なのは+『心のちから』   作:黒影翼

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余録・星の残照

 

 

 

余録・星の残照

 

 

 

Side~高町ヴィヴィオ

 

 

 

完全に死角を取ったフェイトママの斬撃。

けど、その一撃はアインハルトさんの腕に阻まれた。

 

「腕で剣受けちゃってますね…」

「鋼体の型、牙山を使う事もあって極めた身体防御。見えてる攻撃を意識して受けるなら、余程の大技でもない限りアインハルトさんにはダメージにもなりません。」

 

ミウラさんが驚いて呟く中、一緒に練習をしててその訳を知ってる私はその防御の訳を説明する。

 

フェイトママやエリオさんのソニックムーブ、ブリッツアクション。

雷光と見まごう速さは間違いないんだけど…

攻撃位置への移動魔法である事、魔法を発動している事、その二点がある限り余程上手く行かないとアインハルトさんなら攻撃に気付いて耐える。

 

「ヴィヴィオに勝つにはそれっきゃないって思ってるんだよ。元々重戦車扱いされるようなタイプの格闘戦技使いだし。」

「本当に凄い硬いんですよ…ゴライアスでも大技で行かないと崩せないくらいで。」

 

リオとコロナの話を聞いたミウラさんが私を見ながら苦笑い。

アクセルドライブにどう対応するかって所で多分凄い考えさせちゃったんだろうなぁ…

攻撃をまともに受ける前提の作戦の原因が私のせいかと思うとちょっと悪い気がする。

 

で、それは同時に…

 

「ヴィヴィオと同じ域になってるフェイトさん相手なら、アインハルトさんは互角か有利かになるのかな?」

「多分。」

 

アクセルドライブの域に入れる人は貴重で、フェイトママとも時々練習したりするけれど、剣と格闘戦技の違いはあっても殆ど同じ系統の特徴だ。

それはつまり、私を破る気で準備してくれてるアインハルトさんには破りやす…

 

 

 

「「「「いっ!?」」」」

 

 

 

集まってた皆の悲鳴に近い驚愕の声が重なった。

フェイトママが真ソニックフォームになった、そこまではいい。

 

 

だけど、数十のフェイトママの姿がアインハルトさんの周囲に出ているのは、異常極まりなかった。

 

 

 

それも、『幻影じゃない』んだ。

じゃあ実体なのか?…それも違う。

 

 

 

一瞬の停止時間、それがあまりに短く何回も行われて、カメラがシャッターを切るまでに残った光の軌跡が写真に写るように、私達の目に高速移動を繰り返すフェイトママの元いた場所の姿がいくつも同時に映っているんだ。

 

普通、攻撃で防御を抜けないならと一撃の威力を上げるところをフェイトママは、『移動と斬撃を最速最多』にする事で、見えてる斬撃に耐えるアインハルトさんに対して見切れない一撃を放り込もうとしてる。

 

『ま、まるで電気変換の広域攻撃のように競技場が光って何人ものフェイトさんの姿が映っているっ!司会の私も全然数えられないけど、物凄い回数斬撃が繰り出されてるっ!これはアインハルト選手きびしいかーっ!?』

 

明らかに防ぎきれる量も耐え切れる量も超えている。

防護服に魔力を通して受けに回るといっても受ける箇所を選べなければさすがに全身庇い続けるわけにも行かない。

頬や脇腹、脛なんかを刃が通るたびにダメージを負っていくアインハルトさんは、やがて仰向けに倒れ…

 

「サンダー…」

 

それを確認した瞬間、フェイトママが宙から雷撃魔法の準備に入る。

倒せていない前提でのトドメの上、格闘の距離に持ち込まれないための対策だろう。

 

 

「レぐ…っ!!!」

 

 

と、デバイスを振り下ろすと共に雷を放つはずだったフェイトママが、唐突に墜落した。

一瞬だけ、何が起きたのか分からなかったけど、よく見ればどんな状況かすぐ分かった。

仰向けだったはずのアインハルトさんが、背中の地面を支えにしながら右手で空破断を繰り出していた。

 

仰向けに倒れるって事は…背中をとられないって事。初めから見えた位置に空破断を放り込むつもりだったんだ。

それに、フェイトママもそれくらい警戒してたんだろうけれど、ノーモーションで放たれた今のはかなり早かった。多分、雫さんの無形の位からの抜刀を参考にしてる。

居合い参考の中距離高速攻撃…見て避けるのは私も厳しそうだし、魔法準備中じゃ避けられない。私も気をつけないと。

 

ゆっくりと起き上がるアインハルトさんを前に、墜落したフェイトママも剣を構えるけど…ソニックフォームでボディに空破断の直撃を受けて、完全に足を殺されてる。

 

全身に斬り傷を負っているものの芯へのダメージは軽いアインハルトさん全力の断空脚を魔力刃でガードしたフェイトママは…

 

魔力刃を砕かれた勢いそのままに側頭部にその一撃を受けて場外に吹っ飛んでいった。

あ…意識無い。と言うか、断空頭部直撃って大丈夫かな?

