なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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秘録九・時竜ヒドゥンとの決戦

 

 

 

秘録九・時竜ヒドゥンとの決戦

 

 

 

Side~高町速人

 

 

 

大騒動から三日、落ち着いてこそいないが主力である皆の怪我は回復したし、そもそも管理局とか管理世界のバタバタが完全に落ち着いてからだと俺達の動きも人に知れやすいし、交渉が落ち着いてしまったなら俺は各地を飛び回るって約束をしてあるんだ。

はやてを含めたお偉いさんがバタバタしてくれている間にヒドゥンを片付けなきゃならない。

 

 

その為の条件がある程度あった。

 

 

一つ、時の狭間での戦闘行動手段の確保。

二つ、次元災害規模の出力を持つ者に通じる攻撃力。

三つ、本任務の秘匿及び戦闘データの完全削除。

 

 

 

一つ目に関しては、時の狭間での活動及びヒドゥンと戦闘可能な条件に揃えて貰うのはアミタとキリエに任せる事になる。

それが出来ても無酸素無重力空間な訳だが、自力で次元世界間を移動できる人間なら、当然その間の酸素の確保なども手段として存在している為、そちらは各員が自力で準備可能。

 

二つ目は、ヒドゥンがどれほど強いか分からないって話だが…最低でも世界一つの時を止めるだけの出力があるわけで。時を属性と考える場合、アミタとキリエに同じことが出来ないなら、オーバーS以上は軽くある事になる。

それに通じる…消し去れる攻撃力。これは、ユーリにフルパワーを出して貰う予定だ。

それでも届かない場合の切り札もあるが…あまり使わせたくは無い。

 

三つ目はまぁ世界を救った前提での話ではあるのでオマケと言えばオマケだが…割と重要な話でもある。時の操作に関する話、未来を知るものの話、移動手段等…管理する、と言う次元ですらない。前回二人が消していったように、これらの記録は世界に残してはおけない。

ってまぁ…俺とリライヴは記憶消去から逃げた訳だが。ま、それが二人が俺達を頼りに出来た理由なら悪い話では無い…と思う、うん。

目撃されないよう時の狭間に移り、そして戻ってくるために使う場所として、地球を使うことで、俺達が何をしているかを感知されないようにする予定だ。

さすがに管理外世界…しかも今の状況で地球で全てを済ませれば、そうそう覗きにはこれないだろう。

 

そんな訳で、一応一通りの準備、備えはしてある…が、正直な所、蓋を開けてみなけりゃどうなるか分からないってのが本音だ。

何しろ、祈祷型デバイスを使ってヒドゥンを退けていた頃の話は、アミタ達によればヒドゥンの起こす災害のみを防いでいただけで、時竜本体を消していたわけじゃないのだ。

今回根本と戦おう何て話になっているが、最低でも祈祷型デバイスを…奇跡を越える力が必要って言う事になる訳で。

 

 

ったく贅沢な話だ。奇跡だって望んで起きるもんでも無いってのに。

 

 

頭では分かっていながら何とかなりそうな気がしてくるあたり、感覚麻痺してるって言うかなんていうか。

皆同じ気分らしく、集まった一同は誰も彼も笑顔だった。

 

 

「いい所ね。」

「だろ?何せなのはお気に入りの練習場所だからな。」

 

程よい風に髪をなびかせながら笑うキリエ。

 

キリエとアミタを筆頭に、ユーリ、リライヴ、なのは、フェイトがこの場に集まっていた。

はやては勿論、ヴォルケンの二人は未だ片付いたばっかのエクリプス案件やフッケバイン関係で残ってる必要があって、こっちのディアーチェ達も地球側で交渉する為の戦力として残ってて貰う必要があるし、アースラも空には出来ない。

 

時に関する話をあちこちに漏らせない事も相まって、知り合いに結構な戦力いるってのにこんな少数になってしまっている。

 

OAシリーズは、自分達はこの為に作られたと言って参加する気になってたが…

世界救済の為の道具、何て自身の状況をどいつもこいつも受け入れてしまってるあの娘等は多分消耗品の如く戦うのが容易に想像ついた為、ランド絡みの罪状を挙げて裁判に縫い付けた。

