なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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記録五十四・『イデアシステム破壊組』~VSハーディス~

 

 

 

記録五十四・『イデアシステム破壊組』~VSハーディス~

 

 

 

Side~トーマ=アヴェニール

 

 

 

「いやぁようこそ。ゼロドライバー、トーマ=アヴェニール君。」

「な、何で…っ!?」

 

現れたのは、よりにもよってハーディス=ヴァンデインだった。

今回の事件中最悪と思われる相手。

特に、『感染者の模倣』が可能な彼の前では絶対に能力の一切を使うなと言われてる。

ゼロの力の模倣されたらその瞬間終わりだ。

 

「うん?何で魅了効果をばら撒いているのが遊じゃ無くて私なのかって?それは大慌てで通常形態に戻ってしまった君が聞く必要はないだろう?」

 

言いながら遊がつけていた紅い爪の手甲を見せてくるハーディス。

模倣能力者…っ!そうだよ、模倣能力者なんだ!

俺やフッケバインの皆の力はともかく、彼お抱えの感染者のディバイダーと能力位使えない訳が無い!

 

「随分警戒されているようだけど、ゼロをコピーさせてくれないか。」

「誰がっ…馬鹿言うなよ!」

「私は庶民の味方のつもりだよ?」

 

これだけの事をしでかしておきながら庶民の味方とか、いったいなんのつもりなのか。

薄く笑ったハーディスは、言葉を続ける。

 

「エクリプス感染者…彼等の使用する技、生命力、純粋に見れば素晴らしい代物だろう?研究を重ねれば、魔力を超えた新時代のクリーンエネルギーを担えると睨んでいるのさ。ヴァンデインコーポレーションは兵器会社だが、それにしたって死なずに戦いから帰ってこられるのなら越した事はない。次元世界の大事件、管理局の皆さんも大変だろう?」

 

芝居がかった口調で大げさに語るハーディス。

言ってる事はまともに聞こえなくもないけれど…

 

「もう既にお前のせいでどれだけの被害者がでてると思ってるんだ!何が庶民の味方だよ!」

 

俺がヴェイロンと勘違いした本と銃剣の二人組の感染者、フッケバインの皆から聞いた感じだと、彼がばら撒いているグレンデルの皆とかと同じ類の感染者だって話だ。

だとしたらコイツのせいで…

 

「それは単純な理由だよ。」

「何?」

「完成後に数十、数百億人の支えになるなら、数百数千人くらい大した被害じゃないだろう。」

 

 

笑いながら告げられた言葉に、頭の芯が冷えるような感覚を覚えた。

 

 

「田舎をちまちま開いたり、そもそも犯罪者だったりと、大して世界のプラスにならない所を選んでいたのもその為さ。人口が多い所を狙えば手っ取り早いけれど、そういう所の人は同時に生産性の高い事に携わっているからね。」

『ト、トーマ!だめっ!』

 

笑うハーディスに対して、胸の内で何かが跳ねるような感覚。

暗い黒い炎のような、そんな何かが湧き上がってくる。

 

大して…プラスにならない?

 

 

 

「そう言えば…君の故郷も寂れた鉱山だったね?」

 

 

 

嗤いながら口を開くソイツが、全ての元凶で…

俺の全てを大したものじゃないと言い切ったコイツが―

 

 

 

「ひゃまへぇぇぇぇっ!!!」

 

 

 

 

気の抜ける声と、続けて起きた爆音が、俺の意識を辛うじて繋ぎとめた。

爆発に覆われてハーディスの姿が見えなくなった。

俺は自分の手を見る。まだ、大丈夫、黒騎士状態になってない。

 

随分傍でした声。って事はアイシスなんだろう。

隣を見ると座り込んでいたアイシスがいつの間にか立ち上がっていて…

 

 

 

たー…と、そんな音がしそうな感じに静かだけど止め処なく鼻血を流しているアイシスが俺を見ていた。

 

 

「っ…」

「笑うなっ!これが一番効果的だったのっ!」

「わ、分かってる。助かったよアイシス。」

 

 

鼻の粘膜はそれほど強くない。血管も近いし、破けばしばらく血も止まらないだろう。

仮に鼻栓で匂いを止めても、口呼吸でも内側から芳香が伝わってしまう。だったら直接粘膜を焼く感じで傷つければしばらく出血が続くだろう。

このために多分鼻の中を少しだけ爆薬で焼いたんだと思うと、感謝しか浮かばない。

 