 

『作戦勝ちか粘り勝ちか!?何にしてもアインハルト選手管理局の新三英雄とも呼ばれる一角、フェイトさんを破って二回戦進出だぁっ!!!』

 

勝利宣言を受けて一息吐いたアインハルトさんを見ながら、私は席を立つ。

次の次だ、アップしておかないと。

 

 

皆からの応援に手を振って応えて準備に入る。

凄い人同士の集まり…ってなると、実力が近くったって得意技の交錯結果次第によっては早めに決着がついちゃう場合もある。

なのはママとスバルさんならどっちも防御力がそれなりにあるほうだからそんな一瞬決着にはならないと思うけど…

 

「あ、アインハルトさん。おめでとうございます。」

「ヴィヴィオさん。」

 

競技場から出てきたアインハルトさんと鉢合わせて、笑顔で祝福すると、笑みを返してくれた後で表情を曇らせるアインハルトさん。

 

「必死だったものでつい…フェイトさん大丈夫でしょうか…」

「あはは…大丈夫ですよ。フェイトママもああ見えても古参のエースなんですから。」

「強敵でした…ヴィヴィオさんも、頑張ってください。」

 

普段の優しい雰囲気から想像出来ないだろうけど、ここに並ぶ一人ではあるフェイトママ。

心配は要らないと言う意味を込めて告げると、アインハルトさんは頷く。

強敵って意味で言うなら、ママ達がある意味目標にしているリライヴさんの方がよっぽど強敵だ。

 

「アップならミット受けやりましょうか?」

「嬉しいですけど、軽い怪我だからってほっといてそれは」

『あーっと!!!』

 

全方位斬撃を捌いてた身で心配するようなことを言うアインハルトさんにダメだししようとした瞬間、アクアさんの大きな声が響いた。

話しを止めた私達がモニターに視線を移すと…

 

 

何があったのか、場外に吹っ飛ばされて意識を失っているスバルさんの姿があった。

 

 

まさか…まだ殆ど開幕直後だった筈なのに…

 

『近接型のスバルさんに対して砲撃魔導師で有名ななのはさんからまさかの奇襲!ここへ来て第一回戦最速試合!さすがはエースオブエース!!!』

「…どの道行かなきゃですね。」

「…ですね、頑張ってください。」

 

アップするもしないもない結果になってしまってアインハルトさんと顔を見合わせて苦笑い。

私はアインハルトさんと軽く拳を合わせて競技場に向かった。

 

 

 

Side~スバル=ナカジマ

 

 

 

一瞬だった。

 

高速展開されたバインドにかかったまではともかく、追撃で来るはずの砲撃を拘束を解きながら破ろうと構えた私に対して、なのはさんはACSで突撃をかけてきた。

迎撃にしたって砲撃と違って掻き消す事もできず、突撃用に展開されたデバイスの先端の刃を蹴り飛ばす形になったけれど、ここでもびっくりする事に、なのはさんはしっかりとレイジングハートを握って『いなかった』。

両手で手放さないよう握っているように見せかけて、実は左手は殆ど添えるだけだったため、指をすり抜けるようにその場に残った左手が、突進の勢いそのままに近づいてきたなのはさんによってあたしに向けられ…

 

零距離砲撃、ディバインバスター・インパルス。

 

まともに入って耐えられる代物でもなく、ダウンカウントも無いため、追撃に右手で手放さなかったレイジングハートから放たれたエクセリオンバスターを受けたあたしは、完全に落ちた。

 

アクアがなのはさんの勝利宣言を終え、なのはさんがあたしの所まで来た所で気がついた。

 

 

 

「…ごめんね、ちょっとイジワルだった。」

 

負けたあたしも歩けたため、一緒に医療班の元へ向かう中、なのはさんはそう言って、片手を顔の前に立てて謝った。

普通は勝者に謝られても困る…って言うのが常識ではあるんだろうけれど、なのはさんの言いたい事には察しがついていた。

 

「いえ、公式大会とかじゃ当たり前ですし、変なことがあったわけでもないですから。」

「そっか、ノーヴェ先生のお姉さんだもんね。」

 