 

「さてと、それじゃ…あ、え?」

 

引き伸ばしても仕方ないと出発を促そうとしたその時、俺は言葉を詰まらせた。

 

人の気配。

 

一般人、とかでも問題だ。だけどそうじゃない、これは…

 

 

 

「終わらせに行くんだろ?俺がいなきゃ話にならないだろ。」

 

 

 

さぞ当たり前のように姿を見せたのは、緊張気味のトーマとリリィ、楽しそうなジークリンデを連れたフォートだった。

 

 

 

Side~フォート=トレイア

 

 

 

俺は大体身体が動く事を確認して、ベッドから降りて医務室を抜け出した。

 

さて…と。

 

 

「何処へ行くんだ、フォート。」

「トーマ…」

 

 

隊舎から出た所で、トーマと鉢合わせになった。

待ち伏せされていたらしいけど…

 

「よく俺が抜け出したの分かったな?」

「アイシスに頼んでおいたの、フォートの様子が変だってトーマが言うから。」

「一応…ね。確証はなかったから気にしておいて、ってしか言わなかったけど…抜け出したくらいだから当たってたらしいけどね。」

 

なるほど。

寝たフリだったか抜け出したのに気付いてすぐに連絡入れたか、ま、俺がいなくなってるわけだしどっちにしたって長い間ばれない訳も無い。

 

「それで…何処へ行く気なんだ?」

 

医務室抜け出したんだから当然止めに来たんだろうトーマ。

止まるつもりも無いが…話くらいは構わないか。

 

 

「速人の所だよ。」

「速人さんの?」

「ありえないんだ。何もかも片付いた今このタイミングであの馬鹿がいないなんて。」

 

傷ついてる人、捕らえられかねない人、交渉中のアースラ、何処にも関わらずに怪我の治療に専念しているらしい。

皆重傷重体で寝込んでる、普通と言えば普通だが…

 

あの馬鹿に限っては見舞いにも労いにも回らないなんてありえないんだ。まして、あの馬鹿が『普通』なんて絶対にありえない。

 

「OAシリーズだけでも、作戦次第で管理局と相打ちにする事すら出来た筈だ。あんな戦力を集めて、イデアシステムなんてエネルギーにまで手を出して、そうまでして何を企んでいたのか…それを聞いてない。」

 

挙句、副隊長達が特務の医務室にいるってのに、なのはさんとフェイトさんはいなかった。

アースラで回復させたなら、きっと例のポッドが回復効率いいからだろう。

会見に飛び回ってる部隊長が片目無い状態だってのに、事件の全てが片付いて二人だけ特別回復させる必要が一体何処にある?

 

「終わってない。そして、ソイツを終わらせるのが大人の仕事だと思ってんだよ。」

 

俺はバリアジャケットを展開する。

お姫様を救う王子様なんて、ベタベタな妄想からデザインしてくれた白い服に、ヒーローの象徴たる真紅のマント。

 

「コイツが俺の背にある限り…この一件に関わる全てを終わらせる役は、あの馬鹿だろうと絶対に譲らない。」

「そうは言うけど…どうするんだ?何処に行ったかなんて」

「誰にも詳細を言わずに…口止めや隠蔽もそこそこに離脱を目論んだのが仇になった。なのはさんがだいっ嫌いな奴が協力してくれたよ。」

 

笑いながら言うと、あの人が嫌われてるってのに検討がつかないのか首を傾げるトーマとリリィ。

 

情報源である匿名希望…雫。

当人は『なのはさんへの嫌がらせ』と言ってはいたが、多分人手不足を心配したのを隠したかったんだろう。

雫に行き先が地球である事を聞いて、アクアのインフィニティーアナライザーでいくつかの候補からあたりをつけてもらった場所。そこに行くつもりだ。

何でか地球に用事があるらしいジークリンデさんに同伴する事になっている。

 

「とにかく、地球に行くつもりだ。」

「分かった、俺も行く。」

「…何?」

 

止めるだろうトーマを振り切るつもりだった俺は、あまりにも予想外すぎたその言葉に固まってしまう。

そんな俺を前に、トーマは黒騎士モードになる。

全身の皮膚が赤黒く…元々あったタトゥーのような色になりきってしまっている姿。

 

