なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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秘録五・不屈の継ぎ手達

 

 

 

秘録五・不屈の継ぎ手達

 

 

 

 

Side~エリオ=モンディアル

 

 

 

 

現地にはすぐに着いたものの、展開されている結界に入るのに少しばかり手間が入った。

普通についたら結界があること自体気付けないタイプの高度な封時結界。

傍に教会の人達だっているはずなのに、ここの結界に気付いてはいない位だ、映像でみてた僕達だから確実に何かあるって知ってて滑り込むことができた。

 

ロストロギア級の代物がどこかで暴走したとしても、このレベルの結界内に入れることが出来れば外に被害が漏れる事はない、海の人間として身につけた高等技術なんだろう。

 

僕がキャロを抱えて屋内からの戦闘の反応に一直線で向かうと、丁度スバルさんが倒されるところを目にする事になった。

 

背後から、キャロのブーストを受けてその場に立つ男性に斬りかかる。

けど、あっさりと防御魔法で受け止められた。

 

強度はともかく展開が速い…それこそ、弾より速いくらいじゃないと、防御展開より速く斬りかかるのは無理かもしれない。

 

『エリオ君…生体反応外に三つ…アクアさん達外みたい。』

 

キャロからの念話にストラーダを使って感知すれば、僕の方でも確かに外から3人分の反応を拾えた。

別の部屋にあるのは多分起こした冥王イクスヴェリア様だろうけど…僕達が突入した時

インターバルだったのか?試合でもないって言うのに。

 

何にしても、狙われてるのは彼女達の方だと聞いている。急ぎたい所だけど…

 

「ふむ…君は彼女より警戒が強いですね、騎士だからでしょうか?」

 

一瞬だけスバルさんを見てそう言うランド少将。

警戒してなかったわけじゃないだろうけど、人命救助を旨とするスバルさんにしてみればアクアさん達を放置している状況でノンビリとは戦えなかったんだろう。

それは僕達だって同じこと、大体アクアさん達の持つ何かを護るために来たんだから。

 

けれど…だからと言って少将は油断できる肩書きじゃないし、スバルさんを倒したってなれば尚更だ。

 

「しかも片割れの彼女はフォートレス持ち…仕方ない。」

 

呟いたランド少将が身じろぎするように動いた瞬間…

 

 

「きゃあっ!」

「キャロ!?」

 

突然キャロが悲鳴を上げる。

見れば、キャロが糸のようなもので拘束されてい

 

 

「ぐっ…」

 

 

突然の衝撃。

速射誘導弾…急所だけは咄嗟に外したけど、ジャケットで止められない鋭さだった。

 

見てる場合じゃなかった…とは言え、単発誘導弾にしては鋭すぎる。

凄い腕だ。

 

「あ…れ?力…が…」

「っ…キャロに何をした!?」

 

余所見出来ない状況だけど、キャロから聞こえる声が弱弱しくなっていくせいで放置も出来なかった為、ランド少将を睨むように問い詰める。

 

「最新型の対魔導師設置型拘束具ですよ。ヴァンデインコーポレーションの『正規ルート』の発表前最新製品です。拘束した相手の魔力を大気中に抜いていく力があるので、魔力エンプティに追い込み眠らせて安全に護送できます。」

 

『あらゆる力』を集めている、とは聞いていた。

ヴァンデインコーポレーションは兵器開発会社。

エクリプス以外にも部門が存在して当然だ。ハーディス専務から貰っていたのか。

 

全部信用するのもどうかと思うけれど、死なせるつもりなら死ぬ代物だって言ったほうが僕を焦らせる理由になる。多分嘘ではないだろう。

 

僕は静かにストラーダを構え、ランド少将と向かいあった。

 

 

 

Side~アクア=トーティア

 

 

 

いくら敵の動きだけが読めても、それに同対処するのが一番かは戦闘経験に優れている人間じゃなきゃ生かしきれない。

 

その点、私は一般人上がりで数年程度の経験値。歴戦の人達みたいな精度での判断は出来ない。

でも…インフィニティーアナライザーの利点は、単なる未来を感じ取るような能力、感覚と違い、あらかじめ膨大な量の戦闘分析を『済ませている』と言う点もある。

 

つまり…

 

「其処っ!」

「っ!」

 

やることまで分析できるなら、ただ決まった通りに動けばいい。

近接での判断ミスが出ないのもこの切り札の利点だ。

 

私は思いっきり右に薙いだアクアリウムがビャッコの脇腹を捉える感触に手応えを感じる。

 

強者であっても無敵や不死身じゃない、直撃が何度も入れば彼女だって…!?