得意となる個々の一を磨き光らせ輝かせ、それを組んだチームによって最高に生きる自信と環境を作り上げる、なのはさん含め、六課得意の育て方。

ただ、戦いに勝つ、って言うのは、いつか速人さんが口にしていた『相手に勝てる部分を当てる能力』。それには、『敵に全力を出させない戦い方』も含まれる。

出鼻をくじいたり、全く想定してないだろう方法を取ったり…教導時の…教え子の力を磨き伸ばす事が仕事のなのはさんなら、絶対好んではやらない方法。

 

「ただ…この先もこの調子で?」

 

一瞬、リライヴさんとも、と言いかける。

一応まだ決まっていないとは言え、ヴィヴィオには悪いけれど順当に行ったら多分そうなるから。

そして…あの人相手に奇策が通じるとも思えないし、危ないとも思う。

 

「んー、それは多分無いから大丈…っ…」

 

一瞬、言葉を止めて頬を歪めるなのはさん。

無理矢理に表情を押し殺したものの、今度はあたしを見て苦い表情をする。

 

一瞬…痛みに歪んだ?

 

「なのはさん…まさか…」

「ごめんスバル、決勝まで…ううん、後二戦、見逃して。」

 

困ったように力なく笑うなのはさん。

まるで、イタズラの仕掛けがばれて困っているような、そんななのはさんを前に、あたしが出来たのはただ無言で頷く事だけだった。

 

 

 

Side~高町ヴィヴィオ

 

 

 

開始直後から距離を詰めての格闘戦に持ち込ませて『くれた』リライヴさんとの試合が始まって既に1分程。

気を使って合わせてくれてるのかも知れないけれど…だとしたらかえって絶望感が強い。

 

『クロスレンジで拳、蹴りが交錯するも未だクリーンヒットは無し!熱い互角の攻防だぁっ!!』

 

得意距離で…しかもデバイスを抜いてすらいない相手に優勢を取れない。

互角なんてよく言ったものだと思う。

 

 

アクセルスマッシュW。

 

 

二発目がまともに入った…ように見えるタイミングで宙返りするリライヴさん。

手応えが軽い、衝撃を逃がされた。

 

片足での着地を溜めに使い、肩から体当たりしてくるリライヴさん。

避けられないから下手に逆らわずに受けてバックステップ。

 

「ソニックシューター!!」

 

着地待たずで魔法構成、3発のシューターを放ち、こっちもお返しのつもりで着地を溜めに…

 

「よっと。」

 

地を蹴る前にシューターを投げ返された。

うわ、旋衝破だ。

分かってるけど古代ベルカの高等技術まであっさりやらないでよも―!!

 

仕方なくその場で左ジャブでシューターを相殺。その間にリライヴさんは当然のように『一歩で』距離を詰めてくる。

高等技術をぽんぽんと…でも!

 

「だだだだだぁっ!!!」

「っ!わ!とっ!」

 

一撃を選ばせず、かつダメージを確保しようと練習しておいた、両手による顔面狙いの乱打。

鼻先や顎なら軽くでも入れば足を止められるし、大振りほど隙を狙えない。

 

ただ…

 

なにもさせずに下がらせたものの、これでも一発も入らなかった。

 

『両者譲らない凄まじい戦いだ!!移動速度の速かったフェイトさんとは違うけど手数と攻防が速くて目がついていかない!!』

 

さて、と。

アクアさんからの解説はありがたい評価ではあるけれど、正直ここからどうしようか。

 

魔法を使って…魔法…っ!

 

 

考えた直後、私の目の前で魔力爆発が起きた。

 

 

遠隔空間爆破魔法、スペースインパクト…リライヴさんのを私も使えるようにした代物だ。

無色の魔力光のせいで爆発寸前になっても気付き辛い魔力の集束にどうにか反応してセイクリッドディフェンダーで凌いだのはいい。だけど…

 

防いだまま吹き飛ばされて距離を離された私が見たのは、地面に手をおいたリライヴさんの姿。あ、やば、これっ…

 

「ヴォルカニック・ブレイズ。」

 

番長が使う遠隔発生砲撃魔法だ。

回避は仕切れない。けれど、そのまま受けるわけにも行かない一撃に対して、私は垂直に飛びながらダイビングのようなポーズをとって砲撃と向かい合う。

その状態で防御。

空高くに飛ばされるけれど、私だって飛行制御位出来る。

 

追尾とばかりに高速移動魔法で空に追って来たリライヴさんと向かい合って…

 

 

飛行魔法制御中にアクセルドライブには入れない事に今更気付く。

 

 