「俺、完全兵器になったらしいんだ。元に戻るどころか、こっちが通常形態なんだよ。」

 

言いながら傍らに立つリリィに手を伸ばすトーマ。

何も言わずにリリィはその手を取る。

 

「この先どうするのか決めかねてるけど、一つだけ決めてる事がある。エクリプスの…リリィのドライバーとして、このまま全力で突き進むって。」

 

決めかねてると言う言葉を含む割に迷いの無い口調で言い切ったトーマは、そのまま俺を見た。

 

「憎む全てを断ち切るこの力を…俺が心の底から憎み、許せなかったあの日と同じ破壊をもたらすモノを断ち切る為に使う。フォートの言うこの一件にエクリプスも含まれてるなら尚更だ。」

 

俺がトーマに止めるなと言うつもりだったのなら、今のトーマを俺が止めるのも無粋だな。

 

「終わらせて…」

「護り抜く。」

 

それぞれにらしい言葉を一つの想いとして重ねて、俺はトーマと拳を合わせた。

 

 

 

Side~高町速人

 

 

 

「で、よくよく話してみれば『ユーリに呼ばれた』って言う彼女も目的地同じだって言うから、ついてきたのさ。」

 

トーマまで引っ張ってきやがった大馬鹿の説明に、俺は呆れつつユーリを見る。

ユーリはバツが悪いのか俺から目を逸らした。

 

「ジークは…私が初めて気遣いなく戦った友人ですから。他の人を連れて行く所に声もかけないなんて嫌で…その…」

 

可愛いと言うか熱いと言うか、すさまじくグッと来るものがある理由だった。

ジークが一般の少女でなければ許可所か大歓迎したい位だが…滅多にわがままとか頼みごととかしないユーリがまさかこのタイミングでとは。

 

「とんでもなくヤバイ話なんは聞いとって、その上で自分で選んで来たつもりです。」

 

握った拳を掌と打ち合わせて告げるジークリンデ。

覚えのあるときよりギラギラしてる気がするのは、ユーリに呼ばれたからかもな…

 

「…ま、ここで駄目って言うのもな。」

「ちょ、速人!?」

「ユーリの力を借りるんだ、ユーリ御指名の相棒連れてか無いなんて無茶苦茶な話は無いだろ。抗議があるなら6人で行くか?」

 

一般の娘を巻き込むって状況に抗議の声を上げるフェイトに、俺は苦笑交じりに問いを投げかける。

フェイトはその絶望的な内容に口を噤んだ。

 

一般人かどうかは知らないが、ユーリにだって協力『義務』はないんだ。ただでさえ大好きなディアーチェ達を事後処理、交渉の為にアースラに残しているって言うのに、この上指名までして呼び出した娘まで置いてはいけない。

 

「けどな…」

「おっと、俺達がいる事に文句があるならぶっ飛ばして俺達『だけ』で行ってもいいんだぜ?ロートルは縁側で茶でもすすってるのがお似合いだ。」

「ぶ、ぶっ飛ばすかはともかく…今の俺の力は強敵相手に役に立つはずです。証明しろって言うなら…覚悟はあります。」

「はいっ。」

 

指名外の見習い組に視線を移すと、俺が言いそうな事を察したフォートを始めとして、全員総出で『力ずくでもついていく』と明言しやがった。

…ったく、頼もしい子供達だなおい。

 

俺は無言で高町なのは教導官を見る。

 

この手の決定は役柄的になのはがするべきだろう。

 

「この先の敵は…何とかなるかもしれないけど、全く勝負にもならないかもしれない。具体的な情報が無いんだ。規模の差も含めて。」

 

ユーリの力だけでどうにかなるかもしれないし、全くどうにもならないかもしれない。

世界に及ぼした影響から推測するに、最低でもロストロギアが相手で、最悪だと攻撃全部がロストロギア使用級になるほどの化物と言う可能性だってある。

危険なのは間違いなく、どのくらい危険なのかがちゃんと分かって無い相手。

それが時竜ヒドゥンなのだ。

 