だって、今アイシスが割って入ってくれなきゃ俺は確実に怒りに飲まれて狂っていた。

 

 

「やれやれ…そう簡単には行かないか。」

 

 

何事も無かったかのように爆煙の中から姿を見せるハーディス。

その手には、ディバイダーらしい武器を手にしている。

 

アイシスの爆薬は、フッケバインの皆にすら通じるくらい高い威力を持ってる。

無傷って事は…余裕でそれを上回る力の持ち主って事になる。

 

「お生憎様!悪党なんかに簡単にやられないよ、トーマの護衛役なんだから。」

 

そんな中でも、アイシスのテンションは励みになった。

特に、ついさっき黒い気持ちに飲まれかけた身としてはとてもありがたい。

 

「ま、中の良いお友達のようだし…君の犠牲でゼロを使って貰えるだろう。」

「させるかっ!」

 

俺はディバイダーを構えてアイシスに並んだ。

…いくら通信がきかないからって、そんな状態になっててフォートやヴェイロンが気づかない訳が無い。

ここを凌いで皆でコイツを捕らえる。

 

 

 

Side~アイシス=イーグレット

 

 

 

芳香を防いで起き上がったら目を見合わせても特に何もなかった。

視線洗脳の方は種族の固有能力らしいから、ディバイダーとエクリプスに関係なくてコピーできなかったんだろう。

出来て使わない理由もないし。

 

 

そんな事よりも…

 

 

殺さないようにって言っても感染者だし、三分の二くらい吹っ飛んでもおかしくない位の調整で爆発させたはずなのに…

直撃したのに無傷って、コイツ一体どうなってんの?

 

「さて…という訳だから、簡単に死なないでくれよ?」

 

ハーディスがそう言った瞬間、ゾクリと寒気が走る。

直後、横薙ぎにディバイダーを一振りするハーディス。

あたしが跳躍すると、立っていた場所を通り過ぎて壁に大きな亀裂が入った。

 

粒子斬撃…凄い威力だ。

 

「っのぉ!!!」

 

火薬の鳥を飛ばして着火。

今度は加減なし…と行きたいけど、室内って事もあって密度だけで威力をあげるのにも限度がある。

狙いを顔面にしてみたけど…

 

「シルバーハンマーっ!!!」

 

顔面爆破と同時に、トーマが砲撃を放つ。

とは言っても、きっちり黒騎士になっててもあたしと同じ見習いトーマ。

通常モードでの砲撃でそこまでダメージが通る訳もなく…

 

 

「っ!銀十」

 

 

トーマは咄嗟に手元の書のページを周囲に展開したものの、爆撃に飲まれた。

 

発生源は当然ハーディスだけど…今の…ヴェイロンのフレッシェットシェルとか言う奴だ。

威力はそれより高いし…っ!!

 

 

ハーディスが左手の手甲の爪を振るうと、紅い光があたしに飛んできた。

咄嗟に横に回避。したけど腕が軽く裂けて、天井が砕ける。

 

っ…ただ撃たれっぱなしになるだけでも厄介だ。

 

着地したあたしは、煙幕を焚いて低空ダッシュ。

ハーディスの懐にもぐりこんで…

 

硬化火薬で形成したナイフを手に、下からアッパー気味に喉を狙う。

首ならさすがに他より軟いだろうし、突き刺さった状態で爆発させられるこれなら…

 

 

 

直撃した瞬間、ただの火薬に戻ってバラバラと散った。

 

 

 

硬ったぁ!?いや、分断!?

 

 

「はい捕まえた。」

「っ!」

 

左手で首をつかまれ、持ち上げられる。

握りつぶせるだろうに、息が出来ない程度に。

 

「アイシス!!」

「そのままでは話にならないよ。」

「っうああぁぁぁ!!」

 

シルバーハンマーの光が見えると同時にトーマに悲鳴。

トーマの砲撃もあっさり模倣したらしい。

 

「うん、君の技は素直だねトーマ君。さて、でもそろそろ真面目にやらないと…」

「っが…ぁ…っ…」

 

首に込められる力が強くなって、視界が歪み、血が回らなくなる。

爪が食い込んだ上、そう言えば吸血効果もあったか、少しずつ寒くなっていく気が…

 

 

 

直後、振動が伝わったかと思うと唐突に手が離れた。

 