それだけならいいんだけど…

技術や見切りで回避する事で互角の体を保っている私が、殲撃を準備してるリライヴさんの攻撃を、アクセルドライブなしで捌くことなんてできる訳も無かった。

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

空から殲撃で更に上に向かって吹き飛ばされるヴィヴィオの姿を眺めながら、複雑な気持ちを抱いていた。当然、素直に喜ぶわけにも行かない。

けど…順当に…リライヴちゃんが勝ちあがってきたって事は…彼女と試合が出来るって事だ。

ヴィヴィオには悪いけれど、それは私の望みの一つでもあるから、複雑な気分だ。

 

高々と打ち上げられたヴィヴィオが落ちてくる中、途中でその速度が急激に緩んだ。

横にふっとばしたり、下に叩き落したりすれば、殲撃の直撃で意識を失った状態で地面などに叩きつけられることになるから打ち上げたんだ。

 

優しい配慮だ。同時に、そんなことが出来る実力差だって事を示してしまう。

後者は本人気付いてないんだろうなぁ…

 

「娘が殲撃で吹き飛ばされているのに余裕だな。」

 

身体を診てくれているエフスが少し冷たく呟いたのに対して、私は笑い返す。

 

「幼馴染を信用してるんだよ。それより…」

「ん?」

「『姉さん』…でしょ?また怒られるよ?」

 

私の言葉を聞いて、エフスは疲れたように目を閉じた。

 

姉さん…と言うのは、ウチで引き取る事になった彼にそう呼ばせようとしてるヴィヴィオの要望だ。本当はお姉ちゃんだけど。

ウチで引き取る事になったのは、彼がヴィヴィオとスカリエッティの因子から生まれたからで、それに際してヴィヴィオは自分から生まれたエフスに対して姉でありたいらしい。

 

「…さすがにそれは無理があると思うんだがな、それに、正確に言うなら母さんになるというのに。」

「あはは…それは私の方もちょっとね。」

 

彼がそんな反応をするのも分からなくはない。

生まれてからの年数だけならともかく、記憶転写と成長加速の結果、見た目でフォート達と同年代か一回り年上、中身に至ってはスカリエッティの知識量。それでヴィヴィオを姉とは言い辛いのも分かる。

 

で、正確に言えばヴィヴィオは『お母さん』になるんだけど…それは嫌がってる。

…まぁ、私も30前で祖母扱いされる程悟りを開けてはないから、それはちょっと勘弁してほしい。

 

「…まぁ、ゆっくりでも馴染んでくれるとママも嬉しいな。」

「余裕ぶってる場合か。」

 

微笑みかける私に対して冷めた目を向けるエフス。

 

「あのリライヴと戦った上、望みはその次…その有様でよく言う。」

「保たない…かな?」

 

ちょっとだけ弱気になって聞いてみてしまう。

エフスは私の身体の節々に手を伸ばして軽く揉んだり押したりしていく。

古傷とかの箇所が痛むけれど、まだ大丈夫には思える。

一通り触診を終えたのか、手を離したエフスは真剣に私を見た。

 

「…少なくとも死なせはしない。ようやく普通の生活とやらが出来そうだと言うのに早々に義母を失うつもりはない。」

「ありがと。」

 

冷めたように見えて、なんだかんだで優しいいい子だ。

だから、ヒドゥンを倒して戻って来た私達をすぐに助けてくれて…

 

 

治りきらないダメージを負ったリンカーコアを誤魔化してくれている。

 

 

…無茶が過ぎたんだ。

JS事件だけですら最大値を削る事にすらなってしまったって言うのに、あのユーリの力をはるかに上回る一撃をって…力を束ねて、その反動を受けた。

元々そういうダメージを積んでいないフェイトちゃんは、肩代わりして消耗したダメージも癒えて復帰しているけれど、私の方は未だに厳しい。

魔法を使えば痛むし、そもそもいつまでもつか…

 

でも、どうせ今後も管理局での仕事に繋げるほどのものでないのなら…身体に気を使うより、最後の願いを叶えたかった。

 

 

ずっと追いかけてきた速人お兄ちゃんに全力をぶつけて勝つ事。

 

 

それをやってまた足が麻痺したりすれば、ヴィヴィオにもエフスにも迷惑にしかならないんだけど…エフスはそれを止めずに、むしろ協力してくれている。

 

「世界を何度も救った人間の身体をかけた我儘だ、咎められる事などない。後の事は気にしなくていい…母さん。」

「ありがとう。」

 

母と呼びながら後の事は気にしなくていいと言い切るエフスに、私は本当にいい縁に恵まれてるって心の底から思った。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 




普通の生活…出来るといいですねエフス君(棒)。
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