「命の保障は出来ないよ、それでも…」

「だったら尚更だ。俺が皆の命の保障にならなきゃな。」

「そうですよ冗談じゃない、なのはさんもフェイトさんもスゥちゃん達の元に絶対返しますからね。」

 

護ってやれないと言わんとしていたなのはに対して、俺達を護って連れ帰ると言い切る馬鹿二人。頷いているリリィも含めて三馬鹿だな。

 

…ま、悪くない。

 

「決まりだね。大体イノセントを使わない代わりに誰かに死んでもらったんじゃ私の立つ瀬が無い。」

『まったくです。』

「リライヴちゃん…」

 

なのはより先に三人の参加を認めてしまったリライヴの言い分は、なのはの懸念を覆すものだった。

でも、リライヴの言う通り、命を弾扱いしたり捨て駒を使っていいのなら、ラルゴのおっさんが『残る記憶』全てを差し出しても構わないと名乗り出てる。

当然そんな事させる気も無いからとっととはやてに拘束してもらったし、イノセントだって機能停止するような真似させる気無いのに、持ち主のリライヴや俺達から死人が出てたら本末転倒もいい所だ。

 

命の保証が無いなんて考え…まぁ事実なんだが、持つほうがどうかしている。

 

「えぇっと…盛り上がってる所すみません。」

「ん?」

「そもそも定員が…時の狭間での戦闘可能制御下に置けるのが10人までで…」

 

申し訳なさそうに告げるアミタ。

っと、そう言えばアミタ、キリエ、俺、リライヴ、なのは、フェイト、ユーリの時点で7人だ。

一見ここに4人来たら定員オーバーだ。

けど、その心配は無用だ。

 

「えっと…これでどうですか?」

 

説明するまでもなく、トーマはリリィと融合を済ませる。

これで、定員についてはクリア、問題ない。

 

「バッチリね。それじゃパパッと世界救って来ましょうか。」

「キリエ…」

 

妹のすさまじく軽いノリにアミタが苦笑いするが、俺としてはそれ位で頼もしい。

 

 

「よし、それじゃ皆、戦闘準備が出来次第いくぜ、時トカゲ退治だ!」

 

 

緊張抜きを重ねるために軽口と共に俺はナギハを起動させた。

皆もおのおのデバイスを起動させたり戦闘服を展開したりと準備を済ませる。

 

話には聞いてたが、トーマは中々に異色な格好だ。

 

とにもかくにもそれぞれに戦闘準備を終えた俺達は、アミタとキリエの指示に従って集まり、開かれた空間に踏み込む。

 

さて…行って来るか。

 

俺も覚悟を決めて、背後に手を振って空間に飛び込んだ。

 

 

 

Side~フェアレ=アート

 

 

 

開かれた空間に翠色のマントを背にした…高町速人さんが消える前、結構遠くに隠れていたはずの私達の方向に向かって手を振ってから入っていった。

 

「気付かれていたようだな。」

「さすがヒーローさん…ってかフォートの師匠さん。」

 

フォートが抜け出した事を教えてくれたアイシスと、ここまでつれてきてくれたエフス。二人が揃って褒めるあたり、やっぱり本当に凄い人なんだなぁって改めて思う。

 

ただ、それよりも心配があった。

 

「あ、あの…フォートも…気付いてた?」

 

私はその辺、達人でもなんでもないただの改造人間だから全然わからない。

枷になるのが嫌で顔も出さずに見送ったのに、当のフォートに気付かれていたらあんまり意味無い気がしてちょっと心配になる。

 

「それはないんじゃない?アイツ馬鹿だから気付いてたらすぐ分かるよ。」

「心配かけまいと何も言わなかったのだろうに、とっくにばれている事を知って尚説明も何もせずに行く訳がない。」

 

世界を救いに行く、そう言ってた。

つまり、逆に言うと世界規模で危険な事をするものをとめに行くって事になる。

 

そんな説明をするよりは黙って抜け出して帰ってきたほうがまだ、私に対して、『ちょっと無茶をした』程度に思わせられるから…

だからフォートは何も話さず行ってしまったんだ。

 

