そして…
「デアボリック・エミッション・ドールズシフト!!!」
あちこちに散らされた人形を起点に空を埋める広域攻撃に、避ける場所など無いまま一瞬で飲み込まれた。
Side~ディアーチェ
『さっすが三体合体!凄い凄い!!』
『ですね。』
「ええい、こんな時にそんな話で盛り上がるな馬鹿者!」
背に青と赤の混じった翼。
エルシニアクロイツを取り巻くようにレヴィとシュテルのデバイスが融合した、我を主体とした『超殲滅形態』。
元々レヴィの為に作ったロマン仕様だったため、我は使う気など無かったのだが…やらざるを得んかった。
ルーテシアを落とせたのは大きいが…
フレアの奴が、巻き込む事を避けたアースラ付近に向かって高速移動魔法を使う事で直撃を回避しつつ防御を展開して凌ぎ、ゲンブの奴は…
「まだ…です。」
全身を罅割れた氷に包んだ状態で浮いていた。
守りきれないと判断した二人だけを離脱させた後、自分は防御で耐え抜いたらしい。
「ふん…しぶとい奴め。」
「ソレは貴女も同じでしょう?三人分の力での大技の反動を二連続も受けて平気な筈がない。」
見るからに悪い顔色で我を見ながら強がるゲンブ。
ふらついている癖によく言う。
…尤も、正解ではあるのだが。
治したものの、出血は塞がっても貫通までされていると回復魔法で即完治とはいかん。
おまけに大魔法の乱発で、確かに全身に軋むような感覚がある。
「例え出力が上がった所で!」
氷の盾と剣を手に、接近を選択するゲンブ。
確かに尤も勝機が高い手だろう。
牽制の射撃もあっさり盾で受けられ距離を詰められる。
左手で障壁を展開し、防御の体勢を取った我に対して、防御ごと断ち切ろうと剣を振りかぶるゲンブ。
そして、そのまま袈裟斬りに振り下ろした斬撃は、障壁をあっさりと断ち切って左腕を薙いでいった。
「な…」
驚きに目を見開くゲンブ。
我が展開したのは障壁の見せ掛け同然のただの絵のようなもので、殆ど魔法としての処理を行っていないものだったのだ。
防御能力がほぼ無いため、素通り気味に左腕を剣が通過していったわけだが…
「貴様の相手をしている暇は無いっ!!!」
その間に、右手に握るエルシニアクロイツに準備しておいた砲撃魔法を、剣を振り切った直後のゲンブに向ける。
「『『EBディザスター!!!』』」
五連の爆雷砲撃で盾ごとぶち抜き、今度こそゲンブを沈黙させた。
海に落下していくゲンブの様子を眺めつつ、全く力が入らなくなって垂れ下がった左腕に視線を移す。
…ふん、律儀にも非殺傷設定にしてくれていたらしいな。魔力ダメージで麻痺感はあるが、少しすれば痺れも抜けるだろう。
『大丈夫…な訳はありませんね。』
「問題ない!非殺傷で騒いでられるものか!」
内部のシュテルの懸念を吹き飛ばすように強く答えたが、実際問題魔力ダメージだった事が少し厳しいかもしれなんだ。
腕が吹っ飛んでも後で治るが…ユーリの元に戻るまで魔力量が保たんと、アースラに向かってしまったフレアの相手もせねばならん。
とは言え…今は未だ健在の艦隊を落とすほうが先だ。
「エクスカリバー…ファランクスシフト…っ!!」
使用する魔力が大きすぎる上に元々のダメージも相まって体が悲鳴を上げる。
だが、小鴉はラグナロクでコレをやって二人で耐えたという。
ならば、三人で我が耐え切れない等と腑抜けた事は言っていられん。
『公務員共!船は墜とすから死にたくなければ気をつけろ!!!』
墜落する船の巻き添えや、着弾の衝撃で頭を撃つ等の懸念もあったため、戦闘空域に無差別に念話を送った上で、準備の終わった魔法を解き放つ。
単発で星の地図すら書き換える光の柱が群を成して局の戦艦に向かっていき、空を爆音が飲み込んだ。
動力部なり何なりを破壊して次元転移できないようにさえ出来たなら、その後逃げればそれで終いだったのだが…
『…やりすぎた?』
「む…」