 

 

「っ…そぉ!」

 

 

行動予測でビャッコが距離を取るのが見えて、高速移動の終着点目掛けて氷結砲撃を放つ。

が、着弾までの間に展開した障壁だけであっさり防がれた。

 

 

「便利な技だけど、結構『魔力と頭』使ってるみたいだね。」

「っ!」

 

 

見抜かれた。

シューティングスターを撃ってまた距離を取る予測が立って歯噛みする。

 

 

「くっ…そぉっ!!」

 

 

凌げるけど…それじゃ意味がない。

予想通りに放たれた弾の雨を凌いで移動先に誘導弾を放つが、全展防御であっさり防がれ…

 

 

私は前のめりに倒れた。

 

 

 

Side~エリオ=モンディアル

 

 

 

「おおぉっ!!」

 

ストラーダのブースターを吹かして突撃。

が、足を途中で何かに止められる。

 

 

設置型バインド…っ!

 

 

止まった僕目掛けて砲撃を放ってくる少将。

僕は、あえて止められた足を軸足に一回転。魔力を通したストラーダを振りぬいて砲撃を斬り裂いた。

回転に際してバインドをねじ切って、ストラーダを振るって魔力刃を飛ばす。

 

少将は手にした杖を振るって僕の放った刃を打ち消した。

 

やっぱり…純魔導師の超高位だ。

打撃戦も出来ない訳じゃない、杖に魔力を通して戦うオーソドックスみたいだけど、一振りの動作だけで分かる。

魔力を通した杖の先端できっちり刃を捉え、姿勢も崩れてない。

 

「サンダー…レイジ!!!」

「む…」

 

雷撃を纏わせたストラーダを下から振るい、途中で床にひっかける。

叩き付けた対象を中心に雷撃を放出するソレは、床の途中で止まったため部屋を埋めるように下から広がっていった。

とは言えその一撃だけなら防御魔法で受けられる。少将の方が出力自体は上なんだ。

 

でも…っ!

 

逆噴射で身体ごと回り、打ち下ろしの体勢に入る。

僕だって全身全霊の一撃を叩き込むことが出来たなら、障壁の一つくらい…

 

 

少将は障壁をといて、デバイスを振りかぶっていた。

 

 

「紫電一閃!!!」

「フラッシュインパクト!!」

 

 

雷撃を纏ったストラーダと少将の杖が衝突し、けたたましい衝撃音が響く。

 

 

足元に何かが転がっていた。

 

 

爆弾っ!?回避も出来たけど、競り合いにして僕の足を止めたかったのか!

 

「っ…だぁっ!!!」

 

ブースターを搭載している事をいい事に力任せに打ち下ろしを地面まで届かせて、突き立てたストラーダを軸に跳躍。

直後、爆弾が爆発して、咄嗟に張った防御魔法ごと吹き飛ばされる。

 

 

「っ…ぐっ…」

 

 

天井に叩きつけられた後に床に落ちるが、転がって立ち上がる。

全威力は防げなかったけど、足をやられたら近代ベルカ式の戦闘なんて成り立たない。

まだやれる。

 

「此方は色々使わせて貰ってるというのに皆さんやりますね…さすがに高町なのは最高の教え子と名高い四人と言う事ですか。」

 

構えた僕を見て、嫌味も何もなくただ感心したように告げられた少将の言葉に少しむずがゆい気分を覚える。

別に僕達は大して特別じゃないけれど、それでもあの人達といて恥じないようにと頑張っては来たつもりだから、そんな評価をされていると言うのなら悪い気はしなかった。

 

 

とは言え、このままじゃ勝ち目はなさそうだ。

 

 

やってきた全てを出すと言うのなら…後一つ…か。

 

深く突きの体勢を取り、真っ直ぐに少将を見据える。

全身に魔力をめぐらせ…準備完了。

 

 

 

「ブレイク…ブーストッ!!!」

 

 

 

 

直後、ストラーダを突き出すと共にその全ブースターを吹かし、全身を雷撃を伴う魔力と共に砲撃の要領で撃ち出す。

 

フレア空尉が扱う、貫通突破移動用突進術。

 

砲撃と共に自身を撃ち出すなんて馬鹿みたいな魔法だけれど、一撃離脱型の僕にとってはこういうのはよく合う。ストラーダは、突撃槍なんだ。

 

 

「おおおぉぉぉぉぉっ!!!」

「っ!」

 

 

魔法障壁を展開すると共に、その腕に何かフォートレスのような金属盾を装備する少将。

プットアウトで装備してるんだろう、今更驚かない。

 

あの人なら全てを貫くだろう、無辜の民を護る為に仇成す全てを。

騎士である僕だって…っ!