「…それよりどうする?一般人の立ち入りを見張るついでにここで待つか?」

「当然。ここまで来て帰る手は無いでしょ。ねぇ?」

「うん。」

 

帰って来てから何もかもばれても、別に後の祭りだから何でもいい。

それに…一つやりたい事があった。

 

隠れていた私達は、麻痺で動きづらい私のよたよたとした歩みに合わせてゆっくりと、フォート達が飛び込んだ空間があった場所に向かって歩き出した。

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

始まりこそふざけているようなノリだったけど、当然手抜きなんかする訳もなくて…

 

空間に飛び込んで、時竜ヒドゥンと呼ばれる光で構成されているような翼竜の姿を見つけるなり、ユーリがその力を全開にする。

 

 

 

 

「エンシェントマトリクスっ!!!!!」

 

 

 

 

最大最強出力の、何の阻害も受けていないそれは初めてみた。

わざわざ対抗プログラムなんて組んで戦った理由がよく分かる、人にどうこうできるものじゃない。

 

「す、げぇ…」

 

出力の上では文字通り『人外』になってしまったトーマですら驚くほどの赤黒い力の塊は、一直線にヒドゥンに向かっていき…直撃した。

 

 

ヒドゥンは光る翼を卵の殻のように閉じて受けていた。直撃、炸裂まではその姿が見えていた。

けれど、ユーリの放った力が凄すぎて時の狭間とか言うこの空間そのものがビリビリと揺れていて、着弾した箇所は何も見えなかった。

 

 

やがて、力の奔流が収まった頃…

 

 

 

無傷のヒドゥンが咆哮を上げた。

 

 

 

音、と言うより衝撃。

伝わってくるそれが大きすぎて、誰も動けなかった。そして…

 

 

 

そんな私達を前に、光る口が開かれ、波の様な炎の様な光のような…

 

 

ただ、凶悪な力の塊であることだけが分かる何かが放たれた。

 

 

時竜だから、時のブレスとでも言えばいいのだろうか?

 

 

咄嗟に防御魔法を展開する私より前に出る陰があった。

 

 

 

 

「消しきるっ!!!!」

 

 

 

 

分断能力を持つトーマ。ただ防ぐよりも力そのものを分解してしまったほうが楽ではある。まして、本人自身も硬く、再生までするから盾としては本当に優秀だ。

 

そのつもりで前に出たんだろうトーマは、分断効果を全開にしてそのブレスを受け

 

 

 

 

気付けば、私たちは全員崩れた姿勢で浮いていた。

 

 

 

一瞬だとは思うけど、意識がとんでいたらしい。

 

皆それぞれ防御を展開していたはずなのに辛そうで…

前に出たトーマに至ってはディバイダーを手にしていた右腕がなくなっていた。

 

 

 

 

笑い話にもならなかった。

私達は一体何と戦うつもりでいたのかと、そう思って…

 

 

「はは…はははははっ!!」

 

 

笑い声がした。

あまりの差に頭がおかしくなったんじゃないかとそう思って…声の主がフォートであることに気付いた。

 

 

 

 

「勝てるっ!!!!!」

 

 

 

 

フォートは、強がるでも迷うでもなく、心底楽しそうな声でそう言い切った。

 

 

 

 

「リライヴと初めて戦った時俺は一撃でやられた!人間同士の差より小さい程度の差しか俺達とあのトカゲには無いんだ!その程度絶対埋められるっ!!!」

 

 

 

 

馬鹿だった。

あんまりにも馬鹿な計算だった。でもフォートはそれを理由に本気で笑ってた。

 

 

 

そして…そんな馬鹿はもう一人。

 

 

 

『よく言ったフォート!!!』

 

 

 

 

声では届かないからか、喋る余裕が無いからか、聞き知った速人お兄ちゃんの念話が届く。

きっとこの場の全員に向けられたそれと共に、人影が単騎でヒドゥンに向かっていくのが見えた。

 

無茶だ、そう言おうとして…

 

 

 

 

『時間は稼ぐ、後は任せた!お前に主役をくれてやる!!!』

 

 

 

 

その短い言葉に込められた意味の重さに、何も言えなくなった。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 




ここまで差があるといっそ開き直れる気もします(汗)。
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