 

 

足がついたかつかないか、確かでないまま後方に移動する事だけ考えて地を蹴る。

 

当然着地なんて出来なくて尻餅をついたものの、少しずつ視界が戻ってきて…

 

 

「悪い遅れた。ま、後は俺に任せとけ!!!」

 

 

眩しいくらいに綺麗な白銀色の刀身を持つ剣を右手に、真紅のマントを靡かせた、絵に描いたようなヒーローがそこにいた。

…ぎりぎりで来る所まで真似しないでよフォートの馬鹿。

 

 

 

Side~フォート=トレイア

 

 

 

やたら強固に展開された茨姫を突破すると、首をつかまれているアイシスの姿が見えた。

アイシスの首に伸びた左腕、その肩目掛けて右足の飛び蹴りを叩き込み、ついで右手に持った剣を振り下ろす。

直撃したが、掴んでいた手を外す事はできたものの腕には傷一つつかなかった。

 

みれば、やっぱりハーディスのおっさんだ。

茨姫はカレンの保有スキルらしいけど、別チームで出撃してるはずのカレンがここにいる訳も無いしと思った段階で模倣能力持ちのこのおっさんの事を思い出した訳だが…

 

「ここの防衛に来た…って訳でもなさそうだな。エクリプスやゼロがそんなに美味しいのか?」

「イデアシードの事か。確かに超純エネルギーとしては強いらしいけれど、その後開発されたエクリプスの方が使って終わりの弾より余程素晴らしいと言うのが私の見解だよ。」

 

少し意外だったが、サラッと話に応じるハーディス。

大物の余裕って奴だろうか?確かに異質で強大な力を感じるし、感染者として最強となると、もう普通の魔導師じゃどうにもならないだろう。

 

「ま、君のその剣には興味をそそられるけどね。」

 

値踏みするように俺の手にした剣を見るハーディス。

ディバイドでもしようとしたんだろうが、罅一つ入らないこの剣が意外だったんだろうか。

俺は笑って首を横に振る。

 

「コイツは俺用なのさ。それに、ここで牢獄送りのお前には変な好奇心なんて無用の長物だぜ。」

「あっはっは…君は報告にあった通りだねぇ。」

 

言いつつ俺にディバイダーを向けてくるハーディス。

芝居がかった笑い声に目を見てみるが、全然目が笑ってなかった。

 

 

ディバイダーが光ったか否かのタイミングでフォースドライブに入る。

 

 

「愚かな子供だ。」

「そうかよっ!!」

 

 

高速移動魔法の瞬間発動にて、放たれた弾幕を余裕で回避、側面にもぐりこんで、ディバイダーを手にした腕に振り下ろす。

 

が…腕を下げさせる程度の事はできても全く斬れる気配が無い。

ふざけた身体強度だ。

 

横薙ぎに振るわれたディバイダーの一閃を屈んで回避、足を伸ばす勢いと共に脇腹に逆袈裟で斬り付ける。

金属の表面を撫でるような感触が返ってきただけでやっぱり無傷。

 

左手を伸ばしてくるハーディス。俺は左手の盾でその手を受け…

 

 

爪があっさり盾を貫いてきた。

 

 

俺が自力精製したほうは紙切れ扱いか!くそっ!

 

「クリムゾンスラッシュ!!!」

 

腕をつかまれかけたが、突進から斬撃を放ったトーマによって捕まるのは阻止してもらえた。

 

直後、黒い鳥が飛来。俺とトーマは同時に後退し、その瞬間鳥がハーディスの顔面で大爆発。

 

うん、普通感染者でも死んでるなありゃ。でも、シグナムさんならいざ知らず、アイシスが人殺しまであっさりやるとは思えない。

これ喰らっても死なない…下手したらノーダメージの保障があるんだろう。

 

だったら…

 

俺は右腕にブースターを展開。

ブースター全開で貫くのが狙いだが、握力だけだと指の骨が砕けて剣を手放す可能性がある為、同時に剣を握る手を完全固定するように包みこむよう金属展開。

 

俺の設計図を組み込まれてると、こういう事もやりやすくていい。

 

 

「はああぁぁぁっ!!!」

 

 

突進からブースター加速に加えて突きを突き出す。

重さだけならきっとあるだけある一撃は、まるで回避する気の無いハーディスの右肩に直撃した。

 

 

 