基本はしゃぎそうなレヴィが心配そうな声を漏らすほどにはやりすぎたらしく、思いっきり大半の機能を失った戦艦の成れの果てが三隻、海に向かって急降下を始めていた。
墜落防止用の非常機構はアースラにも搭載されていたし、新型艦なら大丈夫だろうが…
「あん…ったねぇ!あたしらまで墜ちるところだったじゃないか!」
少し戦艦の様子を見ていると、丁度浮遊系効果を発動して減速を始めた所でイレインとノエルが飛んできた。
『生体に』ダメージを与えない魔力ダメージとは言え、建造物等は普通に破壊するため、二人とも傷が目立つ。バックパックだけは庇わないと墜ちるという事もあって多少腕や身体でも受ける必要があったのだろう。
後は…あの半死人か。心臓も完治しとらんだろうに今のに巻き込んでいたら少々危険だが…
『お前が主を撃墜した段階であの黒虫は主の元へ向かって逃亡した。もう戻る。』
此方が様子を窺っていることに気付いたのか、死に掛けた身で飛び出してきた斧男からも連絡が入る。
これで気がかりは…後一つ。
最後の一手を済ませるべく、我は再度転移魔法を行使した。
Side~フレア=ライト
接近してしまった以上このまま艦内に潜入してしまったほうが、確実にアースラを止められると判断した私は、局の艦隊を狙うディアーチェを無視して甲板に着地した。
「っ…行かせるか!」
大剣を綺麗に振り下ろしてくる少女。
その一閃を、槍を半回転させながら柄で払う。
重量のある打ち下ろしを外され僅かに姿勢を崩した少女に対し、柄から半回転させた結果突きつけられた槍の先端。
感染者らしいという事もあって、躊躇い無くその首を貫く。
「が…っ…」
真人間ならこれで死ぬからこれ以上は必要ないのだが、当然のようにまだ動こうとする彼女。私は首を支点に、少女を甲板から投げ放った。
アースラの停止が優先だろうし、彼女も頭から地面にでも落ちない限り死ぬ事は無いだろう。
潜入さえしてしまえば、自身の船を破壊する事になる以上範囲攻撃を多用できない。
私にとっては独壇場もいい所だ。
速人達がいるなら出てきているだろうし…艦内に誰がいるかまでは知らないが、恭也や雫と同時に当たらなければ、まず負けることは…
「くそが!くたばりや…が!?」
無い、と思った所で、丁度現れた感染者がディバイダーを突きつけてきた。
踏み込みから槍を横に大きく振るい、どうにか一歩で先端をディバイダーに届かせる事が出来た。
…そもそも艦内被害を考える『頭が無い』人間もいるのか、計算違いだった。
破壊されたディバイダーを見てうろたえる馬鹿に対し、懐に踏み込んで…顔面に通打。
脳を機能停止に追い込み、一撃で気絶させる。
御神では『徹』とか呼ばれる貫通打撃、感染者や特殊な防御能力をもつ者も多い管理世界、多種多様な型から扱えるほどではないが、覚えておいて損は無かったか。
外から強大な魔力反応。
ディアーチェはアースラに転移できる術を持っている…あまり時間は無い。
ユーリとて室内で私が全力で当たるのならどうにでもなる。
動力部に辿りつく最後の通路、そこに…
大の字に手を広げて立つ、数人の子供の姿があった。
震えている者もいる、この艦で私を前に…所か、おそらくは普通の大人とすら勝負にならないだろうただの子供。
「お前達は…」
「っ…と、通さない!通さないっ!!」
「アースラの皆は俺達を助けてくれたんだ…こ、今度は俺達の番だっ!!」
察する。と言うより、あまりにも分かりやすかった。
感染者相手とは言え、完全に貫いた事によって血が滴るグレイブに視線を向け…
「この馬鹿者共が!!!」
丁度、動力部の部屋の扉が開き、中からディアーチェが現れた。
おそらくは、ユーリが其処にいるから、回復、再出撃の為にすぐ転移できるようにできるだけの設定をしてあるのだろう。
「ぁ、お、王様…」
「誰がうぬ等に戦えと言ったか!貴様等速人を市民を人質に局員と戦う者に仕立て上げるつもりか!!!」
「ひっ…ぁ、そっ…」
「騒がんでも我等に敗北など無い、とっとと桃色の元へ戻って大人しくしておけ馬鹿共。」