 

 

 

「貫け!ストラーダッ!!!」

 

 

 

拘束され、魔力を抜かれて眠るように崩れ落ちたキャロの姿を一瞬だけ見た僕は、残る全てを込めるつもりで全身を包む雷撃に耐えながら突き進んだ。

 

少将を盾ごと壁に押し込むように突き進み…

 

ストラーダの先端と盾が同時に砕けた。

 

爆弾を回避したとき、ストラーダを地面に突き立てて跳んだから、ストラーダの方が消耗してたのか。でもまだっ!!

 

「紫電…一閃っ!」

 

左拳に魔力を集中させて一撃を叩き込もうとする僕が見たのは、拳が当たる前に僕に向けて開かれていた少将の右手から放たれた砲撃魔法の光だった。

近接での速射砲を直撃した僕は吹き飛ばされて床を転がる。

 

っ…ダメージが厳しい…

これは僕一人じゃ無理がある。

 

「まだ立ち上がる気力がありますか、でもその様子ではこれで…」

「っでえぃっ!!!」

「は?っ!」

 

僕より先に起き上がったスバルさんが突進から拳を放つ。

完全に予想外だったらしい少将はまともに防御でソレを止めるが、振動拳の効果で衝撃が防御を貫いた。

 

結局その場に留まれずに吹っ飛ばされた少将。

二人掛かりで初めてまともにダメージが通った。

 

「す、すみませんスバルさん。」

「ぜ、全然オッケー…いい気付けになった。」

 

気絶していたはずのスバルさんが起き上がったのは、僕が突進の際に纏っていた雷砲撃から、少し余波をスバルさんに向かって浴びせておいたからだ。

電気で目を覚ませないかと思って、致命にならない程度に加減して雷撃を浴びせたわけだけど…上手く起きてくれてよかった。

 

とは言え、僕もそうだけどスバルさんにしたってそんなに長くは保たない。

 

僕とスバルさんは、左右から同時に少将に向かって駆け出した。

 

 

ストラーダがやられた以上、紫電一閃を叩き込むくらいしか狙えない。

杖を握る側から仕掛けようと迫る僕に対して、杖を振るう少将。

放たれた魔力弾を腕を交差させてガードする。その間にスバルさんが接近して…

 

 

杖を掴んだ。

 

「おや…」

「ブレイクッ!!!」

 

 

ディバイダーすら破壊する装備を施しているスバルさんの手によってつかまれた少将のデバイスは、さすがにあっけなく砕け散った。

 

 

「これでっ!」

「終わりだっ!!」

 

 

武器をなくした少将相手に左右から打撃を以って攻めかかる。

プットアウトで取り出していたんだろう実体装備もデバイスが砕けたため取り出せなかったのか、綺麗に何発もクリーンヒットが入った少将は、最後僕とスバルさんの振りぬいた一撃を同時に喰らって壁にめり込んだ。

 

「はぁ…はっ…」

 

息が切れて、スバルさんは膝をつく。

…ダメージを負った身体で、やれるだけはやった。

正直僕も立ってられる状態じゃなかったけど…後一つ。

 

よろける足を引きずって、倒れて眠ってしまっているキャロの元まで来た僕は、残った魔力を通してストラーダを修復して、キャロを拘束する金属糸を叩ききった。

 

 

そこまでで視界がぐるぐると揺れて、僕はそのまま倒れた。

 

 

 

Side~アクア=トーティア

 

 

 

眠い。

もう長く意識は続かない。

 

「どうやら、限界みたいだね。」

 

 

地面に転がった私の元に向かってくるビャッコの足音を聞きながら、私はタイミングを待つ。

眠い、疲れてる、力もない。

 

けれど…だからこそ撃てる最後の一手があった。

 

私の手札に脱力技があるからこそ、こうしてもう眠ってしまったフリをして準備していられる。

緩から緊へ、その差があると瞬間的に発揮できる力は常時力んでいるよりはるかに大きくなる。

 