 

直後、折れる感触。

 

 

 

ディバイドが効かず強度も尋常じゃない剣が折れる事もなく、突きが効いたならハーディスの肩は折れると言うより貫く…だ。

 

 

 

つまり…折れたのは…

 

 

 

「っ…」

 

 

 

俺の腕の骨。

 

 

見た目にはっきり折れまがったり骨が突き出たりこそしてないが、亀裂骨折な感じで手首の辺りが罅入ったらしい。

完全に精製金属で覆っている手だが、内部の指もおかしな感触がする。

 

ハーディスは左手を伸ばしてきて俺の鼻を摘んで身体を持つ。

 

 

「最期に褒めておこう、今までの攻撃で一番痛かったよ。」

 

 

直後、俺は思いっきり飛ばされた。

 

 

 

Side~トーマ=アヴェニール

 

 

 

指先で摘まれ、持ち上げられたフォートが物凄い勢いで飛んで壁を貫いて行った。

 

今のは…まさか、マリーヤの能力?

確か摘めるサイズのものなら何でも弾丸として飛ばせるって言う…でも、サイズって言うなら無理がある。

鼻先だけに能力を及ばせて無理矢理飛ばしたのか、摘めたからフォートそのものに能力がかけられたのか、それとも全く別能力なのか。

 

 

とにかく、無茶苦茶すぎる。

 

 

「うん、さすがに人のサイズだとそこまで速度は出ないね。まぁ人間相手なら殺すのに十分すぎるけど…」

「くっそぉっ!!」

 

再び爆撃を行おうとするアイシス。けど…

 

「痛いんだからそう何度もやらないでくれよ。」

 

今度は放つ前に黒い鳥に閃光が走って爆発した。

 

「アイシス!!」

 

雷撃…これはロロの能力か。

アイシスの制御下にあるって言っても火薬、爆薬には違いないんだ。雷撃なんて喰らったら引火する。

 

咄嗟に防御したみたいだったけど、それでも感染者を倒すつもりで放とうとしていた威力の爆発を自分で受けたアイシスは、ボロボロの様相でそのまま倒れた。

 

「余所見はよくないな。」

「っ!?」

 

俺に向かって真っ直ぐ向けられたハーディスのディバイダーに溜められている力。

さっき模倣されたシルバーハンマーだ。

 

「くそぉっ!!」

 

同じ技ならと相殺を試みる。が、一瞬止めたかと思うと爆発と共に俺を飲み込んだ。

吹き飛んで壁に叩きつけられた俺に紅い爪が振るわれる。

 

 

 

「ぐぁ…っ…」

 

 

三本の紅い線が走り、左肩が深く避け、左腕が千切れ飛んだ。

俺は壁をすべるようにずるずると崩れる。

 

そんな俺に数歩歩み寄ったハーディスは、つまらなそうに空いている左手の掌を上に向け、肩を竦めた。

 

「さて、君が本気を出さない間にお子様は死んで、彼女も後一撃って所だ。こんな事でいいのかな?」

「っ…」

 

俺の全開を引き出して、ゼロと黒騎士のサンプルを得るつもりなのは分かっていた。

残っている右手にはディバイダーを持っている。だからこそ、左腕の方を吹き飛ばしたんだろう。どうせ感染者ならこの程度じゃ死なないから。

 

「私はゼロの情報がより詳しく欲しいだけだし、取るものを取ったら何もしない…かもしれない。勿論、君から見たら疑わしいだろうから全滅する…という事を想定に入れるとして、このまま戦いを続けても君以外皆間違いなく死ぬ事になる。なら、ゼロの一撃で私を倒すという一か八かに出るほうが建設的じゃないかい?」

「っ…」

 

自分の命をチップにした挑発。

誘いなのを分かった上で、否定するだけの材料も見つけられなかった。

 

尚も迷う俺を前に、ハーディスは一息吐いて、ディバイダーを倒れたアイシスに向け…

 

 

 

その頭で盛大に爆発が起きた。

 

 

 

フレシェットシェル。って事は!?

 

 

「乗せられてんな坊主、とっとと引いとけ。」

 

 

フォートが吹っ飛ばされて空いた穴から、ヴェイロンが来てくれた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 




エクリプスの悲劇に振り回されるFORCEの『ヒロイン』トーマ。四コマからの話ですが、あながち間違ってない気がしてならないという(笑)。
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