明らかに不機嫌な目つきで怒鳴るディアーチェには逆らえなかったのか、子供たちは慌てて私の横を通り過ぎて駆けて行く。
やがて、その姿がなくなると、ディアーチェは溜息を吐いて頭を掻いた。
「…動力部を破壊して、脱出するがいい。」
「何?」
「貴様ならあやつらがおらねば其処まで出来ていただろう?先も言った通りだ、あの馬鹿共を人質代わりに置いておいたなどと吹聴されてもたまらんからな。」
言いつつ、右手に握る杖を突きつけてくるディアーチェ。
「ただし、そこまでだ。その後は外できっちり決着をつけてやる。我等紫天の騎士と感染者、ノエルとイレインの二人も合わせた全員の攻撃から逃げ切れると思うなよ?」
威風堂々、と言った様相のディアーチェ。
確かにそれで私は止められるかも知れないが、ユーリを伴ったアースラとて、動力部を破壊された状態で他の海の部隊や武装隊が追加でくれば捕まるだろう事は想像に難くないだろうに…
震えて立つ子供の姿を思い出しながら、再度手にした槍を見る。
この槍は『無辜の民を護る為』に。
あの子達は…潰すべき敵ではない。
「ディアーチェ。」
「む?」
怪訝そうな表情をするディアーチェを前に、私は槍を下ろし、力を抜いて目を閉じた。
「…そうか。」
察してくれたか、直後放たれた砲撃魔法に飲まれ、私はアースラを貫通して撃ち出された。
Side~ディアーチェ
『ちょ!な、何してんのディアーチェ!?』
いきなり艦を中からぶち抜いた結果、あわただしい忍の声が届く。
重要機関は破壊しないよう計算して、貫通性の高いディバインバスターを借り放った為、穴は開いたが自動修復でもそう時間はかからず直るだろう。
「騒ぐな、敵艦は全部止めた。修復が済み次第とっとと次元転移で離脱するぞ。」
『いや、騒ぐって!いきなり何してんのさディアーチェ。ボクでもしないぞこんな事!』
『自慢げに言う事でも無いですよレヴィ。』
忍の奴に答えたつもりだったのだが、我の中でべらべら喋るシュテルとレヴィ。
王の中をベンチか公園扱いか全く…
「子供に庇われ犯罪者を見逃して帰ったと報告は出来ぬだろう、察してやれ。」
艦内でその被害も考えず放たれた砲撃の奇襲によって倒された。ならば、まだ示しもつく。
理由も都合も分かるが、全く不器用な奴よ。
ともあれ、局員も大体殲滅、後は離脱さえ済めばこれ以上追撃も早々ないだろう。
何より、艦はともかく、オーバーS数人を相手に出来るような局の部隊などそう無い。
此方はコレで大体落ち着いたと見ていい。後は他の援護や回収に飛ぶ必要はあるが、まぁその程度は問題ないだろう。
三人に分離し、一息吐く。
「レヴィ、フレイアに頼んで人数分の食事を用意してもらって下さい。グレンデルの方々や元々負傷者のドゥビルも消耗しているでしょうし。」
「オッケー!」
シュテルの指示に素直に頷いて駆け出すレヴィ。
…『力』のマテリアルという事もあって大技を撃つ際大分頼りにさせてもらったのだが、随分元気な事だ。
「さて…肩を貸しますよ?」
「いらん。」
ダメージの大きさを完全に見抜かれているようではあるが、だからと言って弱い様など晒せぬ為、短く断る。
「…私は口は堅いほうです、王。」
だが、滅多に言わぬ王の呼び名に思わず視線を向けると、シュテルは珍しく笑みを見せていた。
「民を気遣い、人を見て、身を削り尚威厳を保つ。…これだけやって未だ尚渾名扱いはしませんよ。マスターがいるので普段から呼ぶ気はありませんが。」
「あ奴が王というガラか…まぁ良い。臣下の手なら借りるとするか。」
口が軽いレヴィだけ走らせた所からシュテルの配慮なのだと悟ると、これ以上突っぱねる気にはなれず…
気が抜けた瞬間いきなり疲労が襲い掛かってきて意識が途切れた。
SIDE OUT
血の滴った槍を持った無表情、戦意全開の男を前に喧嘩を売る…子供にやらせてますが多分作者も無理です。おそらく泣いて逃げます(爆)。