アクアリウムを…あるいは私ごと持ち帰らなきゃならない彼女は絶対に近づかなきゃならない。

あのままインフィニティーアナライザーを気絶するまで使い通した所で勝ち目が見えなかった私の打てる最後の一手。

 

十二分に引き付けて、足音が途絶えた瞬間…

 

 

私は跳ね起きながら突きを繰り出した。

 

 

甲高い衝撃音。

けれど、破ったような感触はなくて…

 

 

「っ…フィールド防御を強化する程度には警戒してたけど…まさかあの体勢からこんな突きが打てるなんてね。本当面白いよ。」

「く…っ…」

 

鳩尾に、突き刺さる事無く障壁によって止められているアクアリウムを掴んだビャッコは、勝ち誇ったように笑みを浮かべた。

 

最後の一手も届かなかった。

 

諦めたくなる絶望感に逆らってここまでやってみたけど、さすがにもうきつかった。

光明の一つも見えないままで頑張れるほど、彼らみたいな鋼の心なんて持っていないんだから。

 

右手によってアクアリウムをつかまれたままで振り上げられた左手が光を湛える。

アクアリウムにしまってあるイノセントを持っていかれる訳にもいかないから手放す事もできないし、そもそもデバイスを放して戦いになる訳もない。

 

 

眠気と疲れも相まって考えもまとまらず…

 

 

 

 

甲高い衝撃音が響き渡った。

 

 

 

私は何もされていない。

ぼんやりと揺れる視界の中で私が見たのは…

 

 

ビャッコの後頭部に振り下ろされたらしい大剣の峰だった。

 

 

「ぁ…な…」

 

 

その重量のせいか首が完全に俯き加減になってしまっているビャッコは、振り返ろうとしてそのまま崩れ落ちる。

 

 

「させ…るかっ…」

 

 

彼女の後ろで、クラウが大剣を手に立っていた。

 

あはは…あの大技喰らったはずなのに助けに起きてくれたんだ…

 

頼りになる弟の登場に緊張の糸が切れたのか、私はそこで眠ってしまった。

 

 

 

Side~ギンガ=ナカジマ

 

 

 

辿り着くと丁度結界らしきものが消滅する所だった。

術者…おそらくはランド少将が倒されたのだろう。

 

ソレと同時に外にいたらしい人達が…トーティア姉弟が姿を見せた。

 

「二人とも大丈夫!?」

 

一人…と言うか、OAシリーズのビャッコと向かい合うようにして倒れているアクア。

どう見ても大丈夫じゃない。…彼女を倒したという意味でも。

 

「殺す気まではなかったみたいで…どうにか大丈夫です。」

 

傍らで膝をついているクラウが辛そうにではあるけれど返事を返してくれる。

言われて納得がいった。

ダメージは多々あるようだけど、彼女の攻撃を殺傷設定で直撃していたなら確かにこの程度ではすまないはずだ。

 

けれど、どう見てもそれなりのダメージを負っているように見える彼は、それでも無理に動こうとしていた。

 

「結界が解けたから少将は倒せたはず、スバル達は大丈夫だから無理は」

「教会の人が来たら…姉さんが今管理局に拘束されたら、面倒な事になる。」

 

一枚岩って感じではない管理局。

龍の話にしたって何処まで伝えるべきかとか、速人さん達の立ち位置や地球部隊の交渉とかを誰とどう行うかで結構な悩みどころでもある。

近い聖王教会の人も来る…下手をするとセイン辺りはもう近くにいる可能性すらある。

 

詳しく聞かされていないけれど、余程重要なものを任されているのだろうアクアを今止められる訳にはいかないんだろう。

 

…仕方ない。

 

「え?あ、あの…」

「スバルたちは最悪聖王教会の人に連れて行かれても、どの道後から事情説明する事柄しか知らないはずだし。とりあえずアクアと貴方だけ確実に保護しておくわ。」

 

中から戦闘反応も何もしないのに外の様子を見に来ない辺りは皆無事なのかどうかと言う不安はあったが、気を失ってるだけで大した怪我でもないOAシリーズの彼女も含めて、放ってはおけなかった。

 

三人抱えるのは重さはともかく持ち辛くて大変だけれど、この場の皆を背負った私は、一度人目につかない所に離れた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 




力的には前衛魔導師なら余裕なんでしょうが…三人おぶって移動って絵的に大変そうです(苦笑)。
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